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Posted by ブクログ
賑やかで暖かい場所にいると、後でひとりになったときの寒さが際立つ。
舞台が大阪であることで哀愁が増す。
妻を亡くした男性が主人公の「背中の月」での独白、
「また行きたいね、あの店なんだっけと言いながら俺たちは結局、あの街にも、あの店にも、あの海にも、二度と行くことはなかった。」
に、永田和宏の
「そのうちに行こうといつも言いながら海津のさくら余呉の雪海」
という歌を思い出した。
脳内でずっと自分に、亡き妻に話しかけているような文が頭に染み込んでいくように感じた。
読み終わって自分がいる場所を確かめる。
ここでないどこかに行きたいと思う気持ち、
でもここだって一度離れればもう二度と戻れない場所になるかもしれないのだ。
そしてそのきっかけは、ドアポストに鍵を入れるというだけで引き金を引けてしまう。
波打ち際の鍵は昔誰かが落とした鍵なのか。
さまざまな人の記憶が重なり混ざり合う。
「二度とない」ことへの焦燥や恐れはいつまでも人間の共通の認識なのだろう。
誰もが、失うことはないかのように生きている。
でもそれは人間が生きている限り必ず訪れる。
喪失を喪失としてそのまま取り出して見せてくれたような物語だった。
ときどき取り出して眺めたい。
悲しみに慣れておくため。優しい自分であるため。
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