あらすじ
報道番組『ナイン・トゥ・テン』に売春の元締めとして登場した女子高生が全裸で首を吊った。恋人を番組に殺されたと訴える青年・八尋樹一郎(やひろきいちろう)の姿は、ライバル局の視聴率を跳ね上げた。メディアが生んだ一人のカリスマ。その邪悪な正体に気づいたのは、砦を追われたテレビマンたちだった。『破線のマリス』を超える衝撃!
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報道番組の続き?と思ったらやはり主人公が替わってましたね。破線のマリスを読んでからこちらの本を読むことを是非ともお勧めしたい。それにしても野沢さんがこの本を書いたのはいつなんだろう。現在のSNSの使い方が絶妙に描かれていてびっくりする。インフルエンサーが持つ力、そして崇拝し実行してしまう影響された人々。本当に今でも起こりうりそうな事で、背筋に冷たいものが走った。長坂さんがあっけなく命を奪われたのがとても悔しい。そして火種が十分残った終わり方、今後の暗示なのかと疑ってしまいそうになる。
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『大衆は退屈の中で阿片を求めているわけだから、無意識のうちに阿片に適合したような物語を作ってしまうんです。
つまり共同幻想できない新しいもの、ショッキングなもの、感動的なものは、ことさら演出しなくても、情報の受け手が貪欲に吸収して、肥大化させていく。』
本作も良かった。野沢さんの作品は好きだ。
早くに自ら死を選んでしまったことが悔やまれる。
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マスコミの暗部。マスコミの特性を利用したモンスター。
P185 マスコミとは本来、何らかの事件を伝達するものだと考えられているがマスメディアの発達によって、伝達するための内容をメディア自体が創りだすようになった。「擬似イベント」イベントがあるからではなく、報道するためにイベントが作られる。現代ではこうした逆転現象が政治、経済など様々な領域で見られる。メディアの中では人は英雄的な好意によって有名になるのではなく、メディアでの露出度が高く、有名であるために崇められる。
P247 マスコミとは。風向きを読んで、退路と進路を選ぶ、狡猾で保身本能しかない森の生き物だ。
P276 テレビは定期的に大衆の中から犠牲者を選ぶ。それを糾弾された時だけ、テレビは襟を正す。ところが喉元をすぎれば熱さを忘れて、またぞろぞろと被害者を生み出す。大衆は被疑者だけではなく加害者にもなれる。
P307 「化け物」とは「大衆の総意」という、森に立ち込める靄のように捉えどころのないものを指す。それを操作しようとした時から、逆に操作される運命を覚悟しなければならない。一人のカリスマが脅威なのではなく、カリスマによっていびつな形にされた「大衆の総意」が、あるきっかけによって凶器の形になることが何より恐ろしいのだ。
P352 砦なき者は、敵のまっただ中に飛び込み、味方に流れる血を恐れず、あがき苦しんで戦うしかないのです。それは激烈な恐怖と痛みを伴うことを覚悟しなければなりません。
朝まで生テレビの某市長と学者のやりとりには似たものを感じる。
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これはまず、妻夫木くん主演のドラマを見て。
ものすごい衝撃で。
原作読んで。
やっぱりものすごい衝撃で。
やっぱり野沢さんはメディアについて何か訴えたかったのかな、と。
基本的に映像と本って本のほうが好きなのですが、この作品に至ってはドラマの完成度が高いので両方おすすめです。
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ドラマを観た時と同じく、何も感じてない訳はないんだけど、文章として浮かんでこないので特に何も書けません。
面白かったーとか、八尋こえーとかぐらい。
「テレビほとんど観ないから」と言ってる自分も視聴者の一人なんだなぁと思った。
野沢先生に敬意を抱きます。
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「破線のマリス」の続編。
少し古い作品なんで、テレビの影響&怖さを語ってる。
今は、ネット系に押されて、力はあるにしても劣勢に立たされてるけどね。
テレビによってカリスマになり、テレビによって滅んでいく八尋。
本人もそう自分の時代が続くとも思ってないやろうしね。
結局、『ナイン・トゥ・テン』は一矢を報いたと言えるのか…?
何かカルト宗教みたいで怖いけど、今でも起こりうる事、それがテレビから、ネットなどの別の手段に移るだけで。
やな感じ Σ('◉⌓◉’)
個人的には、「破線のマリス」より、こっちのが好き!
