ヘニング・マンケルのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
スウェーデンのミステリ。
クルト・ヴァランダー警部のシリーズ7作目後半。
規模の小さな警察が大事件を抱えての奮闘を描きます。
部下の警官スヴェードベリが殺され、目立たなかった彼の意外な面がわかってくる。
夏至祭に殺された3人の若者の事件を、ひそかに捜査をしていたらしい。
スヴェードベリが隠していた写真に写っていた人物は、誰なのか。公開しても、見た者はなかなか現れない。
ヴァランダー自身は体調が悪くて治療を始めるが、たまたま血糖値が高いだけと糖尿病であることを認めず、署員にも病気のことを知らせない。
こういうふうに、仕事にのめり込むタイプなのですが。
周囲に心配をかけながら、何でなの、このダメおじさんは全くぅ~という中年男の危機がなんとも相変わらず。
地道な捜査で、殺人者を追いつめていく所は、迫力。
犯人の方でも、次の標的や、警察を狙っているのだから、それが交錯していくスリルで、胸が苦しくなりそう。
犯人の人間像も、筋が通っているわけではないのが、またリアルな怖さがあります。
とうてい幸福とは言えないが、決して暴力的ではなかった人間がなぜ突然、凶行に走ったのか…
世界は歪み、崩れようとしているのか?
孤独がちなヴァランダーですが、新たな知り合いに誘われて思いがけない休暇を過ごすことに。
船でもはや住む人のいない島へ渡り、この国に人が暮らし始めた原点を思う。
最後に何とも良いシーンがあります。
夏至祭に扮装してパーティをするというのも、やや変わったことではあるらしい。
被害者も、ただ幸福な若者だったわけではないんです。
北欧では夏は「暖かくて快適」な季節で「暑くてしんどい」というのはないそう。
そのため夏至祭は、クリスマス以上に盛り上がるハッピーな時期なのだと。
後書きにそうあったので、あらためて事件の印象を認識しました。
1997年発表、2011年7月翻訳発行。 -
Posted by ブクログ
昨年夏翻訳発行の最新作。
スウェーデン南端イースタ警察のクルト・ヴァランダー警部のシリーズ。7作目。
前の事件から2年後。
リガに住む恋人バイバとは4年間断続的に付き合ったが、やはり国が違うために結婚は出来ないと断られてしまう。
一方、亡くなった父親の家は、売りに出すことになります。
ヴァランダーは体調が悪く、離れて暮らす娘のリンダとせっかく出かけてもあまり疲れている様子に驚かれる。
さすがに病院へ行くと、血糖値が高いとわかり、動揺することに。
真面目な警官であるカール・スヴェードベリが連絡を寄越さずに休み、おかしいと気づいたヴァランダーは夜中に一人で彼の家へ。
死体を発見してしまいます。
誰とも深い付き合いのなかった彼が、唯一仲の良かった看護師の従妹イルヴァに、ヴァランダーを友達と言っていたと聞いて驚く。
スヴェードベリの意外な一面、そして不審な行動がしだいに明らかに…
若者3人が夏至の前夜、仮装パーティに集まったまま旅行に行ってしまったらしい。
行方が知れなくなっていて、母親は心配しているのですが、旅行先からの葉書も来ているので、捜査にはかかっていないという案件もありました。
ところが、3人の遺体も発見される。
現場の様子には不自然さが有り、理由もわからない。
パーティに参加するはずだったもう一人の女の子イーサを訪ねたヴァランダー。
イーサの両親は裕福だが、連絡しても旅行先から帰っても来ない冷たさ。孤独なイーサは、何か隠している?
犯人側の視点も少しだけありますが、正体や動機が全くわからないので、怖さがあります。
後ろから迫って来るかも知れないような。
相変わらず不健康なヴァランダーですが、事件には没頭。
のめりこみ&ひらめき型なので、読んでいる方も引きこまれていきます。
有能でも、事件を防ぐ所までは出来ないのが苦しい所。
中年男らしい悩みでいささかみっともない状態になるのも続いています。これは人間味?
