Posted by ブクログ
2020年11月08日
知人に薦められた本。
和泉補佐官がいかにして名を上げ、入り込んで、力を持ったのかの記述は面白い。
いわく、小泉政権下で都市再生本部事務局次長として、公共事業に代わる新たな成長産業として、都市再生という旗印を掲げて仕掛けた、と。このあたりから「国交省に和泉あり」と霞ヶ関にその名が轟くようになっていっ...続きを読むたと。
民主党時代になっても政治家との人脈から内閣官房に残り、参与になり、さらに自民に戻った第二次安倍政権で補佐官となった。それには菅官房長官の強い推薦があったという。
菅が横浜市議のとき建設事務次官だった高秀を市長に擁立したころにも、和泉によく頼っていたのではないか。そして菅が国交政務官になったあとも(←なったことを知らなかったが)、なにかと和泉に相談するようになった、と。
こういうことを知ると、菅政権になったとき和泉補佐官がどう処遇されるかと思っていたのが愚問だとわかる。
港湾局の「チーム和泉」の話も印象的。
沖縄防衛局の従前の設計では地盤条件にあわないので見直しが必要ということで、菅が、2016/1に港湾局の9人を送り込んだと指摘している。週一で和泉が打合せて指示を出してきたという。
人事をもって力の源泉としている、との指摘も説得力がある。
さて、このあたりの評伝?的な内容はまだいいのだが、本書後半はさしずめ週刊誌的な内容と言わざるをえない(週刊文春刊なのでそりゃそうなのだが)。
とくに、森友加計や財務次官のセクハラなどのスキャンダルについては、記述が感情的で、政権批判のトーンが前提になっているので読んでいて頭が痛くなる。文科省局長の裏口入学事件もそう。
こういう、捜査中係争中の案件について決めつけて、「子供染みた嘘のように感じる」「内閣の失態をさらしてきたともいえる」(あとがき)などと一方的に書くのは、単なるジャーナリズムにさえ満たない週刊ポスト的な内容で目をおおいたくなる。
とはいえ、稲田朋美の内閣人事局設置の仕事や、関空の2018年台風21号での災害対応のまずさ(なんでも民営化すればいいというものでもないという指摘)など、傾聴に値する記述もあるのは確か。
項目によって、論理性・客観性といった辺りの基本的なスタンスが混在しているのが、本書の意義や信頼性を下げているのは、なかなかに残念。