岸政彦のレビュー一覧
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意味づけや解釈から解放された、ただそこに偶然あるものとして事物をみたいという気持ちがずっとあったので安らぎになるような話は多かった
けどこの作者さんはかすかに希望を持たせるスタイルなので、そこが少し私とはズレていた
「だからどうした、ということではないが、ただそれでも、そういうことがある、ということはできる」
いうことができてどうなるのと諦めてしまう反抗期がまだ残存しているので。
それでも心地よさはある
私たちの人生はいくつものストーリーが重なってできており、意味を成す流れが先に存在しそこに矛盾しないように整えられる側面も大きいが、そのストーリーの手中から漏れる無意味のかけらが、そこにただ在 -
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社会学者の氏がさまざまな調査を通じて見聞した、断片的なエピソードたち。印象的だったものを書き留めておこう。「父親が収監され、母親が蒸発し、子どもたちが施設に預けられ、無人となったその部屋だが、その後も悪臭や害虫の苦情が何度もくり返され、マンションの管理会社の立ち会いのもとで、自治会の方が合鍵でその部屋の扉を開いた。そこで見たのは、家具も何もない、からっぽの、きれいな部屋だったという」「真っ暗な路地裏で、ひとりの老人が近寄ってくるのが見えた。すぐ目の前に来たときに気付いたのだが、その老人は全裸だった。手に小さな風呂桶を持っていた。全裸で銭湯にいくことは、これ以上ないほど合理的なことなのだが、その
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なんとなく、ただなんとなく、タイトルに惹かれて読んでみた。
……これがまた少し難しい。
でも、きっと、大阪のどこかにこういう人たちがいて、生きてて、でも死んだような生活で……
今この人たちはどうしてるんだろう……
そんなことを、読み終えた時に思った。
私の地元は大阪に近く、小説の中に出てくる地名もなんとなくそこの雰囲気がわかる。
大阪ってキラキラしてる部分もあるし、澱んで暗い灰色の世界もある。
その中で、今日も生きてる人たちがいる。
…………この本を読んで、何か得たのかと言われると、難しい。でも、“何か”を感じたような気はする。
そんな不思議な本だった。 -
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社会学における「生活史調査」とは、調査者がある属性における個人の人生を記述するという要領で、社会現象と人間行動の関係性を紐解きながら理解しようとするもの。本書が特徴的なのは、この手法に長けた研究者が、まるでその調査方法の被験者のごとく、語らせられる。調査の難しさとかインパクトあるエピソードとか、調査において重要視している事とか。
ある人は沖縄のヤンキーの生態を理解する為に、くっついて回るだけではなく、自らその集団に入り込んで土建業でも働いてしまう。参与観察のスタイルだ。他にも、ボクサーの対戦相手を派遣するフィリピンのボクシングジムに入り込んだり、沖縄の風俗女性から話を聞いたり。
この本だけ -
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なんとなくの再読。またしてもなんとなくの雰囲気で読んでしまったような気がする。感想があんまりまとまらない。
2人のインタビュー(演歌の弾き語りのおじいさん、北九州出身の女性)は、人生のいろいろさ、世の中は多様な断片の集積であることを感じる事ができた。
あとは幾分もやもやした点がある。多様であることを最重要視しながらも、社会が要請する価値観に無意識のうちに従って考える事が、多様性に対する暴力になりうるところで、著者は止まってしまう記述が複数回登場し、そこに正直もやっとした。筆者はマイノリティに対する暴力の可能性を繊細に考えているにも関わらず、アウティングの部分ももやもやした。うまく言葉にでき -
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社会学者の岸政彦さんと6人の研究者との対談をまとめた本。社会学者として調査対象とどのように関わってきたのか、その中でなにを感じていたのか書かれている。
以下気になったところメモ
・社会学の目的、単に問題解決を目指すのではなく、まず「理解したい」。社会学はリカバリーやサルベージのような、答えを出すものではなくて、すでにあるものの価値を見つめ直す、拾い上げる学問。
・中動態とは「自分が行為の主体でもあり、同時にその行為の影響を受けている」という状態。つまり、「する」と「される」が切り分けられないような行為。(部落問題や差別、福祉、貧困といった社会学的テーマでも、「自分のせいなのか」「社会のせい