手嶋龍一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
前回対談の動乱のインテリジェンスから約1年、その間に起こった事件としてアメリカのシリア侵攻のちゃぶ台返し、飯島勲の訪朝、スノーデン事件から麻生太郎のナチスのワイマール憲法発言、そして東京オリンピック開催の意味などなど。そうかわずか1年の出来事なんだなあと、この対談の後になりそうなのがタイの反政府デモとクーデター、中国の防空識別圏設定、ウクライナ騒乱、台湾学生の立法院占拠など次回は何が取り上げられるのか。
こうやってみるとプーチン大統領の影響力が強い。シリアで阿部首相がシリア問題でロシア支持したことでプーチンが阿部首相を見直したとか。プーチンの「美しい誤解」とまで言うのは辛辣だが2月にはソチで首脳会談を行いここまではいい感じだったのがウクライナ情勢で秋のプーチン訪日は流動的になりその間に5月のアジア信頼醸成会議で中ロが急接近。ウクライナ危機のために天然ガスの販売先を失ったロシアに中国が恩を売った形になっている。
アメリカがシリア問題で拳を挙げながら結局降ろし様がなかったことは、善悪はともかくアメリカといえどももはや簡単に他国に手をだせないと例えば中国はみるだろうということです。それでも東京オリンピックを開催すると言うのは「中国とは戦争を起こさない、韓国ともこれ以上関係を悪化させない。そして、福島原発事故の集束をはかる」というのが日本の使命と言うか枠組みになっていると。逆にオリンピックまでは中国も尖閣には手を出しにくくなっているのでーオリンピックは誰にとっても人質になっているーその間に日本はロシアや韓国との関係改善を図った方がいいだろうということ。
麻生太郎の「ナチスの手口」発言については「ヒトラーは民主主義によってきちんと議会で多数を握って出てきた」との弁解を歴史の事実からかけ離れているとばっさり一刀両断。ナチス党は1932年11月の選挙では得票率33%で196/656議席のところを年が明けた1/31に首相に任命されたヒトラーが議会を解散し、国会議事堂の放火事件を契機に共産党議員や共産主義者の大量逮捕に踏切り3月の選挙で得票率44%で288議席をとり、その後2/3が必要な全権委任法案をなんとかとうしワイマール憲法を修正したとのことで、これを民主主義といって擁護してしまうと欧米からは日本に軍国主義勢力が増していると見られてしまうだろうと。
アメリカから日本を見た場合には橋下徹が従軍慰安婦問題に絡めて「沖縄の米海兵隊基地の軍人も風俗施設を利用すれば良い」の発言のさなかに飯島訪朝があり「日本は本当に価値観を共有できる国なのか?」との疑念を抱かせてしまっている。麻生太郎や橋下徹が実際にどういう意図で発言しようが、日米関係に隙をつくることには間違いない。阿部首相自身も歴史問題を掘り起こすなというアメリカの警告は無視しているようですしね。慰安婦問題や中国が南京事件をことさら持ち出すのは「自由と民主主義」というアメリカの価値観にあわないからでしょうし。
日中関係で言えば二人とも基本的に中国が隙あらば尖閣を奪いにくるという認識では一致しつつも、単純に軍事的に対抗するのではなく「中国と友好関係を築いていく」と国際社会に訴えていく必要が有るとの意見。中国が真の脅威であるからこそ日本攻撃の口実を与えず、民主主義国家として日本に国際世論を引きつけておくべきだという話です。次回対談までにどれだけの事件が起こるのか・・・ -
Posted by ブクログ
佐藤優と手嶋龍一。外交面とインテリジェンスの『裏街道』を歩んできた両氏による国際情勢の『舞台裏』を語りつくすとってもディープな対談です。『あの話の裏側はこうだったのか!』と何度も驚かされました。
『外務省のラスプーチン』佐藤優氏と国際ジャーナリスト手嶋龍一氏のディープな国際社会の『裏側』をめぐる対談本の第2弾です。
佐藤氏のおっしゃるように、国際社会は『新・帝国主義』の時代を迎える中、日本は『3.11』の東日本題震災で弱体化し、それを狙って韓国が竹島(独島)を、ロシアが北方領土を。そして中国が尖閣諸島の領有権をあの手この手で主張し始めた事に関する『危機』をめぐるスリリングなやり取りに始まって、『民族問題』の萌芽が芽生えつつイある沖縄の問題や、プーチン政権とナって『甦る怪物』となったロシアがめぐらす『北方領土戦略』第二章では中国の『インテリジェンスのゲーム』を無視してあの手この手の『汚い』工作に明け暮れるさまを注視しております。
さらにここでは歓楽街の『ロシアン・パブ』のおねいちゃんがなぜ、ウクライナ出身が多いかについても解説がなされ、思わずニヤリとしてしまいました。
第三章では最悪の外交として各方面からたたきにたたかれた鳩山由起夫元首相のイラン訪問を外交上の評価としては『論外』と切って捨てる一方で、イラン側鳩山首相に仕掛けた『インテリジェンス工作』の手口の鮮やかさを語っております。これは佐藤氏がラジオでも解説しており、当事者であった大野元裕氏をゲストにすさまじいまでの追及を行っている回がYoutube上にありますので興味をもたれた方は一度お聞きになってはいかがでしょうか?
