岸政彦のレビュー一覧
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購入済み
ありのまま世界を観察
筆者の人となり、もしくは社会学者としての態度のようなモノが現れている感じがした。
筆者のことはコノ本で知った。
世界のあらゆる物事は表裏一体で有ることを再認識できたような感覚を覚えた。
・善/悪
・暑/冷
・温和/暴力
何か、変なレビューになってしまいましたが
僕は面白かった。 -
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現代社会学を巡る3つの潮流である質的調査・量的調査・理論をそれぞれ代表する社会学者に、どちらかというと社会思想史の研究者としての色合いが濃い稲葉振一郎を加え、それぞれの鼎談によって構成された一冊。
社会学に対して多少なりとも興味関心がある人でないと全く面白く感じない本だとは思うが、登場する社会学者はみな、現代の日本の社会学におけるトップクラスの論客たちであり、知的な刺激は大いに得られる。
大きく印象に残ったのは2点。
北田暁大氏については私が大学生だったときから既に若手論客として名を馳せており、何の本に収められた論考だったかは全く忘れてしまったのだが、「社会的な問題にコミットする」という姿 -
Posted by ブクログ
市井の人々への徹底した聞き取り調査を元に社会構造などを明らかにする社会学者である著者の小説は数冊目であるが、本作はジャズベーシストでもあった著者の過去の経験が盛り込まれており、音楽に関するシーンも含めて楽しめた一冊であった。
名作『断片的なものの社会学』で示されたように、日常生活のある何気ないモチーフから極めていまイマジナティブな世界を描く出すのが巧い。本作ではタイトルにもある”リリアン”はまさにそうしたモチーフの1つであり、”リリアン”と共に綴られる主人公のジャズベーシストが語る幼少期の痛みに満ちた回想は、こちらの胸をも抉るような痛みを味わわせてくれる。
また、ジャズセッションのシーンは -
Posted by ブクログ
ネタバレ注意
読書開始日:2021年4月28日
読書終了日:2021年4月29日
所感
図書室
回想シーンの男の子との会話で懐かしさを覚えた。
自分の小学生時代の会話もこんな感じだった。
お互い当時持ち合わせている最小の気遣いだけで、話したいことを次から次へと突拍子も無く話していた気がする。
まさに作中の2人もそれだった。
「私たちは、相手が吐き出した息を口から吸い込んでまた吐き出すように、お互いの言葉をやりとりしていた。」この一文で自分の記憶を言語化できた。
その会話の中心に、「子どものころに一度は訪れる死や地球滅亡への恐怖」を据えることで、さらになつかしさが増す。
歳を重ねるにつれ、気遣い -
Posted by ブクログ
ネタバレ突然の雨に見舞われ、コンビニで安物のビニール傘を買う。
傘の見た目や機能性なんてどうでもいい。どうせその場しのぎの傘なんだから。
また別のビニール傘を買ったっていいんだから。
他人との関わり方が、そんなビニール傘に似ている。
なんとなく誰かと話がしたい。相手は別に誰でもいい。でも自分の話をするのは億劫だから、相手の話を聞くだけがいい。
大阪を舞台にした、寂寥感たっぷりの物語。
毎日をただ淡々と機械的に過ごす若者たちがとてもリアル。
雨が降るとすぐに水浸しになるという湿地帯の大阪。でも大阪住みの若者たちの人間関係はドライなんやな。
途方もない切なさ、寂しさがひたひたと伝わってきて、何度も胸が -
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この本を読むのは2回目だ。正直に言うと、読んでいる途中でなんだか見覚えがあるなと感じていて、途中で既に一度読んでいたことを思い出した。初めて読んだのは一年くらい前だったと思う(後で調べたら二年前だった・・)。質的調査の入門書として読んでいて、紹介されている参考文献を何冊か購入するくらいにはちゃんと興味も持っていた。ただし、購入した参考文献は未だ積読になっていて、今回の読書でさらに本書のブックガイドより数冊購入してしまった。
そもそもは、昨今の流行もあり、量的調査分析に興味があった。調査というか、データ分析?って何をするのレベルで関心があり、調査法の入門書や統計について何冊か読んでいた。量的調 -
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定職も貯金もある。一人暮らしだけど不満はない。思い出されるのは、小学生の頃に通った、あの古い公民館の小さな図書室のこと―
ひとりの女性の追憶を描いた中篇「図書室」と自伝エッセイ「給水塔」の2編収録。
まるで自分史のようだと思ってしまった。どうしてあの頃の私の気持ちも、今の私の気持ちも、こんなによく知っているの?と驚いてしまうくらい。
これと言った期待も希望も無いのに、「求められている」というステイタス欲しさに惚れた腫れたを経て、40にしてひとり暮らしを満喫する主人公。
胸いっぱいに感じる自由と孤独が、子どもの頃、公民館の図書室で覚えたソレと重なる。
『クラスの誰も知らない場所で -
Posted by ブクログ
ネタバレ「背中の月」の方が好きでしたね。
でも「ビニール傘」の世界を読んだから、そちらの方が好きと感じたのかも。
…いかにも芥川賞候補という作品でした。
作中に何度も出てくるカップ麺のゴミが二つの話を繋げ、静かなやりきれなさどうにもならなさ、虚しさを顕在化させているかのよう。
(引用)「妙な話だが、幸せなとき、楽しいとき、遊びにいっているときよりも、急な葬式が入ったとき、人間関係でめんどくさいことがあったとき、仕事上のトラブルに巻き込まれたとき、ああ俺たちはふたりなんだなと思う。」というセンテンスに泣きそうになりましたね。
その時二人だった、今はどうしょうもなく一人だということの孤絶感。
「不在」