舞城王太郎のレビュー一覧
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名前のない二人称は主人公を愛し、慈しみ、彼らの魔と悪への対峙を見守る。二人称のその無力さが、読む者が必然的にもつ無力さとシンクロするため、読後に不思議な余韻を残すのだと思う。
ストーリーにわかりやすい対立構造をもつ「さおり」と、インパクトのある強敵と格闘する「悟堂」に比べて、「果歩」には明確に対立する敵や実体化した敵が登場しない。広瀬や絵の少女がそうかというと違う気がする。強いて言えば自分自身の意識下にある何か、または健全な外観からは見えない悪なるものである。それに気づかない者は、恐らく生涯気づかない。また気づいたときには「怖いことを考えることそのものが、悪い影響を持つ」というテーゼのもと、すでに手遅れになっているのである。
つまり「深夜百太郎」を完成させた舞城は、もういろいろと手遅れなのかもしれない。でもきっと、「果歩」のラストで二人称が消えかけたときのような執念をもって復讐のチャンスをうかがっている。 -
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青春小説?そんなこと全く思わなかった。
密室というミステリーにおける鉄板ネタを、あれやこれやと否定否定。バカなトリック。だけど愛おしい。しかも家族とかけて再生の物語なんて、舞城天才かよ。
名探偵ルンババといいキャラの破天荒。ストーリーのはじっけっぷり。そこにドライブ文体。
井上姉妹の心情は、西加奈子や川上未映子っぽさがあり、女性作家?いやいや、友紀夫とルンババの笑いのセンスは男性作家?相変わらず不思議な作家だ。
久しぶりな舞城作品は愛も変わらず、愛の話。そこにミステリーのエッセンスがあるのだから、楽しいに決まっている。
おススメマラソンその④
杏仁さんより紹介いただきました。感謝。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこれはいち舞城ファンの感想なんですけど、舞城作品って物理攻撃に近い気がする。読んでいる間中ずっと、胸倉を掴まれてブンブン引きずり回されてる感じ。この感覚は短編であるほど強いような。
じゃあ「ホラー長編」であるところの本作はどうだったかと言うと、やはり何か恐ろしく強いものに首根っこを押さえられているようで、早い話が途中で読むのを止める事ができませんでした。
影、暗闇、真っ黒坊主――……。
突如現れる黒々とした穴が、主人公たちの日常を侵食する。
主人公?主人公かあ。うーん難しい。
3つのパートは「中島さおり」「堀江果歩」「中村悟堂」という人名を冠してはいるんだけど、それぞれの物語を語るのは名前の人物自身ではなく彼らにぴったりと寄り添う「誰か」で、でもそれは何でも知っている神様みたいな存在って訳でもなくて割と普通の人間っぽくて、だからこそその「誰か」が用いる二人称に愛を感じて切ないのです。
それはさておき、その「誰か」が次のパートにバトンタッチされて行ってるくさいので、やっぱり主人公ということでいいのかな。とにかくこの構造がすごく面白いなーと思いました。
他の作品でも繰り返し扱われる「怖い想像が悪い影響を持つ」っていうテーマも本当に怖い。生理的に怖い。でも読んじゃう。怖いもの見たさって怖いなあ。もう「怖い」しか言ってないけど。
今まで自分の中で舞城王太郎と云えば『煙か土か食い物』が一番好きだったんですけど、そのランキングがちょっと変動するかもしれない。それくらい面白かったです。 -
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何かを読んで心を動かされるのにも2種類あって、ひとつは作品と自分の中身がマッチした心地よい心動かされ方、もうひとつは心なんか動かされたくないのに無理やりに、強制的に、ほとんど暴力的にその辺を引きずり回されるような、そんな凶暴な感動だと思っているんですけど、私の中で舞城作品は完全に後者。小説と云うより劇物と呼びたいくらいです。
