森功のレビュー一覧
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「地面」は、誰のものでもない。
そう思って生きてきたはずなのに、この本を読んでからというもの、
足もとがわずかに揺らぐような感覚を覚える。
森功『地面師』は、2017年に発覚した積水ハウス巨額詐欺事件を軸に、
土地取引という名の“日本社会の盲点”を描いたノンフィクションだ。
70億円もの金が、ほんの数人の手によって動き、消えた――。
この事件は、単なる詐欺事件ではない。
それは「信用社会」という日本の経済システムそのものの脆さを露呈させた象徴だった。
森の筆致は淡々としているが、その冷静さが逆に恐ろしい。
登場する地面師たちは、派手な悪党ではない。
書類と印鑑、そして“信頼”という見えない -
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森功氏、安定のルポルタージュ。
国鉄民営化を成し遂げた伝説的経営者、葛西敬之氏の評伝。
国鉄と言えば最悪の赤字体質と頑強で極左組織と繋がった労働組合の印象が強い。実際本書の前半は新幹線建設をきっかけに雪だるま式に借金が増えた過程と、盗聴スパイなんでもありの壮絶な組合の抵抗に紙幅が割かれる。
この経験から葛西が警察官僚を天下りで積極的に迎え入れ、そこから公安とのつながり強め、その保守的な政治思想から安倍政権との距離が縮まり、ついには外部の諮問委員でありながらNHKの人事にまで介入するフィクサーぶりへと話が広がっていく。
天下国家を語ること、マスコミの敵視、アジアの大国としてのプライド(リニ -
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ノンフィクション作家の視点からみた、ヤフージャパン元社長、井上雅博の生涯をまとめた本。
目次としては、
序章 三〇億円の隠れ家
第一章 突然の死
第二章 都営団地が生んだ天才
第三章 タイムマシーン経営の原点
第四章 ソフトバンクの遊び人
第五章 ならずものをかき集めて
第六章 孫正義の操縦術
第七章 知られざる趣味の世界
第八章 思い知った限界
第九章 趣味人として
終章 天才の死
となっている。
作者が直接本人に話を聞けたわけではないようで、やや伝聞をまとめた印象か強い。
その中でも第5章のマネジメントに長けていた話はとても面白く、特に創業時は周囲に慕われていたり、優秀な人材を見抜く -
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「官邸官僚」森功☆☆☆
2020/03/08
安倍政権は一強長期政権であるが国家経営のスケールは無い
権力のお裾分けをいかに自分に有利に運ぶか、個々人のせこい思惑でこの国は10年近く運営されてきた
そのつけは毎年30兆円以上の借金証文となって次代の肩にのし掛かる
平成から30年間、日本史の中で「総無責任時代」として歴史を刻むことになりそうだ
著者の取材力は壊れていく日本の中枢を余すこと無く描き出している 見事そして脱帽
2020/08/26 追記
年初来、全く想定外の「コロナウィルス」が猛威を振るい、世界を塗り潰す勢いである 全く共産党宣言の世界だ
コロナは日本の危機を白日に晒した
安倍政権の -
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【官邸の主を守り通すという、ある意味の使命感を最も強く抱いている役人集団が存在する】(文中より引用)
官邸の力が強まるにつれ,パワーバランスが変化したとも評価される霞ヶ関・永田町。これまでとは異なるルートで権力の階段を駆け上がり,権勢を振るうようになった「官邸官僚」について研究した作品です。著者は、フリーランスのノンフィクション作家として活躍する森功。
日々の報道からだけではなかなか見えてこない,中・長期的に観察される政治の変遷について考える上で有益な一冊。制度と人の両観点から事象が捉えられており,深みのある分析になっているのではないかと感じました。
本書で指摘される傾向は一時的なものな -
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【一連の取材を通じて菅は、究極の合理主義者であると感じた】(文中より引用)
第二次安倍政権で官房長官に就任して以降、政権の屋台骨として抜群の安定感を誇ってきた菅義偉。あまり公には知られていない菅氏の過去を追いながら、その人柄や思想を読み解いていく作品です。著者は、『同和と銀行』などで知られる森功。
足を使って得た数々の情報から、立体的に菅氏の人間像を描いていく力作。情に比して理、劇場型に比して水面下型、ビジョン型に比して問題解決型という座標をたどると、菅氏の輪郭が浮かんでくるのではないかと感じました。
横浜に関する章も興味深かった☆5つ -
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ヘビーな内容のため、読み進めるのに意外と時間がかかってしまった。
この本を読む前に同じ著者の「地面師」を読んでおり、そちらも一連の事件の背景を読みやすくまとめた一冊という好印象を持った。しかしこの「同和と銀行」は、取材のち密さと内容の濃さ(大変な濃さ……!)、そして取材対象に向けた熱意といった面で、前者を凌駕する読書体験をもたらしてくれた。
この本でも述べられているように、銀行をはじめとした金融機関というものはビジネスに利用できるものはとことん使い尽くし、一旦取引が事件化したとなるとあっさり裏切るものだという印象を抱いている(なので銀行が憧れの就職先、というちょっと前までの傾向には個人的に -
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田中森一の本を読んで、許永中に対する思い入れが強い。
一体、許永中は、どんな人物か興味があった。
森功の文体は、独特のものがあり、
取材に基づいて、淡々と書いていくところがあり、
人物の心の動きは、あまり書かない。
そんな書き方をしていても、許永中の人たらし能力が
あることを、感じさせる。
もっと、行間が読めるようにならないといけない。
敵のはずでも、味方にする能力がある。
かなりの権力を持った人にも、擦り寄ることができる。
力任せに、半グレ集団のリーダーだった在日の許永中。
西村嘉一郎、大谷貴義というフィクサーに会うことで転機を迎える。
野村雄作に会うことで、父親の野村周史につながり、可愛が