野沢尚のレビュー一覧
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江戸川乱歩賞受賞作『破線のマリス』の続編。前半2章は実質的に別個の通俗的な内容の短編で、表題作と言えるのは後半2章のみ。変則的な構成も含めて、小説としての完成度やリアリティは前作より劣るが、問題意識はより尖鋭的に表出されている。もはやマスメディアが対峙しているのは権力ではなく、疎外されルサンチマンを抱えた大衆であることを的確に表現している。
本作が描く「橋下徹の頭脳を持った本村洋」とも言うべきニヒリストのカリスマが、メディアとITツールを駆使して、大衆の憎悪=歪んだ正義感を煽動していく姿は、犯罪容疑者や社会的弱者へのバッシングや「劇場型政治」、さらに「在特会」のような排外主義運動を戯画的 -
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ネタバレ散々その線はない、という真犯人の伏線を張っておいて、逆にその人物というオチ。
大体、母性なんてものを信じたいのは男性であって、女性はそんなものは幻想の産物だと知っている。
主人公だって、あの状況に追い込まれたからこそ無茶ができたのであって、そうでなければ組織の言いなりで行動するしかないし、それを逸脱する積極的な理由はないはず。
男性は、命を生み出すという女性特有の能力に無意識的に畏怖の念を持っているから、その女性に更に力を持たれては勝ち目がないと悟っている。
だから、歴史の表舞台から徹底的に隅に追いやり、男女平等とか言いつつも、出産育児は女の仕事、だって母性本能があるだろと第一線で働くことから -
Posted by ブクログ
突如発生した、渋谷交差点での爆破テロ。宗教団体との関連が取り沙汰されるなか、テロリストの守屋礼子は、元公安の潜入捜査員だった。犯人のメッセージにただ一人気づいた刑事、 は、彼女とのゲームに巻き込まれていく。
前半は背景の説明に紙数をさかれて冗長な感じだったけど、後半の対決モードになってからは一気に読めました。狂った爆弾魔と一徹な正義という対立に加え、警察組織の確執が混じり合うなか、主人公の熱意には感心しました。
狂気にかられた宗教団体、面子にこだわる組織、獄中の支援者など、どこかで見たような要素を貼りあわせたストーリーに感じられなくもないですが、爆弾に対する詳述など、著者のこだわりも随所に感 -
Posted by ブクログ
―――白昼、渋谷のスクランブル交差点で爆弾テロ!
二千個の鋼鉄球が一瞬のうちに多くの人生を奪った。
新興宗教の教祖に死刑判決が下された直後だった。妻が獄中にいる複雑な事情を抱えた刑事鳴尾良輔は
実行犯の照屋礼子を突きとめるが、彼女はかつて公安が教団に送り込んだ人物だった。
迫真の野沢サスペンス。
借りもん
初めて野沢 尚を読んだ
でも彼はもうこの世にいないらしい
「クレイモア」と言えば伝わる人もいるかもしれない。
無数の鋼鉄球を爆弾と一緒に仕掛けて、全方位への殺傷能力を高めたもの
この兵器の解説を筆頭に、関連事象への圧倒的な情報量とその密度
そしてストーリー展開の