ヘニング・マンケルのレビュー一覧
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刑事クルト・ヴァランダー終幕の物語である
ここではスウェーデンの田舎町の刑事の、この長いシリーズが、なぜこれほどまでに人を惹きつけるのか考えてみたい
それはひとえに主人公であるクルト・ヴァランダーがいついかなるときも『苦悩する男』だったからではないだろうか
クルト・ヴァランダーは非常に欠点の多い男だった
とりわけ彼を象徴するのは、その怒りっぽい短気な性分であったと思う
ただし、その怒りが向けられる先は、ほとんどの場合、人々の生活を脅かす者たちであり、その存在を許す社会であり、世界であり、自分自身だったのではなかったか
時に全身で怒り、時に自らの無力を嘆き、時に見えない不安に迷う彼が、 -
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いよいよ刑事ヴァランダーシリーズ最終決戦である
このあと中編を含む副読本的な巻があるにはあるがそうなのだ
何だよ最終決戦て
ヴァランダーも59歳
デンマークの警察官の定年ていくつなんだろう?
いや今それはいいだろ!っていうのを考えながら読み進む
それにしても北欧感がすごい
仕上げてきたなー、ヘニング・マンケル最終決戦に向けて仕上げてきたなーという感じだ
有馬記念だ
今ある北欧ミステリーって結局マンケルの模倣なんじゃないか?と思えるほどの北欧感
そしてヴァランダーは警察官なのでコツコツ積み上げていく捜査がもちろんメインストリームなんだが、ひらめき型の名探偵でもあるのよ
そしてひらめき型の -
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ここに来て刑事クルト・ヴァランダーの若かりし頃を描いた中短編集
20代、30代、40代のヴァランダーが躍動します
もうシリーズも終わりなのに!
もっとヴァランダーが好きになってしまったではないか!
別れが辛くなるじゃないか!
とにかく欠点が多い
それがヴァランダー
特に惚れっぽい上に未練たらしいところが素晴らしいw
めちゃくそ短気なので友達にはしたくないが、好きにならずにいられない
娘のリンダが大好き過ぎるのに表に出さないように努めるところが、かわいい
普段事件のことばっかり考えているのでほぼ不眠症だが、娘が泊まりに来た時だけ熟睡できる
なんか分かる
父親とは喧嘩ばかりだが、なんかあ -
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ネタバレスウェーデンの作家ヘニング・マンケルのクルト・ヴァランダーシリーズ第五弾。
夏休みを直前に迎え、バイバとの旅行を楽しみにするヴァランダー。農家から、畑に知らない娘がいるとの通報を受け現場に向かうと、娘はガソリンを浴びヴァランダーの目の前で焼身自殺をする。一方、やり手の元大臣が斧で殺された上、頭皮を持ち去られる事件が発生し。。。
過去作にはない残虐な手口で殺される被害者たち。冒頭の焼身自殺の件はなかなか浮かび上がってこない。
今作は犯人側の視点もあるため、実は早々に誰が犯行を繰り返しているのかわかる。いつものイースタ署の面々の捜査の間に挿入されるため、いかに犯人像がずらされているか等がわかり -
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〜ファイアーウォールがあるのはコンピューターの世界だけではなさそうだ。自分の中にもある。自分でもどうやって突き抜けたらいいかわからない防火壁が。〜
というわけで刑事ヴァランダーシリーズも外伝入れても残り3作品ですよ
もうなんかこれから新たな物語が始まる感を最後に出しておいて終わるのかい!っていうね
刑事ヴァランダーシリーズとはなんなのか?っていうのが、かなりはっきりと見えてきましたよ
すばり警鐘ですな
スウェーデンという国をうっすらと覆う社会不安にいち早く気付いたヘニング・マンケルがクルト・ヴァランダーというめんどくさいおっさんを通して警告を発しているように思うのです
このまま進んで -
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なぜ俺はスウェーデン人でないのか
悔やまれてならない
もし、俺がスウェーデン人であったなら
この傑作がさらに7,000倍は面白かったはずだ
残念でならない
はい、というわけでね
刑事ヴァランダーです
もう何が凄いってあーた
ヴァランダーもの忘れがひどすぎるよ!
もう8割方携帯を忘れる
ちゃんと持ってる残りの2割もだいたい充電がこころもとない
初老の哀しさよ
ヴァランダーはコツコツと事実を積み重ねて捜査する警察官でありながら、ちょっとした違和感から閃きを得る天才型の探偵でもある
それは事件現場で感じるものだったり、誰かと話したときの言葉だったりする
後になってピカーン!と閃く
あの時の -
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『刑事クルト・ヴァランダーシリーズ』である
第何弾であるかに興味はない
やばい、とんでもなく面白い
面白いのでどんどん読みたいのだが、どうしても間が開いてしまう
『ヴァランダーシリーズ』は完結しているので、どんどん読むと終わってしまうのだ!
くぬー!
