野沢尚のレビュー一覧
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テレビ界に身を置き脚本家である著者が、テレビの報道番組の内幕を描いた、第43回江戸川乱歩賞受賞作。
何かの番組で彼の名前を見て、24年ぶりに再読。
主人公は、ニュース番組の映像編集を担当する遠藤瑶子。
彼女は、報道の理想を掲げるわけではなく、刺激的な画面を創り、視聴率を稼ぎ出す。しかし、何者かの黒い網に絡め取られ、次第に追い詰められてゆく。
執拗に追い回す者の正体が明らかになったとき、彼女とともに、読者も慄然とするのではないか。
題名の「破線」は、テレビ画面を構成している走査線で、「マリス」とは、報道の送り手側の意図的な作為または悪意のことだそうだ。 -
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実際に起きた事件に興味があり、いろいろ調べていたら「練馬一家殺人事件」を基にしているというこの本を知ったので、読んでみた。
父親が恨みを買い、自分以外の家族が殺され、1人生き残った当時小学生だった女子大生が主人公。加害者にも自分と同じ年の子供がいたことを知り、素性を隠して近づいて仲良くなっていく、という話。
家族が殺された、ということも耐え難いが、修学旅行に行っていなければ自分も殺された、という事実の方が恐怖な気がする。父親が加害者にどんなひどいことをしたとしても、それは法廷で争うべきで、殺されて当然ということはない。
その後引き取られた親戚宅で普通に成長できて、もう事件のことは考えたくな -
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新興宗教の教祖に死刑判決が下された瞬間、白昼の渋谷は無差別爆弾テロに襲われた。
その犯人は公安が教団に送り込んでいた女潜入捜査官照屋礼子だった。
刑事の鳴尾が実行犯の照屋礼子を追い、礼子を送り込んだ公安は面子を保つために躍起となる。
前半はかなり読みづらかったが、後半は何とかスピードアップで読み終えました。
及第点。
公安が送り込んだ潜入捜査官照屋礼子の冷静さと追う刑事の鳴尾の泥臭さは結構魅力的だが
ストーリーとしてはイマイチ繋がらない部分が多数あるのが残念。
第一に話は照屋礼子の刑務所収監後に書き記した文章で進むが、その設定にこだわる理由が不明だ。
収監後の面会等でヒアリングをしたと書 -
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野沢尚の描くサッカー小説。
リュウジという、素晴らしいサッカーの才能に恵まれた17歳の少年が
日本からスペインに渡ってプロデビューを目指すというストーリー。
漫画やゲームのような内容だが、そこは野沢尚の書く小説という事で
リュウジのひねくれ、父親の存在、母親の想い、妹の健気さ、
海外生活の理想と現実などが上手くミックスさせてある。
抜群の才能を持つリュウジだが、最初のうちは周囲と合わない。(いや、合わせてないのか)
知り合いもおらず、徐々にチームメイトから浮いてしまう。
上を目指す為に日本を捨てたはずが、スペインの片田舎のユースチームで燻っている自分。
監督からも信頼されず、サブ扱い。
そ -
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ネタバレどちらかと言うと一作目の破線のマリスの方が好きだったかな。女性の主人公の方が感情移入しやすいという点で。
それと、最後あと一歩のところで作戦が成功しなかったのが悔しい。やっぱり故人は悪く言えないし。
でも各章の最後に謎の青年のシーンが入る、という本作の構成は好き。
メディアそのものや1人のカリスマ以上に、視聴者の恐ろしさがよく描かれている。
作中では『カリスマによっていびつな形にされた「大衆の総意」』と表現されている。
テレビから媒体は変わっても、現代にも共通して言えることだよなぁ。
若者をこれだけの暴力に走らせる程のカリスマとか団結感って想像できないなと思ったけど、たとえば同時代のドラマ -
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大好きな『破線のマリス』の続編。
作者が訴えたかったテーマは、よく伝わってくるものの・・・再読したこのタイミングとしては、もはやTVにそこまでの影響力はなく、ネットとの競争にどう生き残っていくのかーにスイッチしている状況なので、残念ながら題材そのものが古く感じられてしまいました。
ただ、『破線のマリス』から脈々と受け継がれている「悪意のある切り取り」については、より深刻になってきているのではないでしょうか。
テレビは 草創期から60年以上の年月をかけて、人権への配慮や誤報を出さないためのルールづくりなど、様々な指針を、少しずつ積み上げてきました。もちろん、そのこと自体が「テレビを面白くな