ヘニング・マンケルのレビュー一覧
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ヴァランダーのシリーズ5作目にして、CWA賞受賞作品。解説によるとシリーズの代表作といわれているともあり、いつも通り読み応え十分のドッシリとした社会派ミステリ。起きる事件は凄惨なもので、犯人の動機もやりきれないものなのですが、作家の力量もありぐいぐいと読まされます。個人的にはこの作品よりも『白い雌ライオン』の方が印象深いのですが、思い返すとヴァランダーが主役なのに名わき役のような存在感で、南アフリカの殺し屋だったりタイトルのもとになった人物だったりの方が存在感があり、そのためヴァランダー・シリーズの代表作、と言うにはちょっと違うのかもしれません。ほかの方のレビューを読んでいたら、名優ケネス・ブラナー主演でドラマになっているらしいので、ちょっと見てみたい気持ちになりました。
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4作目。冒頭では3作目の終盤に正当防衛とはいえ人を殺めてしまった事実に押しつぶされそうになり燃え尽きたようになって辞職することを決意しているヴァランダー。旧知の弁護士が父親の事故死に不審な点があると、療養先を探しあてて相談しに訪ねて来たのも断るほどの憔悴ぶりだったのが、療養先から戻るとその弁護士が銃殺されたことを知り、辞職を取りやめて自責の念からその事件の担当刑事として復職。かつての同僚や上司はとまどいながらもヴァランダーの翻意を歓迎し一丸となって事件の解決のために捜査にまい進します。今回は事件そのものの動機や謎解きよりも、その題材を使ってスウェーデンの社会の変遷や警察組織内の旧弊な価値観に対抗する新人女性刑事の活躍や、ヴァランダーの心の在り方などを丁寧に描いていて、そちらの方に読みごたえがありました。たいていのシリーズものの主人公とは違って失敗もするし挫折もするし苦悩もするし父親とも娘ともぎくしゃくしているし、捜査活動の最中に死の恐怖に襲われて弱腰になったりもするヨレヨレの人間くさいヴァランダーですが、いざとなると命の危険を感じながらもたった一人で敵の城(今回は犯人が文字通り城に住んでいる)に突撃してしまうめちゃくちゃさもあり、強いのか弱いのか弱いのか強いのかが全然わからなくて、そこが面白いです。この作品から登場した女性刑事、フーグルンドがいい感じでした。これから活躍していくようなので楽しみです。
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長い、とにかく長い700ページ。
だからと言ってつまらないというわけではなく、二冊同時に読み切った感じ。
南アフリカ共和国がまさに変わろうとしているとき、北欧スウェーデンで不思議な殺人事件が起こった。
読み手は前作同様に、ヴァランダーの執拗な行動の行方と次々に巻き起こる新たな展開、その先にあることへの興味でひっぱりこまれていく。
いっぽうで、
ネルソン・マンデラとデ・クラーク大統領による平和的な変革への道筋が、まさに進められているとき、これまでの社会を維持するために暴力による動乱の陰謀が企てられ、陰謀の気配を知ったものとの探り合いが始まる。
……作者はその様子を、これだけで一つ小説が成立するほど深く描写している。
(だから、これほどのボリュームになったとも思える)
このシリーズに登場する人物は、みな、なにかを抱えながら生きている。
主人公ヴァランダーや同僚、家族は前作同様だが、この物語では、相対する人物にもそれが見られる。
元ソ連KGBのコノヴァレンコ
南アフリカの白人政治結社メンバーで陰謀の実務推進者ヤン・クライン
南アフリカの黒人でありながら白人からの暗殺請負を生業としているマバジャ
スウェーデンに住むロシア人でコノヴァレンコの協力者リコフとタニア
ヤン・クラインの家政婦ミランダとその子供
などなど……。
彼らがここにいたるまでの道のりも、読者へ訴えるものがうっすらと透けて見える。
20世紀のアフリカ大陸の矛盾……。
白い雌ライオンが見つめる先は、なにか。 -
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あーいやだ、いやだ……。
いやになるほどの孤独な中年男性の生活。
出て行った妻へたたみかけるように詰問する姿、前頭葉の老化による感情コントロールの低下に刑事という職業の癖が加わり相手を不快にする……そりゃ逃げるわ〜。
そのくせ、「褐色の女性」との妄想や、女性検察官へのちょっかい……。
妻や娘のことも、父親のことも、逃げるようにしてお酒に埋没したり、お腹ができたことを気にしながら、サラダをいやいや食べる姿など、ゾッとする。
数十年会ってない友人に突然しつこく電話したり、慌てて隠れた時にぶつかった怪我も「殴られた」とうそぶく……。
いったいこの人のどこが良いのか?