このジレンマよ
シリーズどんどん読みたいけど、読みたくない
なにこの気持ち?
( ゚д゚)ハッ!
これってもしや恋?(違うわ)
そして、な、なんとなんと!
ヴァランダー…糖尿病になってもうた
本人は糖尿病の疑いありとか言ってる
血糖値302で糖尿病の可能性ありて君
302は完全無欠な糖尿病だわ!( ゚д゚ )クワッ!!
このな -
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マンケル作品として個人的には初となる『イタリアン・シューズ』を読んでから5年。スウェーデン・ミステリーの代表格的存在である刑事ヴァランダー・シリーズは第一作と最終作しか何故か読んでいないという体たらくでお恥ずかしい限りなのだが、作者の遺作となる本作は『イタリアン・シューズ』とセット作と言いながら、さらに厚みを増して、なおかつ描写の丁寧さ、深さを考えると人生を振り返る作者と本作の主人公フレドリック・ヴェリーンは、分身ではないかと推察される。しかし、ヘニング・マンケルには『流砂』というノンフィクションの遺作が遺されていて、これが彼の<白鳥の歌>として死後に出版されている。
故に本書はフィクシ -
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ネタバレヘニング・マンケル最後の長編小説。マンケル自身ががんの末期であることを承知の上で書かれた小説と考えて読むと色々と考えさせられる。
本作は「イタリアン・シューズ」の続編(時系列のずれはあるけど実質そういうことだろう)で、主人公の外科医崩れフレデリックは相変わらずのクセが強いちょっと根性がヒネくれたクソジジイである。
家が火災で燃え尽きる場面から物語が始まる。前作のタイトルにもなった、イタリアミラノの凄腕靴職人が作ったハンドメイド革靴も金属製のバックルを残して燃え尽き、それ以外の家財もほぼ焼き尽くされて途方にくれるフレデリック。しかも警察からは保険金目当ての自作自演放火と疑われだす始末。
可 -
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「我々の時代、狂気と正常の違いがなくなってきている」
このシリーズ、作者ヘニング・マンケルは、現代社会に対する思いを主人公ヴァランダーを通じて、我々に伝えようとしている。
それは、シリーズの回を重ねるごとに強くなる。
「ゴールドダガー賞」を受賞した前作の事件から数ヶ月後、再び想像を絶する事件がイースタ署を襲う。
穴の中に竹槍で串刺しとなった死体、ポツンと宙吊りにされた死体、生きたまま袋に入れられて水死した死体。ヴァランダーは仲間とともに丹念に捜査を進めるも、全く手掛かりが見出せない。
隠れたDV被害、声をあげることのできない女性たち。凶悪化する犯罪と「夜警」と称した市民暴力集団など、現代 -
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ネタバレへニング・マンケルのミステリーではない(と言い切っていいのか?とにかく謎解きが主体ではないのは確か)長編小説。
主人公は元外科医で偏屈じじい、他人との交流を極力断つために無人島に一人で住む。凍った海に浸かったり、ボロ船を直そうとするだけで眺めたり、船で島に来る郵便配達夫をからかったり…まぁとにかくヘンコなジジイなのであるが。
そんなジジイがかつて手ひどく捨てた恋人がある日、余命いくばくもない重病の末期状態で島にやってくる。付き合っていたころ約束した湖を死ぬまでに見せてくれと言われて、断りきれないじじいは恋人ともに湖を訪れる
そこから、じじいの人生がエラいこと動き始めるのだが、それはじじい -
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警察の仕事というものは基本的に、一枚のメモ用紙に書かれている決定的な情報を確認することの積み重ねにほかならないのだ。
『目くらましの道』というタイトルがまず秀逸だと感じました
自分たちは「目くらましの道」を進んでないよなと、一歩進んでは後ろを振り返り確認する
その積み重ねでちょっとづつ進んでいく
それがいいんですよね
そしてもちろん気がつくと「目くらましの道」に進んでるんですよね
じゃなきゃ小説になんないですもん(それを言っちゃあおしまいよw)
ヴァランダーは捜査の途中で、最初の頃に見聞きした何気ない事柄が事件の重要な鍵を握っていることに深層心理で気付きますが、それがどうしても思い出せま -
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シリーズ最高作の評判はダテじゃなかった。
なぜこのシリーズに惹かれるのかは、これまでさんざん書いてきた。
「文章の読みやすさ」「魅力的な人物による没入感」「物語のスピード感」「時系列というシンプルさ」
今回特に「映像的表現によるドラマチック感」が抜群だと思う。
さらに、そこにとどまらずヘニング・マンケルはここでもメッセージを持っている。
エピローグで描かれているヴァランダーの心情は、変わりゆく社会への作者自身の不安と怒りであろう。
主人公ヴァランダーに代表される感情は、この国の負の良心なのだろう。
移りゆく時の先は、歳を重ねるごとに暗さを増していく……寂しいことですが、仕方ありません。