岸政彦のレビュー一覧

  • リリアン

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    なんだか妙にしみる一冊。
    音楽とお酒と男と女、並べてしまえばありふれた材料なのにこの絶妙な湿度と色気はなんなんだろう。

    ここに惹かれる!と明確にできないけれど、たしかに心惹かれる。

    そして繰り返し読みたくなる。
    特に、寒くて孤独を持て余してしまう夜に。

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    2021年12月23日
  • ビニール傘

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    大阪市に住んでいる、住んでいた人にはすぐ入ってきやすいと思う。地名や駅名がたくさん出てきて、あー、あのあたりなら、ありえるな〜と。
    他の地域の人が読むとまた違うかも?

    全体的に暗い。貧困がテーマかな?
    ありえそうな、転がってそうな話で、短いのですぐに読める。最初、誰が語り手なのか分からないが2章で回収されている。

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    2021年11月28日
  • リリアン

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    大阪の街の華やかさの裏側にあるような懐かしさと、消えゆく古き良き時代をひっそり見送るような小説。リアルな大阪弁のやりとり、ほんのり漂う悲しみとそこに混じる綺麗ななにか。

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    2021年08月25日
  • ビニール傘

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    過去と現在と空想が入り混じって、今がいつで誰と話してるのか分からなくなる本。
    でも登場人物の耐えがたい空洞はしっかり伝わってきて、読んでいるのがつらかった。

    少ない選択肢の中から選ばされて、選んだんだからお前の責任だというプレッシャーに耐えながら生きてるんだな。
    閉塞した生活に物語的な奇跡なんて起きない、この程度が現実だよという感じ。はぁ〜。

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    2021年08月08日
  • 図書室

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    50歳独女が昔を回顧する内容。感情の吐露はなくただ思い出が溢れてくる。今の主人公は傍から見れば独り寂しい大人に見えるかも。だが読者は彼女が内包するものの煌めきを見る。
    もう関わらぬ相手でも互いに影響を与えていたり、何十年経ってもふいに思い出されたり。人の数だけ、連なる人達や思い出がある。それを知らせてくれる本だった。(図書室・給水塔、両方)
    私もこの先、良かった記憶が不意に思い出される大人になれるだろうか。人の人生が知りたい、自分の思い出もたまに取り出して温めたいと思った。人の数だけ物語がある。誰の人生も軽くはないと思わせられた。

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    2021年07月12日
  • 断片的なものの社会学

    購入済み

    ありのまま世界を観察

    筆者の人となり、もしくは社会学者としての態度のようなモノが現れている感じがした。
    筆者のことはコノ本で知った。
    世界のあらゆる物事は表裏一体で有ることを再認識できたような感覚を覚えた。
    ・善/悪
    ・暑/冷
    ・温和/暴力
    何か、変なレビューになってしまいましたが
    僕は面白かった。

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    2021年06月23日
  • 社会学はどこから来てどこへ行くのか

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    現代社会学を巡る3つの潮流である質的調査・量的調査・理論をそれぞれ代表する社会学者に、どちらかというと社会思想史の研究者としての色合いが濃い稲葉振一郎を加え、それぞれの鼎談によって構成された一冊。

    社会学に対して多少なりとも興味関心がある人でないと全く面白く感じない本だとは思うが、登場する社会学者はみな、現代の日本の社会学におけるトップクラスの論客たちであり、知的な刺激は大いに得られる。

    大きく印象に残ったのは2点。
    北田暁大氏については私が大学生だったときから既に若手論客として名を馳せており、何の本に収められた論考だったかは全く忘れてしまったのだが、「社会的な問題にコミットする」という姿

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    2021年06月20日
  • リリアン

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    市井の人々への徹底した聞き取り調査を元に社会構造などを明らかにする社会学者である著者の小説は数冊目であるが、本作はジャズベーシストでもあった著者の過去の経験が盛り込まれており、音楽に関するシーンも含めて楽しめた一冊であった。

    名作『断片的なものの社会学』で示されたように、日常生活のある何気ないモチーフから極めていまイマジナティブな世界を描く出すのが巧い。本作ではタイトルにもある”リリアン”はまさにそうしたモチーフの1つであり、”リリアン”と共に綴られる主人公のジャズベーシストが語る幼少期の痛みに満ちた回想は、こちらの胸をも抉るような痛みを味わわせてくれる。

    また、ジャズセッションのシーンは

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    2021年06月06日
  • 図書室

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    ネタバレ注意
    読書開始日:2021年4月28日
    読書終了日:2021年4月29日
    所感
    図書室
    回想シーンの男の子との会話で懐かしさを覚えた。
    自分の小学生時代の会話もこんな感じだった。
    お互い当時持ち合わせている最小の気遣いだけで、話したいことを次から次へと突拍子も無く話していた気がする。
    まさに作中の2人もそれだった。
    「私たちは、相手が吐き出した息を口から吸い込んでまた吐き出すように、お互いの言葉をやりとりしていた。」この一文で自分の記憶を言語化できた。
    その会話の中心に、「子どものころに一度は訪れる死や地球滅亡への恐怖」を据えることで、さらになつかしさが増す。
    歳を重ねるにつれ、気遣い

