ヘニング・マンケルのレビュー一覧
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三年ぶりの新作。
プロローグで明かされる“五番目の女”。なるほどそういう話なのかと了解するも、コトはそう単純ではないことを早々に思い知らされる。
捜査に忙殺されるヴァランダー。父を亡くした喪失感、手掛かりゼロの焦燥感、その合間に将来のプランを空想しては、新たな被害者の出現に絶望を感じてひたすら沈み込む。このヒロイックとは縁遠い主人公に、シリーズ特有の頑固さや堅実さがよく表れていると思う。脇を固める捜査官たちも等身大で人間臭い。プロフェッショナルのいない小さなチームだが、役割分担に長け実に手際が良い。「少数でこれだけ機能している捜査陣とは一緒に働いたことがない」とは、応援に来た捜査員の台詞。
突破口はおろか手掛かりさえ掴めない難関な事件は、バラバラの点が線につながるのか予測も出来ない。ゼロの地点から、集まった少ない手掛かりに対し、角度を変え想像力を働かせ事件の骨格を見出そうとする。そこに偶然の証拠や証人は存在しない。寝る時間を削って歩き聞き、信念と執念を持って追いつめたチームワークの勝利である。そして冒頭のタイトルの意味に帰結する。これこそまさに警察小説の真髄。
読後は余韻が後を引き、じわじわと感情の奥底に沁みこんでくる。いいミステリとはそういうもの。特にこのシリーズは考えさせられることが多い。国や地域の抱える問題が常にストーリーとリンクしているので、北欧ミステリはただの謎解きでは終わらない。エンタメ性に傾斜することもなく、真摯で奥が深く、そして仄暗い。捜査の終焉にある種の脱力を感じながら、一方でどことなく身を引き締めてくれる、私にとっては唯一無二のシリーズなのである。 -
Posted by ブクログ
下巻に入っても期待は裏切られませんでした。人物像がはっきりと浮かび上がっていること、1995年当時の世相がよく伝わること、そして着地がすっきりしていることなどがポイントの高さにつながっています。昔読んだ「マルティン・ベック・シリーズ」とは雰囲気が違いますが、こちらのスウェーデン警察小説シリーズもお勧めです。ぜひ一作目の「殺人者の顔」からどうぞ。追記。スウェーデンでドラマ化されたという話は、解説で読んだ記憶があるし、ケネス・ブラナー主演で、去年イギリスでドラマ化された(舞台はスウェーデン)というニュースも聞いていたが、まさか、今日WOWOWで放送されていたとは知りませんでした。しかも一作目が「目くらましの道」。残りの二作はこれから翻訳される作品なのか、それとも、オリジナルなのかは不明ですが。引越しを機に、解約してしまったのが悔やまれる。でも、ソフト化されることを期待しましょう。
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「私は、首筋が固まっている転がる石(ローリングストーン)だ」
物語はいつものようにミステリー以外の描写に溢れている。
今回は、主人公ビルギッタをはじめとして、人生も半ば過ぎた女性たちの虚ろな揺れ動きや頑なさを、それぞれの物語が語られる。
一方で、作者ヘニング・マンケルらしく、依然として続く人種差別や経済格差、資本主義の行き着く先にある暗闇を、描く。
事件の背景にあるのは、19世紀の植民地支配から現代に至る中国があるが、ヨーロッパの現代知識人から見た中国は、日本人から見て少し違うかも。まるで現代の欧米人に、虐げていた人たちの逆襲に怯えよと、警鐘を鳴らしているかのよう。
刑事ヴァランダー同様にミステリーに留まらない物語ではあるが、それでも最初のミステリーの謎をもう少し深掘りしてほしかった。
だからといって面白さが損なわれているわけではない。
「終わりというものは、いつもなにかの始まり」
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(上下)
ヘニング・マンケルを 読もう思った。並んでいた初期のものも面白そうだったが読んだのは順不同、これはシリーズの5作目だった、 これは大正解で面白かった。《目くらましの道 上下巻》
※ネタバレ注意! 以下の文には結末や犯人など重要な内容が含まれている場合があります。
初めて読むには内部の人間関係の話が少しついていけなくて残念だった。これはもう少し読んでみないといけないと積読山の頂を見下ろしてみたが、まぁいいか、気合も気が抜けていたが 面白かった。
「ミレニアム」で難しかったVの多い名前と、登場人物も多くて頭も目もぐるぐる(笑)
しかしそんなことは二の次で、面白かった。慣れれば一気読みで、解決したときはほっとした。
倒叙型ミステリというのか、はじめの方で犯人がわかる。それを追い詰めるヴァランダーが率いるイースタの警察官チーム、事件が大きくなるにつれ、近隣から応援が来る。
読み始めて少しすると、全貌はこうでないかと予想が付く。
その上で、捜査の過程や、心理上の葛藤が興味をひく、文章も静かで、残忍なシーンもあるが、緊迫した場面でも静かに深く引き込まれた。
ドミニカ共和国にドロレス・マリアという娘がいた。話はここから始まる。
6月の終わり、ヴァランダー警部は、やっと暖かくなったスウェーデンの季節を楽しんでいた。夏休みには恋人と旅行する計画だった。
そこに通報があり、出かけた先は農地一面に菜の花が咲いていた、その中で、ガソリンをかぶって少女が自殺していた。
しばらくして、以前、法務大臣だった人物が鉈で背骨を切りつけられ即死、頭の皮をはがされていた。
