清武英利のレビュー一覧
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600ページの大作で、素晴らしい同僚たち、仕事をした人々を描く。
だいたい1/3くらいはありがちな「わが歩んだ道」系の自伝なのだが、いかんせん持っているエピソード自体が数奇で激烈なものだから、そしてそれが著者の筆力で生き生きと描かれているものだから、とても面白い。
下北半島の重く湿った空気と酔いどれ記者羽中田誠、ナベツネという怪物と読売グループで起きたことが生き生きと迫ってきた。
P35 絶対的な勝利の瞬間を楽しむマッカーサーの気安さは、(羽中田誠が)嫌というほど味わった、ふんぞり返った日本軍人の権威とは全くかけ離れ、敗戦国記者たちの気持ちを和ませた。彼はその時の鮮烈な思いを娘に何度も話して聞かせた
「俺はあの時、自由というもののスマートさに生唾を飲み込んだよ」
P48 (新聞社の社会部は)人間の生き死にを扱う社会ののぞき窓である。
P55 話の肝は、記者は警察から奪い取ってでも記事を書く、という気概にあった。
P85 意外だったり逆説的であったり詩的であったり、つかみを深く考えることが、読まれる記事につながり、自分のためになる。【中略】特ダネと文章で立つことができれば、会社におもねる必要はない。この二つが両立できる記者はめったにいない
P169 (畳の上で死ねなかった)その一つは戦場の死、殺人被害者の死などの「非業の死」、二つ目は免罪でありながらの処刑死。無念の思いで自ら死を選ぶ自殺など「無念の死」三つめは労働災害、航空機事故などによる「不慮の死」ーこれらの死について「なぜだ!」と疑問をもって追及していき、それらの死につながる様々なプレッシャーやシステムを問題視していくのが新聞記者の原点ではないか(元共同通信斎藤茂男)
P184「やっつけようとか、追及してやる、と思ったらだめなんだ。真実を究明しようと考えることで道が開けるよ」(元新聞赤旗 松宮敏樹)
P192 警部らにとっての重要事は、暴力団の抗争や事件、それに大きな犯罪につながる拳銃の不法所持や検挙件数なのである。考えて見れば私だって彼が「拳銃が上がらない」と漏らしても聞き流してきた。立場によって関心は違う、という当たり前のことに思いが至らなかったのだ。つまり「何か変わったことがありましたか」と彼らに尋ねるような御用聞き取材では、事件報告書の綴りをつかむ幸運はあっても、報告書や彼らの頭の中にある事件以上のものはつかめないのである。【中略】本当の特ダネは、他力本願ではなく、夜回り以前に始まる自力の疑問から生まれるということなのだろう。
P206 (税務署員の心得)「査察官は不正断じて許さずという鉄の手を持っていなければならない。しかし、鉄の手をむき出しにするのは悪魔である。鉄の手を持っていればこそ、その態度はあくまで懇切丁寧に上品にやらなければならない。鉄の手に上品な絹の手袋をはめなければならない」
P242 (森下香枝は)「コンパッション」という意識を持つように努めているという。コンパッションとは、相手の苦しみを深く感じ、軽くしてあげたいと思う感情や態度のことだ。
P272 たとえ成果のない日でも、その角の向こうに自分を待つ人がいる、と信じるように努めた。どんなにむなしい日も結局これは自分のためで、必要な一日だったと思えば苦痛を軽く受け止めることができる。
P275 脱税事件で摘発されるのはいつも中小企業や個人で、大企業の所得各紙は追徴のみで済まされている。国税庁には、刑事事件の「脱税」と、立件にまで行ったらない「所得隠し(追徴処分のみ)」を区分けする「脱税告発基準があった。
P288(警察庁の林則清暴対部長)なってほしくない「あいうえお幹部」
「ああいいよ」とよくわからないまま了解しておきながら、後になって「ああだこうだ」と文句を言う
「いま自分がいるときに実績を上げる」ことばかりを考えている
「うえの顔色や評価ばかりを気にしている
「えらそうにしたり、いい恰好ばかりしたりしているが、いざとなると逃げる」
「おれがおれがと手柄を独り占めにし、苦労は部下に押し付ける」
P296 (むのたけじ)「山のこなたにないものは、山のかなたにもない」
P429 「まああなたにはプロの世界はわからないでしょうから、私たちに任せて後ろの方で見ていてください」と「どうせ最後はナベツネが決めるのだから」この玄人意識と諦観が、巨人を支える編成の現場に同居している。(前者と後者が混ざると)失敗の責任をだれも取らない、無責任体質となって現れる。
P430 何をどう攻めていいのかよくわからなかったのである。この霧がかかったように「わからない」ということがだんだんわかってくる。ところが私のように前例踏襲が大嫌いな人間はわかってくる前に動いたり書いたりするから、ひどい恥をかく。
P452 各球団の強化策は、新人ドラフト、FA補強、トレード、外国人補強の4つに限られている。これに育成ドラフトという新たな武器を加え、異能異才の一芸選手を獲得すればその分だけ先を走ることができるはずだ。
P478 しごきに慣れた彼らにげんこつは効き目がない。その猛者たちももはや逃げ場はないところにいることを、背の愛やコーチたちははっとするような言葉で伝え鍛え上げていた。選手のうちにある力を引き出す術なのだろう「言葉の鉄拳こそが大事です」という古参選手もいた。
P508 無知は罪という言葉があるが、発表報道を疑わないことは罪だ
