岸政彦のレビュー一覧

  • 図書室

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    社会学者・岸政彦による小説「図書室」と、自伝的エッセイ「給水塔」からなる。個人的に「給水塔」が面白く、この作品があることで、「図書室」の面白さが増すような気がした。「給水塔」の最後が、そのまま「図書室」につながっていく。「図書室」は小説としては読みやすいが、やや淡泊。もっともっとドラマを込められるだろうが、そこは社会学者による小説、ということでかろうじて我慢できる。たとえ小学校高学年であったとしても、男女が小屋にこもったら、肉体的な触れ合いの、そのヒリヒリ感ぐらいもっと描けよ、と突っ込みたくなったが、まあいいか。これが庶民ということか。

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    2022年07月26日
  • リリアン

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    読書開始日:2022年6月3日
    読書終了日:2022年6月11日
    所感
    【リリアン】
    人間はなにかしていないと怖い。
    リリアンはうってつけ。
    意味のないものを生み出し続けるが、なにかをしてる感じは持てる。
    虫も、菊池も、美沙さんも、そう。
    考え始めるとなにもかも自責の念に囚われる人種。
    もちもん主人公もそう。
    揺れ続けている。
    落ち着かない。
    そんな人らの記憶を潜水している気分だった。
    どんどんと暗くなるが不思議と引き込まれる。
    息が続かす戻った頃に、ドミンゴママの一言。
    一緒に寝る人がいたらええ。
    そう。
    人は欲している。
    リリアンもいらない、あったかい、愛情をくれる人。
    戻ってくる。
    E♭

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    2022年06月12日
  • リリアン

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    「リリアン」は主人公の幅広い趣味が全編に渡って展開されるが、ジャズに関するものが楽しめた.というのも小生もウッドベースを持っており、身近にE♭やB♭を見ていたからだ.表題のリリアンが出てくるのはわずかだが、"虫"が編んでいたとの描写の位置付けがよくつかめなかった.「大阪の西は全部海」は大阪を徘徊する話だが、よく把握できなかった.

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    2022年05月04日
  • 東京の生活史

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    とにかく分厚い。カバンには入らない。家で机の上に置いて読まなくてはいけない。それが難点。
    でも、市井の人々のイキイキした話は興味深い。私が知らない東京もあるのだと改めて実感しました。

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    2022年04月24日
  • リリアン

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    ネタバレ

    ゆっくりゆっくりと語られるなんということはないエピソード。
    最初はひとりでシュノーケルを持って海に潜る話。
    それからスナックで知り合った10こ年上の美沙さんとの付き合い、会話。
    美沙さんが好きなリリアンの話、音楽のコードの話、ふたりの昔を思い出す話。
    主人公は音楽で一応食べているけれどやめようかと悩んでいる。

    ひとつひとつのエピソードは脈絡がないようで、物語が進んでいくと何度か同じ話を繰り返しながらつながり意味が編まれていく。ゆっくりのペースを乱さないように。

    物悲しい雰囲気を終始保ちながら少しだけの希望を持って終わったように思う。特に夢も希望もないけれど、ふたりが一緒にいられそうだという

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    2022年03月03日
  • ビニール傘

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    大阪の海沿い、大正あたりで生きる人々の、どうしようもない日々の記憶。
    こういう人たちの生活が「分かる」かどうか、見えるかどうかって、読む人自身の生い立ちに深く関わってくる気がする。
    うら寂しい読後感。滔々と流れる淀川を見に行きたくなる。

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    2022年02月19日
  • ビニール傘

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    第156回芥川賞候補作

    よく聞くラジオ番組で何度か岸政彦さんがゲストだったり、Eテレの「100分で名著」にも講師として出演されていたので、社会学者であるということは知っていた。
    そして、大阪愛はもちろん、「人」というものに対する興味や愛情が本当に深い方なんだなぁ、とその熱量の高いトークから感じていたのだが、小説はまた違った趣きだった。