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おまえが深淵を覗くとき
深淵もまたおまえを見つめている
だったか。そんなフレーズを思い出した。
八尋の徹底的な悪意に耐えきれず、後半、永坂が襲われるあたりからとばし読み。
八尋の最期としては、永坂:役所広司、八尋:妻夫木聡で映像化されたドラマ版の方が好み。
むしろ原作を読みながら自分が勝手に期待して、思い描いていたエンディングがドラマで描かれていてびっくりした。
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面白かった。 マスコミが育てた化け物はマスコミが始末せねば。ラストにどんどん化けの皮が剥がされて行くと予想したのに・・ カリスマとしたまま終るとは。 最後の遺書で賛同した若者らに「こんな作り物の自分に騙されてばかだなぁ」くらい言って欲しかったな。
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破線のマリスの続編。前回よりもこちらの方が好きかも。マスコミは表面的で一方的な情報を流していると、視聴者は理解した上で、テレビと付き合わねばならない。影響を受けやすい我々が歪んだカリスマを生み出す。
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前半と後半で大きく物語は変わりますが、後半は何となく現実味に欠ける部分が目に付きました。そんな簡単に八尋が人気を得てキャスターにまでなれるものか、どうやって数多くの信奉者達を操れるというのか…。このあたりは少し納得しにくかったです。
しかりながら破線のマリスと連続するテーマである「報道の2つのF」についてを描かれる様はその内容とあいまってリアルな危機感を煽ります。実際、恐ろしくもありました。
報道が、テレビが育てたモンスターとの対決となるクライマックスでは何が起こるか分からない緊張感もあって読み応え抜群でした。八尋が模倣犯に出てくるスマイルと少しかぶるようなイメージでもありますね。
この作者の書くサスペンスは非常に好きです。近いうちに読破したいと思っています。
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【煽動するテレビの怖さを描く傑作サスペンス報道被害者を装い、メディアを巧妙に利用し、若者のカリスマとなった男・八尋。一敗地にまみれた硬派の報道番組のキャスターらが八尋の欺瞞を暴く。】
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「破線のマリス」の続編という意識はなく最初は読んでしまったのですが、微妙にいろんな場所がつながっていて、最後に恐ろしい存在を作り出して主人公と対峙させる、その背後には…という構造が、ビッグコミックスペリオールでやっている「総理の椅子」のストーリーに似通っているなぁと気づいたのは途中。最後の最後までどう締めくくらせるかがわからないのはこの人の凄さですが、今回も今ひとつすっきりはしない幕引きでした。テレビを生業にしつつ、その限界を感じたからこそ、死を選んでしまったのでしょうか。
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野沢さんの小説は読むのに体力がいったが、この『砦なき者』は比較的さっくり読むことができた。
面白かったのでこれの前作らしい『破線のマリス』も読む予定。
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おもしろかったです! 後味はよろしくはありませんが…
冒頭からラスト近くまでずっとハラハラしっぱなしでした。ので、最後まで一気に読みました。スピード感がすごい。
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野沢尚作品、破線のマリスの続編。よく練られていて面白いとは思うものの、八尋に関して消えない疑問が生まれてしまった。それゆえの☆四つ。基本的に面白いと思う。
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短編のあとに中編のある、テレビ関係者たちの作品。展開は面白いものの、テレビ関係者に接触し、殺人事件の情報を流したり、警察の許可なく勝手にロケを敢行するなど、ちょっと大丈夫かな?という展開が多い。ラストの祭り上げられた巨悪も、そこまで民衆を扇動できるのだろうかと疑問に思った。
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テレビ局を巡る短編連続作品。後に若者のカリスマとなる青年が徐々に物語の中枢へ絡んでくる。このストーリーの進み方が、どんな人でも八尋になり得そうな感触があって不気味。所々、脳○ネウロ(こちらの方が出版はだいぶ後なので、この表現はNG)かよ的な演出はあったものの、意外にもテレビ局にまともな人物が多くて(意外にもという発想が八尋信者予備軍?)、安心して読めた作品。第一話の録音を繋ぎ合わせて編集する技法、メディアでも日常生活でも、故意でも他意でも使い用によっちゃ非常に恐ろしい。。
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どちらかと言うと一作目の破線のマリスの方が好きだったかな。女性の主人公の方が感情移入しやすいという点で。
それと、最後あと一歩のところで作戦が成功しなかったのが悔しい。やっぱり故人は悪く言えないし。
でも各章の最後に謎の青年のシーンが入る、という本作の構成は好き。
メディアそのものや1人のカリスマ以上に、視聴者の恐ろしさがよく描かれている。
作中では『カリスマによっていびつな形にされた「大衆の総意」』と表現されている。
テレビから媒体は変わっても、現代にも共通して言えることだよなぁ。
若者をこれだけの暴力に走らせる程のカリスマとか団結感って想像できないなと思ったけど、たとえば同時代のドラマ、池袋ウエストゲートパークとかイメージすると分かりやすいのかな。
