畠中恵のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
江戸を舞台に妖(あやかし)たちが活躍する『しゃばけ』シリーズで、新たな時代小説の形を提供してくれた、畠中恵。
同じ江戸を舞台に、妖怪たちを登場”させない”物語が、『まんまこと』シリーズです。
本作品はその第三弾。
今回も、舞台は江戸、そして主人公は、町名主の跡取り息子、麻之助。
現代で言うところの刑事事件を扱う奉行所に対して、民事事件を扱うのが、町名主。
今回も、持ち込まれるさまざまな厄介ごとを、麻之助とその仲間たちが解決していく姿が、6つの連作短編の形で、描かれています。
物語の楽しみの中心は、「謎とき」。
それに加えて、今回の作品では、麻之助の妻、お寿ずの懐妊が、連作短編を通じての大きな柱になっています。
そしてそれぞれの短編の中でも、江戸時代の結婚や宝くじ(富くじ)のしくみ、カレンダーの取り扱いなど、当時の生活の一端が垣間見れられる「なるほどな」という要素が、散りばめられています。
「今後、どうなっていくんだろう」という形での終わりだったので、続編を楽しみに待ちたいと思います。 -
Posted by ブクログ
ぅむ。
別に、スリルがどうとか、手に汗握るとか、そういうのじゃないんです。だから、涙腺が緩むとかでもないし、感動した!!とかっていうのでもない。
こういう類の本で4をつけることは、私にはなかなか珍しいんだけれども。
なんていうか、新鮮だったんですよね。そしてなんというか、秀逸だった。
なんのことのない青春群像という感じなのだけれども、部隊が江戸→明治に変わって少し経った頃。そして、そのころのお話って切った張ったになりやすいと思うのだけれどもそうではなくて、そのころの「一庶民」のおはなし。皆生活していて。歴史とか、お上に文句とか、そういうことじゃなくて、(ちょっと戦争の下りは唯一そういう意味で意図的に組み込まれたのか、面白かったけど)当時の人たちだから出たのかもしれない視点で(そういう意味で場面設定が面白かった)若者たちの心を映し出していた。
そして、1話1話の小タイトルが「シュウクリーム危うし」、とか、「ワッフルス熱し」お菓子の名前になっていて、そのお菓子が活躍するとともに、その名前に思わず唸るようなストーリーがお菓子とは関係なく与えられているのですよ。
そういう、ひねった感が好きでした。
そして、最後のなんとさわやかなことか!!
風が吹き抜け、思わず微笑んでしまいました。
こういう読後の本は久しぶりだな~。 -
Posted by ブクログ
時代小説にファンタジーを取り込んだ作品で、読者に新しい世界を提供してくれている、畠中恵。
その『しゃばけ』シリーズの第10作が、文庫本となって書店に並んでいたので、迷いなく?読んでみることにしました。
今回も、大店「長崎屋」の若だんな、一太郎が主人公。
病気がちで”離れ”で伏せている時間が長い彼の元に、やっかいな客や揉め事が、飛び込んできます。
そしてその揉め事に、一太郎と、彼の昔からの馴染みの妖(あやかし)たちが立ち向かう、というストーリー。
今作は5つの短編で構成されていて、それぞれの話は独立しています。
ただし、共通のテーマとして「食べ物」が取り上げられていて、各話の冒頭に、その物語に登場する食べ物の、作り方が添えられています。
全体で大きなストーリーを構成するというわけではないので、シリアスさを感じず、このシリーズらしい、暖かで優しい雰囲気を楽しむことができました。
いつものメンバーが活躍しつつ、新しい人物が登場したり、登場人物たちが少しずつ、変化していくというのも、シリーズものの楽しみの一つですね。
1年後の次作も、期待したいと思います。 -
Posted by ブクログ
『しゃばけ』シリーズの畠中恵。
