手嶋龍一のレビュー一覧
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ネタバレ「インテリジェンス」をテーマに、外交ジャーナリスト手嶋龍一氏と元外務省主任分析官の佐藤優氏が、対談形式で進めて行く著書。正直、この手の知識には疎い私にとっては、深すぎてついていけない部分もあったが、とにかく内容が知的で面白い。ソチ五輪について、北朝鮮への飯島氏の訪問について、東京五輪招致の裏側、TPPについてなど、ニュースで何となく聞いたことのあるニュースを、様々な情報を基に知的に読み解いていく作業はとても興味深いもので、我々素人に、ニュースに対する多角的な視点を与えてくれる。日本人はとかく、外交ニュースには疎い傾向があるが、こういった著書で知識を深めていきたいと思える本である。
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Posted by ブクログ
ネタバレ佐藤優と池上彰の「新・戦争論」の発売が2014.11で、その1ケ月後の2014.12にこの本が発売されている。
当然テーマとしては重複しているものが多いが、内容は前者もなかなか面白かったが、本書の方がさらに面白い。
これは池上彰と手嶋龍一という対談相手の違いから来るのは当然だが、佐藤優は相手の議論の深さに合わせて、発言内容の深さを変えている。
つまり池上彰よりは、手嶋龍一の方が掘り下げ方が深く、それに相応して佐藤優がより切り込んだ意見を出している。
幾つかのポイントを見ると、
【ウクライナ】
・G7がロシアとの着地点を見出すことは、安易な妥協だとして批判があるだろうが、モスクワを北京・テヘラン枢軸側へ追いやって良いのか。プーチンはウクライナをNATOに渡す事は容認しない。(佐藤)
・第2次大戦で、赤軍がドイツを占領するや、真っ先に探したのがロケットの開発技術者です。その研究・開発・生産の拠点となったのがウクライナ。しかもその拠点は、親ロシア派とウクライナ軍が戦闘を繰り広げている東部と南部に集中している。(手嶋)
・元外務官僚の宮家邦彦氏が「米国の知らないところで、将来独露間にクリミア併合を黙認しウクライナを緩衝国家とする密約が結ばれる可能性はないだろうか・・・戦前の独ソ不可侵条約と同じことが再び起こらないとも限らない」と産経新聞に書いているが、これはヨーロッパの然るべき筋が安倍氏に近い宮家氏に伝えた「内緒話」だったと思います。(佐藤)
・・・・この話を読んでアメリカのNSAがドイツのメルケル首相の電話盗聴をしていた事に合点がいきました。
【イスラム国】
・アメリカに限らず、政治指導者のもとには政治決断の選択肢が下から上がってきます。
この場合もきっと①空爆の敢行、②軍事顧問団の派遣、③一切の軍事的関与を見送る。凡庸な指導者ほど②を選ぶ。オバマは②を選択し、その後に①にシフト。オバマはぶれている。(佐藤)
・政治指導者が避けなければならない最たるもの、それが戦力の逐次投入です。ベトナム戦争の泥沼も、最初は軍事顧問団の逐次投入から始まった。(手嶋)
・そうして中途半端なオバマの関与が、反米的なテロ集団である「イスラム国」のイラク浸透を助ける結果になった。「イスラム国」を無力化するためには米軍が地上戦に踏み切る必要があります。しかしオバマにその腹はない。事態が悪化すれば、いよいよオバマは「毒饅頭」に手を伸ばさざるをえないんです。つまり仇敵イランとの連携。(佐藤)
・アメリカの「力の不行使」は「超大国の終わり」の始まりです。そしてアメリカが日本の同盟国である以上、中東情勢を混迷に陥れるだけでなく、東アジアの安全保障にも影を落すことになる。(手嶋)
・アメリカがイランに助けを求め、その結果イランの核開発禁止の手を緩めれば、サウジアラビアをアメリカから離反させる。イランが核を保有する事態になれば、インテリジェンス業界では誰もが存在を疑わない「(パキスタンの核をサウジに持ち込む)パキスタン・サウジアラビア秘密協定」がいよいよ発動される。(佐藤)
・イスラエルも黙っていない(手嶋)
【その他】
キシンジャーの著書「外交」の話が「尖閣を防衛したがらないオバマ」に繋がる事や、番外編で、「外務省から休職を命じられた時にロシア、イスラエル、韓国等の『その筋』」からうちで働かないか」と誘いを受けた事を手嶋が佐藤から聞き出す・・・等々次々と面白い話題が出て来ます。 -