で、『短篇五芒星』。
5篇全てが芥川賞候補作!と言われても文学賞に疎い私には、それがどんだけのどういう事なのかちょっと分からないんですけど、読んでみてなんかスゲー!というのは思い知らされました。
言ってる事もやってる事も推理も結婚も要は起も承も転も結も突拍子もなくて、その突拍子のなさが怖くて、でも続きが気になるから読んじゃって、読んだら読んだでまた怖い目に遭わされて、あまりの怖さに変な汗をかいていたら急になんか優しくされて、え?怖いの?優しいの?どっちなの???って私ポカーン。安定の舞城ワールド。
あの団体やあの探偵(もちろん西暁町)も登場するので、過去の長編再読したい熱まで高まりました。
【収録作品】
美しい馬の地
アユの嫁
四点リレー怪談
バーベル・ザ・バーバリアン
あうだうだう -
Posted by ブクログ
『何とかと煙は高いところが好きと人は言うようだし父も母もルンババも僕に向かってそう言うのでどうやら僕は煙であるようだった。』
『でも僕までここで一緒に泣いていたら、誰が明るい明日を運んでくるんだ?』
『ポテトチップスさえあれば全てがOK。』
『頭働かせよう、何かちゃんと考えようと思って考えるのが最近習ったばかりの受動態の構文で、ビーサプラチズドアット、ビープリーズドウィズ、ビーボーンインとか一生懸命唱えちゃって訳が判らない。ビーパンチトバイやげ俺。』
「ふざけんなって、ねー?奥さん妊娠させといてこっちも妊娠させようって、それは虫が良すぎるってもんでしょ。こっちの子宮は甘くないっつの」
『くそ、こうなりゃ踊るか?ヴィッツのボンネットの上に登ってシャバダバデュワップデュビデュバとやってやるか?それとも得意のロボットダンスか?それとも後部座席でいきなり漫談でも始めるか?泣いてる女の子の背後で必殺の一人漫談。』
『「その愛のハンカチ、私に頂戴」。え。「いいですよ」。何?「ありがと」。それから僕は埼玉のどこかの国道の脇で、初対面の女の子に、出会って二時間でキスを奪われるという、唐突過ぎて素敵なんだかどうだか判らない経験をする。それは短いキスだったが、でも唇と唇は乱暴なくらいにブッチュ〜とぶつかり合って離れた。僕の凄いところは、その瞬間咄嗟に手を出して彼女の胸をばっちり触っておいたところだ。あらゆるチャンスを逃さない男・西村友紀夫。』
『何しろ僕は修学旅行中の中学生で、場所は旅行のルートを大きく外れた埼玉で、相手はそこに住んでいる、僕より二つ年上の、何度も言うけどまだ出会って二時間しか経っていない、それもその内一緒にいたのはまだ一時間ほどの、色々複雑なものを抱えていそうな女の子だった。謎の理由でワーンと泣いて涙も拭かず、一言「愛」を口にしただけでキスを求めてくるような情緒不安定な女の子だった。』
『「はい、西村です」「う、もしもし。うう、ヒノウエですけ、ど」。エノキは最初からもう涙声でグジグジだった。僕の全身に結構たくさんある普段は寝ていていいはずの細胞がザーッと起こされる気配があった。うわわわわわわエノキさん泣いてるよ!』
『何事も一つ一つ順番に片付けなくてはならないのだ。もし何かを本当にちゃんと片付けたいのなら。』
『女の子の肩は、見た目よりずっと小さい。
お風呂で熱いと思うお湯の温度が、口に入れてみると全然ぬるいのと同じだ。何かを適切に計る器官は、対象によってそれぞれ決まっているのだ。女の子の肩の大きさは、抱いてみなけりゃ判らない。』
『人生皆、それぞれにいろんな楽しみ方がある。どんな楽しみ方をしようと、それは人の勝手である。』
『どうして泣いちゃいけないの?→エノキが泣くと、僕まで悲しくなるじゃないか。だからエノキ、泣くな。僕まで泣いちゃうからエノキ、泣くなよ。頼むから。』
『「俺の父親と母親、どうやって殺してやるかなと思って考えたやつやで」
うーんそりゃ燃えて良かったね。』
「思い出したわボケ。おめえ何してるんじゃこんなところで。涼ちゃんの命日なら、こんなところで自殺なんて図ってんと、墓参り行け、墓参り」
