岸政彦のレビュー一覧
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定職も貯金もある。一人暮らしだけど不満はない。思い出されるのは、小学生の頃に通った、あの古い公民館の小さな図書室のこと―
ひとりの女性の追憶を描いた中篇「図書室」と自伝エッセイ「給水塔」の2編収録。
まるで自分史のようだと思ってしまった。どうしてあの頃の私の気持ちも、今の私の気持ちも、こんなによく知っているの?と驚いてしまうくらい。
これと言った期待も希望も無いのに、「求められている」というステイタス欲しさに惚れた腫れたを経て、40にしてひとり暮らしを満喫する主人公。
胸いっぱいに感じる自由と孤独が、子どもの頃、公民館の図書室で覚えたソレと重なる。
『クラスの誰も知らない場所で -
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意味づけや解釈から解放された、ただそこに偶然あるものとして事物をみたいという気持ちがずっとあったので安らぎになるような話は多かった
けどこの作者さんはかすかに希望を持たせるスタイルなので、そこが少し私とはズレていた
「だからどうした、ということではないが、ただそれでも、そういうことがある、ということはできる」
いうことができてどうなるのと諦めてしまう反抗期がまだ残存しているので。
それでも心地よさはある
私たちの人生はいくつものストーリーが重なってできており、意味を成す流れが先に存在しそこに矛盾しないように整えられる側面も大きいが、そのストーリーの手中から漏れる無意味のかけらが、そこにただ在 -
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社会学者の氏がさまざまな調査を通じて見聞した、断片的なエピソードたち。印象的だったものを書き留めておこう。「父親が収監され、母親が蒸発し、子どもたちが施設に預けられ、無人となったその部屋だが、その後も悪臭や害虫の苦情が何度もくり返され、マンションの管理会社の立ち会いのもとで、自治会の方が合鍵でその部屋の扉を開いた。そこで見たのは、家具も何もない、からっぽの、きれいな部屋だったという」「真っ暗な路地裏で、ひとりの老人が近寄ってくるのが見えた。すぐ目の前に来たときに気付いたのだが、その老人は全裸だった。手に小さな風呂桶を持っていた。全裸で銭湯にいくことは、これ以上ないほど合理的なことなのだが、その
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なんとなく、ただなんとなく、タイトルに惹かれて読んでみた。
……これがまた少し難しい。
でも、きっと、大阪のどこかにこういう人たちがいて、生きてて、でも死んだような生活で……
今この人たちはどうしてるんだろう……
そんなことを、読み終えた時に思った。
私の地元は大阪に近く、小説の中に出てくる地名もなんとなくそこの雰囲気がわかる。
大阪ってキラキラしてる部分もあるし、澱んで暗い灰色の世界もある。
その中で、今日も生きてる人たちがいる。
…………この本を読んで、何か得たのかと言われると、難しい。でも、“何か”を感じたような気はする。
そんな不思議な本だった。