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「法学部の四年生が万引きするのと、同じ年の普通のお兄ちゃんが万引きするのでは、罪が全然違いますからね。」
海外事情に通じる2人による密度が濃い対談。
非常に内容が濃く、聞いたこともない話も多く、これは本当なのかと思いながら読んだ。
それは、たとえばウクライナの対ロシアにおける重要性や、鳩山元首相のイラン訪問の隠された部分等である。
しかし、彼らの話には強い説得力があり、納得してしまう。
きっと情報は確かなのだろう。
こういう本を読むといかに自分が知らないかについて知ることができる。
ほかにも、
日韓交換公文の紛争についての認識(p.19)
沖縄入りを果たせなかった黄門さま(p.32)
シリアに関するイスラエルとロシアの心配(p.165)
EUにおけるギリシャ(p.204)
等、非常に興味深く読んだ。
内容が時事的なもので将来的には本書の情報価値は下がるかもしれないが、一読をお薦めする。 -
Posted by ブクログ
重慶市のホテルで英国人ビジネスマン、ヘイウッドの変死体が発見される。
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当局は病死として処理する。
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不審を感じた副市長で公安局長の王立軍が市長の薄煕来に捜査を進言。
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進言した王が解任される。
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王が米国総領事館へ駆け込み、アメリカ、イギリスの当局を巻き込み、薄煕来の妻、谷開来が殺害容疑で逮捕される。
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捜査により薄夫妻が5000億の蓄財をヘイウッドの力を借り海外へ不正送金していたことが判明。
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薄氏は現書記長・習近平の太子党の系譜の為、前書記長・胡錦濤の息のかかった安黴省で裁判が行われ、薄氏の妻へ死刑判決が出る。
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事件の真相は太子党内で力を付けていた薄氏を警戒した胡錦濤の「共青団」が薄氏の不正を調べ出し、その動きを察知した薄氏側が犯行に及んだものとされる。
しかし薄氏の妻は「ヘイウッドに息子のことで脅されていた」と主張・・・
その後、
イギリスの新聞「デイリーメール」がヘイウッドがMI6の工作員であったことを暴露する。
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ヘイウッド自身、次期政権の中枢を担う薄氏と深く関係しすぎた為、「身の危険を感じる」と知人に話す。
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更にヘイウッドは重慶でのコンサルタント業の他、北京では車のディーラーをやっていた事が判明。
その車は‘アストン・マーチン’で「共青団」の幹部に販売していた。
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要するにヘイウッドは習側と胡側に食い込んだダブル・エージェントだったわけである。
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薄氏に警戒を抱いたヘイウッドが「共青団」へ軸を変えようとしていた可能性もある。
薄氏の息子はヘイウッドのルートでオックスフォードさらにハーバードへと進学している。
その後見人はサッチャーの外交アドバイザーだったパウエル氏で、イギリスは薄一家を貴重な‘情報源’に仕立て上げようとしていた模様。
その旨で脅されていたとすれば谷開来の主張が裏付けられる。
米総領事館へ逃げ込んだ王立軍は薄氏の諜報活動の証拠として国家主席らの電話盗聴のテープなどを持ち込み、米への亡命を依頼する。
