【感想・ネタバレ】どんがら トヨタエンジニアの反骨のレビュー

あらすじ

会社のために働くな。

「絶対に売れない、儲からない」と言われた、時代に逆らう最後のスポーツカーを、命がけで造り上げた男がいる。
日本最大の自動車会社・トヨタでもがき、苦しみ、サラリーマンでありながらも夢を追い続けるエンジニアたちの、心ふるわすノンフィクション。

スポーツカー「86」「スープラ」の復活を手掛けた元トヨタチーフエンジニア・多田哲哉を主人公に、技術者やその家族の苦闘と人生の喜びを描いた「週刊現代」の人気連載「ゼットの人びと」を大幅に加筆修正。

これまで秘密のベールに包まれてきた、トヨタエンジニアの牙城「技術本館」内部で繰り広げられる人間模様、スポーツカー開発の詳細なプロセス、そしてトヨタを世界企業に押し上げた歴代チーフエンジニアたちの「仕事術」にも、綿密な取材で肉薄する。スポーツカーファンのみならず、人生と仕事に悩むすべての人へ贈る物語。

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どんがら

メーカーで製品企画/開発を担当しています。
業界は違いますが、“ものづくり”に携わる方達には共感できる事が多いのでは無いでしょうか。
若手エンジニアに勧めたい一冊です。
因みにスープラ納車待ちの86 乗りです。

#アツい #感動する

1
2023年03月05日

Posted by ブクログ

ノンフィクションであり、かつ実名で今も現役で活躍される方も多く登場するので、臨場感があって面白い。また不自然にトヨタ自動車を持ち上げる感じもなく、最近はどうか分からないが、鬱になりそうな働き方やトヨタ村の閉鎖的な感じ、纏まりの無さ、本人達が気付いていないような傲慢さなども生々しく綴られる。ただ、不思議と嫌な感じではない。この「傲慢というか奔放だが、嫌な感じではなくてトヨタだから仕方ない」ムードは、実際にここの社員から受けた私の印象に近い。

仕事とは、出世や収入のためにするだけのものではなく、自分の好きな事をやり遂げられることが重要であるという事に気付かさてくれる話だった。端的に言うと、トヨタでは落ち目だったスポーツカーに再度情熱を注ぎ、企業を跨ぐプロジェクトを遂行しながら作り上げるというドラマである。しかし、スポーツカーはそもそも儲からないし、プロジェクトによる他企業との技術的な調整も難易度が高い。故にハードルが高くて、物語としての見所が多いとも言える。

ー 俺たちが何とかしなくてはいかん。この協業は浮上する最後の機会かもしれない。富士重工のひとりはそう思っていた。だが、提携や共同プロジェクトは簡単には進まない。トヨタに反発する者も少なくなかったのである。こう漏らす幹部もいた。「やっぱり、共同プロジェクトなどやめておいたほうがいいのかもしれない。うちは質朴で、『わが道を行く』という企業だ。他社と足並みを揃えてやれる体質ではない」プライドの高い技術者たちもたくさんいた。富士重工のルーツである中島飛行機は戦前に、全国百四十七の工場に二十六万人の従業員を擁して、戦闘機隼や鍾馗、疾風などを次々に開発した。零戦を作った三菱重工業よりもはるかに大きかったのである。

トヨタだけではなく、富士重工の目線も取り入れられることで、よりトヨタを客観的に描くという手法に成功しているのも本書の魅力だ。企業文化や成功事例を手放しで礼賛するのではなく、相互に歪さ(独自性)を描く。尚、このプロジェクトで活躍した賚 寛海(たもう・ひろみ)氏は、昨年4月からモータースポーツに関わるスバルテクニカインターナショナルの社長に就任している。