『それからごめんごめんと繰り返し謝った。助けられなくてごめん。あの時助けられなくてごめん。本当はどうにかして助けたかったのに、弱くてそれができなくて、助けられなくてごめん。ごめん。ごめん。ごめん。』
『「私先帰ってるね。友紀夫、今日これからどうする?」
「まず布団の洗濯手伝って、ほやな…」
「デートしよか」
それいいですね。』 -
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「すねなんか好きなだけかじればいいけど ー 心はかじられると、痛いし、辛いし、ねえ、苦しいし…かじられた分、心ってのは削られて減るんだわねえ…」
「『吸血鬼は実在する』って書いてあったんだよ、それもキリンの脇の下に。怖くない?」
「何でそんなとこに書いてあんのよ」
「逆に、そこにしか書けなかったんじゃない?そういう情報だから」
「ああ…」
「誰かに読んでほしいとかじゃなくて、とりあえず書いておかないと、みたいな」
『架空の物語っていうのは、本当のことを伝えるために嘘をつくことなのだ。』
「ああ…正論ね。正論って駄目だよね。人の怒りとかってコンロの火みたいには消えないから、うまく騙して振り回して風に当ててやって、ゆっくり鎮火させないと駄目なんだよね。」
『自分ってこうなんですよって言いたいのと言いたくないのとのせめぎ合いの中で言葉が暴走しちゃったのかもしれない。自分のキャラを演じてるっていう自分に気がついてそれを踏まえた新しいキャラを作り出してってのを重ねた挙句に混乱して意味不明のまま自分の中に引きこもるみたいにして脱出…最悪だ。
何がしたいんだろう?自分でもよく判らない。』
『正論ってのは他人を正すためにあるんじゃないんだよ。世論ってのはあくまでも自分と言う潜水艦の周囲の状況確かめるために発信するソナーなんだよ。自分が正しいと感じる、信じる意見をポーンと打って、返ってくる反響で地形を調べるのだ。ソナーで道が拓けるわけじゃない。』
『正しさで人は変わらない。正しさで人を動かすことができない。』
「あんたねえ、ぶちぶちうざったいよ!あんたの世界観と実際の世界は関係ないの!こうあって欲しい形と実際の形が違うことに失望して落ち込むくらいなら実際と違うことを望まなきゃいいのに!理想と現実のギャップなんてまんま受けとめられないなら理想語るのやめな!ちょっと人前で理想言って良いカッコしたいだけの子と変わんないよ!本当の理想主義の人は、ギャップを測ってそれ埋めるために実際の作業始めるんだから!」
『仮のものしか出せない未来のチケットの本物を求める私が間違っているのだ。』
『男って凄い。チンポ一本でこんだけいろんな人を振り回すことができるんだもんな…。』
『私は家族の何を知ってたんだろう?
私たちは、どれだけお互いのことを見過ごし、見逃し、見損なっていたんだろう?』
『いや、他人に影響を与えるなんてなかなかできないものだ。
人にはそれぞれの考え方、感じ方、価値観、行動原理があるってのは基本前提として誰にでも備わっているのだ。お互いの違いを認めてるからこそ、そうそう本質は変わったりしない。』
『人間のゼロは骨なのだ、とまた思う。
そこに肉と物語をまとっていく。歴史と記憶と想像と思い込みと願いと祈りと連想と創造。物語を物語が飲み込んで、時には思わぬ飛躍も起こる。』 -
Posted by ブクログ
出来事→あいつらなんかこうなればいい→でもホントは違うんだ…そうだとしたらあぁなっちゃうし。だからあれなんだ。
むちゃくちゃなようで妙に説得力があるし、実際間違ったことはいってない。
表現そのものより、表現しようとしているものに含まれるメッセージが胸を打つのかもしれない。あと突拍子のないストーリーと設定とテンポ。グルーヴよりのり。
物語としては素人くさい、パンク。オチむりやり。でも読んじゃう。
わかった、作者が一番楽しんでるから、読者も楽しいんだ。
パッきゃらまどうあたりからあきはじめる。話に関係ない話を楽しめなくなってきた。しかし気づくとはまってる、くそぅ。てかほんと、何でこんな風に書けるの?