手嶋龍一のレビュー一覧
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「イスラエル戦争の嘘」。このタイトルと著者の佐藤優氏の名前を見れば、本書の内容はイスラエルによるパレスチナ侵攻をイスラエル側立場で正当化する様な内容ではないかと若干構え気味にページをめくっていった。確かに現在発生しているイスラエルのやり方、病院施設への攻撃や民間人を巻き込んだ爆撃などは、国際法の観点からも決して許されるものではない。然し乍らそうしたニュース映像で流れる表面的な事象ばかりを見て、全体を悪か善かで判断し悪として非難することも危険だ。物事の本質を見なければ、今目の前で繰り広げられる、やりすぎとも思えるイスラエルの姿を理解することはできないだろう。そうした意味で、イスラエルの諜報機関に関係を持ち、自らもイスラエル建国の日に、イスラエル外交で逮捕に至った佐藤氏の説明は説得力があり、かつ単純にイスラエルばかりを責めてはいられない、彼の地を含めた世界とイスラエルの関係性を理解するのに役立つ。
本書は2024年4月に出版されたものであるから、このレビューを書いている2025年4月は丁度一年後に当たる。未だ未だ収束の兆しは見られず、民間人の被害状況が改善したとは言えない。寧ろ度重なる爆撃、食糧物資の支援も不充分で、世界最悪の飢餓状態に向かっている様な事態に陥っている。なぜ一年後に読んでいるかと言えば、状況が改善しない現状を知るためには、始まった理由をしっかり認識する必要があると考えたためだ。その時に本書タイトルを見れば、容易にその背景を知る事ができるのではと思った。
冒頭に書いたが、佐藤氏と外交ジャーナリストの手嶋氏のタッグであるから、イスラエルの内在的論理と各方面からの情報に基づく分析は見事で、現状のイスラエルの姿を鮮やかに描き出している。そして、ハマスやファタハ、フーシ派にヒズボラとイスラム勢力の価値観や行動を重ね合わせる事で、パレスチナの地を巡る争いの経緯をあたかも氷が溶けていく様に紐解いている。この手の本を読む度に、歴史的な流れについてはよく理解できるのだが、イスラエル側に内在する徹底した姿勢「全世界に同情されながら滅びるよりも、全世界を敵に回してでも戦い、生き残る」からくる行動を理解するには、表面的に得られる情報だけではなく、その内側の心理を理解しなければならないと改めて気付かされる。
決してイスラエルの行動を同情の目で見て是認してはならないし、民間人を不幸にするやり方を正当化してはいけない。だが解決の糸口を見つけるには、彼ら(イスラエルと周辺諸国、そしてその原因を作ったヨーロッパ諸国)を行動に至らせた真の理由を把握しなければならないだろう。対談形式で読みやすくお勧めしたい一冊だ。 -
Posted by ブクログ
手嶋龍一『武漢コンフィデンシャル』小学館文庫。
国際インテリジェンス小説。
以前読んだ『宰相のインテリジェンス 9.11から3.11へ』の方が圧倒的に面白かった。
タイトルが『武漢コンフィデンシャル』というだけに新型コロナウイルスを巡る中国の謀略が描かれるのかと期待したのだが、新型コロナウイルス感染症が流行り出す前の2015年で話は終わってしまう。
プロローグは2019年の武漢で感染症の患者が次々と闇医者の治療を受けるところから始まる。となれば、中国の武漢にあるウイルス研究所から流出したとされる新型コロナウイルスの秘密が描かれのではと期待せざるを得ない。
しかし、話は、2014年のアメリカに移る。アメリカ同時多発テロ事件の直後、炭疽菌を使ったテロ事件が起こり、炭疽菌テロ事件と武漢の新型コロナウイルスとがつながっていくかと思えば、そうでもない。1927年の武漢、そして、香港、雲南、上海、ワシントン、ニューヨーク、ロンドン、ブエノスアイレス、オーストラリア、日本、ミャンマーと場面は目まぐるしく変わり、アメリカのインテリジェンスにばかり終始するのだ。
本体価格940円
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Posted by ブクログ
佐藤優氏の本は多く読んでいるが、対談相手に誘導されたり振り回されている佐藤優氏を見るのは新鮮で面白かった。作家であり、またインテリジェンスに精通している手嶋龍一氏なればこそで良い組み合わせ。手島氏が佐藤氏を持ち上げたり詰め寄ったりとドラマを感じさせる演出がある。
ただ佐藤優と、例えば池上彰氏との対談本なのでもそうだが、対談でありながら読者への解説を二人でもって淡々と進めていくスタイルには妙な面映ゆさを感じてしまう。その解説の恩恵に預かっている身ではあるが。
改めて宗教・信仰の負の面を強く認識させられる。本来人々の苦しみを取り除き豊かに暮らすために生まれたものなのに、妄信するあまり排他的・攻撃的になってしまう。
科学、哲学などの教育が対立の打開策となると思われるが、宗教にはそういった他の知識や考え方を取り入れること自体をタブーとするものもあるので一筋縄ではいかない。
強硬で排他的な信仰・宗教が消え去らない限りは、現実的には剛柔併せて「なぁなぁ」な落としどころを探っていくアプローチになるだろうし、現状もそうなのだろう。
必要な情報を適宜集め、対話の道を塞がずに落としどころを見つけ出していくインテリジェンスの存在、技術は欠かせないというのがよく分かった。 -
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この本の中で、いくつも知らないことや、ハッとさせられることがあった
