津本陽のレビュー一覧
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確か、09年自分が卒論のテーマを絞り込む段階の際に読んだ本。
卒論は渋沢栄一とは直接関連するものではないが、儒教にも通じる考え方を持っていた点では大いに参考となった。
この本は伝記的性格が強く、彼が単なる秀才ではなく、「行動」を伴った人物であったことがわかるものであった。ひとつ、ここに一例を紹介したい。
「本を読むというのは、何も畳の上に座って読むことだけが読書ではない。鍬を振って土を耕す時も、あるいは道を歩いている時も頭の中で本を読み続けろ。本を読み続けるということは、読んだ文字が現実に照らし合わせて、あるいは自分の生き方に照らし合わせて、どういう意味を持っているかということを追求すること -
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16年前の1993年12月16日に悪徳政治家:田中角栄は75歳で没。
まったく正反対に、高学歴ではない人が首相にまでのし上がった、そのサクセスストーリーをクローズアップして傑出した人物だったという評価もありますが、少し冷静に考えてみると、利権政治や派閥政治を強引に強力に推し進めたり、環境・人間性破壊をあたかも進歩や美徳のようにして日本を壊滅状態にした張本人であったのですが。
その著書『日本列島改造論』(1972年)を、科学的合理主義としての未来学と同列に捉えた信じられない時代があったとしても、薔薇色の快適未来社会を描いて国民を騙して、モータリーゼーションや工業化を金科玉条のごとく推進して地 -
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南紀太地。
紀伊半島南東部にあるこの地は、古くから古式捕鯨と呼ばれる鯨漁を行ってきた。何艘もの小舟に乗った男たちが鯨を取り囲み、網をかけて銛を打つ。入り江に引き上げられた鯨は解体され、余すところなく利用される。鯨一頭で港全体が潤う富が得られる。
鯨漁はチームワークである。
山見と呼ばれる見張り場所から鯨を見つけると、狼煙で知らせが来て、勢子舟(せこぶね)、網舟、持双舟といった舟が沖を目指して漕ぎ出す。網を下すのが網舟、鯨を網に追い込んでいくのが勢子舟、鯨を港まで運んでくるのが持双舟である。
網にかかった鯨に銛を打つのは「刃刺(はざし)」と呼ばれる男たち。世襲の仕事である。「刺水主(さしかこ)」