江川卓のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
肥大化した自意識と逸脱者の自覚に苛まれる苦悩が徹底的に描かれている特異な名作。どこまでも内向的で否定的でありながら、超然と構えることもできず、外界の些細な出来事に惑わされ、人間関係において言動のすべてが裏目にでてしまう様は、読んでいてヒリヒリする。思考にほとんど飲み込まれながら現実の肉体や情念がそれに抵抗し、退屈や人恋しさ、屈辱に耐えられない。そんな齟齬の内に懊悩する様子は、積極的価値をどこにも見出だせない消極的な否定性の恐ろしさをあぶり出す。
主人公が縁のあった娼婦と感情をあらわにしあう劇的なクライマックスさえも、もつれきった否定的性格ゆえにカタルシスに昇華することのできない「どうしようもな -
Posted by ブクログ
ネタバレ3章
1 ラスコーニコフの部屋
ラズミーヒンがドゥーニャ親子を連れ出して、ラスコーニコフの容体は自分が見て、報告するから、ゆっくり休むようにと言う。ドゥーニャ親子はラズミーヒンを親切な人と思います。ただ、ラズミーヒンは自分でも言ってますが、ラスコーニコフの女家主ともいい仲になっているので、単なる親切心からだけではないようです。しかも、ラズミーヒンは、その女家主をゾシートフに押し付けます。
2 朝が来てラズミーヒン起きる。昨日の酔っ払ったときの行動を後悔している。酒飲みにはよくあることだ。ゾシトーフが入ってきて、二人の会話。ゾシートフが帰り、9時、ラズミーヒンは旅館に行く。ラズミーヒン、ドゥー -
Posted by ブクログ
ネタバレ
生きづらさを抱える主人公が孤独に耐えきれなくなって、親しかった同級生を訪ねるが、歓迎されず、それでも同級生たちの集まりに誘われてもないのに参加する場面。主人公は仲良くなかった同級生たちを見下しながらもわざわざ参加する。
だが、待ち合わせの時間に行っても誰も来ず、あとで時間の変更を知らされてなかったことを知る。その後も職業を訊かれ、答えたら給料が少ないのではないか?とバカにされる。
屈辱を受けて怒る主人公。
この集まりに参加しなきゃよかったのにって思ったけど、それ以外につながりがなくてしょうがなかったのかな。今はインターネットでいろんな考えの人を知ることができるけど、昔はもっと閉ざされていて、 -
Posted by ブクログ
ネタバレ雑誌で20代の時に読む本と紹介されていたので読んだ
主人公が家賃を払えず、大家さんにビクビクしながら外出しているのに「俺はいつかビックになる」とか、「考えてるのが仕事」とか、現代の夢見がちな若者と同じことを言っていて、昔も変わらないなんだなと思った
主人公が偉大な人間になるために行うことが殺人で、これも現代での通り魔的な事件と似ているなと思った
この本を読んで、殺人した後、どのようになるかを目の当たりにした気がする
もし、自分に子供が出来たら、読んでほしいと思った
キチガイとか、証拠もないのにお前が犯人だとか、雑な犯行なのに捕まらないとかは、笑ってしまった
最後に、ソーニャが何もして -
Posted by ブクログ
最初から最後までインターネットにいるキッッッッッッッッッッショい自我の話が繰り広げられていて、ここまで普遍的な実存の苦しみを、「エッセイ」じゃなくて「小説」として書けるドストエフスキー天才か?となった。今まで読んだドストエフスキー作品の中で一番楽しめたかもしれない。
自分以外の全ての人間が鈍感で野蛮に見えて、まともな人間はこの世で自分だけなんだと思ってんだけど、そういう風にしか他人を見られない自分のことが惨めでたまらなくて、さらにここまでの思考の道筋を他人の視線に目配せしながら曝け出してしまうの完全にTwitterにいる人(私含む)じゃん…「かくして意識は、二枚の合わせ鏡に映る無限の虚像の列の