    読み始めてすぐ、なぜか柳美里さんの「JR上野公園口」が思い浮かんだ。


    私自身は、大阪という街をあまり知らないので、この小説の舞台が大阪のどんな所なのかは、読んで受けたイメージしかない。

    ゴミの吹き溜まりの少しすえた匂いのするような、寂れかけた一角に暮ら

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    2022年02月13日
  • リリアン

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    静謐な夜中の会話劇。リリアンに纏わるエビソードは、誰もが持っているであろう子供時代の後悔したくなるエピソードだと思うのだが、多分に漏れず自分にも想起させる出来事があり、胸がえぐられる。
    大阪の土地勘があればもっと楽しめたと思う。

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    2022年02月06日
  • リリアン

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    コード進行とか、表題のリリアン(編み物)とか、あまり馴染みのないものが主題になってるので、やや入り込めなかったところはあるが、著者のこれまでの小説と同じく、色んなものから切り離されて大阪の街を漂うように生きる男女の姿を淡々と描く。今作はより一層、浮遊感(というか、登場人物がルーツと切り離されている感じ)が強まっているような気がした。

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    2022年01月16日
  • リリアン

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    「ひとりで家を出て飲みにいくとき、誰もいない浜辺でシュノーケルをつけてゆっくりと海に入っていくときの感じに似ているといつも思う」この冒頭に惹かれた。一人暮らしもほとんどしたことないし海に潜ったこともないけど、自虐的孤独感に酔う自分を楽しむみたいなオナニーに似た恍惚感なんやろうか。彼女とのゆるい大阪弁のリフレインされる会話。ジャズもよく知らないが、それも音楽的なように感じる。

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    2021年12月27日
  • リリアン

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    なんだか妙にしみる一冊。
    音楽とお酒と男と女、並べてしまえばありふれた材料なのにこの絶妙な湿度と色気はなんなんだろう。

    ここに惹かれる!と明確にできないけれど、たしかに心惹かれる。

    そして繰り返し読みたくなる。
    特に、寒くて孤独を持て余してしまう夜に。

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    2021年12月23日
  • ビニール傘

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    大阪市に住んでいる、住んでいた人にはすぐ入ってきやすいと思う。地名や駅名がたくさん出てきて、あー、あのあたりなら、ありえるな〜と。
    他の地域の人が読むとまた違うかも?

    全体的に暗い。貧困がテーマかな?
    ありえそうな、転がってそうな話で、短いのですぐに読める。最初、誰が語り手なのか分からないが2章で回収されている。

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    2021年11月28日
  • リリアン

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    大阪の街の華やかさの裏側にあるような懐かしさと、消えゆく古き良き時代をひっそり見送るような小説。リアルな大阪弁のやりとり、ほんのり漂う悲しみとそこに混じる綺麗ななにか。

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    2021年08月25日
  • ビニール傘

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    過去と現在と空想が入り混じって、今がいつで誰と話してるのか分からなくなる本。
    でも登場人物の耐えがたい空洞はしっかり伝わってきて、読んでいるのがつらかった。

    少ない選択肢の中から選ばされて、選んだんだからお前の責任だというプレッシャーに耐えながら生きてるんだな。
    閉塞した生活に物語的な奇跡なんて起きない、この程度が現実だよという感じ。はぁ〜。

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    2021年08月08日
  • 図書室

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    50歳独女が昔を回顧する内容。感情の吐露はなくただ思い出が溢れてくる。今の主人公は傍から見れば独り寂しい大人に見えるかも。だが読者は彼女が内包するものの煌めきを見る。
    もう関わらぬ相手でも互いに影響を与えていたり、何十年経ってもふいに思い出されたり。人の数だけ、連なる人達や思い出がある。それを知らせてくれる本だった。(図書室・給水塔、両方)
    私もこの先、良かった記憶が不意に思い出される大人になれるだろうか。人の人生が知りたい、自分の思い出もたまに取り出して温めたいと思った。人の数だけ物語がある。誰の人生も軽くはないと思わせられた。

