【感想・ネタバレ】図書室のレビュー

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Posted by ブクログ

岸政彦先生の小説をまた読んだ。岸先生、生活史を研究しているだけあって綴られる話もただひたすらにそこに生きる人たちが日々の生活を営んでいて、そのなかで出会う人や些細な出来事を書いてくれている
そういう話を読んでいると特に何のおもしろみもないような自分の1日や1週間、一ヶ月がこの本に綴られている内容のように苛烈ではなないけれどおもしろいことなのかもしれないと思わせてくれる
自分がただ営む生活も小説のように大切に読まれるような、そういうものだと想ってもいいのだ。なんとか生きている自分のことをもえらいよ、よくやってるよと言いたくなってくるのだ
また「給水塔」という書下ろしエッセイも入っているのだけど、書いたタイミングのためにすでに亡くなった岸先生の愛猫のことが書いてあり、先に「にがにが日記」にてその愛猫への愛情を知っていたからこそ余計に胸にきた…

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2024年04月12日

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ネタバレ

2部構成の話になっている
1部目は「図書室」というタイトル
大阪の別々の学校出身の小学生2人が、世界から人がいなくなって自分達2人しか生きていないことにして、スーパーで缶詰を買い淀川の河川敷にある小屋でお話しする話
特にこれといった内容は無いけど、2部で著者が何もないことを、特別じゃないことを、書き出したいって言うことをお話しされていて、
何もないことだけど実はそれぞれの人生の背景に何かがあったり
文字の羅列の出来事からは想像もできないことが人の歴史にあったりするから
一部を一発目に読んでうーんと思ったけど、2部の「給水塔」を読むと1部をもっと違う読み方で読めると思った


2部「給水塔」めっちゃ面白い
っていうのも著者岸さんの学生時代から今に至るまでの話だから。
なんで著者の話が面白いかっていうと、
私も著者と同じく「大阪」に
「東京的なものが嫌いで、もっとアジア的なもの、もっと風変わりなもの、もっと混沌とした、危険な、自分勝手なもの」(p.117)を求めてるからだと思った

大阪をすっごい美化?してるけど
でも、1部の話って大阪の話やん?
面白くないってさっき自分言ったじゃん?
完全に見落としてた、今気づいた
ーーーー
それと、岸さんがPodcastに出てたときの番組で、司会の女性が「世界っていうけど、それってその場所のローカルなんだよね、ローカルはグローバルだし、グローバルはローカル」っていうの聞いて、ちょっと感動した
他者(人にかかわらず)に変な期待抱くのやめるようになったかもしれない
ーーーー

作中で紹介していた「小松左京」の「少女を憎む」気になった、sf 作家みたい 日本沈没も書いてるんや



他にも色々と解決策が思いつきました。
あとやっぱりエッセイ好きだな

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2022年12月11日

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ひとりの女性のノスタルジックな過去の追憶。ふたりの空間が可愛くて儚くて愛しくて夢を見ているような気持ちになった。

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2022年07月13日

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「図書室」主に会話で綴られる、あるかつての女の子の出会いと別れ、そこにあった図書室の話。私は少女の語りを男性にされると違和感を覚えてしまうタチなのだが、こちらは全く違和感なく読んだ。大阪の持つ、あのうら寂しさや切なさが胸に迫る。外向きに演出された大阪じゃないのが嬉しくて、好きだ。
「給水塔」後半に収録されたエッセイ。大阪へのものすごい愛。読みながらぐずぐずに泣いてしまった。大阪に帰りたくて。街の空気を吸いたくて。

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2022年01月25日

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説明がつかないけどすごく好き。朴訥とした文章が好き。風景、記憶の切り取り方が私と似ている気がする。最後のあの波は良かった。のラストになんだか泣きそうになる。
人が一生をかけて手に入れたいと願う幻のキノコみたいなものをこの人は小学生で手にしてしまった。この人は、このまま一生ひとりなんじゃないかな。

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2021年09月20日

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一気に読んだ。読みやすい。記憶のこと考えるきっかけもらった。ノスタルジックで人に対して優しい視点のお話だった。