女性署長や娘とだんだん上手くやっていけるようになったようなのは、少しだけ成長したかも。
作家の筆は、冴え渡っています。
1997年の作品。 -
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ネタバレスウェーデンの南端の街、イースタを舞台にしたヴァランダー警部シリーズ第3作。ヴァランダーは、不動産業を営む女性の失踪事件を担当する。やがて彼女は遺体で発見されるが、その近くの民家では謎の爆発事件が起き、不可解な遺留品が発見される。一方、遠く離れた南アフリカでは、とある陰謀が動き始めていた―。
ようやく読み終わりました。文章は読みやすいのですが、何せ分厚い。電車の中で読もうと思っても、バッグが小さいとうっかり持ち歩けないのです。
警察小説というよりは、国際謀略小説ですね。スケールが大きい。田舎警察とはいえ、イースタは国境に近い交通の要所なのですね。ミステリを期待すると「ちょっと違う」と思うでしょう。最初にヴァランダーが担当していた失踪事件の真相は、第2章でさっさと種明かしされてしまいます。第3章から後は、ヴァランダーと旧ソ連工作員の対決になり、そこに娘のリンダも巻き込まれていきます。
南アの陰謀事件の方は、首謀者の思惑通りになりかけますが、ほんの偶然の出来事から事態は急展開。そして最後の場面で、冒頭に起きた失踪事件に関するちょっとした謎が明かされます。この「謎」のことはすっかり忘れていましたが、風呂敷を畳むというより落穂拾いのようなラストが良かったと思います。謀略の嵐を過ぎて、ヴァランダーも田舎警察の警部に戻ったのだな……と、ちょっと安心。
ところで、前作『リガの犬たち』に登場したバイバ・リエパが名前だけちらりと出てきましたが、彼女の再登場はあるのでしょうか。 -
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三年ぶりの新作。
プロローグで明かされる“五番目の女”。なるほどそういう話なのかと了解するも、コトはそう単純ではないことを早々に思い知らされる。
捜査に忙殺されるヴァランダー。父を亡くした喪失感、手掛かりゼロの焦燥感、その合間に将来のプランを空想しては、新たな被害者の出現に絶望を感じてひたすら沈み込む。このヒロイックとは縁遠い主人公に、シリーズ特有の頑固さや堅実さがよく表れていると思う。脇を固める捜査官たちも等身大で人間臭い。プロフェッショナルのいない小さなチームだが、役割分担に長け実に手際が良い。「少数でこれだけ機能している捜査陣とは一緒に働いたことがない」とは、応援に来た捜査員の台詞。
突破口はおろか手掛かりさえ掴めない難関な事件は、バラバラの点が線につながるのか予測も出来ない。ゼロの地点から、集まった少ない手掛かりに対し、角度を変え想像力を働かせ事件の骨格を見出そうとする。そこに偶然の証拠や証人は存在しない。寝る時間を削って歩き聞き、信念と執念を持って追いつめたチームワークの勝利である。そして冒頭のタイトルの意味に帰結する。これこそまさに警察小説の真髄。
読後は余韻が後を引き、じわじわと感情の奥底に沁みこんでくる。いいミステリとはそういうもの。特にこのシリーズは考えさせられることが多い。国や地域の抱える問題が常にストーリーとリンクしているので、北欧ミステリはただの謎解きでは終わらない。エンタメ性に傾斜することもなく、真摯で奥が深く、そして仄暗い。捜査の終焉にある種の脱力を感じながら、一方でどことなく身を引き締めてくれる、私にとっては唯一無二のシリーズなのである。 -
Posted by ブクログ
下巻に入っても期待は裏切られませんでした。人物像がはっきりと浮かび上がっていること、1995年当時の世相がよく伝わること、そして着地がすっきりしていることなどがポイントの高さにつながっています。昔読んだ「マルティン・ベック・シリーズ」とは雰囲気が違いますが、こちらのスウェーデン警察小説シリーズもお勧めです。ぜひ一作目の「殺人者の顔」からどうぞ。追記。スウェーデンでドラマ化されたという話は、解説で読んだ記憶があるし、ケネス・ブラナー主演で、去年イギリスでドラマ化された(舞台はスウェーデン)というニュースも聞いていたが、まさか、今日WOWOWで放送されていたとは知りませんでした。しかも一作目が「目くらましの道」。残りの二作はこれから翻訳される作品なのか、それとも、オリジナルなのかは不明ですが。引越しを機に、解約してしまったのが悔やまれる。でも、ソフト化されることを期待しましょう。