ヘニング・マンケルのレビュー一覧
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警察の仕事というものは基本的に、一枚のメモ用紙に書かれている決定的な情報を確認することの積み重ねにほかならないのだ。
『目くらましの道』というタイトルがまず秀逸だと感じました
自分たちは「目くらましの道」を進んでないよなと、一歩進んでは後ろを振り返り確認する
その積み重ねでちょっとづつ進んでいく
それがいいんですよね
そしてもちろん気がつくと「目くらましの道」に進んでるんですよね
じゃなきゃ小説になんないですもん(それを言っちゃあおしまいよw)
ヴァランダーは捜査の途中で、最初の頃に見聞きした何気ない事柄が事件の重要な鍵を握っていることに深層心理で気付きますが、それがどうしても思い出せません
作中何度も、思い出そうとして失敗し、けれど捜査が進むにつれてその事が非常に重要だと確信を深めていきますが、やはり思い出すことができません
この描写がうまいよなぁって
最大のヒントが紛れ込んでるよと教えてくれてるんだもん
読者はヴァランダーと違って読み直すことが出来て、なんなら途中で犯人もわかるのになんのことかさっぱりわかりません(もちろんわかる人もいるでしょうが)
そして最後の最後に「あーそれかー!」となるんですがこれがねほんともう「それかー!」なんです
それにしても、ヘニング・マンケルの怒り、ヴァランダーの怒りが全編に込められた傑作でした!
その怒りとは児童文学作家でもあるヘニングの子どもたちが犠牲になっている歪んだ世界への怒りです
続けてヴァランダー追いますよ! -
Posted by ブクログ
シリーズ最高作の評判はダテじゃなかった。
なぜこのシリーズに惹かれるのかは、これまでさんざん書いてきた。
「文章の読みやすさ」「魅力的な人物による没入感」「物語のスピード感」「時系列というシンプルさ」
今回特に「映像的表現によるドラマチック感」が抜群だと思う。
さらに、そこにとどまらずヘニング・マンケルはここでもメッセージを持っている。
エピローグで描かれているヴァランダーの心情は、変わりゆく社会への作者自身の不安と怒りであろう。
主人公ヴァランダーに代表される感情は、この国の負の良心なのだろう。
移りゆく時の先は、歳を重ねるごとに暗さを増していく……寂しいことですが、仕方ありません。 -
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2015年に亡くなったヘニング・マンケル氏の最後の作品。
これでもう、彼の本を読み続ける楽しみは無くなってしまったのだけれど残された本を再読してゆくじんわりとした楽しみが私には残されている。
相変わらず情けない老境にさしかかった男が主人公で、この本は自身ががんに冒されていることを呑み込んだ上で書かれているので、
「老いること」そしてその先の「死ぬということ」を真に迫って読むことが出来る。
スエーデンの群島でおきた火事や、馴染みの浅い娘との交流、(年がいもない)恋愛への妄想もリアルな表現。
『イタリアンシューズ』の続編だけど登場する靴のその差は大きい。
ミステリーとしてのストーリーだけでなく、現代のヨーロッパ全域に渡る問題提起もしてくれる。紛争や貧困、障害者や格差や移民問題。
ヴランダー刑事シリーズの時に教わったアパルトヘイトも思い出す。
この作家さんをあまり知らずにこの本を手にした読者の人の中には情けない男…という印象ばかりが残るかもしれないけれど、生涯を文章を通して読者に社会問題を投げかけてくれた彼に深く頭が下がる思い。
エッセイ集「流砂」にも描かれていた死生観をもう一度、紐解きたくなる。 -
