都甲幸治のレビュー一覧
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都甲先生の名前を初めて見たのは、2005年、未亡人の一年で。すごく大先輩な翻訳家と思っいたら、私より若かった…(笑)
翻訳以外で読んだ生き延びるための世界文学の時も、勝手に年上と思っていた…まあ、同世代、むしろ年下…
97年以降、なんとなく一途に柴田先生を追いかけて来たのですが、この年になり、新たな翻訳家的推しが登場した!という感じです。
対談集ですが、文学案内として、読みごたえあります。また、知らなかった翻訳家の方を知る機会にもなりました。
どの対談も良かったのですが、個人的には、読書案内として堀江さん、星野さん、藤井先生、翻訳家として岸本さん、生き方としていしいさん(笑)、同窓の雰囲気が -
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教養としてのアメリカ短編小説
2025.5.21
「書記バートルビー」を読んだ。
グローバル文学という大学の講義で触れた文。初めて読んだ時は理解しがたい登場人物が溢れていて、何が何やらよくわからなかった。
しかし筆者の考察を読み、なるほど!こんな捉え方があるのね!と驚かされた。
特に驚いたのは「何もしないこと」についての考察だ。資本主義的思想で満ち溢れ、頑張った分だけお金が手に入るという時代に何もせず虚無的に振る舞うことのコントラストや皮肉、何もしないのはだめなのかと訴えかけてくるという捉え方は鋭いなと思った。アイロニー的文法の本をちょうど読んでレポートを書いていたのでますます興味深かった -
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「教養としての」とは言いつつも、かなり濃密な内容だった。
米国文学に共通する寂しさに私はずっと惹かれている。
ポーの「黒猫」では、トニモリスンの言っていたように、黒人が脅威のイメージを背負わされている。白人性という幻想に縋るも裏切られ、言葉にならない叫び(殺害)をするしかない貧困層の白人。摂食障害文学に見られる世界を拒否するような何もしなさ、サリンジャーの文学における眠気とPTSDからの回復、カーヴァーの「足もとに流れる深い川」の「backyard」のくだりにみられる夫婦間の言語コミュニケーションの齟齬、イーユンリー「優しさ」に登場する愛の可能性の断片(過去の素晴らしい思い出に縋り、現実的な深 -
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これは傑作。
酒に女にギャンブルと、いつものダメ男チナスキー。
配達なんて楽勝。何なら女ともヤれて俺にピッタリの仕事じゃね? と始めた郵便局の仕事。
だが、そんな簡単にいくはずもなくて労働はめちゃくちゃキツい。しかも上司はクソ野郎で、キツい区域を任されたりする。
最悪、辞めちまったらいいんだ。なんて思いながらも、10年以上もそんな仕事を続けてしまう。
かつてはこんなダメな奴もいるんだ、なんて思いながら読んでいたブコウスキー作品。
だが、いつの間にかチナスキーは俺なんじゃねえか? と思いながら読んでいる。
それもあって訳者である都甲幸治の解説も自分ごとのように刺さった。
ブコウスキーは齢50に -
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そうか、わたしはアフリカ系の人が書いた本を読んだことがないんだ。
いままで意識していなかったけど、本書を読み進めるうちに気がついた。
「奴隷たちの心や想像力や振る舞いに目を向ける学問には価値がある。けれども、主人たちの心や想像力や振る舞いに人種のイデオロギーがどんな影響を与えたかを見ようとする本気の知的努力にも、同様に価値がある。」
モリスンは「白人男性至上主義」「進歩史観による人種主義」これらで構築された、普遍的な価値が評価する、アメリカ文学を「黒人奴隷が白人アイデンティティに与えた影響」として、ヘミングウェイやハックルベリーフィンの冒険を例に具体的に考察している。
黒人たちは、強制的 -
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フォークナーの「アブサロム アブサロム!」を読み、彼を敬愛し、習った作家群にいるトニ、モリスンを久しぶりに手に取りたくなった。
そこで「ビラヴド」「青い眼が欲しい」を立て続けに・・たまたま 返却に行った際、返却棚にあったこれをチョイス。
薄いと思った私を小ばかにされそうなほどの難解さ。
読み下すのに呻吟・・まさにそういった大学の講義を聴いている感覚に浸った。
皆さんが書いてあるように、解説で目から鱗。
真っ暗悩みを手探りで歩いた後、フットライトを受け取り、周囲の景色が見渡せた想い。
モリスンの聡明さは、思っていた以上で素晴らしい。
100年経ても生き残る存在に挙げられると思える。
無知 -