清武英利のレビュー一覧
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清武の乱の会見の清武さんは何とも地味でおどおどとした感じの人だったことをおぼろげながらに覚えている。巨人ファンでもないし渡辺恒雄にさして興味もなかったからこのニュース自体に興味もなかった。この本を読んで清武さんの印象が180°かわる。気骨ある人だった。
この本は大きくふたつの構成で清武さんの歩んできた人生が描かれる。ひとつめは社会の闇を暴こう、弱者の声を届けようとペンを持ち続けた記者たちの生き様とともに清武さんの記者人生を振り返るパート。ふたつめは渡辺恒雄との対決の実際を描くパート。特に自らが当事者である後者のパートは生々しく、独裁者渡辺恒雄の姿や独裁に染まった読売新聞のくだらなさがよく分かる。
新聞は欠かさず読んでいるが、年々社会的な弱者へ寄り添う姿勢が失われてきているように思う。ほぼ国際問題と経済問題に紙面がさかれ、政治面は政治全般の批判か首相の礼賛もしくは批判記事だ。週刊誌と対して変わらない。稀に取り上げられる社会的弱者もジェンダーや人権上の弱者で名もなき市井の弱者にはほぼ光が当たらない。
権力の監視機関たるメディアは何がしたいのだろうか?政治を社会を良くしたいと思ってるのか?そんなことを思い、新聞の劣化を嘆いていた。
清武さんはそんな劣化する新聞と対峙し変えようと努力してきた。その姿は彼のノンフィクションの主人公である後列の人々と重なる。現状は過去からの作為の積み重ねだ。きっと渡辺恒雄に嘆き、新聞のあり方を変えようと努力した結果が今だ。だから最悪ではないし、変えようとしている人は今もいるはずなので改善の途上にあるとも言えるかもしれない。清武さんや彼が取り上げた後列の人々が社会を支えている。
清武さんにはぜひ天国に行ってほしい。 -
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先天性心疾患を抱える娘の命を救うため、町工場の父親が人工心臓の開発に挑む実話を描いたノンフィクションです。
医療の素人である父が、娘のために莫大な資金と時間を投じて研究を重ねる姿には、親の愛情と執念を感じました。
文章はやや淡々としていますが、家族の苦悩や希望が丁寧に綴られており、非常に感情が揺さぶられました。
最終的に人工心臓は完成しませんでしたが、その過程で開発された医療機器が多くの命を救うこととなり、娘の願いが形となった結末に胸を打たれました。
読後に、「下町ロケット」のモデルなのかなと思い調べてみましたが、やはりそのようです。
ただ、フィクションとノンフィクションには、リアルさの圧倒的な差があるなと、ノンフィクションが持つ現実の重みを感じました。 -
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大学時代(もう20年以上前)、とある病院の先生が、バルーンカテーテルのオペについて講義をしてくださいました。
その時、ただひたすらカテーテル手術の手技に感動していました。
この本を読んだ後になってから思い返してみれば、カテーテル自体もすごいものだよなと思います。
その講義の時に、海外製のものはサイズが大きく、日本人用のものが無かったこと、後に日本人にも合うサイズのものが出来、子ども用も出来たことを聞いた覚えがあります。
春日井市にある東海メディカルプロダクツさん。
人口心臓は叶わなかったものの、カテーテル製造で多くの人の命を救っている会社で、医療従事者なら知っている人も多いと思います。
ですが、誕生ストーリーまでは知りませんでした。
本文にはサラリと書いてあることが沢山ありますが、凡人には想像出来ない苦労が沢山あったことと思います。
諦めないこと、コミュニケーション力、経営力、地頭の良さ、娘さんへの愛情、行動力、どれか一つでも欠けていたら、日本人用カテーテルは誕生しなかったかもしれませんね。
筒井さんご夫婦を尊敬します。
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体制や組織からはみ出しながらも正義を貫く人たちへの清武さんの眼差しはいつも優しくてあたたかい。石つぶては外務省機密費流用事件を追ったルポタージュだ。登場するノンキャリの二課刑事たちは、みな個性的で気骨があって魅力的だ。
機密費のような使途が柔軟なお金は政治を行ううえで必ず必要だろうし、その意味で清廉たることはできないと個人的に思う。問題なのはそのグレーゾーンを扱うものの心持ちだろう。松尾克俊ひとりで5億以上流用できているならば外務省という組織のチェック機能は破綻しているだろうし、組織的に隠蔽して松尾克俊ひとりに罪をなすりつけているのであれば外務省という組織は腐っている。どちらにしても組織としては酷かったのだろうと思う。
潔癖でありすぎることは息苦しいことだし、この世から悪事がなくなることはないだろう。その意味で一罰百戒だとしても警笛を鳴らし半鐘を鳴らすことで世を啓蒙する二課のような組織が必要だろうと思う。
気になるのは警視庁がより管理的な組織となり捜査手法も可視化されたことで検挙件数が減っていることだ。きっとここにもグレーゾーン問題がある。管理し数値化しリスクヘッジすることは一見正しく清廉に見えるが、そんなに理想通りに社会は動かない。贈収賄を野放しにしないような組織に警視庁が変わっていてほしいなと思う。潔癖な組織や社会は理想に過ぎない。健全な組織や社会はグレーゾーンや余白を認める寛容さとそれを悪用しない規律があるものなのだろうと思う。