首吊り自殺と絞殺の違いは初めて知った。ミステリー・サスペンス好きにとっては興味深い。
妻夫木くんが八尋役でドラマ化されているのでそちらも見てみたい。
Posted by ブクログ
大好きな『破線のマリス』の続編。
作者が訴えたかったテーマは、よく伝わってくるものの・・・再読したこのタイミングとしては、もはやTVにそこまでの影響力はなく、ネットとの競争にどう生き残っていくのかーにスイッチしている状況なので、残念ながら題材そのものが古く感じられてしまいました。
ただ、『破線のマリス』から脈々と受け継がれている「悪意のある切り取り」については、より深刻になってきているのではないでしょうか。
テレビは 草創期から60年以上の年月をかけて、人権への配慮や誤報を出さないためのルールづくりなど、様々な指針を、少しずつ積み上げてきました。もちろん、そのこと自体が「テレビを面白くなくしている」という批判もあることは、重々承知していますが、それでもネットにおいては、ニュースに限らず事実関係そのものについても「裏を取る」ということ自体、かなり疎かにされています。
野沢氏が訴えたかった テレビ業界が成長を続け、成熟し、やがて熟れて腐っていくことへの危機感は、いまのこの状況に、どのような答えを出すのかー読んでみたかった気もします。
Posted by ブクログ
読み始めが2009/9 なのであしかけ9ヶ月かけて読んだのか。。。
「近所のスポーツセンターに行き」且つ「エアロバイクをやった場合」しか読み進めていないので、こんなもんか。
エアロバイクこぎながら読むにはまーいいかなぁ。
Posted by ブクログ
うーん…
なんと言っていいのか…
リアルのようなフェイクのようなお話でした。
野沢さん亡くなってしまったみたいですね。
この小説に込められた思いを理解するには自分には重たすぎる気がしますが、ほかの作品も読んでみたいと思った。
しかし…
あとあじが悪すぎる…
Posted by ブクログ
「破線のマリス」の続編とも言える作品。どちらも面白い。
メディアの可能性を信じる者、そのメディアによりカリスマとなった青年。メディアの可能性を信じる者によってカリスマ青年の本当の姿を暴くことは出来るのか。
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江戸川乱歩賞受賞作『破線のマリス』の続編。前半2章は実質的に別個の通俗的な内容の短編で、表題作と言えるのは後半2章のみ。変則的な構成も含めて、小説としての完成度やリアリティは前作より劣るが、問題意識はより尖鋭的に表出されている。もはやマスメディアが対峙しているのは権力ではなく、疎外されルサンチマンを抱えた大衆であることを的確に表現している。
本作が描く「橋下徹の頭脳を持った本村洋」とも言うべきニヒリストのカリスマが、メディアとITツールを駆使して、大衆の憎悪=歪んだ正義感を煽動していく姿は、犯罪容疑者や社会的弱者へのバッシングや「劇場型政治」、さらに「在特会」のような排外主義運動を戯画的に予見しており、すくぶる現在的である。本書が「拉致ヒステリー」や「郵政選挙」よりも前に執筆されたことを考えると、著者の嗅覚の鋭さに感嘆を禁じ得ない。
Posted by ブクログ
報道番組『ナイン・トゥ・テン』に売春の元締めとして登場した女子高生が全裸で首を吊った。恋人を番組に殺されたと訴える青年八尋樹一郎の姿は、ライバル局の視聴率を跳ね上げた。メディアが生んだ一人のカリスマ。その邪悪な正体に気づいたのは、砦を追われたテレビマン達だった。『破線のマリス』を超える衝撃。(「BOOK」データベースより)
一気に読める。破線のマリスを読んでなくても問題ないとは思うが、読んであるとより一層楽しめるかも。
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八尋はたびたび「テレビがつくった化け物」という言い方をされる。
なぜ彼が化け者なのか。
彼の怖いところは二つある。一つは、彼が自分の成り上がりのためには手段を選ばないこと。これには、彼が力を持っていないこと、力に対する強烈なこだわりが影響している。二つは、大衆をいとも簡単に動かせること。
この二つの怖さを持った、ただの元大学生が「化け物」になってしまうのは、私利私欲のために大衆をいとも簡単に動かすことだってできるかもしれない、それだけの影響力を持つテレビの怖さゆえである。
八尋が、ネットでカリスマ性を発揮するのよりも、活躍の場をテレビに選んだことが怖いのだ。私たちは今テレビで垂れ流されていることの不確実さを知らないし、それを思考停止状態で見ていることの愚かさも知らない。だから、いつ八尋が現れるんだろう、と思う前に、今もう八尋はいるかもしれない。
この本が書かれたのは2004年である。それから8年たち、テレビは少しずつ、そのあやふやさと作り手の存在を露わにしている気がする。
Posted by ブクログ
『破線のマリス』に続いて再読。
“報道番組『ナイン・トゥ・テン』に売春の元締めとして登場した女子高生が全裸で首を吊った。恋人を番組に殺されたと訴える青年八尋樹一郎の姿は、ライバル局の視聴率を跳ね上げた。メディアが生んだ一人のカリスマ。その邪悪な正体に気づいたのは、砦を追われたテレビマン達だった。『破線のマリス』を超える衝撃!”―裏表紙より。
第一章 1997 殺されたい女
第二章 1998 独占インタビュー
第三章 1999 降臨
第四章 2001 Fの戒律
前作に続いて、メディア・マスコミの影響力とその恐ろしさについて考えさせられます。
読み始めは、各章が独立したストーリーのように思えるけど、それぞれの物語が4章への伏線に。
前作『破線のマリス』もそうだけど、数年ぶりに再読すると、冒頭部分は覚えてるのに、後半はなんだか初読のように、ひきこまれていきました。…ワタシの記憶力が悪いだけかしら?
今さらだけど、2006年の著者の急逝が悔やまれます。こんな面白い作家の新作が読めなくなってしまったなんて…。
役所広司、妻夫木聡の演で、ドラマ化もされたみたいですね。観てみたいなぁ。