イスラエル政府はハマスの襲撃について「属性排除」の論理に基づいたものだと見ている。この「属性排除」とは人種や民族否定、つまりホロコーストと結びついてしまう。
イスラエルを建国する際の国是「たとえ全世界を敵に回してでも、自国が生き延びる道を選ぶ」という覚悟をイスラエルは持っている
これらを考えた上で、イスラエルの成り立ち、周辺国や世界の勢力図、国際機関の限界を合わせて考えるととても難しい問題なんだなと思う
しかし一方でユダヤ教の教えには「わたしが報復し、報いをする」と主が言われる・・・というのがあるそうです
自ら報復する手を止め、教えに従い冷静になって欲しいと願うばかり -
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物事には必ず裏がある。表に出ている情報だけを鵜呑みにして、難しい事を考えずにのほほんと過ごす事も可能だが、所詮どこにでもある情報に大した価値はない。その価値を議論していても単なる飲み屋で繰り広げられるような薄っぺらい時間潰しのネタにしかならない。知ってるものが知らなかったかの様に(もしくは本当に知らない)振る舞う人に偉そうに話している内容は、聴きたくもないのに耳に勝手に入ってきてしまう。そんなこと知ってるだろうし、多分聞かされた方も明日の朝には何も覚えてないんだろうなと頭の中で一人突っ込んでると、自分の参加する飲み会も上の空、何かつまらなそうだねとツッコミを受けてしまう。私の悪い癖だ。
情報は様々なソースから拾ってくる事ができる。週刊誌や会話やニュースや、会社の会議に出れば、人が集めて整理して分析した結果になって、多少面倒なプロセスを省略して良情報が入ってくる事もある。そうした情報を各方面から集め、それを何に使うか、目的に照らし合わせ、判断したり決断したりする。情報が無いこと、不足することは判断や決断に重大なミスを及ぼす事もある。会社の投資案件の判断ミスなら一企業の生存に関わる問題で済むだろうが(創業者の努力を無にしてはいけないとは思うが)、これが国家レベルの判断になってくると、国が潰れるわけにはいかないから、より多くの正確な情報が国家の舵取りに必要になることは言うまでも無い。
本書は日本のインテリジェンスを牽引する外務省出身の佐藤優氏と外交ジャーナリストの手嶋龍一氏の対談形式で進む。当時2014年は正にロシアがウクライナからクリミア半島を奪い取った年、そのロシアの戦略とウクライナについて、また最近は力を失い消滅に向かっているものの、当時アメリカが最大のテロ脅威として捉えていたイスラム国の問題、更には日本国憲法に絡む集団的自衛権の抱える課題など、どれも国としての重要な決断や判断が必要な題材を並べて議論する。
表のニュースだけを見ていれば結果だけが頭に入ってきて、明日どうなるか来年どうなるか予測もつかない。それが許されるのは長いものに巻かれて心地よく過ごせる人だけだ。大抵そうした人々も防衛予算確保のための増税には猛烈に反対するのだが、それすらもにわか仕込みのマスコミの受け売りをしているだけだ。そこに自分の考えは入ってるだろうか。無駄遣いを先に無くせというのは「無駄遣いの存在を知っていて、これまで指摘してきたのだろうか」。これは極端な話だが、何も知らない人はそうやってマスコミや大衆に踊らされて生きることになる。
私も楽に生きていたいタイプではある。だが、飲み屋でリラックスするために飲んでいたのに、そうして入ってくるどうでも良い会話を耳が勝手に拾ってしまうから、そこから猛烈な情報収集と自分で考えたくなる。この性格は中々疲れてくるし、万年頭痛を抱えている原因なのかもしれない。
兎に角こうした本を読んでいると、自分の知識の浅さにも今更ながら気づき、考えなければならないと身が引き締まる、そんなきっかけになる。 -
Posted by ブクログ
外交ジャーナリストで元NHKの手嶋龍一氏と元外交官のラスプーチンこと佐藤優氏がウクライナ戦争について語る。
西側の視点からしか見ない日本人からすると新鮮なとらえ方がいくつも出てくる。
「アメリカはウクライナを勝たせるつもりなはない」(管理した戦争)「在庫一掃セール」などなど。また、NATO拡大の超えてはならないラインだとか、英国のエリートの消滅、ウクライナの複雑な民族文化構成や歴史、「破綻国家」(腐敗と汚職と財政難)の側面などなど。
国際政治のバランスは思った以上に西側に不利になってきているらしい。そうした中、核大国・ロシアに対して「正義」を声高に主張してもしょうがない。現実的な平和への道を、世界が進まないといけない。そのためには、すごく遠回りではあるが、健全な世論の醸成、正確な情報から堅実な判断をする有権者が必要だ。 -
Posted by ブクログ
よく聞いているPodcastのバックナンバーの番組で紹介されていたので手に取ってみました。
著者の手嶋龍一さんはNHKの海外特派員としてよく知られていますが、その経験を活かしてインテリジェンス小説も書いているんですね。本書は、サブタイトルに「インテリジェンス畸人伝」とあるように、フィクションではなく「人物評伝」です。
ただ、書かれている内容は期待していたほどの密度ではなく、“さわりの紹介”程度だったのが残念です。
こういったジャンルの場合、ノンフィクションもいいのですが、上質のフィクション作品(小説)の方がかえってリアリティがあったりしますから、今度は、定番のジョン・ル・カレの作品も読んでみましょう。