ー だが、回転数が五千を超え、六千回転に達して、七千に届いても全く落ちないので、「あれっ、これ本当に出ちゃうかもしれない」とだれかが漏らしたとたん、百九十六馬力に到達した。トヨタのひとりが、「うわあ、こりゃ参った。凄いや」と満らすと、桑野ら富士重工側の技術者たちに笑顔が広がった。桑野は感動した。目頭から涙がにじみ、一瞬まわりが見えなくなった。みんな喜んでいる。「いやいや、トヨタさんも大したもんだ。言うだけあって」そう返す声がスバルエンジニアから起きた。そのとき、両社のエンジニアに一体感が生まれた。

「死にもの狂いだったです、私たちは」
桑野はやがて電気自動車を担当するプロジェクト・ゼネラル・マネージャーに昇格するが、夕暮れのあの瞬間を思い出すと、いまでも胸が熱くなる。

こんなドラマは、サラリーパーソンの世界で反骨心をスパイスとしてしか実現されず、描かれないものなのかもしれない。人類は綺麗で自由な世界を希求しながらも、理不尽な制約の中でこそ、より一層ドラマを見せる存在なのかもしれない。最近、よく考える。

0
2025年03月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

トヨタから出る車、出る車、まったくブランドイメージの統一感みたいなものが感じられないと思っていたが、その仕組みがよくわかった。
1台1台に開発責任者がいて、それぞれの連携や情報共有などは全くされていないとのこと。納得。

0
2024年08月13日

Posted by ブクログ

世の中には、暖かな日の当たる場所もある。
どのように苦しい過程を経てであれ、最終的に、そう受け止められる職業生活を送ることができるというのは、素晴らしい星の下に生まれ、生きてこれた、ということだと思う。
清武さんの筆力もあるのだろうが、羨ましい、というだけのこと。

印象的なフレーズは以下。

ー俺はこのドンガラを見るために頑張ってきた。
多田は思った。
それは出世するとか、表彰を受けるとか、会社の業績の一端を支えるとか、定年後には泡のように消えてしまうものではなく、数寄者の魂をがらんどうの車に吹き込む、夢の実現だった。
(P222)

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2023年10月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

自動車業界で、販売台数世界No.1、つまり、大衆向けの車を作っているトヨタで、
「売れない」「儲からない」と言われながらも、若者の車離れを食い止めるために、採算性を超えて再挑戦したプロジェクト=スポーツカー「86」やスープラの復活に賭けたトヨタチーフエンジニアとその部下たちの心震わす物語。

技術者はときに、自己実現や「自分がこういう車を作りたい」という情熱を原動力にしているため、営業部門や役員から理解されないことも多くあっただろう。
トヨタの核や強み、本分とは異なり、社内からの軋轢は多かったことだろう。
ただし、そこには単なるスポーツカーの復活を遂げ、大きな壁を乗り越えた熱い物語というだけでなく、自動運転やカーシェアリングの時代、百年に一度の大変革期に、スポーツカーを作ることの意義を考えさせられるものだった。
特に、
「自動運転やカーシェアリングの時代に、スポーツカーは生き残れるのか」とスポーツカーの定義を問われたときに、多田は「スポーツカーとは本質的に、日常の役に立たないものです」と断言した。
車は通勤から運送、レジャーに至るまで幅広くちゃんと役に立つものである一方、スポーツカーは心を満たす趣味の領域のもの。その世界はいつまでも残るだろうが、これからの時代はどんな車好きも体験したことのない驚きや感動を与える付加価値を、スポーツカーを使った新しい遊び方(例えば、ゲームやメタバースに絡めて)を同時に提供していくことなどが求められている。
このプロジェクトは、まさに赤字でも取り組む価値(これまでとは異なるプロダクトやサービスの可能性)に満ちていることを痛感させられた。

