岸政彦のレビュー一覧

  • にがにが日記

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    にがにが日記は、ハッと気付かされたり、気付かされたりすることもあったが、対で向かいあう(読み進める)ことがむずかしい。恐らく、連載のペースで読むのが本当にいい匙加減だったのだろうと思う。
    おはぎ日記は、生々しい記憶が呼び起こされたけど、命の煌めきや心配する気持ち、生を強く感じられる話であった。読み進めて悲しいけど、読めて良かったと思う。

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    2024年02月23日
  • 図書室

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    誰にでもありそうな思い出の断片を淡々と綴ったストーリーが、どうしてこんなに惹きつけられるのだろうか。
    この人の作品を読むとつくづく思う。

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    2024年02月16日
  • ビニール傘

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    単行本にしては(物理的に)妙に軽い気がして、語り手の空虚さ心許なさがうつっているように思えてくる。余白の多い装丁も。

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    2024年01月21日
  • にがにが日記

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    岸政彦の本は結構読んでて、特に「断片的なものの社会学」に感銘を受けたのだ
    社会は街の人ひとりひとりによって成り立っているんだなぁという実感というか。

    で、この本は岸政彦の日記なのだが、面白い。日記本でこんなに面白かったのは初めてだ。植本一子でもここまではなかった。

    それは、岸政彦の本が好きだったからだろう。
    この人こんな風に考えて生きてんのか、と笑
    尊敬する人の頭の中を覗いてる感覚

    おはぎ日記は泣いた。

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    2023年12月27日
  • ビニール傘

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    大阪というと賑やかで華やかで雑多なイメージですけど、これは、その裏にある陰の大阪だと思いました
    それなりに生きられているのに、頼りない、流されている感じが頭から消えない、
    一見すると出口のないような閉塞感が漂っているようですが、市井の人たちが、誰かや誰かと過ごした思い出と寄り添いながら、静かに暮らしている、両編ともじんわりと体温を感じるような話でした
    視点が変わってちょっとわからなくなるようなところもあったけど、それも誰それの物語と区切らない、全部誰かの物語の続きというふうに捉えてみました

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    2023年11月11日
  • 図書室

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    二つの作品が収録されてます。大きな事件が起きるというより、訥々と、何があったか、どんな場所で、どんな人がいたかとかが語られていきます。力みのない書き振りのためか、水が流れるとか風が吹くみたいな自然な、独特の落ちつく感じがありました。

    日々の生活の中での、何気ない、でも大事な思い出とかワンシーン、ってあるよなあと思いました。

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    2023年09月10日
  • リリアン

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    さらさらと流れるように
    身体の中に入ってくる文章で、ほんとにほんとに
    美しくて、日常が違って見えます。

    美沙さんとの話、もうちょっと聴きたかった!

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    2023年08月24日
  • 図書室

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    中編が2つ.表題作は二人の男女の小学生が公民館の図書室で出会い、本からの知識に沿った人類滅亡への対応行動を淡々と描いている.大晦日に食料として缶詰を買い込んで河川敷の小屋で夜を過ごすものの発見され連れ戻される.小屋での話に図書室を作ることが出てくるが、意図のつかめないままだった.「給水塔」は大阪に惚れた男の話で著者の回想みたいな感じだ.ウッドベースが出てきて驚いた.私も持っているからだ.バブル時代の浮かれた話やバイトで飯場にいたことや子猫の話などエピソードが次々に現れて楽しめた.昔ピカピカだった町が寂れてしまう現実を的確に描写している点が良かった.

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    2023年02月03日
  • リリアン

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    まるで春の暖かく心地の良い風を頬に受けているような優しく安心する作品です。
    大阪を舞台にした都会的で洗練された情景が目に浮かび、登場人物達の大阪弁での掛け合いがとても魅力的なでした。
    ミステリーやサスペンスばかり読んでいる私にとって一度心と身体を休める事ができた1冊です。

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    2023年01月31日
  • リリアン

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    大阪弁の語りが心地よい。男女の会話、大阪弁だとどっちがしゃべってるのか読んでいると時々わからなくなる。文字にすると同じなのがいい。二人で話してると一方が話した内容を受けて一方が思い出した内容を話したりしてジャズのようだなーと思ったり。

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    2022年08月10日
  • 図書室

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    社会学者・岸政彦による小説「図書室」と、自伝的エッセイ「給水塔」からなる。個人的に「給水塔」が面白く、この作品があることで、「図書室」の面白さが増すような気がした。「給水塔」の最後が、そのまま「図書室」につながっていく。「図書室」は小説としては読みやすいが、やや淡泊。もっともっとドラマを込められるだろうが、そこは社会学者による小説、ということでかろうじて我慢できる。たとえ小学校高学年であったとしても、男女が小屋にこもったら、肉体的な触れ合いの、そのヒリヒリ感ぐらいもっと描けよ、と突っ込みたくなったが、まあいいか。これが庶民ということか。