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米政府は総領事館で資料は預かったが「米国側へは渡さなかった」と公式発表し、王立軍の政治亡命を拒否。
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現在、王立軍は中国公安当局の拘束下にあり、資料が米へ渡っていれば国家反逆罪で死刑が確定的、処刑が施行されると、亡命を拒否したオバマ政権が批判にさらされるので「それほどの情報は得ていない」とシラを切っている状態。
はてさて20年ぐらいたったら事件の真相がわるるのでしょうか!? -
Posted by ブクログ
佐藤優さんと手嶋龍一さんの、袈裟の下に鎧を隠した感じの対談集、でしょうか。
いや、非常に読み応えがありました、まさしく今の世界状況を読み解く道標かと。
少なくとも年内から来年夏くらいまでの状況は対応できる気に、なりました。
「国家を真剣に守ろうと思えば、情報収集の手段は自前で構築する必要がある。」
これをベースに、自分なりの肌感と軸となる価値観を交えて、意見を確立しておきたいところ。
同じくお二人の対談である『インテリジェンス 武器なき戦争』も読み返してみようかな。
言われてみれば、なんだか妙に違和感を感じる昨今のTPP反対論ですが、
お二人の仰る「経済ではなく安全保障の視座での検討が肝要」とは納得です。
「アメリカは「日本なきTPP」などあり得ないと考えています。
ですから「日米豪」枢軸の安全保障・経済同盟に育てようと構想している」
地政学的にも、海洋国家と大陸国家の衝突はある意味宿命的だと思います。
それが故に、大陸国家が海洋権益を求めて外に出てきているのは、危険な兆候かと。
「帝国主義の本質は、「搾取」と「収奪」にあります。」
ここ数年で「ゲームのルール」がガラリと変わっている(回帰している?)とも思います。
ホント、70年前の第二次大戦前夜に似てきたなぁ、、と改めて感じてしまいました。
「国家の根幹が揺らいでいるいまこそ、近未来を見通して国益を守ることができる指導者に
この国の外交と安全保障を委ねる時だと考えます。」
このタイミングでの〆のこの言葉、さて両氏が示している「指導者」とは、、気になります。
安倍政権の時の日豪安保共同宣言や、麻生さんの「自由と繁栄の弧」を鑑みると、
どう読み解いていくのかが、非常に鮮明に思い浮かべることができました、なんて。
あと個人的には、既存メディアの色眼鏡を通した内容ではなく、
真っ直ぐな視点からの、沖縄と北海道の現況を知りたいですが、うーん。
ん、来月の選挙を前にもう一度読み返しておくべきかと、感じました。 -
Posted by ブクログ
「わかりやすく解説」するニュースよりよほど分かりやすく歴史の襞に分け入っていると思う。
p. 60 ウクライナ東部のルハンスク州、ドネツク州の住民を擁護し、非軍事化するーープーチンは、こうした名分を掲げて侵攻に踏み切った。しかしこれは今回の侵攻での「戦争目的」に過ぎません。ここに至る経過は長くて複雑です。(中略)
ソビエト連邦は解体を余儀なくされ、それに伴ってNATOに対抗してソ連、東ドイツ、ポーランドなどが結成したワルシャワ条約機構も解体されました。このとき、西側陣営は「国際社会の脅威はこれで消え去った」と勝利に酔いしれ、ワルシャワ条約機構が消滅した地域にNATOを拡大していきます。(中略)
この時ロシアは、バルト三国には拡大するな、これが“レッドライン”だと抗いました。にもかかわらず、2004年には第五次拡大に乗り出し、問題のバルト三国に加え、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ルーマニアの計7ヵ国を取り込んでしまった。(中略)NATOは東へ東へと進んでいきました。冷戦の勝者はまことに鈍感だったと言わざるを得ませんでした。
加えてロシアがあれほど抗ったバルト三国へもNATOを拡大したことで、アメリカにはロシアが唱える“レッドライン”も強く押せばいくらでも変わると言う成功体験が刻み込まれてしまったわけです。