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    2021年04月30日
  • ビニール傘

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    ネタバレ

    突然の雨に見舞われ、コンビニで安物のビニール傘を買う。
    傘の見た目や機能性なんてどうでもいい。どうせその場しのぎの傘なんだから。
    また別のビニール傘を買ったっていいんだから。

    他人との関わり方が、そんなビニール傘に似ている。
    なんとなく誰かと話がしたい。相手は別に誰でもいい。でも自分の話をするのは億劫だから、相手の話を聞くだけがいい。

    大阪を舞台にした、寂寥感たっぷりの物語。
    毎日をただ淡々と機械的に過ごす若者たちがとてもリアル。
    雨が降るとすぐに水浸しになるという湿地帯の大阪。でも大阪住みの若者たちの人間関係はドライなんやな。
    途方もない切なさ、寂しさがひたひたと伝わってきて、何度も胸が

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    2021年04月25日
  • ビニール傘

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    薄い本で1時間半足らずで読み終えた。
    心に寂しさがありながらも薄い膜で多いながら過ごしている、どこにでもありそうな日常が文学的に綴られ細かい描写も多く没入した。

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    2021年01月25日
  • 質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学

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    この本を読むのは2回目だ。正直に言うと、読んでいる途中でなんだか見覚えがあるなと感じていて、途中で既に一度読んでいたことを思い出した。初めて読んだのは一年くらい前だったと思う(後で調べたら二年前だった・・)。質的調査の入門書として読んでいて、紹介されている参考文献を何冊か購入するくらいにはちゃんと興味も持っていた。ただし、購入した参考文献は未だ積読になっていて、今回の読書でさらに本書のブックガイドより数冊購入してしまった。
    そもそもは、昨今の流行もあり、量的調査分析に興味があった。調査というか、データ分析?って何をするのレベルで関心があり、調査法の入門書や統計について何冊か読んでいた。量的調

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    2020年09月16日
  • ビニール傘

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    大阪が好きだ。
    暮らしたのは累計で10年足らずだし、孤独と苦悩の思い出しかないのに、それでも好きだ。
    たぶん、大阪という街が、自由であり、終末であるからだと思う。

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    2020年09月08日
  • 社会学はどこから来てどこへ行くのか

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    凄いボリュームの本なので圧倒されてしまいますが、頑張って読んでみて欲しい本です。岸政彦さんの文章から感じるやさしさが好きで、それがいったいどこからきているのか少しわかった様な気がしました。

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    2020年03月24日
  • 図書室

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    定職も貯金もある。一人暮らしだけど不満はない。思い出されるのは、小学生の頃に通った、あの古い公民館の小さな図書室のこと―

    ひとりの女性の追憶を描いた中篇「図書室」と自伝エッセイ「給水塔」の2編収録。


    まるで自分史のようだと思ってしまった。どうしてあの頃の私の気持ちも、今の私の気持ちも、こんなによく知っているの?と驚いてしまうくらい。


    これと言った期待も希望も無いのに、「求められている」というステイタス欲しさに惚れた腫れたを経て、40にしてひとり暮らしを満喫する主人公。

    胸いっぱいに感じる自由と孤独が、子どもの頃、公民館の図書室で覚えたソレと重なる。


    『クラスの誰も知らない場所で

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    2020年03月16日
  • ビニール傘

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    ネタバレ

    「背中の月」の方が好きでしたね。
    でも「ビニール傘」の世界を読んだから、そちらの方が好きと感じたのかも。
    …いかにも芥川賞候補という作品でした。
    作中に何度も出てくるカップ麺のゴミが二つの話を繋げ、静かなやりきれなさどうにもならなさ、虚しさを顕在化させているかのよう。

    (引用)「妙な話だが、幸せなとき、楽しいとき、遊びにいっているときよりも、急な葬式が入ったとき、人間関係でめんどくさいことがあったとき、仕事上のトラブルに巻き込まれたとき、ああ俺たちはふたりなんだなと思う。」というセンテンスに泣きそうになりましたね。
    その時二人だった、今はどうしょうもなく一人だということの孤絶感。

    「不在」

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    2019年10月23日
  • ビニール傘

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    これは大阪が舞台でなくてはならない作品。ここまで描けるのかと思う程の丁寧な人物描写。筆者は社会学者として多くの市井の方々と接して来られた経験があるからこそ描けるのでしょうか。。。

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    2019年08月02日
  • 社会学はどこから来てどこへ行くのか

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    社会学を専攻していないとわからない”雰囲気”はあるものの,問題の骨子は刺激的。

    たとえば,事例研究における代表性をどう考えるか?というトピックは社会学だけに留まらないであろう。

    対話記録であるため,会話感覚で読めるのも本書の良いところ。サクサク読めてしまう。

    しかし,内容の深みはあるので,しばらく知識をつけた後に読み返すと,また違った感想を抱くような気がする。

    ちなみに,著者らの情報量(知識)がすごすぎて圧巻,もっと勉強しなければと思わされました。

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    2019年04月17日
  • 質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学

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    岸雅彦、石岡丈昇、丸山里美
    中野卓、桜井厚、谷富夫の理論を通して、語りは「事実」か「物語」という問題を洗い直す下りはいずれ再読する

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    2018年11月15日
  • 断片的なものの社会学

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    物や出来事について、過度に意味付けをしたり結び付けたりせずに、ただそのものとして見る。
    自分もどちらかというとそうだから、共感できた。

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    2025年12月15日