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スウェーデンの群島のひとつの小島に住むフレドリック・ヴェリーン、71歳。フレドリックの家が全焼したというところから始まる。全てを失ったなかで感じる孤独。この先どうすればいいのかという不安の日々に出会ったリーサという女性。リーサとなんとか近づきたいという思いや、一緒にいたいという気持ちを持て余しつつも、利己的に振る舞うフレドリック。決して好きになれないような造形の人物なのに、どんどん引き込まれていってしまう。自分の娘との関係や、近くの住民たちとの交流の不器用さがいいし、もっとフレドリックという人を知りたくなっていく。だからこの物語が著者の最後の作品というのが残念でもある。この文章、世界観がとても心地良い。〈ヴァランダー〉シリーズもそうだけどとても印象深く思い入れの深い作家さん。
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続編が刊行されたので再読。スウェーデンの東海岸にある群島のひとつの小さな島に一人で暮らしているフレドリック、66歳。そこに40年前にフレドリックが裏切った女性ハリエットが突然尋ねてくる。過去に交わした一番美しい約束を果たしてほしいと。フレドリックの頑固さ、自分勝手な性格と、その裏にある一人でいることの孤独や諦観。ハリエットとの再会から少しずつ人生を見つめ直し、そこにある後悔や苦しみと向き合う。タイトルのイタリアンシューズが登場するシーンは何気ないけれど、フレドリックに希望を与えるような素敵な、読み終わった後も余韻が残るもの。この一冊でもとても濃密で素晴らしい作品なのに続編があることがとても嬉しい。著者の〈ヴァランダー〉シリーズとは全く違うものを読める。
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久々に<刑事ヴァランダー>シリーズを読んでみた。
濃い霧の海岸線
一人の男があてもなく彷徨う。
ひとつ前の大作「白い雌ライオン」の終盤で人を殺してしまった主人公ヴァランダーは、ひとり出口のない苦悩の中にいた。
一旦は警察を辞める決断をしたが、知人の弁護士が殺害された事件を知り突然の復帰。
そこからは、署のいつもの顔ぶれに新任の女性刑事を加えた仲間を振り回しながら、事件解決へと突進していく。
よく考えるとヴァランダーはもうムチャクチャで、周りはきっと迷惑しているだろう。
そして物語は初期2作と同様に、主にヴァランダー目線一本で時系列に進む。
この、じっくりと「主人公ヴァランダーを味わう」といった趣が、好きな人にはたまらない。
作者ヘニング・マンケルは残念ながら2015年に67歳で亡くなっており、新作はもう望めない。
翻訳者柳沢由美子氏による追悼文「無口な巨人」がWEB東京創元社マガジンで掲載されており、読むことができる。
世界に蔓延していくさまざまな問題に対して真摯に向き合っていた作者自身の姿が、不器用で孤独なヴァランダーと重なる。
このシリーズ、大切に読み進めようと思う。 -
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「大切なことは最初に言おう、でないと忘れてしまうから」と言ったのは十五世紀のパン屋さんヒマーワリ・メーロンですが、彼の言葉に習って言います
刑事クルト・ヴァランダーシリーズ第三の物語は文庫本で700ページの大長編でしたよ!
うん、この情報は私の感想よりよっぽど重要w
とにかくもうヴァランダーが大好きだ!
あえて言おう、彼こそ男の中の男であると
前にも書いたかもしれないが、本当に男のいいところ(と男たちが思っているところ)と男の恥ずかしい部分が凝縮されたキャラクターと言っていいのではなかろうか
意固地でまっすぐでロマンチストで臆病で怒りっぽくて自分勝手だ
彼は直感によって仕事を進めるタイプの刑事だが、それは天才的なひらめきと言った種類のものではなく、経験や修練から生まれた鋭い観察がもたらす勘どころみたいなんを信じて行動しているにすぎないような気がする
それを他人が見ると直感と感じる
ようするに熟練した職人と言うべきで、こんなところにも自分は男を感じでしまうのだ(女性の職人さんごめんなさい)
そしてなによりヴァランダーはけっこう失敗する
いや、失態と言ったほうが正確だ
部下に助けられたり、家族に迷惑かけたりする
極めつけは酔っぱらって想いを寄せる女性に迷惑な電話をかけてしまい、恥ずかしい思いをしてしまう
情けない場面を曝しまくる男が葛藤を抱えながらも闘う姿勢がかっこいいのだ!