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2021年09月18日

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中篇「図書室」と、エッセイ「給水塔」を収録。
どちらもとてもよかった。
私が知っている少し前の大阪が詰まっていました。
懐かしく、自分も一緒にその時代を過ごしたような楽しさ、もう2度と戻ることができないと知ってしまった寂しさ、その両方を大切に心にしまうことができる時の流れも感じ、こころが温まるような気がしました。
エッセイの中で、万博公園にある大阪国際児童文学館について書かれていることが嬉しかったです。私の人生にも大きな影響があった場所だったので、居心地の良い閲覧室や静かな研究ブースの思い出、そこがなくなってしまったこと、今は廃墟のようになっていることを書いてくださっていたことが、とても嬉しかったです。

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2020年03月05日

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世界の終わりを過ごす少女と少年を描いた表題作「図書室」。「給水塔」は著者の大阪を語るエッセイ。両方ともねこねこしていて、すごく好き。

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2019年09月29日

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誰にでもありそうな思い出の断片を淡々と綴ったストーリーが、どうしてこんなに惹きつけられるのだろうか。
この人の作品を読むとつくづく思う。

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2024年02月16日

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二つの作品が収録されてます。大きな事件が起きるというより、訥々と、何があったか、どんな場所で、どんな人がいたかとかが語られていきます。力みのない書き振りのためか、水が流れるとか風が吹くみたいな自然な、独特の落ちつく感じがありました。

日々の生活の中での、何気ない、でも大事な思い出とかワンシーン、ってあるよなあと思いました。

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2023年09月10日

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中編が2つ.表題作は二人の男女の小学生が公民館の図書室で出会い、本からの知識に沿った人類滅亡への対応行動を淡々と描いている.大晦日に食料として缶詰を買い込んで河川敷の小屋で夜を過ごすものの発見され連れ戻される.小屋での話に図書室を作ることが出てくるが、意図のつかめないままだった.「給水塔」は大阪に惚れた男の話で著者の回想みたいな感じだ.ウッドベースが出てきて驚いた.私も持っているからだ.バブル時代の浮かれた話やバイトで飯場にいたことや子猫の話などエピソードが次々に現れて楽しめた.昔ピカピカだった町が寂れてしまう現実を的確に描写している点が良かった.

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2023年02月03日

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社会学者・岸政彦による小説「図書室」と、自伝的エッセイ「給水塔」からなる。個人的に「給水塔」が面白く、この作品があることで、「図書室」の面白さが増すような気がした。「給水塔」の最後が、そのまま「図書室」につながっていく。「図書室」は小説としては読みやすいが、やや淡泊。もっともっとドラマを込められるだろうが、そこは社会学者による小説、ということでかろうじて我慢できる。たとえ小学校高学年であったとしても、男女が小屋にこもったら、肉体的な触れ合いの、そのヒリヒリ感ぐらいもっと描けよ、と突っ込みたくなったが、まあいいか。これが庶民ということか。

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2022年07月26日

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50歳独女が昔を回顧する内容。感情の吐露はなくただ思い出が溢れてくる。今の主人公は傍から見れば独り寂しい大人に見えるかも。だが読者は彼女が内包するものの煌めきを見る。
もう関わらぬ相手でも互いに影響を与えていたり、何十年経ってもふいに思い出されたり。人の数だけ、連なる人達や思い出がある。それを知らせてくれる本だった。(図書室・給水塔、両方)
私もこの先、良かった記憶が不意に思い出される大人になれるだろうか。人の人生が知りたい、自分の思い出もたまに取り出して温めたいと思った。人の数だけ物語がある。誰の人生も軽くはないと思わせられた。