P563(むのたけじ)どのように生きるかに焦る人は多い。何のために生きるかに悩む人は少ない。生きる目的がはっきりすれば、どのようにでもして生きていけるのに。
P589 (大谷昭宏)黒田さんが決然と社を飛び出した時、付いていったのはオッチョコチョイの僕一人だ。人間はそういうもんなんだよ。【中略】誰しもわが身がかわいいに決まっている。許してやれよ。他人を咎めず、自分の力で生きていけ -
Posted by ブクログ
プロ野球選手はだいたいの人からは憧れの存在だ。
そしてプロ野球選手には所属する球団があり、球団を運営するために影で様々な苦労をする裏方のスタッフがいる。
この本は、野球と全く関係のない人生を歩んできたサラリーマンが、青天の霹靂の人事異動でプロ野球球団の建て直しをせよと言われ、奮闘するノンフィクションだ。
著者の清武さんは読売新聞の社会部記者として、長年スクープを報じてきたが、ご自身もその後、巨人軍の球団代表になり2011年に「読売のドン」こと渡邉恒雄氏の独裁を訴え、『清武の乱』と言われた係争になったという有名人。ゆえに野球界の裏がわかるようなリアリティある内容でした。
このノンフィクションの中では、阪神と広島という地元密着かつ根強いファンのいる球団に異動した2人の人物が奮闘し苦難の連続の日々を描かれていた。球団社長になっても上にはオーナーがいて、自分の自由になるというものは少ない。阪神は親会社の鉄道会社の過度な干渉とOBの派閥争いがあり、広島は市民球団ゆえの予算不足で選手がいなくなってゆく。メディアからは叩かれてフロントが悪いとバッシングを受ける…実にサラリーマンの悲哀を一身に受けるような内容だった。
やっぱりプロスポーツは、1人の単なるファンとして、好き勝手に語るほうが幸せなのだろうな。
大谷翔平やドジャースフィーバーが巻き起こる現在は、なかなか日本のプロ野球界にいい話がないよなあ。
ナベツネさんがいなくなったから、何か大きな改革もしやすくなったんじゃないか…そんな無責任なことをここに書いている僕も単なる一ファンだ。
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Posted by ブクログ
ネタバレノンフィクションを読むのが初めてで、若干の伝わりづらさがあったが、"記録"なのでこういうものなのかなと思った。映画は見ていたのでスラスラ読めた。
実際は映画よりももっと多くの医療関係者と関わって、宣政・陽子夫妻が一生懸命に前進していったことが分かった。
中央教会や神田さん、松尾さんの話は映画にはなかったように思うので、お二方の人生の一部を知れて良かった。
映画では寿美さんが病院で声をあげて泣くシーンが印象に残ったが、奈美さんや寿美さんが小学生の時から強い正義感で佳美さんを助けたり、三姉妹で部屋で他愛ない話をしているシーンが心に残った。
佳美さんが寿美さんに「いつまでもかわいいいもうとだよ」と伝えたシーンにグッときてしまった。神田さんとのエピソードにもあったが、佳美さんはお姉ちゃん肌だったのだなと思った。 -
Posted by ブクログ
会社が消える時、しんがり(後軍)として働いた人たちは、どんな気持ちで何を糧に自らを奮いたませていたのか。そこには、圧倒的な使命感、義務感、正義感があり、それこそが人生を良くするのではかいか。
不正の成り立ちは極めてシンプル。あるべき姿を忘れ、会社のため、あの人にお世話になったからと人の情が優先される。それが行きすぎる。防げる仕組みをつくらず、意義を唱える人を左遷し、帰還不能点(point of return)を超える。あとは、いつ爆発するか分からない爆弾を次の世代に託し、最後にばばを引いたのが野澤社長だった。
コンプライアンスは難しいものではなく常識的なものである。外から見るとおかしいと指摘できても、中に入ると視野狭窄になり、また、諦観し、仕方ないと思ってしまう。
秘密の共有により、周りに仲間意識を抱かせ、そうでないものを排除する。あとは、どうやって隠すのか?の知恵を皆で絞る、隠蔽体質そのもの。これも仕組みが悪い。大蔵やsescの仕事のための仕事の考えも大問題、不正が出ると悪いのは民間と押し付ける、老獪極まりない。
人間わ弱い、不正に手をそめたい人はいない、最初から悪い人はいない、ただ逃げてしまい、遵守になり、パンドラの箱を閉じる。保身の姿勢も見ていて泣けてくる。
コンプライアンスが叫ばれて久しいが、自分が勤める会社は本当に健全か?会社は健全でないと、市場から最終的には排除される。コンプライアンス部門の人たちを掃き溜めと、そういう意識を持っていないか?皆が正しいことをする、正しいことを言える心理的安全生の高い職場を作る、それは、従業員だけでなく、経営層の場でも同じ。山一の炎の社内調査書は、後学として読んでおくべき。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ序盤から中盤までなかなか没入していかなかったが、誰かのレビューでweb上ある社内調査報告書とドラマ版のしんがりを見てから読むと頭の中でイメージしやすいとのことだったのでその通りしたら後半はスムーズに読むことが出来た。
誰もが逃げ出したい状況の中で、やっても得をしないような事を真正面からやってのけることも才能であることが分かった。
また、終身雇用が崩れつつある中でもまだあの頃の日本人には会社に定年までいる事が当たり前だと思っていた頃、会社が無くなる事や転職する事、変化するのは今以上に抵抗があったと想像する。
しんがりの12人の逞しさ、強かな生を感じた一冊だった。