シリーズとは違う長編小説が、文庫化されて平積みされていたので、読んでみることにしました。
主人公は、新米の江戸留守居役。
部屋住みとして平々凡々な生活を送っていた彼が、優秀な兄の後を継いで、藩の大事な役職、江戸留守居役に任命されます。
右も左もわからない中、他藩の先輩留守居役たちの厳しい指導を受けながら、お役目を務めていく主人公。
その日常における騒動が、この作家さんらしい温かいタッチで、描かれていきます。
そして彼が役目を受けるきっかけとなった、兄に関する事件の謎解き。
新米で頼りなかった彼が、藩のため、仲間の留守居役たちのために、いつのまにか中心的な役割を担うようになって・・・という展開。
現代で言うところの「外交官」のような立場だった江戸留守居役たちが、どのような役目を負っていたのか、その役目をどのように務めていたのか。
時には仲間、時にはライバルとなる他藩の江戸留守居役との関係、そして武士に金を貸す”札差”や江戸城の”表坊主”との関係。
さらには、幕府からさまざまな役目を言い渡され疲弊する、地方藩の苦しい台所事情などなど。
「平凡男子の成長物語」「謎解き」といった要素とともに、この時代の空気を味わえる小説だなあと、感じました。
ストーリー展開のテンポも良く、500ページ以上の分量ですが一気に読み進めてしまいました。
この作家さんにはまだまだ、引き出しがありそうですね、次作も期待したいと思います。 -
Posted by ブクログ
畠中さんは、しゃばけシリーズが最初の出会いで、以降見つければ買う感じ。
易しく柔らかい文体で、とっても場景深く分かりやすいのに、しっかり残るのが好き。癖になる。
続編ですが、過去話なので、単体で読んでも、こちらを先に読んでも問題ないと思います。
江戸が終わり、明治の世になり20年。世が世なら「若殿様」と呼ばれたであろう坊っちゃんたちが、警官になるべく切磋琢磨し、挙げ句事件を解決する騒動記です。
リーダー格の長瀬率いる若様組、薩摩から来た若者たち、士族、平民出の者たち、若様たちの知人と、登場人物はすこぶる多いのですが、ワクワクしながらページ進めていけるので、意外と頭に残ります。
キャラクターも魅力的。
根っからのリーダーである主人公長瀬くんや、冷静沈着な参謀タイプの福田さん、今回は何かと暗躍してくれたミナこと皆川くん、そして個人的に大好きな、恐ろしく美形で武道の達人なのに、すぐキレる園山さん!
映画やアニメになっても、見栄えしそうだなーと思います。
いつも終わりかたに余韻があって、とっても好きです。 -
Posted by ブクログ
しゃばけシリーズ10作目。
●こいしくて
長崎屋のある通町界隈で、なぜか恋の病が大流行、
おまけに若だんなのもとへ、次々と疫病神が訪ねて来るというお話です。
●やなりいなり
狐の神様特製の「やなり稲荷」を食べている長崎屋の離れに
こっそりと横からいなりに手をつける幽霊が現れました・・・
●からかみなり
長崎屋の主人藤兵衛が街に出たまま三日帰らないため、
お店の面々はそれぞれの推理を話しあいます。
●長崎屋のたまご
空からおちてきた青い玉を拾った若だんな。
眼を放したすきに玉がどこかへ行ってしまい、
それを捜し魔物がきたから、さあ大変。
●あましょう
親友に会うために安野屋に出向いた若だんな。
その店では若い二人の客が大量の菓子を購入していました。
以上、5つの短編からなる作品です。
この本の特徴は何と言っても、
それぞれのお話の中に
江戸時代の美味しそうな食べ物のレシピが書かれていることでしょう。
お話もあいかわらずの「しゃばけ」風で、
ユーモアたっぷりの味付けは、心地よくいただけます。
そこへお料理レシピもついているなら、
このお料理、作って食べてみたくなります。
一番食べたくなったのは、「やなりいなり」でした。
かわいい鳴家の似顔絵の書いた「やなりいなり」は
一度は、食べてみたいものです。(*^_^*)