p. 68 何がプーチンに(2008年のジョージア)軍事侵攻を決断させたのか。“8月の砲声”があがる4ヵ月前、ルーマニアのブカレストでNATO首脳会議が開かれました。その首脳宣言は「NATOはウクライナとジョージアがNATOの一員になりたいと言う希望を歓迎する。我々今日両国が将来的にNATOの一員になることに同意する」と述べています。NATOの正式な決議では無いものの、ウクライナとジョージアをNATOに向かい入れると言う基本的な方向が示された。これはプーチンの虎の尾を踏むきわめて危うい振る舞いでした。(中略)
この宣言はいくつもの危うさを内蔵していました。まずウクライナとジョージアをNATOに迎え入れると宣言は述べていますが、単なる希望の表明に過ぎない。NATOに加盟するには、厳格な条件と手続きが必要で、両国はその条件を必ずしも満たしていません。国内に紛争や領土問題を抱えていれば加盟できない。アメリカもそんな事は百も承知だったのですが、対ロ外交で何か実績を残しておきたいと考え、加盟を実現する確かな見通しもなく、そのための外交努力もしないまま、宣言に盛り込んでしまった。実体なき“言の葉外交”の悪しき事例です。超大国の外交としては、これだけはしてはいけないと言う典型です。
はたして、プーチンの激烈な怒りを招くことになってしまった。NATOがウクライナを呑み込んでさらに東に迫ってくる。これはロシア存亡の危機であり、もはや我慢の限界だと。そして言葉通り、ジョージアが先制攻撃を仕掛けてきたのに乗じて、国境のトンネルを通って、武力侵攻に出たのでした。(中略)
アメリカ外交には、相手国の内在的な論理に鈍感な荒っぽい遺伝形質がありときにそれが噴出してしまう。ロシア側があれほど反対したバルト三国もNATOに組み入れられ、最後の緩衝地帯とみなすウクライナとジョージアにも手をつけようとしている。ロシアは柔らかい脇腹にドスを突きつけられたと受け取ったのでしょう。ドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ大統領は、そうした機微に少しく通じていましたので、はっきりと異を唱えたのですが、アメリカ側の強いい姿勢に押し切られてしまいます。(中略)
あそこが、現代史の岐かれでした。ジョージアにあがった“8月の砲声”こそ、今のウクライナの戦争をまさしく先取りしていたと見るべきでしょう。
p. 104 ウクライナは、ソ連が崩壊した後の1991年12月28日に、独立国家となり、ロシアとも西側諸国ともバランスを取る中立政策を標榜して出発しました。しかし、実際にはその時々の政権は、ロシア寄りになったり、EUに軸足を置いたりと、揺れ動いてきた。
ウクライナのヤジロベーといわれる現象ですね。
p. 110 ウクライナ語しか認められなくなれば、ウクライナ語で書類を書けない人は公務員の資格を失います。(中略)公用語をどうするかという問題は、言語的た属性によるポスト争いの性格を帯びるんです。
p. 115 ロシアの命運を握る軍需拠点をウクライナに置いたのは、フルシチョフがクリミアを渡したのと同様、よもやウクライナが分離・独立し、ロシアに楯突く存在になるなど、想像すらしていなかったからです。(フルシチョフは1954年に融和政策の一環としてクリミアを贈与した)
p. 132 ウクライナ側がわざとポーランド国境近くにミサイルを撃ち、ロシアの仕業にしてNATO軍に出動させる。(中略)もちろん、現場ではエビデンスのある話ではありません。ただ、直後から「ロシア犯人節」を主張し、いまだにその姿勢を変えていない。その事実は、もしかするとそういうことをしかねないと言う状況証拠にはなる。ウクライナの現状を考えると、今後、そうした現代の盧溝橋事件みたいな事態が起きる可能性は想定しておくべきです。(中略)「盧溝橋型」で始まった戦争が、核を誘発する危険性を孕んでいる。その怖さと言うものを、リアルに認識する必要があると思います。
p. 144 [ヴァルダイ会議のプーチン大統領の発言]ソ連の崩壊は、地政学的な力のバランスも破壊しました。欧米は商社の気分になり、自分たちの意思、文化、利益のみが存在する1極的な世界秩序を宣言しました。(中略)私たちは、第二次世界大戦後、おそらく最も危険で予測不可能な、しかし、 重要な10年を前にして、歴史の分岐点に立っているのです。欧米は単独で人類を支配することはできないが、必死にそうしようとしており、世界のほとんどの国々はもはや我慢の限界に達しているのです。これが新時代の大きな矛盾です。このような状態は、世界的な紛争、あるいは紛争の連鎖をはらんでおり、西側諸国を含む人類にとって脅威となるものです。この矛盾を建設的に解消することが、今日の主要な歴史的課題です。