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2021年07月12日

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ネタバレ注意
読書開始日:2021年4月28日
読書終了日:2021年4月29日
所感
図書室
回想シーンの男の子との会話で懐かしさを覚えた。
自分の小学生時代の会話もこんな感じだった。
お互い当時持ち合わせている最小の気遣いだけで、話したいことを次から次へと突拍子も無く話していた気がする。
まさに作中の2人もそれだった。
「私たちは、相手が吐き出した息を口から吸い込んでまた吐き出すように、お互いの言葉をやりとりしていた。」この一文で自分の記憶を言語化できた。
その会話の中心に、「子どものころに一度は訪れる死や地球滅亡への恐怖」を据えることで、さらになつかしさが増す。
歳を重ねるにつれ、気遣い、配慮が比率を増していき、会話が自然と溶け合う機会も少なくなっていった。
そんな時にふと思い出すのは、当時の友人と突拍子もない話しから、大それたことをしでかした記憶。
ノスタルジックな気持ちなった。
給水塔
作者のエッセイ。
いつもこの作者は自分がもやもやと考えているようなことをパッと言語化してくれるのでとても好きだ。
作者は肉体労働を「民主的で業績主義的で合理主義的で個人主義」と表現していたが、
自分も学生時代、バイトではあるが肉体的な日雇い労働をしていたこともあって、辛い部分が大半を占めるが、辛い以外に感情を持たなくていい部分が少し好きだったことを思い出した。
大阪に対しても作者は、手加減抜きにリアルに分析しているところも面白いと思う。
関東に住み続ける自分には大阪の愉快で、愉しい印象しか持てないのであるが、
大阪のフィールドワークを重ねる作者は、「要するに大阪という街について言われていることの、大半が虚構の、無意味な、ありきたりな、紋切り型の、たわごとでしかない」と表現していて、読み進める度にリアルに感じられる。
そんなリアリストな作者が作中で唱える確証は無いが、祈りのような一文にはいつも希望を感じさせられる。
「普段どれだけ荒んで腐った、暗い穴のようなところで暮らしていても、偶然が重なって、なにか自分というものが圧倒的に肯定される瞬間が来る。私はそれが誰にでもあると信じている」
とても好きな一文。

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2021年04月30日

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定職も貯金もある。一人暮らしだけど不満はない。思い出されるのは、小学生の頃に通った、あの古い公民館の小さな図書室のこと―

ひとりの女性の追憶を描いた中篇「図書室」と自伝エッセイ「給水塔」の2編収録。


まるで自分史のようだと思ってしまった。どうしてあの頃の私の気持ちも、今の私の気持ちも、こんなによく知っているの?と驚いてしまうくらい。


これと言った期待も希望も無いのに、「求められている」というステイタス欲しさに惚れた腫れたを経て、40にしてひとり暮らしを満喫する主人公。

胸いっぱいに感じる自由と孤独が、子どもの頃、公民館の図書室で覚えたソレと重なる。


『クラスの誰も知らない場所で誰も読んだことのない本のページを開いているのは、すごく寂しい気持ちとすごく自由な気持ちが混じって、それまでの生活で経験したことのないような、頭の肌がじんじんとしびれるような、痛快な気分がした』

アラフォー・独身・ひとり暮らしって、まさにこれだ。
孤独で自由で未知で痛快だ。


惚れた腫れたとは違う、母性本能とも違う、何かを溺愛したい衝動に駆られるのもよく分かる。その願望が本作の主人公みたく猫に向かう人も居れば、「推し」に向かう人も居るだろうし、選択肢はそれぞれ。

子どもの頃に読んだ本や通った図書室(学校の図書室も好きだったけれど、私も本作に出てくような公民館の図書室にも大変お世話になった)、秘密基地や初恋の男の子を今も胸の奥にしまっている人になら、確実に響く一冊。

(「給水塔」は途中までで離脱してしまった。大阪出身なら身を入れて読めると思う)。

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2020年03月16日

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何かの書評で面白いかもと思い読みました。幸せと言い切れないが、取り立てて生活に不満は持っていない中年から初老になりつつある女性が小学生のある時期を思い出すと言うストーリーです。既に初老になってしまった私(性別は違いますが)にとって、そう言う状況に大いに頷ける部分があります。淡々とした物語の展開が心地よいです。物語に登場する淀川の河川敷も懐かしく読めました。それと作者によるエッセイが、面白い。作者が、あまり勉強はしなかったが進学できた大学が私の母校であり、10歳ほど年下の作者の青年時代と重なる部分も多々あり、懐かしい場所も登場して、いたって個人的ではありますが、いい読書ができました。

