岸政彦のレビュー一覧

  • 大阪
    ・私たちは自分というものに対して、憧れを持つことができない。自分自身に憧れる、ということは、たんに実際に難しいというだけでなく、どこか「文法的に不可能」なところがある。(218)
    ・私たちの散歩には、終わりはない。私たちは永遠に満たされない憧れを抱きながら、西九条や江坂や堺東や放出や布施を歩き続ける...続きを読む
  • リリアン
    「ひとりで家を出て飲みにいくとき、誰もいない浜辺でシュノーケルをつけてゆっくりと海に入っていくときの感じに似ているといつも思う」この冒頭に惹かれた。一人暮らしもほとんどしたことないし海に潜ったこともないけど、自虐的孤独感に酔う自分を楽しむみたいなオナニーに似た恍惚感なんやろうか。彼女とのゆるい大阪弁...続きを読む
  • リリアン
    なんだか妙にしみる一冊。
    音楽とお酒と男と女、並べてしまえばありふれた材料なのにこの絶妙な湿度と色気はなんなんだろう。

    ここに惹かれる!と明確にできないけれど、たしかに心惹かれる。

    そして繰り返し読みたくなる。
    特に、寒くて孤独を持て余してしまう夜に。

  • 大阪
    大阪生まれの柴崎友香と、大学入学とともに大阪在住となった岸政彦の二人が交互に綴る大阪をめぐるエッセイ。
    柴崎パートは大阪で育った具体的な思い出が語られ、大阪の街が柴崎の人間形成に濃厚に影響したことが溢れている。この人の原点は大正区にあり、やがてミナミを包摂するようになり、東京に住む今でもそこから時代...続きを読む
  • ビニール傘
    大阪市に住んでいる、住んでいた人にはすぐ入ってきやすいと思う。地名や駅名がたくさん出てきて、あー、あのあたりなら、ありえるな〜と。
    他の地域の人が読むとまた違うかも?

    全体的に暗い。貧困がテーマかな?
    ありえそうな、転がってそうな話で、短いのですぐに読める。最初、誰が語り手なのか分からないが2章で...続きを読む
  • 大阪
    21/10/02
    私は大阪で生まれ育ったあと、京都で学び東京で働いている。もう郷愁を覚えることもないし、好きとも言い切れず、愛着も薄くて、岸さんや柴崎さんの語る大阪は知っているようで知らないような、不思議な距離感だった。ただ、大事ではあるしよいまちであってほしい、くたびれていくところはみたくないなぁ...続きを読む
  • 大阪
    わたし出生地が江坂で、大阪には計8年くらい住んでたんだけど、通天閣は旅行で行くまで見たことなかった。
    やっぱあれは観光客が行くやつなんだな〜と思って、わたしにも大阪のエキスが少し残っているみたいで、うれしかった。(両親とも九州出身だけど)
    だからわたしは大阪が嫌いとかももちろんないし、東京が一番偉い...続きを読む
  • 大阪
     大阪で生まれた私にとって(東京を知らない私にとって)そんなふうに大阪のことをみんな思っているんだと、今まで気づかなかったようなことがたくさんあり面白かったです。
     外国人の方が日本人はみんな着物を着ているみたいな感覚と同じようなことを、大阪の人はと思っておられることがたくさんあるのでしょうね。大阪...続きを読む
  • 大阪
    大阪にゆかりのある二人がその思い出を語るエッセイ。岸さんは世代がほんの少しずれていはいるが大学や住んだ場所に共通点があって、柴崎さんは住んでいた場所はずれているけれど世代がほぼ同じ。あの頃に同世代の人はこんなことをしていたんだと自分の若い頃に記憶を馳せ懐かしんだ。
    大阪の街にある他にはない独特のエネ...続きを読む
  • リリアン
    大阪の街の華やかさの裏側にあるような懐かしさと、消えゆく古き良き時代をひっそり見送るような小説。リアルな大阪弁のやりとり、ほんのり漂う悲しみとそこに混じる綺麗ななにか。
  • ビニール傘
    過去と現在と空想が入り混じって、今がいつで誰と話してるのか分からなくなる本。
    でも登場人物の耐えがたい空洞はしっかり伝わってきて、読んでいるのがつらかった。