第四章ではイランと北朝鮮の各事情について、これまた『裏事情』がたっぷりと語られており、『サード・パーティー・ルール』というインテリジェンス・コミュニティにある『掟』についての箇所が面白く、またためにもなったと思っております。
第五章では東日本大震災でアメリカ軍が展開した『トモダチ作戦』のその『真意』。内閣に様々な「ガバメンツ」ができて『インテリジェンス・サイクル』が回らなかったという話や、情報都市としてのTOKYOが現在斜陽を迎えているという話し、さらには日英同盟がゆっくりと解体に向かっているということや、ギリシャ危機の『真相』は『ローマ法』という概念があの国にないがゆえに深刻であるということ。TPPの是非。アフガニスタン・イラク戦争で国力を使い果たしたアメリカが東アジアにどのような戦略をとっていくのか?さらには日本が意図せずして行った『選択』がプーチン大統領を驚かせた話まで…。新書サイズでこれだけの『高カロリー』な話が繰り広げられるのはとてもすごいことだなと、ただただ、脱帽の一言でございました。 -
Posted by ブクログ
まず日米同盟堅持が日本の国益に叶うという認識で話は進んでいる。領土ではなく権益の拡大と言う新帝国主義がアメリカ、EU、中国、ロシアなどを中心に進み、日本も対抗せざるを得ない。異質なものを取り込み外部とうまくやっていくには沖縄との付き合い方が非常に重要。日米同盟の最後の砦は嘉手納基地で、ここが無くなるとアメリカから見た日本の重要度が低下し、相対的に中国の影響力が増す。両氏ともナショナリストではなく、ドライな外交の力関係から話をしている。
歴史的な認識では例えば孫崎享の「日本の国境問題」を評価しながらもアメリカ陰謀論の孫崎氏とは別のスタンス。
尖閣諸島
中国の目的はまず領土問題の存在を認めさせること。ある程度成功してるようにみえる。日本政府の買い上げは国際的には紛争の存在があるように見える。中国も尖閣は日本領と認めてきた事実はあるけど日本も一度は宮古島より西を割譲する国家決定をしている。(1880分島増約)
普天間
アメリカ上院軍事委員会はもう辺野古はないと見ている。グアム、オーストラリアなどに分散。日本政府がいつまでも沖縄の意向を無視し続け、米軍の非行が続けば沖縄独立論も出てくる。
沖縄独立
ここではあくまで作業仮説。非武装中立国として独立すると、中国との海洋資源共同開発が進む可能性もある。経済的なメリットは有りそうだが今の中国を見てるとお勧めできない。個人的にも中国資本が沖縄の島を買い漁る姿が想像できていやだ。
竹島
日韓国交正常化前の密約が存在する。「両国政府は、別段の合意がある場合を除くほか、両国間の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとし、これにより解決することができなかった場合は、両国政府が合意する手続きに従い、調停によって解決を図るものとする。と言う政府間の交換公文があり、その裏に「双方が竹島を自国の領土と主張したり、これに反論したりすることに異議を唱えない。韓国が占拠してる現状は維持するが、警備隊員の増強や新しい施設の増築はしない、両国はこの合意を守ることを日韓双方の首脳に伝えて裁可を得る。」2007年に政府は紛争に竹島が含まれると"認識"していると回答しているが、韓国政府の認識は含まれないで有る。韓国は密約どころか公文も反故にしようとし始めている。
北方四島
サンフランシスコ平和条約では一度は国後、択捉の放棄を認めているが、その前提で後段で歴史的には日本の領土であったと主張している。例えばイギリスは日本の主張を認めていない。プーチンの引き分け提案は2島返還プラスアルファ、どちらも勝てないから引き分けなのか。ロシアは沿海州に対する中国の圧力を懸念しているので、ツー・プラスアルファで経済協力を進めるのはいい線じゃないかな。
他にも鳩山イラン訪問、北朝鮮ミサイル警報はなぜ遅れたか、TPPなど盛りだくさん。鳩山外交と311で決断(即刻廃炉と海水注入、国外への協力依頼)できなかった菅の責任は重そうです。 -
Posted by ブクログ
佐藤優氏と手嶋龍一氏による対談本の第2弾。尖閣や竹島の話題はそこそこに切り上げて、中国共産党の内部闘争や、イスラエルとイランとシリアの関係など、世界における注目度の高い話題に多くのページを割いているあたり、さすがはプロのインテリジェンス・オフィサーといった感じである。国際インテリジェンスの価値観では、今年起こった一連の尖閣問題は「中国の勝ち」となるみたいだけど、あれだけ大騒ぎをしてしまったら中国海軍だって動きにくくなるし、国際世論は完全に敵に回してしまったし、日本にとってそれほど悪い結果だったとは思えない(経済的には痛み分けだけど)。それはそうと、読売新聞に「元首相がきちんと務まらなかった初めての人」と酷評されてしまった鳩山元首相であるが、どうやらイラン電撃訪問の件を指していたみたいだね。佐藤氏も手嶋氏も、この件に関してはイランのインテリジェンス能力を絶賛している。
-
Posted by ブクログ
11/1に発行されたばかりの新刊である。本書は、尖閣国有化宣言とその後の中国の動き、中国の空母、シリア内戦長期化、TPP対応問題、などまさに今の外交課題についての著者二人による対談本である。それらは、日本では二国間の外交問題として、或いは経済問題としての報道がほとんどだが、本書では世界全体の中でどう見るか、見られているかの観点での議論が多く、視点がとても新鮮に感じる。特に佐藤優氏は外交の第一線の経験があり、その意見には説得力がある。本書を読むと、政治家も、外交官も、マスコミも勉強不足か世界を知らなさ過ぎると思えるし、自分の視野の狭さも実感してしまう。ホットな話題を扱っているので早く読んで、そしてまた1年後に読み返すとおもしろいだろう。