都甲幸治のレビュー一覧

  • 郵便局

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    思っていたよりもプロレタリア文学だった。
    日本の蟹工船みたい。
    日々の嫌な出来事を笑い変えられるセンスを見習いたい。
    嫌な上司、嫌な部下、馬鹿な女…冷めた目線でこれらの人たちを平然と皮肉で返すユーモアを持ち合わせているのが羨ましかったりした。
    米国ではありがちなんだろうけど、主人公があまりにも自由人だった。
    自伝的小説とはいえなかなか侮れない内容だった。
    日々の仕事のストレスがちょっとだけ吹き飛んだ。

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    2025年08月13日
  • 暗闇に戯れて 白さと文学的想像力

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    ネタバレ

    やさしく持論を説明してくれることはなく、非常に難解なので、訳者解説にたいへん助けられる。しかし、モリスンは「アフリカニズム」「ロマンス」などのことばを使って難解な理論を提示するに終わらせず、テクスト読解を実践するそれを読むと、読者はモリスンの言いたいことが具体的に理解できるようになる。すなわち、白人男性中心主義をあぶり出すべく、モリスンがトウェイン、ヘミングウェイなどのテクストを読解して見せるくだりはたいへんスリリングである。

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    2025年07月30日
  • 読んで、訳して、語り合う。都甲幸治対談集

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    都甲先生の名前を初めて見たのは、2005年、未亡人の一年で。すごく大先輩な翻訳家と思っいたら、私より若かった…(笑)
    翻訳以外で読んだ生き延びるための世界文学の時も、勝手に年上と思っていた…まあ、同世代、むしろ年下…
    97年以降、なんとなく一途に柴田先生を追いかけて来たのですが、この年になり、新たな翻訳家的推しが登場した!という感じです。
    対談集ですが、文学案内として、読みごたえあります。また、知らなかった翻訳家の方を知る機会にもなりました。

    どの対談も良かったのですが、個人的には、読書案内として堀江さん、星野さん、藤井先生、翻訳家として岸本さん、生き方としていしいさん(笑)、同窓の雰囲気が

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    2025年07月14日
  • 教養としてのアメリカ短篇小説

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    教養としてのアメリカ短編小説
    2025.5.21

    「書記バートルビー」を読んだ。
    グローバル文学という大学の講義で触れた文。初めて読んだ時は理解しがたい登場人物が溢れていて、何が何やらよくわからなかった。
    しかし筆者の考察を読み、なるほど!こんな捉え方があるのね!と驚かされた。

    特に驚いたのは「何もしないこと」についての考察だ。資本主義的思想で満ち溢れ、頑張った分だけお金が手に入るという時代に何もせず虚無的に振る舞うことのコントラストや皮肉、何もしないのはだめなのかと訴えかけてくるという捉え方は鋭いなと思った。アイロニー的文法の本をちょうど読んでレポートを書いていたのでますます興味深かった

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    2025年05月21日
  • 教養としてのアメリカ短篇小説

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    「教養としての」とは言いつつも、かなり濃密な内容だった。
    米国文学に共通する寂しさに私はずっと惹かれている。
    ポーの「黒猫」では、トニモリスンの言っていたように、黒人が脅威のイメージを背負わされている。白人性という幻想に縋るも裏切られ、言葉にならない叫び(殺害)をするしかない貧困層の白人。摂食障害文学に見られる世界を拒否するような何もしなさ、サリンジャーの文学における眠気とPTSDからの回復、カーヴァーの「足もとに流れる深い川」の「backyard」のくだりにみられる夫婦間の言語コミュニケーションの齟齬、イーユンリー「優しさ」に登場する愛の可能性の断片(過去の素晴らしい思い出に縋り、現実的な深