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ネタバレ新聞記者の清武氏の半生を自身が語るノンフィクション。そこで訴えているのは正義の追求への矜持である。昨今、マスゴミという言葉が世の中にあるが、本当の報道とはこのような厳しい世界があって初めて成立するものだ。所謂マスゴミが提供する情報は情報と言うことさえ恥ずかしい、本来は触れてはいけないものだ。本書は新聞記者のあり方を超え、我々が生きるにあたりどのような気持ちを持たなければならないのか、強く訴えてくる。また、還暦を過ぎても揺るがない生き方をする著者の行動は、自分がこれからどう生きるべきなのか考えさせられるきっかけとなる。元気をもらえた。
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『しんがり』
清武英利
清武英利さんの『しんがり 山一證券 最後の12人』は、実話に基づいたノンフィクション作品で、1997年に自主廃業した山一證券の“最後の砦”となった社員たちの姿を描いている。
1997年、老舗証券会社・山一證券が突然の自主廃業を発表。
社長の号泣会見は世間に衝撃を与え、「社員は悪くありません!」という言葉が記憶に残る出来事だった。
- 社員の多くが再就職に奔走する中、業務監理本部(ギョウカン)という“場末”と呼ばれる部署にいた12人の社員たちは、会社に残り続けた。
- 彼らは無給で、顧客資産の清算業務や、帳簿外債務(約2600億円)の社内調査に取り組む。
- 「とばし」と呼ばれる不正会計処理や、総会屋への利益供与など、会社の闇を暴くために奔走する。
- 彼らの行動は、誇りと責任感に満ちていて、沈みゆく会社の“しんがり”として最後まで筋を通した。
この作品は、ただの企業崩壊の記録ではなく、働くことの意味や、誇り、仲間との絆を深く問いかけてくる。
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『ーーたぶん、会社という組織には馬鹿な人間も必要なのだ。いまさら調査しても、会社は生き返るわけではない。訴えられそうなその時に、一文の得にもならない事実解明と公表を土日返上、無制限残業で続けるなど、賢い人間から見れば、馬鹿の見本だろう。しかし、そうした馬鹿がいなければ、会社の最期は締まらないのだ。(p.321)』
全JTCで働くサラリーマンに読んでほしい作品。
たとえるなら、「救いのない半沢直樹」といったところだろうか。
経営陣の不正によってある日突然、経営破綻した山一證券。
その事実を日経新聞で知った社員も多かったという。
主人公である嘉本さんもそのひとり。
これは、トップ経営陣の不正を暴く物語である。
しかしながら、つぶれることはもう決まっているのである。
その不正を暴いたところで山一證券が生き返ることはもうない。
これが「救いのない半沢直樹」と感じた点である。
それでもなお、真相を突き止めるために奔走する“しんがり”たち。
彼らを突き動かすのは責任感、使命感である。
真相に近づくにつれ、怒りややるせやさを感じることも増える。
それでも立ち止まらずに立ち向かう姿勢にわたしはシビれた。
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以下、本書の内容引用(ネタバレ注意)
気に入ったフレーズ
p.315
会社という組織をどうしようもない怪物に喩える人は多い。しかし、会社を怪物にしてしまうのは、トップであると同時に、そのトップに抵抗しない役員たちなのである。
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ハンナ・アーレントは「エルサレムのアイヒマン」でホロコーストの中心人物アイヒマンを見るからに極悪非道な悪人ではなく平凡な官僚だと評し悪の凡庸さを主張した。
山一証券を破綻に追い込んだ人たちも同じ構図なのではないかと思う。確かに出世欲や金銭欲が人よりあったのかもしれないが、最初は些細なことで始まり、それを周りは見て見ぬふりをし、いつのまにか歯止めが利かなくなる。誰が悪いのかよく分からず悪の権化みたいなものはおらず、ただただ倫理観が欠落していただけではないかと思う。倫理観すら独自にあった可能性もある。恐ろしいのは空気のような実体のなさで、エルサレムのアイヒマンとの類似に気づかされる。これは人間の集団心理としての特徴で人間の闇なのではとも思わされる。
一方で救いもある。それは主人公のシンガリの人たちだ。彼らの使命感や正義感、仲間を思いやる心は人間の光だと思う。彼らの巨額の簿外損失の実態を解明していく物語は涙なしでは読めない。こういう社会人人生でありたいと思う。
きっと使命感や正義感、仲間を思いやる心は光だけでなく闇側の駆動要員にもなっている。左遷された尊敬する先輩を復権させるという使命感や会社を存続させなければと悪事に手を染める正義感。道を分けたのは何なんだろう?答えはまだ見つからないけど自分を客観的に律さなければと痛切に感じる。
いい本を読んだ。
清武さんの筆のうまさも秀逸でプロローグの最後の2段落で物語に引き込まれてしまった。 -
購入済み
なんとなく知っているが詳しい内容はよく分かっていなかった山一証券破綻について理由・経緯が分かる上に、こんな熱い志持ったサラリーマンたちがいたんだと目頭が熱くなる内容。
自分が同じ立場だったら、しんがりとして残れたか…無理だろう。次の職や将来、家族などの不安で真実追求や清算処理なんてする余裕は絶対にない。でも、それをした人たちが実際にいた。その志、信念には感服するばかりで、読み終わったあと、色々と考えさせられた。すべてのサラリーマンに読んで欲しい一冊。