    少ない選択肢の中から選ばされて、選んだんだからお前の責任だというプレッシャーに耐えながら生きてるんだな。
    閉塞した生活に物語的な奇跡なんて起...続きを読む
  • 大阪
    大阪はもしかしたら日本で1番好きな街で、一見コテコテのイメージに塗り固められているけど一筋縄ではいかない魅力があるなと、3年ほど住んでた間によく感じていた。この本ほどは到底歩けなかったけど、散歩がたのしい。

    大きい繁華街が二つ、という都市の構造も面白いし、なによりエリアごとに特色のある飲み文化が醸...続きを読む
  • 図書室
    50歳独女が昔を回顧する内容。感情の吐露はなくただ思い出が溢れてくる。今の主人公は傍から見れば独り寂しい大人に見えるかも。だが読者は彼女が内包するものの煌めきを見る。
    もう関わらぬ相手でも互いに影響を与えていたり、何十年経ってもふいに思い出されたり。人の数だけ、連なる人達や思い出がある。それを知らせ...続きを読む
  • 大阪
    本の帯の惹句には『大阪に来た人、大阪を出た人』。大阪へやって来たのは社会学者 岸政彦さん。‘67年名古屋市生まれ、大学入学時に大阪へ。上新庄の下宿を皮切りに以来大阪を転々。大阪を出た人は作家 柴崎友香さん。‘73年大阪生まれ、約15年前に仕事で大阪を離れ、現在東京在住。

    このふたりによる【大阪】を...続きを読む
  • 断片的なものの社会学

    ありのまま世界を観察

    筆者の人となり、もしくは社会学者としての態度のようなモノが現れている感じがした。
    筆者のことはコノ本で知った。
    世界のあらゆる物事は表裏一体で有ることを再認識できたような感覚を覚えた。
    ・善/悪
    ・暑/冷
    ・温和/暴力
    何か、変なレビューになってしまいましたが
    僕は面白かった。
  • 社会学はどこから来てどこへ行くのか
    現代社会学を巡る3つの潮流である質的調査・量的調査・理論をそれぞれ代表する社会学者に、どちらかというと社会思想史の研究者としての色合いが濃い稲葉振一郎を加え、それぞれの鼎談によって構成された一冊。

    社会学に対して多少なりとも興味関心がある人でないと全く面白く感じない本だとは思うが、登場する社会学者...続きを読む
  • リリアン
    市井の人々への徹底した聞き取り調査を元に社会構造などを明らかにする社会学者である著者の小説は数冊目であるが、本作はジャズベーシストでもあった著者の過去の経験が盛り込まれており、音楽に関するシーンも含めて楽しめた一冊であった。

    名作『断片的なものの社会学』で示されたように、日常生活のある何気ないモチ...続きを読む
  • 図書室
    ネタバレ注意
    読書開始日:2021年4月28日
    読書終了日:2021年4月29日
    所感
    図書室
    回想シーンの男の子との会話で懐かしさを覚えた。
    自分の小学生時代の会話もこんな感じだった。
    お互い当時持ち合わせている最小の気遣いだけで、話したいことを次から次へと突拍子も無く話していた気がする。
    まさに...続きを読む
  • リリアン
    劇的な何かが起きるわけではないけど、それもそれで悪くないなと思った。
    こういう何気ないことをお互いに心地のよいテンポで話せる関係、いいな。
    一見何でもないような日常のお話、個人的には好きです。
  • ビニール傘
    突然の雨に見舞われ、コンビニで安物のビニール傘を買う。
    傘の見た目や機能性なんてどうでもいい。どうせその場しのぎの傘なんだから。
    また別のビニール傘を買ったっていいんだから。

    他人との関わり方が、そんなビニール傘に似ている。
    なんとなく誰かと話がしたい。相手は別に誰でもいい。でも自分の話をするのは...続きを読む