深遊のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
レイフォンは本当は刀を使いたいのだろうというのは1~8巻まで読んでいて薄々感じていた。幼い頃から恩人に習い、必死な思いで修得したモノを使いたいと思うのは人間の心理だ。なかにはその技、もしくは流派にトラウマができ、二度とその技を使いたくないというのとは違い、レイフォンは養父のデルクやサイハーデンの流派が好きだからこそ、間違った道に進む自分がそれを使うことは自分が許さない。打ち込めるものが無い私に実感はないが、理屈としてはよくわかる。もし私にもレイフォンにとっての仲間のような大切なものがあり、そしてみなが苦しい思いをしていたら、同じようなことをしていたかもしれない。
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Posted by ブクログ
私はハイアのように捨てられることなく育てられた。人から見ればそれは普通のことだし、ハイアのような捨て子から見れば幸福なことなのだろう。しかし私は幼い頃から家が、親が嫌いである。人から見れば贅沢な悩みかもしれないが、父親が仕事すら面倒くさがり、母親は自身の価値観を子や夫に押し付けていた。私が高校三年生になってすぐ離婚したが、逆によくそれまで保ったなと言いたくなるほど、険悪な場面が多々あった。それを17年も見ていたら、誰でもそこにいたくなくなる。
ハイアが心休まる「帰るべき場所」を求める気持ちはわかるが、過去の経験上、家が心休まる場所というのは共感できない。 -
Posted by ブクログ
誰かを目指し、誰かの後を追いかけるのは決して悪いことではない。しかし、自分の行く先や進みたい、進むべき道が見つからないからといって、頼れる人の背を追うことしかしないのは、ただの思考の怠慢であるようにも感じられる。
人のほとんどの行動には理由がある。「孤独が嫌だから人と接する」「クビになりたくない」もしくは「今の職が好きだから仕事に励む」など、行動理由は無数にある。暇つぶしにすら「退屈な時間を無駄に消費するのが嫌だから」などの理由が存在する。レイフォンが闇試合に出ていたのも「園のためのお金を稼ぐため」という理由があった。しかし、レイフォンがニーナの背について行くのにははっきりとした理由が無い。そ -
Posted by ブクログ
大きさ・時間などに関係なく、罪は罪である。レイフォンがまだヴォルフシュテインと名乗っていた時代、つまり天剣授受者であった頃、レイフォンは槍殻都市グレンダンの武芸者たちの頂点12人の1人でありながら、闇試合に出場し、その名を汚した。現実に同じような事件があっても、例えば実力をたくさんの様々な人間に認められたある格闘家が、命と金を賭ける闇試合に出ていたとして、それが明るみに出れば同じように格闘技を汚したと評価されるだろう。そう考えてもやはり、レイフォンがしたことはまぎれもない罪だ。
しかし作中でナルキが言っていたように、レイフォンの罪はたしかに罪だが、すでに裁かれた罪だ。いつまでも自分で自分を戒め -
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Posted by ブクログ
これまで悩みに悩み続けていた仁がついにある一つの結論に辿り着く。また、新しい世代に公館を任せようと古い世代の自らの生に決着を付けようとした東郷。円環世界での罪について触れられてはいないが少しずつその謎の輪郭が現れ出したメイゼル、鬼火衆の刻印魔道師たち。核を利用して戦争を企てようとした九位。それぞれの様々な欲が絡み合っていた本作。
読み終わった今となっては説明することはできないが、読んでいる最中はその思惑の深さに驚き、闘う彼ら彼女らの姿に何度も背中を押されるような強い意志を感じられた。
そうなのだ。この作品は溢れんばかりの意志が詰め込まれている。矛盾してたって、倒錯してたって、変態チックだろうと -