私たちは「トヨタの10年後」には、
ほんの数十年前の携帯市場の(現在は1位韓国・サムスン、2位米国・アップル、3位中国・シャオミだが)1位フィンランド・ノキアや2位米国・モトローラなどトップシェアを誇っていた企業が「スマホの台頭」によって軒並み消えてしまったように、
トヨタも消えてしまっていることもあり得ない話ではないし、ゲームチェンジは突然訪れるもの。
しかしながら、トヨタもスポーツカーの開発・製造・販売・サービスを通して、新しい価値を生み出すことの意義を見出だせたと思うし、土台は着実に作れているんじゃないか、と感じた。

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2023年08月13日

Posted by ブクログ

車に全く興味がなく、スポーツカー「86」「スープラ」も全く知らない私が読んでも胸が熱くなるノンフィクション仕立て小説(読後にネットで写真確認したが流石に「86」も「スープラ」もカッコイイ)。というのが半分で、意外に世界のトヨタも普通の大企業にありがちな官僚的会社であることがわかって少しホッとした。スケールが大きいだけあって、特異な人材も豊富で、異能を活かす素地があるところは流石ではある。週刊現代連載だそうだが、会社員であれば共感できるところ多数で、処世のヒントが色々見つかる。

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2023年06月30日

Posted by ブクログ

多田哲哉
 三菱自動車でラリー部門に行けず退社、ベンチャー企業からトヨタへ。
 早く安く 二代目ラウム、パッソ、ラクティス、ウイッシュ担当
2007年1月 スポーツカー担当へ
 チーフエンジニア=部長、主査=次長、主幹=課長、主任=係長
 チーフエンジニアの仕事の9割は辛抱すること 主査は製品の社長 2019年21人
 佐々木良典 父親が初代レクサス企画から副社長

スバル=すたれた市役所 トヨタ=高度な町工場
 賚(たもう)主査 金沢市立工業高校から富士重工へ~群馬大学工業短大(夜間
 スポ―ツカ―は四駆に限る

ナスカーでのヒアリング →手軽に買えるスポーツカー
 自分でカスタマイズ ライバルより速いクルマではなく
 エンジン開発 一千億円 →スバルのボクサーエンジンのFRに

2008年マツダの貴島主査 徳島東工業高校から東洋工業へ
 儲かるスポーツカー 経営を味方に 絶対やめない こだわりの強い人を揃える
 乗せて、その人が楽しいと思うクルマ

開発番号 086A 技術企画統括センター付 BRスポーツ企画統括グループ
 スポーツモデル全体で収益
 直噴D-4S S=ストイキオメトリー(理論空燃比) 86x86スクエアエンジン
 モディファイ可能なデザイン
 600人のスポーツカー通勤社員から200人の意見を聞く 王道のデザインへ

 1.知らないのは当たり前と考える
 2.即決 (後で訂正)
 3.約束と日程厳守
 4.グループの最新技術リサーチ

どんがら=ホワイトボディ
 試作車:クルマとの会話ができない(章男社長)
  →エンジン音やきゅ気温の導入・電子制御の介入を遅らせる →OKへ

BMW
 走りとラグジュアリーでポルシェ、メルセデスの中間を最良のバランスで住み分け
 ドイツ全体が自動車会社としてつながっている
 スープラ 700万円が限度 10万台が7万台以下へ 原価100万円アップ
 赤字はBMWのノウハウ金額化で相殺
 スポーツカーとは日常の役に立たないもの 

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2023年06月12日

Posted by ブクログ

「下町ロケット」的テイストの話ではあるけど、ノンフィクションだし、何と言ってもスバルとの共同開発である86(ハチロク)という実車開発の裏話なので、とても楽しく読めました。。というか86が欲しくなります(^^)。BMWとの共同開発なスープラの逸話も語られ、こっちはもっと欲しいけど、価格的にちょっと手が届かない感。

印象に残ったのは、センスを身に着けるには「家庭画報」を読め、というところと、あと、CV、1A、号口、といったトヨタ用語に関する説明は、以前、同社との仕事をしていた時にリアルで体験したので、そうだったなあ~と。

