水谷淳のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ダーウィンと表しつつも、フォン・ノイマンの自己増殖オートマトン論文をベースにしたメタ生物学的アプローチから進化論を数学的に証明しようとする試みである。講義を元に構成されており概念や抽象的内容が多いが、文体は軽やかで読みやすく面白い。ゲーム理論が生物学とも親和し始めており、筆者が強調するノイマンの先見性や偉大さには同意。
DNAは自然ソフトウェアであり、人工ソフトウェアが開発されたからこそのアプローチだろう。そこから数式検証、例えばビットの順数より乱数のほうが進化が起こりやすいというのも、こうやって「自然の仕組み」が解明されていくのだなと感じさせられる。
それにしても結局「Ω」が何なのかがよくわからなかった。 -
Posted by ブクログ
本書はミシガン大学の経済学者スコット・ペイジによる、集合知における「多様性」の効果を定量的に論じた本である。
集団における最適化問題、予測問題、選好制約の解消問題について、多様性の効果を定量的に分析している。前者2つでは多様性がパフォーマンスの向上に結びつくのに対し、後者では多様性が選好関係を複雑にし、全員が満足する結果は得られないことを述べている。
おそらく著者の貢献は最初の最適化問題への適用であり、残り2つは既存の研究結果の説明であると思われる。
文章は読みやすいがわかりやすくしようとしてやや冗長である。理系の読者は、本書で紹介されている著者の論文を直接読んだほうがよいかもしれない。参考文献は豊富でよい。
中身の割にボリュームが冗長であることと、後半2つの内容についてはそれほど目新しさを感じなかったため、1つ減じて★4つとする。 -
Posted by ブクログ
「対称性」ということなので、素粒子理論やひも理論のことが出てくるのは分かっていた。ただ、その説明のために高次方程式の解を導く公式から始まるのは想定外。ただ、読み進めていくと納得できる。高次方程式の解法が、何かが不可能であることを証明することや、複素数という新しい「数」の発明、という数学の歴史の中でも大きなステップにつながる出来事でもあったということがわかるからだ。そして何より、現代物理学にとって重要な「対称性」の鍵となるガロアの群論がここから始まったからだ。
(群論は、大学のときに全く頭に入らなかったことで覚えている。大事なんだろうなとは思っていたのだけれど...)
量子力学の歴史や、ひも理論、多宇宙理論などの歴史を綴った科学書はいくつか読んだが、「対称性」を鍵に、さらにレイヤを上げてそれらの歴史を再構成したようなイメージの本だ。「対称性」ということが理解できたかというと、できてはいないのだけれど、そのフレーバーは感じることができた。8元数の性質が、ひも理論の次数が10次元であることを基礎づけるかもしれない、ということが出てくると、数学と物理学(現実)がつなが意外なところでつながるようで、心惹かれるものがある。
数学と物理学のダンス。物理学にとって「真」とは何か。数学にとって「美」とは何か。決して簡単な本ではないが、改めてそういったことを考えさせてくれる本。でも、ちょっと難しいね。 -
Posted by ブクログ
タイトルの「重力機械」とは、ブラックホールを指す。この時空を歪ませる宇宙の究極の存在は、その巨大な質量、高速の自転、それらによる竜巻状の時空の歪みにより、降着円盤に膨大な摩擦熱を発生させ、核融合よりもはるかに効率的なエネルギー発生源になるということが、このタイトルに集約されているらしい。
ブラックホールは、大きな質量を持つ恒星の最終形として生ずると理解していたが、最近の研究では、銀河中心部、あるいは銀河団中心部にある超重ブラックホールは、それとは別物らしい。本書は、このような超重ブラックホールを主な対象として、これが物質を食い尽くすだけでなく、時折膨大なエネルギーを放出することで宇宙が恒星過多になることを防いだり、究極的には、宇宙の進化や生命の発生にも寄与していると論じている。最後の部分は、このようなブラックホールが存在する宇宙に我々が生きているのだから、人間が存在するのはブラックホールのおかげといった感じで「風が吹けば桶屋が儲かる」的な気もするが。
内容的には、難しい事象の説明として用いられる比喩が分かりやすく、また、個人的には、ほんの20年くらい前まで謎の天体とされてきたクエーサー(準星)の正体がここまで分かってきたのかという点で天文学の進歩を実感できて、読んだ価値があったと思っている。ただ、それでも、やはり難解な部分はあり、著者の説明や主張を100%理解できたわけではなく、本当に理解しようと思えば、何度か読み返したり、関連書籍に当たってみる必要はあろう。まあ、こういう最先端の科学については、色々な書物を読み合わせて、パズルのピースを増やしていくことが必要で、一冊ですべて分かるという本には中々お目にかかれない。本書は、その意味では、すべてではないが多くのピースを与えてくれたと思う。 -
Posted by ブクログ
量子と聞くと、極めて小さな世界で起こる、私たちの生命活動とは縁遠い話のように感じていた。本書は、そんな思い込みを覆してくれた。
酵素反応や呼吸、光合成から、匂いの識別、鳥の方角感覚、さらには突然変異まで。証拠の積み重なったものから仮説段階のものまで幅はあるが、身近な生命現象と量子力学のつながりが次々と紹介され、生命を見る視野が広がった。
特に面白かったのは、生命が量子現象をうまく活かせる「反応の場」を作り出している可能性だ。たとえば、タンパク質内のアミノ酸の配置が、電子や陽子の移動に適した距離や環境を生み出す。普段は分子の形や結合として捉えていたものが、量子的な振る舞いを左右する場として見えてくる。
進化の過程で形づくられた生命の仕組みには、量子レベルの性質を活かす工夫まで織り込まれているのかもしれない。もちろん、すべてが解明されたわけではない。それでも、私たちが生きているという日常の奥に、これほど緻密で不思議な世界が広がっていることに驚かされた。