次に裕福な画商がパーティの途中に、東屋で頭をまっぷたつに切られ頭の皮をはがされていた。
次に、駅前の工事中の穴から、目を焼かれやはり斧で切られた死体が出た。
暫くして、不審なペーパー取引で話題になり、その後も犯罪の臭いがしていた会計士が殺された。
連続する殺人事件を捜査する警察官は泥のように疲れた体を動かして事件を追っていた、
一方犯人は、特異な儀式のように、綿密な計画でことを成功させてきた。
ヴァランダー警部は発病した父を見舞うことも、夏休みの旅行の期限が迫ることも、菜の花の中で残酷な自死を遂げた少女のことも心から離れない。
捜査官にも個人的な生活があり、性格も違っている。読むうちのそれも事件捜査に深くかかわりつつ、メンバーにもなじんで行く。
指揮を任されたヴァランダー警部は、心の奥深くに自分でも立ち入りたくない思いを抱えている。それがいつの間にか、犯人に向かう捜査線からはずれ「目くらましの道」に踏み入っていたのではないか、と解決した後で自戒することになる。何かと悩む性格だ。
ホラーチックなサスペンスであり、捜査官たちの群像劇でもある。
スウェーデンの変りつつある世相を背景に、穏やかだった昔と違って現代の殺伐な事件を嘆く、ヴァランダー警部の心が迫ってくる、犯人の側から見れば、動機など、殺人の理由もなぜかうら悲しい小説でもある。
1作目 殺人者の顔
5作目 目くらましの道 -
Posted by ブクログ
(上下巻)
同僚のスウェードべりが至近距離から撃たれて死んだ。海岸で起きた若者射殺事件との関係はあるのか。複雑な背景も読みどころだった。
スウェーデン、イースタ署のヴァランダー刑事シリーズ。
今回は、北の国の風土や、気質が参考になった。
プロローグは、8月の夏至前夜、若者たちが集まってパーティを開いている。それを木陰から窺い、パーティー用に扮装した三人を一瞬で射殺した男がいる。
だが、彼らは海外旅行に出たということにして、親たちには旅行先から便りが届いている。
一人の親が子供の行方を不審に思い警察に捜索願いを出すが、旅先から葉書が届いているために、失踪として扱ってもらえないでいた。
ヴァランダーは体調が優れない。れっきとした糖尿病の症状で、のどが渇きトイレに通うのが忙しい。
しかし彼は、糖尿病が恥ずかしくて、診察も治療も受けずにいる。
同僚のスウェードベリが欠勤していた、几帳面な彼が無断欠勤する理由を知るために、訪ねて行って部屋に入ってみると、至近距離から頭を打たれて死んでいた。
彼の部屋から三人の若者と一人の女性の写真が見つかる。
スウェードベリは密かにこの事件を捜査していたらしい。
ヴァランダーの先を行ったようなスウェードベリの捜査の跡を追ってるうちに、さまざまな背景が現れて来る。
写真の女は誰なのか。スウェードベリは向かいあうほどの距離から猟銃で撃たれている、犯人をなぜ部屋に入れたのか。
あの、相棒のスウェードベリはなぜ密かに犯人を追っていたのか。ヴァランダーはなにも気づかなかった。
ヴァランダーを迷わすさまざまな出会いや出来事は、読者まで迷い道に踏み込んでしまう。
それでも面白かった。
ヴァランダーは相変わらず捜査方針が正しいのかと、くよくよ迷い、一方イースタ署の刑事たちは検死官も含めて実に勤勉に働いている。
こういう読者にも親しい仲間が増えるところがシリーズのよさだ。
あれこれと迷いながら、最後になって偶然にも手がかりがみつかりパタパと解決するのはいつものこと(笑)
親しみを感じ始めると、何日も徹夜で頑張るところが涙ぐましい。
今回は人間関係が少し複雑で、細かな会話や背景描写など長い話になるのはやむを得ない、最後まで飽きないでわくわくしながら読めるところがいい。
最後に犯人の目から事件との関わりが明かされるのは、いつもの手法で、それもいいでしょう。
スウェーデンの国情も重く影響して事件の背後に横たわっている。
ヘニング・マンケルのこのシリ-ズは多くの賞を受けている、それも納得。 -
Posted by ブクログ
「芸術の責務はいろいろあるが、その一つは人々に友人を与えることだと私は思う。」
刑事ヴァランダーシリーズほんとの最後の最後は中編『手』とマンケル本人によるシリーズの各作品、人物、地名の紹介を収録した『ヴァランダーの世界』
友人クルト・ヴァランダーともほんとにお別れかー。・゚・(ノ∀`)・゚・。
それにしてもヘニング・マンケルってすごい人なのよ
社会活動家としての一面も持っていて、特にアフリカを愛し、アパルトヘイトを激しく憎んでいたのよ
でもってアフリカに蔓延するエイズ撲滅のために基金を創設したりね
それからスウェーデンって世界でもいち早く移民(難民)の受け入れをした国でもあって、積極的に受け入れをして全人口の2割は移民というものすごい国で、マンケルもこの政策を支持していたんよね
なんで、刑事ヴァランダーシリーズってめっちゃ移民が登場するんよ
今回収録されている『手』も実は移民問題が背景にあったりして
でもやっぱり治安の悪化とか色々問題があって、極右政党の台頭などもあり現在は移民を一切受け入れてないんよね
マンケルは2015年に亡くなってるんだけど、今のスウェーデンを見て非常に嘆いているだろうなと思ったり
まぁ、日本も他人事じゃないんでね
ここはしっかり考えていかなけりゃあね
2067年には日本に居住する外国人の割合が10%を超えるという推計も公表されているようだし
地域差もあるだろうけど10人に1人外国人だよ
地域社会の一員としてどう付き合っていくべきか
ひとりひとりが考えないとね