→戦争の当事者とは思えない、実に冷静な分析です。
p. 151 彼が口にする通り、「世界秩序全体の地殻変動」が起こりつつある。「民主主義を投げ捨て、無謀な戦争に走ったロシアは、孤立を深めている」といった見方で凝り固まっていると、戦争の霧が晴れたとき、地政学的に以前とは全く異なる景色が広がっているのに、西側世界は愕然とすることになるかもしれません。(国連の特別総会による決議で、「国境を越えて主権国家に踏み切ったこと、その領土を強制的に併合したことを非難する。決議案では賛成が圧倒的だったが、人権理事会からの排除、賠償金の支払いと言う議案に関しては、決議は成立したものの、賛成票は過半数に達することができなかった。(中略)「反西側」のエネルギーは、想像以上に底堅いことが読み取れます。プーチン大統領はウクライナ侵攻が初の記者会見で「ロシアは世界から孤立するつもりもないし、ロシアを孤立させることも不可能だ」と語った。決して強がりではなかった。)
p. 160 「我々は究極的に勝利して、世界は我々の価値観によって統治される」という理念で貫かれていたという点で、アメリカの自由民主主義も、ソ連の共産主義も非常によく似ていた。(中略)プーチンが立脚するのは、そうした普遍主義的な考えではなく、ロシアにはロシアの歴史発展がある、中国には中国の歴史発展があるのだと。
p. 162 クリミア半島の南端の要衝、セヴァストポリ軍港を西側陣営に奪還されて、黒海へ出られなくなったとしても、中国やインドとうまくやっていけば十分生きていける。21世紀の今日、不凍港としての戦力的な価値は大きく減じているーー実に表層的な見方です。プーチンはそんな選択を決してよしとしないはずです。セヴァストポリがウクライナの実行支配下に入れば、それは1991年の地点に戻るのではない。18世紀後半のロシア全盛期に皇帝エカチェリーナ2世の時代に領有した土地のすべてを喪うことを意味します。ロシアの兵士たちがで上がった領土を失うのであり、後から手に入れた土地を譲り渡すのとは意味合いが異なります。(中略)
ロシアの国土は切り刻まれ、さらに西側の侵食を許すことになるかもしれない。そうなると、究極の発想(核戦争)が頭をもたげてもおかしくはないでしょう。彼は、「ロシアがない世界は存在する意味がない」と公言していますから。(プーチンのマッドマン的要素。イランや北朝鮮、かつての大日本帝国に近い「個人の命は有限だけれども、悠久の大義で生きれば永遠に生きるのだ」「我々の発展が担保されず、アメリカ的な原理に叩き潰されるならば、白人支配に抗って存在した民族がいたという跡が歴史に刻まれればいい」)
p. 156 歴史に残るような大きなことをする人間には、結構独身の人間が多いんです。哲学者で言えば、デカルトライプニッツカントもそうです。政治家で言えばヒトラーも自殺する直前までは独り身でした。
ある意味で、自らの事業が私生活から切り離されている。顧みるべき私生活がないと言ったほうがいいかもしれません。プーチンは2013年に離婚し家族を切り捨ててしまいました。だから私生活で後ろ髪を引かれるものがない。こういう人は極端な思考に走りやすいという考察があります。プーチンの場合は、ロシア国家の運命と自分の運命を一体化し、その思想がどんどん煮詰まっているように見えます。特に離婚して独り身になってから、すごく煮詰まっている。言い方を変えると、独りロシアの理念を追求するあまり、思想がどんどん観念化し、哲学者のようになっていくわけです。(中略)そういう人の怖さはやっぱりあるんです。その意味で心温まる家族の存在というのはすごく大切です。皮膚感覚として守るべきものがあると考えている人と、そういう存在と全く切り離されている人は、大いに異なります。(中略)
プーチンは、クレムリンでも、ソチの公邸でも、いつも一人ぼっちです。
確かにそれじゃあ、どんどんに詰まってもおかしくはありませんね。
ウクライナ戦争の一方の最高指揮官は、私生活で支えてくれる家族を持たず、孤独な環境で決断を下さなければならない思索者なのです。“プーチンの戦争”を考える時、無視できないファクターだと思います。
