清武英利のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
『しんがり』
清武英利
清武英利さんの『しんがり 山一證券 最後の12人』は、実話に基づいたノンフィクション作品で、1997年に自主廃業した山一證券の“最後の砦”となった社員たちの姿を描いている。
1997年、老舗証券会社・山一證券が突然の自主廃業を発表。
社長の号泣会見は世間に衝撃を与え、「社員は悪くありません!」という言葉が記憶に残る出来事だった。
- 社員の多くが再就職に奔走する中、業務監理本部(ギョウカン)という“場末”と呼ばれる部署にいた12人の社員たちは、会社に残り続けた。
- 彼らは無給で、顧客資産の清算業務や、帳簿外債務(約2600億円)の社内調査に取り組む。
- 「 -
Posted by ブクログ
『ーーたぶん、会社という組織には馬鹿な人間も必要なのだ。いまさら調査しても、会社は生き返るわけではない。訴えられそうなその時に、一文の得にもならない事実解明と公表を土日返上、無制限残業で続けるなど、賢い人間から見れば、馬鹿の見本だろう。しかし、そうした馬鹿がいなければ、会社の最期は締まらないのだ。(p.321)』
全JTCで働くサラリーマンに読んでほしい作品。
たとえるなら、「救いのない半沢直樹」といったところだろうか。
経営陣の不正によってある日突然、経営破綻した山一證券。
その事実を日経新聞で知った社員も多かったという。
主人公である嘉本さんもそのひとり。
これは、トップ経営陣の不 -
Posted by ブクログ
ハンナ・アーレントは「エルサレムのアイヒマン」でホロコーストの中心人物アイヒマンを見るからに極悪非道な悪人ではなく平凡な官僚だと評し悪の凡庸さを主張した。
山一証券を破綻に追い込んだ人たちも同じ構図なのではないかと思う。確かに出世欲や金銭欲が人よりあったのかもしれないが、最初は些細なことで始まり、それを周りは見て見ぬふりをし、いつのまにか歯止めが利かなくなる。誰が悪いのかよく分からず悪の権化みたいなものはおらず、ただただ倫理観が欠落していただけではないかと思う。倫理観すら独自にあった可能性もある。恐ろしいのは空気のような実体のなさで、エルサレムのアイヒマンとの類似に気づかされる。これは人間の -
Posted by ブクログ
ノンフィクションであり、かつ実名で今も現役で活躍される方も多く登場するので、臨場感があって面白い。また不自然にトヨタ自動車を持ち上げる感じもなく、最近はどうか分からないが、鬱になりそうな働き方やトヨタ村の閉鎖的な感じ、纏まりの無さ、本人達が気付いていないような傲慢さなども生々しく綴られる。ただ、不思議と嫌な感じではない。この「傲慢というか奔放だが、嫌な感じではなくてトヨタだから仕方ない」ムードは、実際にここの社員から受けた私の印象に近い。
仕事とは、出世や収入のためにするだけのものではなく、自分の好きな事をやり遂げられることが重要であるという事に気付かさてくれる話だった。端的に言うと、トヨタ -
購入済み
なんとなく知っているが詳しい内容はよく分かっていなかった山一証券破綻について理由・経緯が分かる上に、こんな熱い志持ったサラリーマンたちがいたんだと目頭が熱くなる内容。
自分が同じ立場だったら、しんがりとして残れたか…無理だろう。次の職や将来、家族などの不安で真実追求や清算処理なんてする余裕は絶対にない。でも、それをした人たちが実際にいた。その志、信念には感服するばかりで、読み終わったあと、色々と考えさせられた。すべてのサラリーマンに読んで欲しい一冊。