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2020年01月01日

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大阪に短い間ですが住んでいたので、なんとなく懐かしく、でも新しく感じました。

ひとりで生きるということは、ものすごく寂しい訳じゃない。空気感がすごくわかる。言葉にしにくい感覚が描かれている気がします。

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2019年10月06日

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小学生の頃に通った図書室の回想とそこそこに歳を重ねてひとり暮らす主人公の何でもない静けさが良かった。作者の自伝エッセイも良かった。

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2023年01月09日

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<大阪の下町>という場所に宿るノスタルジックな感傷を綴った二編。
時代も生まれも育ちも違い、縁がないはずなのに、なんだか「ここに帰りたいなあ」と思ってしまう不思議な魔力がありました。
子ども時代や青春の回想って、たとえ見知らぬ場所だったとしても、その土地に根付いた暮らしが丁寧に描写されるほど、心の繊細な部分を呼び起されるなあと思います。

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2022年01月18日

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一人暮らしの女性が、40年前くらいの小学生だった頃を回想する話とエッセイがひとつ。
スナック勤めの母親。でも、寂しい小学生時代とは感じられなかった。この子には図書室があった。猫もいた。母の作ってくれたカレーもあった。
母親を早くに亡くしてしまっても、引き取ってくれた親戚の人達は良くしてくれたし、今、この歳で独身でも決して不幸ではない。
人によって、価値が異なるということを強く感じた。
何が幸せなのかは、自分で決めるものなんだなぁ。

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2021年09月12日

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表題作の方は、小学生の会話と行動がどうにもしっくりこず、最後まで入り込めなかった。土曜日の半ドンの風景や空気感のリアリティは自分も同様の経験がありよく描かれていると思えるのだが、小学生二人の距離感と感情の細部が読み取れなかったのが残念。
給水塔の方は小説ではなく、著者の実人生と大阪の街々との関わりを描くエッセイ。80年代から今までのが街の変遷やそれでも変わらない性格が浮かび上がる。

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2021年09月12日

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図書室。50代の女性の子供時代、母との貧しい暮らし、公民館図書室、仲良くなった男の子との思い出。

と、作者本人の大阪に対する想いを書いた給水塔。
関西に馴染みがないのでなんとなく読んだ。
これが自分の地元だともっとしっくりくるのか?
大学を出て、飯場を転々とは作家としては珍しい?

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2021年02月25日

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ダヴィンチのプラチナ本オブジイヤーから。同コーナーで取り上げられたものは、結構積極的に読むようにしていて、それなりに当たりが多い印象を持っている。で、その中でもその年一番ってだけに、期待は大きくもなる。でもこれはダメ。少なくとも個人的には全くハズレ。今、文学モードじゃないってのも大きいのかもしらんけど、何が良いのかさっぱり。表題作の中編小説と、あと一本はエッセイが入ってるんだけど、そちらもイマイチ。大阪への思い入れの違い、って部分も大きいのかな。

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2021年02月15日

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大人になった今はもう得られない、かけがえのない大切な時間。
現実味のないことに真剣に頭を悩ます二人が微笑ましい。

その人を形作る過去の思い出。
トラウマ的なことではなくこういう何でもない日々から人生を見つめるのもいいもんですね。

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2020年10月08日

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子供2人の会話のテンポが良くとてもいい作品だった。
子供の頃を思い出す、大人の女性。
自分の母親の事、猫の事。
そして図書室でいつも出会う男の子の事。
その子との不思議な冒険。

後半は作者のエッセイ。
私の知らない大阪がいっぱい。

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2020年03月31日

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ネタバレ

「何かを激愛する、ということを久しくしていない。何かを激愛したい。それで振りまわされたり、困らせたり、たまに泣かされたりしたい」

50歳、独り暮らしの独身女性の美穂。
定職もあり貯金もあり、何不自由なく日々を平穏に暮らしている。
けれど、ふと思い出すのは11歳の頃の出来事。
近所の公民館の小さな図書室で、毎週土曜日の午後になると一人で本を読んでいたっけ。
そこで出逢った同い年の少年と共に過ごした淡い記憶は、今となっては追憶に空想が混じった曖昧なものもあるかもしれない。
けれど大人になった今もはっきり思い出すのは、二人が共に体感した"地球の終わり"。
家族も友達も猫も全てを置き去りにして、二人きり、世界の果てで真剣に語り、不安になり泣いたあの夜の出来事は、心の奥で今なお生きている。
あの一瞬の激情があるから今がある。