p. 190 習近平は「互いの核心的利益に関わる問題では強く支え合っていきたい」と述べていました。プーチンはここが勝負どころと踏んだのでしょう。「我々は『一つの中国』と言う原則を厳守する」と応じ、習近平の心臓を鷲掴みにしてみせたのでした。
「一つの中国」の原則を支持するではなく、厳守すると言ったのですから、プーチンの政治感覚がどれほど研ぎ澄まされているか、分かろうというものです。
p. 233 プーチン大統領は「ロシアの核心的な利益を冒されたときには、核の使用もありうる」と述べている。(「核心的利益」とは、p. 175によるとモスクワやサンクトペテルブルク、ロシアの核戦略の基地のほか、クリミア半島の要衝セヴァストポリ。プーチンにとって、ここを失うのはロシアの魂を失うに等しい) -
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一般市民が犠牲になり、憎しみの連鎖が止まらない。なぜハマスはテロを起こしたのか、そしてイスラエルはなぜ一般市民を巻き込んででも徹底的に攻撃するのか。日本に住む我々には理解が難しいが、2人のインテリジェンスの専門家が平易に説明してくれる。
読めば読むほど解決が難しい問題。これが第三次世界大戦の引き金にならないことを切に願う。
以下、個人的メモ。
イスラエル、特にネタニヤフ首相の内在的論理。
・全世界から同情され死に絶えるよりも、全世界を敵に回しても生き残る。
・ハマスはユダヤ人という属性を持つものを抹殺するという姿勢を持っており、テロ攻撃ができなくなるまで決定的に掃討を徹底する。
ハマスの内在的論理
・ネタニヤフの政策で、ガザ地区が天井なき牢獄にされ、電力が慢性的に不足、劣悪な生活環境、失業率上昇などで住民の不満が沸点に達していた。住民たちはネタニヤフに憎むと同時に、期待したのに改善してくれないハマスにも怒りの矛先を向けつつあった。
・ハマスとしてはイスラエルと戦う姿勢を見せる捨身の奇襲作戦をせざるを得ないところまで追い込まれていた。
・今回の戦争のきっかけはイスラエルがパレスチナ、ハマスを追い込みすぎて招いたテロが発端になっているとも言える。
・そこにサウジとイランの国交回復、そして次にサウジとイスラエルの国交回復交渉が始まったこともハマスを焦らせた。このままではジリ貧になる。イスラエルから100倍返しがくるのは分かった上でもやるしかなかったのしれない。
もっと歴史を遡ると、WW2後の相次ぐ中東戦争、WW1時のイギリスの三枚舌外交、もっと言えば2000年前の出エジプト記まで遡る話で複雑に絡み合って何が正しいとか何が原因だとかを簡単に言えるものではない。
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Posted by ブクログ
ウクライナとロシアの戦争についてこれほど的確な見識を述べた書物は少ないと言える。メディアや一般の作家から出てくることはウクライナが善、ロシアか悪と描かれているが本当は異なることがこの作品を読むとよく理解できる。ウクライナ東部でのウクライナと親ロシア派の対立が、この戦争を引き起こしたことは明らかだが、それ以前の歴史を紐解けば結論を急ぐべきではなかったのである。犠牲になるのは平和に暮らしていた民衆達で、悪は権力を握るウクライナ政権の中枢の人々そしてアメリカである。プーチンが行っていることには賛成はできないが、これに関してはロシアに大義があると個人的に考える。
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Posted by ブクログ
プーチンを正当化できないが一応国際法上の辻褄合わせはしていること、日本のニウエ承認との比較、ローマ教皇の失言とウクライナ戦争へのバチカンの関与、戦争の経過でプーチンの考えが変わったこと、バラバラなウクライナ軍、情報源としてのISWの評価、ウクライナを勝たせるつもりもなく戦争を管理するアメリカ、今の悲劇の原点であるグルジア戦争、セヴァストポリ軍港を失えないプーチン、バイデンの開戦情報リークは失敗、劣化したイギリスのメディアや情報機関、ウクライナが西部と東部で全然違うこと、ポーランドに落下したミサイルの意味、プーチンがマッドマン的な要素を持ちつつ正気であること、中露が同床異夢ではないこと、停戦についてなどなどを話し合っていて面白い。