あらすじ
定職も貯金もある。一人暮らしだけど不満はない。ただ、近頃は老いを意識することが多い。そして思い出されるのは、小学生の頃に通った、あの古い公民館の小さな図書室――大阪でつましく暮らす中年女性の半生を描いた、温もりと抒情に満ちた三島賞候補作。社会学者の著者が同じ大阪での人生を綴る書下ろしエッセイを併録。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
2部構成の話になっている
1部目は「図書室」というタイトル
大阪の別々の学校出身の小学生2人が、世界から人がいなくなって自分達2人しか生きていないことにして、スーパーで缶詰を買い淀川の河川敷にある小屋でお話しする話
特にこれといった内容は無いけど、2部で著者が何もないことを、特別じゃないことを、書き出したいって言うことをお話しされていて、
何もないことだけど実はそれぞれの人生の背景に何かがあったり
文字の羅列の出来事からは想像もできないことが人の歴史にあったりするから
一部を一発目に読んでうーんと思ったけど、2部の「給水塔」を読むと1部をもっと違う読み方で読めると思った
2部「給水塔」めっちゃ面白い
っていうのも著者岸さんの学生時代から今に至るまでの話だから。
なんで著者の話が面白いかっていうと、
私も著者と同じく「大阪」に
「東京的なものが嫌いで、もっとアジア的なもの、もっと風変わりなもの、もっと混沌とした、危険な、自分勝手なもの」(p.117)を求めてるからだと思った
大阪をすっごい美化?してるけど
でも、1部の話って大阪の話やん?
面白くないってさっき自分言ったじゃん?
完全に見落としてた、今気づいた
ーーーー
それと、岸さんがPodcastに出てたときの番組で、司会の女性が「世界っていうけど、それってその場所のローカルなんだよね、ローカルはグローバルだし、グローバルはローカル」っていうの聞いて、ちょっと感動した
他者(人にかかわらず)に変な期待抱くのやめるようになったかもしれない
ーーーー
作中で紹介していた「小松左京」の「少女を憎む」気になった、sf 作家みたい 日本沈没も書いてるんや
他にも色々と解決策が思いつきました。
あとやっぱりエッセイ好きだな
Posted by ブクログ
読んでいて、ファンシーショップに行きたくなった。
本好きボーイが太陽爆発を語り死の予感をさせてくるのもなんだか覚えある。
スーパーマリオより先に
謎ルールの遊びで「イッキニキ」という命があって負けるたびに死んでた。
子どもなのに日々死にまみれていた。
命の復活も簡単だった。
大阪の土地て、どんないい加減なところも受け入れる器がある。
えらいとかえらくないとかでなく、みな横並びで、高級とかでなく、安いほうがありがたられる世界。
あの頃の自分を懐かしく思い出すと共に、
ハラワタのような苦みのある読後感。
でもなんだか、読み返したくなる。
岸政彦は優しい。
Posted by ブクログ
小学生の豊かな想像の世界観、それから筆者の実体験でありながら、喧騒を感じられる大阪の景色を思い浮かべられる、懐かしいだったり、ノスタルジックを思い浮かべる1冊です!
Posted by ブクログ
「何かを激愛する、ということを久しくしていない。何かを激愛したい。それで振りまわされたり、困らせたり、たまに泣かされたりしたい」
50歳、独り暮らしの独身女性の美穂。
定職もあり貯金もあり、何不自由なく日々を平穏に暮らしている。
けれど、ふと思い出すのは11歳の頃の出来事。
近所の公民館の小さな図書室で、毎週土曜日の午後になると一人で本を読んでいたっけ。
そこで出逢った同い年の少年と共に過ごした淡い記憶は、今となっては追憶に空想が混じった曖昧なものもあるかもしれない。
けれど大人になった今もはっきり思い出すのは、二人が共に体感した"地球の終わり"。
家族も友達も猫も全てを置き去りにして、二人きり、世界の果てで真剣に語り、不安になり泣いたあの夜の出来事は、心の奥で今なお生きている。
あの一瞬の激情があるから今がある。
今振り返ると、ほんまあほみたいやけど、あの時二人で相談して決めた娘の名前は、40年経った今でも忘れない。
美穂の終始淡々とした語り口が、余計に切なく心に刺さった。
後半は自伝エッセイ『給水塔』。
大阪の街っておもろいな。
「どんなひとにも人生があり、どんなひとにも内面がある」
「どの街にも、その街の人生がある」