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    2024年10月14日
  • 郵便局

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    これは傑作。
    酒に女にギャンブルと、いつものダメ男チナスキー。
    配達なんて楽勝。何なら女ともヤれて俺にピッタリの仕事じゃね? と始めた郵便局の仕事。
    だが、そんな簡単にいくはずもなくて労働はめちゃくちゃキツい。しかも上司はクソ野郎で、キツい区域を任されたりする。
    最悪、辞めちまったらいいんだ。なんて思いながらも、10年以上もそんな仕事を続けてしまう。

    かつてはこんなダメな奴もいるんだ、なんて思いながら読んでいたブコウスキー作品。
    だが、いつの間にかチナスキーは俺なんじゃねえか? と思いながら読んでいる。
    それもあって訳者である都甲幸治の解説も自分ごとのように刺さった。
    ブコウスキーは齢50に

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    2024年09月20日
  • 教養としてのアメリカ短篇小説

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    アメリカという国を文学を通して勉強しましょうという本だと考えると、アメリカ文学に興味ない私のような人でもすんなりと読めると思うので、そういうおすすめのしかたをしていこうと思います。人に勧められる良い本でした。

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    2024年08月22日
  • 読んで、訳して、語り合う。都甲幸治対談集

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    読みごたえのある一冊。
    村上春樹の作品についての解説も多くて、読んでもいないのに読んだ気に(笑)。
    柴田元幸先生から東大で学んだ都甲先生。
    その当時は小沢健二も授業にいたとか。
    とても良い時代だったんだなぁ。
    学びたい欲が刺激される本でした。

    まえがきも良かった。
    今の学生たちに意見を聞いても、他人の考えを切り貼りする。それは彼らの意見を否定してきた周りの大人の責任だと。
    心が痛くなりました。
    若い子には、正解を出すことだけが正しいなんて思ってほしくない。
    こういう先生のところで学べたら最高だなと思います。

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    2024年06月27日
  • 暗闇に戯れて 白さと文学的想像力

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    そうか、わたしはアフリカ系の人が書いた本を読んだことがないんだ。
    いままで意識していなかったけど、本書を読み進めるうちに気がついた。

    「奴隷たちの心や想像力や振る舞いに目を向ける学問には価値がある。けれども、主人たちの心や想像力や振る舞いに人種のイデオロギーがどんな影響を与えたかを見ようとする本気の知的努力にも、同様に価値がある。」

    モリスンは「白人男性至上主義」「進歩史観による人種主義」これらで構築された、普遍的な価値が評価する、アメリカ文学を「黒人奴隷が白人アイデンティティに与えた影響」として、ヘミングウェイやハックルベリーフィンの冒険を例に具体的に考察している。

    黒人たちは、強制的

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    2024年06月17日
  • 郵便局

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    俺はブコウスキー氏の本は全部好きだけど、トコウという翻訳家のやつが特に好きだと気付いたんだ。
    だから、俺はこれから彼が推してる本を追って読んでくとするよ(ブコウスキー風に)

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    2024年03月11日
  • 暗闇に戯れて 白さと文学的想像力

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    フォークナーの「アブサロム  アブサロム!」を読み、彼を敬愛し、習った作家群にいるトニ、モリスンを久しぶりに手に取りたくなった。

    そこで「ビラヴド」「青い眼が欲しい」を立て続けに・・たまたま 返却に行った際、返却棚にあったこれをチョイス。
    薄いと思った私を小ばかにされそうなほどの難解さ。
    読み下すのに呻吟・・まさにそういった大学の講義を聴いている感覚に浸った。

    皆さんが書いてあるように、解説で目から鱗。
    真っ暗悩みを手探りで歩いた後、フットライトを受け取り、周囲の景色が見渡せた想い。

    モリスンの聡明さは、思っていた以上で素晴らしい。
    100年経ても生き残る存在に挙げられると思える。
    無知

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    2024年03月06日
  • 暗闇に戯れて 白さと文学的想像力