どこの会社にも尖った人や情熱のある人はいて、そういう社員をどう活かすか、というのは一つのテーマでもありますね。

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2023年05月27日

Posted by ブクログ

たくさんのエンジニアが出てくる。そのトヨタの優秀な人材の勢いに後押しされる様に、グイグイ引き込まれてしまう。これからは、同様の働き方はできないが、違うタイプのエンジニアが突進することを期待して本を置いた。

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2023年04月06日

Posted by ブクログ

トヨタ自動車の名誉会長である豊田章一郎氏が亡くなった。同社の社長交代人事も発表された。一つの時代が終わったのだと感じる。この先どうなっていくのかとても気になる。

本書の著者は清武英利氏。読売巨人軍の元球団代表だ。自分は知らなかったが、現在ノンフィクション作家として活躍されている。

本書は86(ZN6)とスープラ(A90)の開発秘話である。環境保護が叫ばれる現代において最後になるかもしれない純エンジン車のスポーツカーの開発を、あるチーフエンジニアを主人公にした物語風に書かれている。

出てくる会社もトヨタだけでなく、スバル、マツダ、BMWと多く、それぞれの車づくりに対する思いを感じられた。

また、サラリーマンとして、おぼろげであやふやなものをしっかり形にし、完成させる力とその術に自分も尻を叩かれた思いがした。

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2023年02月27日

Posted by ブクログ

夢ややりがいが詰まった「どんがら」出世や名誉のためじゃなく、自ら目指すもののために。
なにかを生み出そうとする熱い気持ちや真剣なぶつかり合い、どこか欠けてしまっているものなのかもしれないなーと。季節の変わり目の今、いい本でした。

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2023年02月26日

Posted by ブクログ

ソフトウェアファーストにでてきた本なので、読んでみた。

車づくりのために家庭を顧みない人たちを、肯定するような時代錯誤感が、すごく違和感だった。

ただ、車載コンピュータのデータを取り出し、ゲーム上でクルマの動きを再現するアイディアは面白かった。

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2024年09月30日

Posted by ブクログ

チーフエンジニアの仕事
・自分の得意分野を1つ持ち、あとは専門部署と話ができるレベルまで勉強
・相談に来たら即決しろ(判断材料が足りなくても)。間違ったときには後から訂正しろ
・社内の最新技術のリサーチを怠るな。一番面白そうな技術を集めて車を作れ。

ーー
トヨタが変わってきてると、本書からも感じた。仕事って大変だな……

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2024年07月15日

Posted by ブクログ

TOYOTAでスポーツカーを開発する話

自分のやりたい事と会社の目指す事が合致すると、やりがいが最大化される
その反面、家庭が犠牲となる

ハチロク、スープラの開発
スバル、BMWとの共同開発

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2023年12月18日

Posted by ブクログ

SUBARUと共同開発した86/BRZのトヨタ側開発責任者の奮闘記。

大衆車メーカーと自らを規定するトヨタで、市場規模のわからないスポーツカーを開発するのは想像以上に内部調整が難しい。

悩んだ主人公が相談に行ったMAZDAのロードスター開発の重鎮とのやり取りには、会社の枠を超えてスポーツカー開発に賭ける者に共通する心情が見える。

仕事の作法から手続き、用語まで異なる共同開発をやり遂げたのは、リーダーの力量に加えて、メンバーたちの情熱があったことに間違いない。

その後BMWとのスープラ共同開発にも駆り出された主人公の行く末には、勤め人の悲哀を感じざるを得ない。

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2023年11月07日

Posted by ブクログ

もうちょっと熱さ
が伝わると良かったかな

車好きじゃないので伝わらなかったのかなと
思ったけど、全然興味ない分野でも
伝わるケースも有るしな…

しかし、いまさらスポーツカーとは

自動運転で移動する快適な部屋
が主流だろうに

儲かるのかな
一時的な流行で終わりそう
趣味としてのニッチな産業として残るのかな

日本の自動車産業も家電のように
世界で負け組にならないことを祈る

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2023年05月01日

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