ところが、読み進めていくうちに不思議なリズムが出てきて、次第にこの主人公と「共に居る」ような感覚に陥ちてゆく。
その結果、「シリアスなドタバタ感」という奇妙な面白さが生まれ、なんだか愛おしくなってくる。
私は、結構好きだと思う。 -
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ヴァランダーのシリーズ2作目。2作目なのにいきなりスウェーデンを飛び出し、独立後においてもロシア支配が色濃く残るラトヴィアが舞台です。事件の発端は密輸船の乗組員が漂流する救命ボートを発見し回収しようと手繰り寄せたところスーツを着た死体が2体乗っているのに気づき、沿岸まで牽引してきたこと。歯の治療痕などから死体はラトヴィアのギャングであることがわかり、かの国の警察に引継ぎをするべく一人の刑事に来てもらいます。お互いに得意でもない英語で言葉少なに会話し黙って酒を飲んだリエパ少佐とヴァランダーはお互いに尊敬の念と親近感を持ちます。ラトヴィアに引継いだのでこれで一件落着したはずが、帰国したその日にリエパ少佐の身に起きたことによりヴァランダーは全く知らない土地であるラトヴィアに呼ばれ、良く状況がわからないまま大きな渦に巻き込まれてしまいます。距離的には近いラトヴィアとスウェーデンですが政治状況も歴史も社会制度も全然違っていて、ラトヴィアでは軍の支配の名残なのか警察の階級も大佐・中佐・少佐と称されているのでした。短い親交ながら信頼に足る人物とお互いに認め合ったリエパ少佐への義理という細い糸の繋がりだけで、土地勘も無く誰が敵で誰が味方なのかもわからないなかで、ほとんど不可能なのではないかというミッションを与えられて奮闘するヴァランダーの様子は、サスペンスの要素もあり、アクションもありながら、哲学的な思索もあって、不思議な作品でした。読み始めたばかりのシリーズでこの展開で少し戸惑いましたが、面白かったです。
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一冊も読んだことが無いのに本屋さんでずらっと並んでいる背表紙を何度も見ていたせいか作家のフルネームと『白い雌ライオン』というタイトルが記憶に残っていたシリーズ、知人の読書家に「すごーく面白い」と聞いたのと、最近北欧の作品を固めて読んでいることもあり遂に読み始めました。日本語版発売から20年経過していますが、自分が主人公ヴァランダーの境遇や感情を理解しやすい年齢になっているので今のタイミングで読んで正解でした。移民の問題や制度が目指したものと実際の運営状態の解離、都市部と農村部の違いなどが、衝撃的な事件とその捜査の合間に丁寧に語られます。中年刑事の常?としてヴァランダーは妻に捨てられて惨めで荒んで、食生活は乱れ不健康に太っているものの、刑事としての矜持と勘をもって諦めずに捜査にあたります。記者会見用の原稿を書いたり捜査のシフトを組んだり引継ぎ報告書を書いたりという他の作品ではあまり見られない刑事の地味な仕事ぶりも出て来たのが新鮮でした。内容が濃い割には短く、スッと読めました。完結しているシリーズなので一気読みが出来るのが嬉しいです。
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Posted by ブクログ
ヴァランダーが20代の新米警官時代から、40代の中年刑事まで、モナ(若い時はガールフレンド、その後結婚して別居)や父親との関係に悩みながら持ち前の勘と粘り強さで事件を解決する姿を描く。
いつもながら実直なヴァランダーとそれを取り巻く、こらまた実直な刑事たち。みんな何かに悩んでるのは一緒だな。そんな人生を含めて楽しめるのが、このシリーズ。やっぱり長編が読みたいな。3.8
フレーズを読んで思ったのは、the Wireのリアリティ。はつらつとしてるのはマクノルティくらい(それでも中年だけど)、女性刑事も見た目より実力。Boschもそれに近いかな。その点、シカゴPDはイケメン&美人でリアリティという点ではちょっとね。