ヘニング・マンケルのレビュー一覧
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「背後の足音(上下)」
夏至前夜、三人の若者が公園でパーティーを開いていた。18世紀の服装、料理、ワイン。彼らをうかがう目があるとも知らず・・・。ある日イースタ警察署に夏至前夜に友人と出かけて以来行方不明の娘を捜してくれという母親の訴えが出された。その捜査会議に刑事のひとりが無断で欠席する。几帳面な人物がなぜ?不審に思ってアパートを訪ねたヴァランダーの目の前に信じられない光景が広がっていた。(上のあらすじ)
作者はへニング・マンケル。現在63歳の大ベテラン、スウェーデン出身(私が出会った初のスウェーデン人作家です)。彼はクルト・ヴァランダー警部を主人公にした作品を書き続けているようで、この「背後の足音Steget efter」は1997年に発表されたヴァランダーシリーズ(現在最新作は「Den orolige mannen」(2009))です。
昔の作品ですが、当時の時代の空気を感じさせない作風になっています。魅力は推理小説の醍醐味の1つである犯人追求の過程です。ヴァランダーにくっついて行く私がいました。また犯人にも感じる点があります。90年代のはずなんですけどね、なるほど63歳恐るべし。
しかし、ちょっとヴァランダー警部シリーズ第1作目「殺人者の顔」を本気で読みたくなりましたね、これはw。また、この作品をきっかけに他の大ベテランの作家達の作品を読んでみたいと考えるようにもなりました。
63歳クラスの作家は誰がおりましたでしょうか?うーーん、ぱっと出てこない自分が悲しいw -
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数年前に逮捕した被疑者の葬儀に出席するシーンから始まる。そんな事件あったかしらと記憶を呼び起こし愕然とする。このシリーズにハマるきっかけとなった傑作なのに、犯人の名前すら忘れかけているとは。他にも過去事件の断片がちらちらと顔を出し、いよいよフィナーレが近いことをイヤでも認識させられる。
今回の事件はコンピュータ犯罪。前作で犯罪の多様化にスポットを当ててみせたが、ますます複雑で、しかも高等なスキルを要する犯罪の本質に作者は警鐘を鳴らしている。だが読み終えてみると、メインは事件ではなくヴァランダーなのだという印象が強い。
組織内で孤立し、友は去り、新しいタイプの犯罪に焦燥する彼の姿は、いつにも増して疲れているように見える。過去にとらわれるあまり、現在で足踏みしてしまっている諸々の状況が、悲しくもあり可笑しくもあり。フィナーレを迎えるのは必然なのかな。でもこれだけのキャラクターなのに、異常な肩入れをせずに、シリーズ内でちゃんと成熟させている作者のスタンスには毎回感心させられる。
事件の解決と主人公の苦悩──作中でふたつのストーリーが同時進行しているように見えたが、結局はひとつの物語として終結するから不思議。キレイにまとまってないところが逆に現実っぽくて私は好きです。壁を撃ち破ったヴァランダーの決意が気になるところだが、あとがきを読むに、第九弾は数年先かな。 -
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スウェーデンのミステリ。
警部クルト・ヴァランダーが主人公のシリーズ3作目。
ここから分厚くなってます。
イースタはスウェーデン南端の田舎町だが、交通の要衝にあるため、国際的な事件も起きうる。
思いも寄らぬ南アフリカの陰謀に巻き込まれる。
南アフリカでの人種問題をさかのぼるプロローグから、重厚に書き込まれています。
国際的なベストセラーになった理由がわかる気がしました。
ヴァランダー個人は妻に出て行かれたのはもう諦めたが、次の一歩は踏み出せず、落ち着かない精神状態。
ストックホルムに住む娘のリンダが心配でいつも会いたがっているのだが、なかなか上手くいかない。
捜査のためにストックホルムに出向くと、リンダがすっかり大人の女性になっていることに気づかされる。
画家の父親はすこし呆けかけているような兆候もあるのだが、家政婦と結婚すると言い出して、ヴァランダーを焦らせる。
ごく普通の主婦が3日、行方不明に。
おそらくもう死んでいるだろうと感じながらも口には出せず、捜査に取り組む署員。
捜査していくと主婦にも意外な側面があったりはするのだが。
ヴァランダーは事件にのめり込むことで突破口を見つけるタイプ。
容疑者の一人と深く関わることになる。
南アフリカ共和国での出来事も緊迫していて、迫力。
ひどい人種差別が長く続いた後、変化が訪れようとしているが、それに対する抵抗も大きい。
権力を握るボーア人(オランダ系入植者)の生活ぶりがリアルなので、ネルソン・マンデラ暗殺を狙う動きも説得力があります。
1993年発表当時、マンデラが27年間の投獄から釈放されたという時期から隔たっていないリアルタイムだったことも、力のこもっている原因かも。
ソ連の崩壊も、世界を動かしていたのですね。
南アフリカからは遙かに遠いスウェーデンがなぜ関わるか、ということにも理由はちゃんとあるのです。
暗殺のために雇われた殺し屋マバシャは、アフリカのズールー族の出。
異国をさまよう男の心象風景に深みがあります。
ヴァランダーの家族まで巻き込んだ対決と銃撃戦へ。
作者は何年もアフリカに住んで仕事をしていた経験があり、帰国後にスウェーデンの人種差別が悪化していると感じたとか。