でもやっぱり女性には読んで欲しくない
男の情けない姿はなるべく知られたくないのです
だが女たちは言うだろう
男が情けないのはアダムとイヴの時代から知っていると
やっぱり女はなんでもお見通しだ -
Posted by ブクログ
ネタバレスウェーデンの警察小説である『クルト・ヴァランダー』シリーズの第1作。
凄惨な殺人事件の謎を追う警官クルト・ヴァランダーが主人公なのだけれど、起こること起こること(事件関係でもプライベートでも)泣きっ面に蜂が続き、同情を禁じ得ない。次々に事件は起こるし、上司は不在だし、操作情報を外部に漏らす部下もいるし、家では離婚、娘との不和、老父の精神不安定、中年太り、アルコール依存、古い友だちには邪険にされ、新しく出会った人妻にも相手にされない…。お世辞にもスマートとは言えないクルトだけど、事件に関しては(何度も失敗しながらも)「しぶと」く「絶対に放り出さな」い姿に、よれよれながらも応援したくなる。
胸のすく謎解きのカタルシスはないけれど、事件が終わった後の警官たちの語りに、静かな感動を覚える読後感だった。 -
Posted by ブクログ
レビューを書いてないままになっているのにひと月以上経って気づいたものの、もう概要を忘れてしまってきちんとした文章を書けなくなってしまいました。無念。かなりのページ数でしたが内容にひっぱられてぐいぐいと読み進められました。題名が印象的ですがこれも読み終わって納得。事件はただ間違った時間に間違った場所に居合わせてしまっただけの一般市民の女性が殺害され遺体が遺棄されたため行方不明になり、残された夫が地元警察署に届け出てヴァランダー刑事が捜査にあたるが手がかりがほとんど無く難航する捜査という軸と、南アフリカ共和国(執筆された当時はまだアパルトヘイト政策が撤廃される前)で白人優位を死守しようという勢力が、要人の暗殺を計画しその要人の生命そのものと政治の流れを抹殺するだけでなく、行われる暗殺の実行犯を単なる駒ではなく人種政策において重要な意味を持つ人物にすることで大きな流れを断ち切ろうと画策するという二つの軸が並行して交互に描かれていき、それらがどう交差してひとつの事件になったかというのを解き明かしていく、圧巻の作品でした。南アフリカ共和国の政情についてなど、巻末に丁寧な解説があり、全て読み応えがありました。ペースはぼちぼちですが全作通して読みたいシリーズです。
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Posted by ブクログ
ヘニング・マンケル『手/ヴァランダーの世界』創元推理文庫。
ヴァランダー・シリーズの書店でのキャンペーン特典用に書き下ろされた短編『手』と、ヘニング・マンケル自身によるシリーズの各作品、人物、地名の紹介を収録した『ヴァランダーの世界』を併録したファン・ブック、或いはヴァランダー大全と言えるような作品になっている。
『手』。販売促進用の短編ということで、気を許していたら、スリルとサスペンスにあふれた一連のシリーズ作品と同じレベルの作品に仕上がっていた。ある日の休日、ヴァランダーが同僚に紹介された古い家屋の物件を見に行くと何かに躓き、よく見るとそれは人間の手の骨であることに気付く。ベテラン刑事のヴァランダーが歩けば事件に当たるのだ。やがて、そこから白骨化した古い遺体が発掘され、白骨遺体は女性のものと判定される。ヴァランダーは古い家屋の過去の持ち主まで遡り、古い遺体の調査を行う。
シリーズ最終巻の『苦悩する男』よりも前にオランダで出版された作品。ヴァランダー・シリーズは本作が本当に最後の刊行になるようだ。
『ヴァランダーの世界』。ヘニング・マンケル自身によるシリーズ各巻の解説、登場人物索引、地名索引、ヴァランダーの好きなもの、文化索引などが詳しく書かれており、ヴァランダー大全といった造りになっている。
人間味あふれるヴァランダー刑事の魅力が詰まった作品。個人的にはこのシリーズはスウェーデンのハリー・ボッシュ・シリーズだと思っている。
最後にシリーズ全作品を翻訳してくれた柳沢由美子さんに感謝したい。
本体価格1,300円
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