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    タイトルから小説と思っていたが、評論であった。大学での授業をもとにして議論を進めたと書かれている。様々な小説、ヘミングウェーの小説の問題点も指摘している。アメリカ文学を卒論で扱うときには必須の本であろう。解説が1/4以上を占めているし、本文も140ページしかないので、解説から読むのもいいと思われる。

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    2023年10月19日
  • 郵便局

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    大好き

    ひたすら労働に人生を奪われる話なんだけど、そこから完全に抜け出すこともなく大きな何かを成し遂げるわけでもないけど、ただひたすら働いてるだけだけど、チナスキーがずっとチナスキーらしく生きてるのがすごく好きだった

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    2023年06月06日
  • 郵便局

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    ダメさがいい。
    安定のダメなやつチナスキー。
    いっつも酒とタバコと女とギャンブル。
    それらと淋しさが同居してる。
    たまにブコウスキーが欲しくなる。

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    2023年01月01日
  • 生き延びるための世界文学―21世紀の24冊―〔電子版〕

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    本を紹介する本を読むと、たくさん知らない作家がいて、知らずにいたことを残念に思うことが多いのですが、この本もそんな1冊。さらに、未だ翻訳されていない本も紹介されていて、読みたいキモチがさらに煽られるという不条理…なかなか死ねません。

    ルイーズ・アードリック 円い家
    メアリー・ゲイツキル ヴェロニカ
    エドナ・オブライエン 聖者たちと罪人たち
    シャーマン・アレクシー 飛行
    これらをぜひどなたか訳してください…
    他は、何とかなりそうなので。

    著者の子供時代、高校までの思い出コラムも、良かったです。

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    2022年04月15日
  • 今を生きる人のための世界文学案内(立東舎)

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    「今」「世界で」読まれている文学が知りたくて、そんな自分にまさにぴったりはまった一冊。読まれている文学そのものの紹介だけでなく、それが読まれる理由や背景にまで思いを馳せられる仕掛けが心地好い。とりあえずメモを片手に頁を開くべし。

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    2018年05月24日
  • 世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今

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    本屋で見つけて、編者が都甲幸治ってこともあり、是非読みたいと思って入手。最近特に、洋邦問わず文学賞が気になるってこともあり、これもとても楽しく読ませてもらいました。方々で言われていることだけど、ノーベル賞より注目すべき文学賞は、あれもこれもあるってことですね。実際には”8大”文学賞では決してないけど、芥川賞と直木賞の章も設けられていて、それはそれで日本人なら気になるものではあるし、ちょっとした息抜きみたいにもなっていて、高感度高しでした。毎度のことながら、また読みたい本・作家がたくさん見つかって、嬉しい悲鳴再び。

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    2018年05月10日
  • 21世紀の世界文学30冊を読む〔電子版〕

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    なかなか斬新な趣旨で、未訳の英語文学に関する書評集。本作出版後、日本語で読めるようになった作品も少なからず存在するという事実は、いかに的確な選択がなされているかということの証左か。実際、読み進めている間も、翻訳がないことが凄く残念に思われた作品も散見された。また読みたい作品がわんさか出てきて、嬉しい限り。最後に収録されたディアスの短編小説も秀逸な一品でした。

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    2018年01月25日
  • 生き延びるための世界文学―21世紀の24冊―〔電子版〕

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    毎日鬱々としている私に、希望の光を与えてくれた。今すぐ成果が現れなくてもいい、できる範囲で生きるしかない。偉大な先人に続いて輝くスターが今は見当たらなくても、今、精一杯表現するという努力が本当に貴重だということに気が付いた。町田康の書評が素晴らしい。

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    2014年12月01日
  • 21世紀の世界文学30冊を読む〔電子版〕

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    海外文学(特に米)へのひたむきな情熱を感じる良エッセイ。とにかく翻訳の既成概念を根底からゆさぶる、ときに野蛮、ときにクールな選評でぐいぐい読まされる。

    ミランダ・ジュライのひととなり興味深い。
    日本でいうところの川上未映子か。

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    2012年08月21日