岸政彦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ大阪の最下層で暮らす男と女。安い、ゴミにようなものに囲まれ、食べ物すらゴミを食べているかのように感じられる生活。
詳細に描写される汚い部屋や無為な生活に感覚が麻痺しつつ、嫌悪感に満ちる男の眼差し。
ああ、この人はもっと上から落ちて来たんだろうと思った。最初から安い暮らしで育ったならばここまで皮肉に思わないのじゃないか。
あとで著者が博士を取る前に4、5年日雇生活を送り、その時の体験をもとに書いたと知る。なるほど納得。
底辺のパワーや生命力がなく、静かに日々を消化する。そして密かにちょっとずつ傷ついていく。そんな気がした。
話の筋はわかりにくい。男が複数いるようにも思え、女がどの女だかわからなくなり、確認のため再読仕掛けて止めた。作者はデジャヴかループを意図してると思ったから。
面白いとは言えないが、汚い大阪を描いているわりに静かで上品な読み心地の作品。 -
Posted by ブクログ
くたびれたジャズベーシストと、年増のスナックホステスの恋愛譚。
本当になんてことない話なのだけれど、妙に胸に迫るのは年が近いからか。年増のホステスと僕ほぼ同い年なんですね。
人生に対する諦めや、まだ先が有るのではないかという希望と、愛情なのか友愛なのか分からない好意。何も妨げるものは無いのに、どうしてか踏み切れない。
音楽で食べて行けているけれど、先細りは必至だし技術的にもこれ以上は見込めないというくすぶりと、誰かの心を背負う事の重さにおびえる気持ちなのでしょうか。
最後まで読んでも心の動きの深い所は書いていないので、読んで推し量るしかありません。色々考えてしまう本だし、淡く記憶に残って消えてしまう本でもあります。 -
Posted by ブクログ
(いま感想文用のノートに手書きで書いているのだけど、「傘」っていう漢字が全然上手に書けなくて悲しみ。)
「断片的なものの社会学」以来、それまで全然知らなかった岸政彦さんという社会学者/作家の方にすこぶる興味を持って、著作をあれこれ読み漁っている。
この小説は、おそらくカップルと思われる男女のそれぞれの視点から、彼らの出会いや日常生活が淡々と語られる。前半が男性側、後半が女性側。決して裕福ではなく、ほとんど定職にもついていないような二人。汚い部屋。塞ぎ込む彼女。日雇いの肉体労働。付き合ってすぐの頃の思い出、明るかった彼女。波打ち際。だらだらと始まってだらだらと終わる関係。自分と無関係なようで全然そんなことはない、見ず知らずの人の生活。大学生の頃に読んでいたらどんなふうに思ったかなあ。「ビニール傘」の二人と同じように、霧の中を彷徨うような生活をしていたあの頃に読んでいたら。あのときわたしは「あーこれわたしにはムリ」って思ったんだった。自分で気付いてかなり強引なやり方で一気に方向転換したんだった。その選択は間違ってなかった。間違ってなかった・・・本当に? -
Posted by ブクログ
大阪の片隅で出逢った、音楽で細々と生計を立てるジャズベーシストの男と、小さなバー『ドミンゴ』でアルバイトをしている美沙。
二人の他愛のない会話文がシーンの半分ほどを占めており、鉤括弧をつかわずに羅列されるそれらはとても象徴的で、見事に独特な雰囲気をつくりあげていた。
そのなかに、"もっかいリリアンの話して。"と美沙が幾度もくりかえしねだるエピソードがある。
男が小学生だったころ、仲間はずれにされていたクラスの女の子が独り無心でリリアンの紐を編み続ける姿。その光景がむしょうに忘れられずに折に触れて思い出してしまう、という話。
言葉ではうまく説明はつかないけれど意味を持つ、男の記憶の奥深くにすやすやと眠る原風景のひとつようなリリアンの話は、美沙だけでなく私の心までをもつかんでしまったようだった。すごく好きなんですこういうの。
だれかにとってのリリアン的な話、緊密でやわらかな空気のなかで、私にもとくべつに聴かせてほしい。そのまま夢見心地で眠れたならどれほど幸福だろうと思う。
もうひとつの短編『大阪の西は全部海』は、とある評論家が「そういうのは全部川上未映子に任せておけばいいでしょ。」と述べた&編集部に削除された等の一件で物議を醸していて、まぁそれが私が本書を手に取るきっかけでもあったんですけどね。
双方にめちゃくちゃ失礼な言葉だなと思っていたけど、実際に読んでみたら言いたいことは分かってしまった。
生まれること、死ぬこと、最初から生まれてこないこと。
それらについて関西弁で抽象的に書き連ねられていると、まあね。でもなんというか関西弁の力ってすごい。