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    2022年07月26日
  • リリアン

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    読書開始日:2022年6月3日
    読書終了日:2022年6月11日
    所感
    【リリアン】
    人間はなにかしていないと怖い。
    リリアンはうってつけ。
    意味のないものを生み出し続けるが、なにかをしてる感じは持てる。
    虫も、菊池も、美沙さんも、そう。
    考え始めるとなにもかも自責の念に囚われる人種。
    もちもん主人公もそう。
    揺れ続けている。
    落ち着かない。
    そんな人らの記憶を潜水している気分だった。
    どんどんと暗くなるが不思議と引き込まれる。
    息が続かす戻った頃に、ドミンゴママの一言。
    一緒に寝る人がいたらええ。
    そう。
    人は欲している。
    リリアンもいらない、あったかい、愛情をくれる人。
    戻ってくる。
    E♭

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    2022年06月12日
  • リリアン

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    「リリアン」は主人公の幅広い趣味が全編に渡って展開されるが、ジャズに関するものが楽しめた.というのも小生もウッドベースを持っており、身近にE♭やB♭を見ていたからだ.表題のリリアンが出てくるのはわずかだが、"虫"が編んでいたとの描写の位置付けがよくつかめなかった.「大阪の西は全部海」は大阪を徘徊する話だが、よく把握できなかった.

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    2022年05月04日
  • 東京の生活史

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    とにかく分厚い。カバンには入らない。家で机の上に置いて読まなくてはいけない。それが難点。
    でも、市井の人々のイキイキした話は興味深い。私が知らない東京もあるのだと改めて実感しました。

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    2022年04月24日
  • リリアン

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    ネタバレ

    ゆっくりゆっくりと語られるなんということはないエピソード。
    最初はひとりでシュノーケルを持って海に潜る話。
    それからスナックで知り合った10こ年上の美沙さんとの付き合い、会話。
    美沙さんが好きなリリアンの話、音楽のコードの話、ふたりの昔を思い出す話。
    主人公は音楽で一応食べているけれどやめようかと悩んでいる。

    ひとつひとつのエピソードは脈絡がないようで、物語が進んでいくと何度か同じ話を繰り返しながらつながり意味が編まれていく。ゆっくりのペースを乱さないように。

    物悲しい雰囲気を終始保ちながら少しだけの希望を持って終わったように思う。特に夢も希望もないけれど、ふたりが一緒にいられそうだという

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    2022年03月03日
  • ビニール傘

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    大阪の海沿い、大正あたりで生きる人々の、どうしようもない日々の記憶。
    こういう人たちの生活が「分かる」かどうか、見えるかどうかって、読む人自身の生い立ちに深く関わってくる気がする。
    うら寂しい読後感。滔々と流れる淀川を見に行きたくなる。

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    2022年02月19日
  • ビニール傘

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    第156回芥川賞候補作

    よく聞くラジオ番組で何度か岸政彦さんがゲストだったり、Eテレの「100分で名著」にも講師として出演されていたので、社会学者であるということは知っていた。
    そして、大阪愛はもちろん、「人」というものに対する興味や愛情が本当に深い方なんだなぁ、とその熱量の高いトークから感じていたのだが、小説はまた違った趣きだった。

    読み始めてすぐ、なぜか柳美里さんの「JR上野公園口」が思い浮かんだ。


    私自身は、大阪という街をあまり知らないので、この小説の舞台が大阪のどんな所なのかは、読んで受けたイメージしかない。

    ゴミの吹き溜まりの少しすえた匂いのするような、寂れかけた一角に暮ら

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    2022年02月13日
  • リリアン

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    静謐な夜中の会話劇。リリアンに纏わるエビソードは、誰もが持っているであろう子供時代の後悔したくなるエピソードだと思うのだが、多分に漏れず自分にも想起させる出来事があり、胸がえぐられる。
    大阪の土地勘があればもっと楽しめたと思う。

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    2022年02月06日
  • リリアン

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    コード進行とか、表題のリリアン(編み物)とか、あまり馴染みのないものが主題になってるので、やや入り込めなかったところはあるが、著者のこれまでの小説と同じく、色んなものから切り離されて大阪の街を漂うように生きる男女の姿を淡々と描く。今作はより一層、浮遊感(というか、登場人物がルーツと切り離されている感じ)が強まっているような気がした。

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    2022年01月16日
  • リリアン

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    「ひとりで家を出て飲みにいくとき、誰もいない浜辺でシュノーケルをつけてゆっくりと海に入っていくときの感じに似ているといつも思う」この冒頭に惹かれた。一人暮らしもほとんどしたことないし海に潜ったこともないけど、自虐的孤独感に酔う自分を楽しむみたいなオナニーに似た恍惚感なんやろうか。彼女とのゆるい大阪弁のリフレインされる会話。ジャズもよく知らないが、それも音楽的なように感じる。

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    2021年12月27日