それも実感を伴った描写に繋がっていると思います。
2004年9月翻訳発行。 -
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スウェーデンの警察ものミステリのシリーズ2作目。
田舎町イースタの警部クルト・ヴァランダーが主人公。
妻に去られ、それなりに落ちついては来たが、警察の仕事に疲れて、転職を考えているのだったが…
今回は、ラトヴィアという異国が主な舞台に。
バルト三国の一つで、ソ連解体の時期に大揺れとなって、荒廃していた。
スウェーデンはそう遠くはないのだが、体制が違うため行き来は滅多にない。
救命ボートで流れ着いた死体は二人が抱き合うように乗せられ、高級なスーツを着ていた。
何の印もないボートがじつはラトヴィアの物だったようなので、合同で捜査することになるのだったが…
たった一人で訪れた警官リエパ中佐は、言葉もなかなか通じない。ヴァランダーと下手な英語でやりとりする。
地味だが優秀なことを、互いにすぐ理解し合うのだった。
ところが…
逆にラトヴィアの首都リガを訪れたヴァランダーは、制約の厳しい街に違和感を覚える。
決められたホテルに泊まり、待遇は良いが、ホテルの往復にも見張りが付いている様子なのだ。
リエパ中佐の妻バイバが、こっそりホテルを訪れ、何かを告げようとする。
何が起こっているのか?
ヴァランダーはこれまで何も知らなかったと痛感することに。
スパイ物めいた異色作だが、ヴァランダーの人生に大きな変化が訪れるので、じつは見逃せない作品でした。 -
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50歳目前にして糖尿病になったりと、老いを感じさせる描写がちらほら。本シリーズは単独として読んでももちろん面白いが、登場人物たちの成長や変化は、シリーズを通してじっくりゆっくり描かれる。そんな捜査チームのひとりが悲劇に見舞われるというのが事件の発端。
寝る間なし手掛かりなしというスタイルは今回も同じだが、被害者とヴァランダーとの距離感が根底にあるため、心理的な苦しさや葛藤がやや前面に出ている気がする。仲間を失った自分、老いていく自分、事件を解決できない自分──内面にくすぶる苦悩と対峙できないまま、混乱の中で必死に手掛かりを追うヴァランダーに、不思議なくらい感情移入してしまう。
国内情勢を反映させた事件の本質や、被害者となってしまった複雑な要因など、これまでは多角的な面から事件を捉える印象が強かったのだが、今回は捜査チームを軸に据え、犯人へと近づく過程が丁寧に描かれている。そういう意味では謎解きの要素が強い作品と言えるだろう。
ひとつ残念だったのは、犯人の造形が少し薄味だったこと。今までとは毛色の違う事件であり、なおかつ犯罪そのもの様相が変わってきたという警告でもあるのだが、肝心の犯人にそこまでの濃さがない。事件の全貌に対してはきちっとまとめるシリーズなのに、今回は若干曖昧さが残った。
上下巻で相当な長さだが、そこを一切感じさせない手腕はさすがの一言。筆致はゆっくりしてるのに、ページを繰る手は常に止まらず。少し長めのプロローグが心地よいストレッチとなって、じんわり癒してくれる。 -
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夏至前夜、三人の若者が行方不明になる。そしてその捜索を依頼されたイースタ署の刑事のひとりと連絡がとれなくなり……。
という事件の幕開き。
スウェーデンのクルト・ヴァランダー刑事シリーズの新刊。
相変わらず低調な男です、ヴァランダー刑事。これまでのシリーズも離婚した妻へ未練たっぷりで、年頃の娘のことは心配で、恋人との不仲に悩み、父親との確執にも悩み……、事件の捜査と愚痴に支配されている彼でしたが、ここにきてやっと諸問題に決着がついたかとおもいきや、今回は体調不良に悩まされることになったらしい。(それはメタボですよ、メタボ)
残酷で予測のつかない事件が展開しているのに、飽きもせず、くよくよと考え込んでいます、ヴァランダー刑事。
鬱陶しいはずなのに、つい、その愚痴につきあって、分厚い上下巻を読んでしまうのがこのシリーズの不思議なところだ。
(しかし、いくら落ち込んでいるからって、初対面の未亡人に抱きつきたいと考えるのはどうかとおもうよ、ヴァランダー刑事) -
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スウェーデンの小さな町の警察官、クルト・ヴァランダーのシリーズ5作目。
事件の事で思い悩んでいた1秒後には、季節の移り変わりの美しさに目を奪われ、遠距離恋愛中の女性に思いを馳せ、病気が発覚した父親と向かい合おうと考え、ふらっとやってきた愛娘に癒され…とにかく人間くさいおじさんが魅力的。こういうジャンルだと、いつのまにか超人的になっちゃう主人公が多い中、何度も何度も同じ悩みにはまったり、鬱からなかなか抜け出せなかったり。ヨーロッパの片隅の小さな町で、変化していく世界への不安を抱えながら、それでも日常生活のなかに光を見出そうともがいている主人公が、とにかく情けなくてかっこいい。 -
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殺された老人エリクソンの金庫には、傭兵と思われる人物の手記が入っていた。
そして、遺言には、かけ離れた土地の教会への高額の寄付が。
なぜそんな所に?
