あらすじ
日本列島周辺に音もなく忍び寄る危局。東アジアの深層で生起する異変をいち早く察知するべく動く情報機関、これが公安調査庁だ。中露朝が核戦力を背景に日本を窺う実態を、現職のインテリジェンス・オフィサーが初めて実名で明らかにする。ウクライナとパレスチナ、二つの戦争に超大国アメリカが足を絡めとられる間隙を衝き、中露朝は攻勢に転じた! 日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す現状に警鐘を鳴らす。【解説・佐藤優】
■中露朝が接する危険な「三角地帯」の現在
■ロシアに渡った北朝鮮のミサイル
■北朝鮮とイスラエルとの極秘交渉
■核・ミサイルの資金源を追え!
■カジノを使った資金洗浄の手口
■標的は暗号資産
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Posted by ブクログ
ジャーナリストで作家の手嶋龍一氏と、公安調査庁のシニア・アナリストである瀬下政行氏の対談。副題は「日本列島に延びる中露朝の核の影」とあるが、主には「朝」の脅威に触れている。
Posted by ブクログ
本を読み続けていると、複数の書籍の整合性や補完性、矛盾点などによって随分と見えてくるものがある。言葉に出されたものだけではなく、表現されていない事柄についても語る、まるで陽否隠述のように。
オシントという技法の可能性を感じるような内容。そもそも二人のインテリジェンスの会話もこうして本になっている。ならば、やはり公開情報と言えど、価値は計り知れない。
ー ウクライナは、1994年末に米英露が署名した安全保障に関するブダペスト覚書と引き換えに、ソ連崩壊後に残された核兵器の放棄を決定したのですよね… 第二次大戦後、ソ連にとってウクライナは、NATOに対峙する尖兵の役割を担っていました。そのため、ウクライナには核兵器の発射基地が点在し、実際に核弾頭も数多く蓄えられていました。それだけに、冷戦が終わると、西側の盟主アメリカは、「ウクライナの核」をいかに撤去し、ウクライナを非核化するかに腐心したのでした。冷たい戦争が終わった後の1990年代の半ば、私はかつての西ドイツの暫定首都ボンにドイツ特派員として在勤していました。ですから、当時のアメリカが、ロシアの力を借りながら「ウクライナの核」をどうやって迅速に抜くかということに、どれほど苦慮したかを目の当たりにしました。
ー 日本経済がバブルの崩壊に見舞われて景気が低迷し、その果てに金融危機に陥った1997年、在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総連)傘下の朝銀大阪信用組合もついに経営破綻してしまいます。これを機に、2001年までの4年間に、日本各地の朝銀信用組合(以下、「朝銀」)が相決いで破綻しました。「朝銀のバブル崩壊」によって1兆円を超える公的資金が政府から投入され、日本社会にかなりの衝撃を与えました… 朝銀の破綻は、単に負債が巨大であっただけではありません。朝鮮総連の支配下にあった朝銀が乱脈融資を繰り返しているとの重大な疑いが浮上したのです… 朝銀を経由して膨大な資金が北朝鮮に流れたとすれば、日本の納税者がその穴を埋めることなど許されていい訳がありません。そもそも、朝銀と朝鮮総連は、どのような関係にあったのですか。朝銀の前身は、戦後、日本各地に残った在日朝鮮人商工業者たちが自らの経済基盤を…
正直、公安調査庁の仕事としては本書でその内情はほとんど語られていない。そのせいか、手嶋氏の方が饒舌にすら見える。また、だからといって面白くない本という訳ではない。一級のインテリジェンスの会話を聞くだけでも、学べる事は多い。