津本陽のレビュー一覧
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ジョン万次郎の生涯の後編。捕鯨から帰ると妻のキャサリンが亡くなっている。後編は読後感は少し重い。失意に沈む万次郎は帰国を決意し、カリフォルニアで金の採掘をしてからハワイに寄り、仲間とともに帰国する。琉球に降り立つ作戦が奏功する。琉球は島津氏の傘下で、かつその時の殿様は斉彬。こういう所もついている。そういう運命だったのだなと思わずにはいられない。しかし覚悟して帰ってきたもののやはり日本は重苦しい。死罪にならなくて時代が彼を必要としてくれたにも関わらず、やはり重い。見えない天井がそこにある。それでも天寿を真っ当できて、船長ともアメリカで再開できて良い人生だったのだろう。足るを知っていたというのだろ
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高橋是清の伝記小説。
高橋がどんなにか波乱万丈な一生を送ったか、はっきり言ってこれ程までに内容の濃い人生を送ったとは正直驚いてしまった。
幕末絵師と女中の間に生まれた私生児で、仙台藩足軽に養子に出され、14歳で騙されてアメリカに奴隷で売られる。自由の身になってのち、芸者遊びにうつつを抜かし、芸者に養われる。株屋、牧場経営、翻訳家、ペルーの銀山経営と職を転々とし、やがて日銀総裁の地位に達する。
日露戦争の戦費調達を一手に引き受け、英米独仏の要人とコネクションを持ち、欧米を駆け回って海外金融市場での日本の信用確立、起債を成功させる場面は圧巻。金融危機ではモラトリアムを実施。軍部の暴走に敢然と立ち -
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2013.1記。
新潟の寒村に生まれ、裸一貫で上京した田中角栄の伝記的小説。日雇いから始め、その類まれな頭脳、愛嬌、先見性を武器に、小さな工事会社の社長として、やがては代議士として、ついには佐藤栄作の後継を巡る「三角大福中」の権力争いを経て首相にまで上り詰める。
それにしても、角栄の猛勉強ぶり、やるといったらやる人間性にはやはり圧倒される。通産大臣として米国との繊維交渉で歴代の誰よりも本気で相手と渡り合って役人を心酔させ、首相としては、日中国交回復を実現。その原点には、16歳で上京する角栄に向けた母フメの言葉があるようだ。「大酒は飲むな。できもしねえ大きなことはいうな」「人は休まねば体をい -
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日本の政治家らしいといえば、田中角栄である。
それを、津本陽は、様々な資料を使い、
金権政治家を暴くというより、人間としてどうなのか
を明らかにしようとした。
田中角栄に対する評価はたくさんあるが、
人間味があるというところを、明らかにしようとする。
困った人に対して、とことん対応する。
政治家とは何かを心得ていた。
政策立案能力、アイデア、現場解決能力など、
様々な場面で、田中角栄の凄さを語る。
資源に関して、積極的に動いたことが、
アメリカより、睨まれる。
それが、ロッキード事件の発端とも言える。
小佐野賢治との関係ももっと明らかにしてもいいが、
サラッとしている。
佐藤昭子で浮かび上 -
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結局のところ、金を集める政治家というのが政治家の力の尺度だったと。
それが違法でなくても倫理がない、と世論が変わり尺度が折れた。
新しい尺度はないままに大衆迎合の政治に陥っている。
実際に何かをやると批判を浴びるために、政治家は保身に走って何もしない。
民主主義の国アメリカは正論に弱いが、いざとなれば裏から裏へ手を回してくる。
逆らわないものまた保身。
先送り、知らしむべしが蔓延。
金権に過ぎたが、力のない成り上がりの角栄にはそれしかなかった。
しかし角栄以前に強行突破できる政治家はいなかったし、角栄以後にも現れていない。
今の閉塞感を打破するには角栄復活しかない。
そんな感じか。
そう言 -
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ネタバレ初めは文字に起こされた土佐弁に違和感があって
読み進めるのにちょっと苦労したが
遭難したあたりからは慣れと話の緊迫感もあって
引きこまれて読み進められた。
名前だけは知っているが、あまり詳しくは知らなかった
中浜万次郎氏。
そんなにも長期間無人島で生きながらえておられたとは知らなかった。
助けられて異文化に触れ、戸惑うこともありつつも
キャプテンを父と思い慕う様子が如何にも日本人らしく真面目でもあり
キャプテンが航海中、留守を男である自分が守ろうとするところが
頼もしくもあった。
いよいよ念願叶って航海に出る万次郎。
続きが気になるところ。