ヴァランダーは27年前に行方不明になった女性がいたことを調べ始める。
一方、花屋の主人は遺体で発見される。
森の中で…監禁された後に殺されていたのだ。
謎めいた手口の理由とは?
治安の悪化を憂えて市民自警団を作る動きが活発化し、それも警察には頭の痛い問題となる。
マーティンソン刑事の娘が学校でいじめに遭い、父親が刑事だからという理由だったために、真面目なマーティンソンは辞職を考える。
引き留められるのはあなただけと言われるヴァランダー。
ヴァランダーの判断は?
バルト海に面する小さな町イースタで起きるのは国際的な関わりの含んだ事件。
事情聴取に際して、ヴァランダーの人柄が生きてきます。
1996年発表のシリーズ6作目、2010年8月翻訳発行。 -
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スウェーデンの警察物。
クルト・ヴァランダーが主人公のシリーズ、6作目。
スウェーデン南端のイースタという町はそれほど大きくはないのだが、交通の要衝に当たっているために犯罪は少なくない。
クルトは、父とローマ旅行に行って帰ってきた所。
父は気むずかしく、痴呆が時折出てもいたのであまり上手くいっていなかったが、旅行先では楽しく過ごすことが出来た。
父は長年ほとんど同じ絵を描き続けてきた画家で、イタリアに行くのは生涯の夢だったらしい。
その旅行に同行できた幸せを感じる。
帰国後、妙な事件が相次ぐ。
元自動車販売会社経営の老人エリクソンが行方不明になり、様子を見に行ったヴァランダーは、敷地内の壕に落ちて串刺しになっているのを発見。
周到に用意された犯罪の残酷さに、一斉捜査にかかったメンバーは青ざめる。
花屋の老人ルーンフェルトが海外旅行に行くはずが行っていないという事件も。
一見、孤独がちで無害な彼らには、裏の顔が…
犯人の側からの描写も入るので、大体犯人像はわかっているが、詳細はむろんわからない。
連続殺人のきっかけは、思いがけない。アルジェリアで外国人女性が襲われた事件にあった…
前半は、恐るべき犯人が警察の前に立ちはだかるという印象。
連続殺人でもサイコパスというわけではない、知性と狂気を併せ持つ犯人。意志が強く計画的で、ある意味、軍人のよう?
後半、犯人に迫っていく様子がスリリングに描かれます。
父の死、その前後の家族の気持ちややりとりも。
娘のリンダは独り立ちしていて、なかなか連絡もくれない。クルトは恋人のバイバと結婚を考えているが、両親の離婚を見ていた娘には結婚に向いていない人間と批判される。
バイバになかなか連絡ができず、結婚したい気持ちになっているにしては、仕事優先過ぎ?おいおい、どっちなのよっていう。
感情的で、のめり込みタイプな名物刑事なのよね。
警官仲間とは上手くいっている様子。
シリーズ1作目で妻に出て行かれたものの、諦めきれないでいたみっともなさよりは少しは進歩しているのかな? -
Posted by ブクログ
クルト・ヴァランダーを主人公にした警察小説シリーズ6作目に
あたる本書の事件の幕開けも牧歌的なイメージ色濃い
スウェーデンには到底似つかわしくない残忍な犯行現場。
父とのローマ2人旅の余韻にゆっくり浸る間もないまま
連続殺人事件解決に挑んでゆく。
このシリーズは主人公のキャラクターの魅力に惹かれ、読後事件の
内容は忘れても、家族との会話、同僚や上司、友人刑事たちとの
エピソードが不思議と記憶に残る。
今回も事件解決に忙しい最中、わざわざ遠距離恋愛中の恋人
バイパに電話してもめたり、そうかと思うと2人で暮らすための
新居や飼犬を探してまわるマメでカワイイ中年男の一面も
垣間見れる。またしても次作の翻訳が待ち遠しいのである。