今振り返ると、ほんまあほみたいやけど、あの時二人で相談して決めた娘の名前は、40年経った今でも忘れない。
美穂の終始淡々とした語り口が、余計に切なく心に刺さった。

後半は自伝エッセイ『給水塔』。
大阪の街っておもろいな。

「どんなひとにも人生があり、どんなひとにも内面がある」
「どの街にも、その街の人生がある」

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2020年02月09日

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1人暮らしの50歳の女性が小学校の頃通った公民館の図書室のことを追憶する物語。
小学生の頃、秘密基地を作って遊んだことを思い出した。
印象に残った文章
⒈ 私たちはもう10歳かそこらで、男というものに絶望していたような気がする。
⒉ 図書室に行くと、彼はいつものようにベンチの上に本を積み上げて、本のなかに頭から潜水するみたいにして読みふけっていた。
⒊ 人類が滅亡したあとの世界を考えるということは、テレビ映画の話題から始まって、なんとなく私たちの「テーマ」みたいになっていた

この本には、自伝エッセイ「給水塔」も収録されている。
私も学生時代を大阪で過ごしたので、地名など懐かしく読んだ。
私的には、「給水塔」のほうが面白かった。
「給水塔」の印象に残った文章
⒈ 言わないと誰も助けてくれないし、言えば言ったでなんとかなるのが大阪
⒉ 誰でもない、何も持ってない、何もできない、ただ時間だけがある感覚
⒊ 偶然が重なって、なにか自分というものが圧倒的に肯定される瞬間が来る

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2019年10月11日

Posted by ブクログ

中編1編、エッセー1編
小説の方は公民館の図書室で出会った男の子との思い出を中心に、エッセーは本人の自伝的なあれこれだが、どちらも主人公は大阪、淀川、千里山、など登場する土地の纏う雰囲気、人情で、文章から大阪への「愛」が伝わってくる。本当に懐かしい。

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2019年09月14日

Posted by ブクログ

読み始めてから、何度も表紙を見返してしまった。
この作者は本当に男性なのか?!・・・と(失礼m(__)m)
それほど、子どもの頃に確かに感じていた孤独や希望やさみしさが主人公の少女を介して
私の中に溢れて止まらなくなってしまったのだ。

小説の中にも出てくるけれど、
その年ごろの男の子は『アホウ』だからそんな気持ちは理解できないだろうと思っていたのに。

物語の世界に心地よく浸っていたら、
後半は著者のエッセイになっていてちょっとびっくり。
でも、この物語の生まれた背景や物語の舞台である大阪について深く理解できると思えばまたエッセイも興味深く
読むことができました。

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2019年09月08日

Posted by ブクログ

オーラルヒストリーの聞き取り調査等の方法論を得意とする社会学者であり、かつジャズベースのアマチュアミュージシャンであり、そして作家。3つの顔を持つ著者による表題作の中編小説と、自伝的エッセイをまとめた一冊。

岸政彦の小説やエッセイに流れる視点は常に一貫している。それは徹底的に我々の日常の意識を再現するという視点である。決してカッコつけたり、合理的に見せようという努力は意識的に排除される。我々は自身の姿を誰かに見せる際に、どうあがいても自身の姿をよく見せたいという欲望から離れられない。その一方で、自身の内面では非合理なものも含めて、生々しい思考が繰り広げられる。

著者の作品の登場人物は誰一人、変にカッコつけたり合理的に行動するわけではない。なぜそういう行動を取るのかよくわからないが、取ってしまう。そうした人間の限定合理性も含めて、人間の営為というものが美しいのだということを教えてくれる。それが著者の一連の作品の魅力である。

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2019年09月01日

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