岸政彦のレビュー一覧
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社会学者・岸政彦による小説「図書室」と、自伝的エッセイ「給水塔」からなる。個人的に「給水塔」が面白く、この作品があることで、「図書室」の面白さが増すような気がした。「給水塔」の最後が、そのまま「図書室」につながっていく。「図書室」は小説としては読みやすいが、やや淡泊。もっともっとドラマを込められるだろうが、そこは社会学者による小説、ということでかろうじて我慢できる。たとえ小学校高学年であったとしても、男女が小屋にこもったら、肉体的な触れ合いの、そのヒリヒリ感ぐらいもっと描けよ、と突っ込みたくなったが、まあいいか。これが庶民ということか。
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読書開始日:2022年6月3日
読書終了日:2022年6月11日
所感
【リリアン】
人間はなにかしていないと怖い。
リリアンはうってつけ。
意味のないものを生み出し続けるが、なにかをしてる感じは持てる。
虫も、菊池も、美沙さんも、そう。
考え始めるとなにもかも自責の念に囚われる人種。
もちもん主人公もそう。
揺れ続けている。
落ち着かない。
そんな人らの記憶を潜水している気分だった。
どんどんと暗くなるが不思議と引き込まれる。
息が続かす戻った頃に、ドミンゴママの一言。
一緒に寝る人がいたらええ。
そう。
人は欲している。
リリアンもいらない、あったかい、愛情をくれる人。
戻ってくる。
E♭ -
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ネタバレゆっくりゆっくりと語られるなんということはないエピソード。
最初はひとりでシュノーケルを持って海に潜る話。
それからスナックで知り合った10こ年上の美沙さんとの付き合い、会話。
美沙さんが好きなリリアンの話、音楽のコードの話、ふたりの昔を思い出す話。
主人公は音楽で一応食べているけれどやめようかと悩んでいる。
ひとつひとつのエピソードは脈絡がないようで、物語が進んでいくと何度か同じ話を繰り返しながらつながり意味が編まれていく。ゆっくりのペースを乱さないように。
物悲しい雰囲気を終始保ちながら少しだけの希望を持って終わったように思う。特に夢も希望もないけれど、ふたりが一緒にいられそうだという -
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第156回芥川賞候補作
よく聞くラジオ番組で何度か岸政彦さんがゲストだったり、Eテレの「100分で名著」にも講師として出演されていたので、社会学者であるということは知っていた。
そして、大阪愛はもちろん、「人」というものに対する興味や愛情が本当に深い方なんだなぁ、とその熱量の高いトークから感じていたのだが、小説はまた違った趣きだった。
読み始めてすぐ、なぜか柳美里さんの「JR上野公園口」が思い浮かんだ。
私自身は、大阪という街をあまり知らないので、この小説の舞台が大阪のどんな所なのかは、読んで受けたイメージしかない。
ゴミの吹き溜まりの少しすえた匂いのするような、寂れかけた一角に暮ら -
購入済み
ありのまま世界を観察
筆者の人となり、もしくは社会学者としての態度のようなモノが現れている感じがした。
筆者のことはコノ本で知った。
世界のあらゆる物事は表裏一体で有ることを再認識できたような感覚を覚えた。
・善/悪
・暑/冷
・温和/暴力
何か、変なレビューになってしまいましたが
僕は面白かった。 -
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現代社会学を巡る3つの潮流である質的調査・量的調査・理論をそれぞれ代表する社会学者に、どちらかというと社会思想史の研究者としての色合いが濃い稲葉振一郎を加え、それぞれの鼎談によって構成された一冊。
社会学に対して多少なりとも興味関心がある人でないと全く面白く感じない本だとは思うが、登場する社会学者はみな、現代の日本の社会学におけるトップクラスの論客たちであり、知的な刺激は大いに得られる。
大きく印象に残ったのは2点。
北田暁大氏については私が大学生だったときから既に若手論客として名を馳せており、何の本に収められた論考だったかは全く忘れてしまったのだが、「社会的な問題にコミットする」という姿 -
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市井の人々への徹底した聞き取り調査を元に社会構造などを明らかにする社会学者である著者の小説は数冊目であるが、本作はジャズベーシストでもあった著者の過去の経験が盛り込まれており、音楽に関するシーンも含めて楽しめた一冊であった。
名作『断片的なものの社会学』で示されたように、日常生活のある何気ないモチーフから極めていまイマジナティブな世界を描く出すのが巧い。本作ではタイトルにもある”リリアン”はまさにそうしたモチーフの1つであり、”リリアン”と共に綴られる主人公のジャズベーシストが語る幼少期の痛みに満ちた回想は、こちらの胸をも抉るような痛みを味わわせてくれる。
また、ジャズセッションのシーンは -
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ネタバレ注意
読書開始日:2021年4月28日
読書終了日:2021年4月29日
所感
図書室
回想シーンの男の子との会話で懐かしさを覚えた。
自分の小学生時代の会話もこんな感じだった。
お互い当時持ち合わせている最小の気遣いだけで、話したいことを次から次へと突拍子も無く話していた気がする。
まさに作中の2人もそれだった。
「私たちは、相手が吐き出した息を口から吸い込んでまた吐き出すように、お互いの言葉をやりとりしていた。」この一文で自分の記憶を言語化できた。
その会話の中心に、「子どものころに一度は訪れる死や地球滅亡への恐怖」を据えることで、さらになつかしさが増す。
歳を重ねるにつれ、気遣い -
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ネタバレ突然の雨に見舞われ、コンビニで安物のビニール傘を買う。
傘の見た目や機能性なんてどうでもいい。どうせその場しのぎの傘なんだから。
また別のビニール傘を買ったっていいんだから。
他人との関わり方が、そんなビニール傘に似ている。
なんとなく誰かと話がしたい。相手は別に誰でもいい。でも自分の話をするのは億劫だから、相手の話を聞くだけがいい。
大阪を舞台にした、寂寥感たっぷりの物語。
毎日をただ淡々と機械的に過ごす若者たちがとてもリアル。
雨が降るとすぐに水浸しになるという湿地帯の大阪。でも大阪住みの若者たちの人間関係はドライなんやな。
途方もない切なさ、寂しさがひたひたと伝わってきて、何度も胸が