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    2021年07月12日
  • 断片的なものの社会学

    購入済み

    ありのまま世界を観察

    筆者の人となり、もしくは社会学者としての態度のようなモノが現れている感じがした。
    筆者のことはコノ本で知った。
    世界のあらゆる物事は表裏一体で有ることを再認識できたような感覚を覚えた。
    ・善/悪
    ・暑/冷
    ・温和/暴力
    何か、変なレビューになってしまいましたが
    僕は面白かった。

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    2021年06月23日
  • 社会学はどこから来てどこへ行くのか

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    現代社会学を巡る3つの潮流である質的調査・量的調査・理論をそれぞれ代表する社会学者に、どちらかというと社会思想史の研究者としての色合いが濃い稲葉振一郎を加え、それぞれの鼎談によって構成された一冊。

    社会学に対して多少なりとも興味関心がある人でないと全く面白く感じない本だとは思うが、登場する社会学者はみな、現代の日本の社会学におけるトップクラスの論客たちであり、知的な刺激は大いに得られる。

    大きく印象に残ったのは2点。
    北田暁大氏については私が大学生だったときから既に若手論客として名を馳せており、何の本に収められた論考だったかは全く忘れてしまったのだが、「社会的な問題にコミットする」という姿

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    2021年06月20日
  • リリアン

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    市井の人々への徹底した聞き取り調査を元に社会構造などを明らかにする社会学者である著者の小説は数冊目であるが、本作はジャズベーシストでもあった著者の過去の経験が盛り込まれており、音楽に関するシーンも含めて楽しめた一冊であった。

    名作『断片的なものの社会学』で示されたように、日常生活のある何気ないモチーフから極めていまイマジナティブな世界を描く出すのが巧い。本作ではタイトルにもある”リリアン”はまさにそうしたモチーフの1つであり、”リリアン”と共に綴られる主人公のジャズベーシストが語る幼少期の痛みに満ちた回想は、こちらの胸をも抉るような痛みを味わわせてくれる。

    また、ジャズセッションのシーンは

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    2021年06月06日
  • 図書室

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    ネタバレ注意
    読書開始日:2021年4月28日
    読書終了日:2021年4月29日
    所感
    図書室
    回想シーンの男の子との会話で懐かしさを覚えた。
    自分の小学生時代の会話もこんな感じだった。
    お互い当時持ち合わせている最小の気遣いだけで、話したいことを次から次へと突拍子も無く話していた気がする。
    まさに作中の2人もそれだった。
    「私たちは、相手が吐き出した息を口から吸い込んでまた吐き出すように、お互いの言葉をやりとりしていた。」この一文で自分の記憶を言語化できた。
    その会話の中心に、「子どものころに一度は訪れる死や地球滅亡への恐怖」を据えることで、さらになつかしさが増す。
    歳を重ねるにつれ、気遣い

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    2021年04月30日
  • ビニール傘

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    ネタバレ

    突然の雨に見舞われ、コンビニで安物のビニール傘を買う。
    傘の見た目や機能性なんてどうでもいい。どうせその場しのぎの傘なんだから。
    また別のビニール傘を買ったっていいんだから。

    他人との関わり方が、そんなビニール傘に似ている。
    なんとなく誰かと話がしたい。相手は別に誰でもいい。でも自分の話をするのは億劫だから、相手の話を聞くだけがいい。

    大阪を舞台にした、寂寥感たっぷりの物語。
    毎日をただ淡々と機械的に過ごす若者たちがとてもリアル。
    雨が降るとすぐに水浸しになるという湿地帯の大阪。でも大阪住みの若者たちの人間関係はドライなんやな。
    途方もない切なさ、寂しさがひたひたと伝わってきて、何度も胸が

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    2021年04月25日