都甲幸治のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ最近、ブコウスキーの長編が河出文庫で一気に復刊して入手しやすくなり、ひととおり備蓄できたが、本作は少し前に光文社で新訳となったもの。最初のブコウスキーとするのに程よい分量と内容。読むまではアウトロー的なイメージを持っていたが、勤務状況は真面目な反面、当時の〇ハラ行為が当然な中への怒りや反攻が多く、現状、ブコウスキーの分身たるチナスキーを応援したくなってしまう。ハラスメントが当たり前の時代の読者と現代のそれとでは、明らかに読み方も違うのだろうが、彼の無頼な生き方にはどこか憧れるし目を離せないし、求心力のある物語だった。チナスキーの物語はたくさんあり、今度は「くそったれ少年時代」を読むつもり(しか
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Posted by ブクログ
都甲先生が訳していたので。
ブロティーガンやブコウスキーを読んだ時からの何となくの直感だけど、アメリカ人の抱える悲しみは絶対日本人のそれに通底するところがある。
被差別階級を非人間的な存在として苦しみから逃れるとか、いやもっと言語的なレベルで…
本編もよかったけど、先生の解説だけでもかなり読む価値がある。今まで白人が差別してきた人々が自由を獲得し、境界線を侵犯してくるのではないかという不安を描く上でゴシックロマンスという形式が最適であったとか、「中立的」「科学的」言説と人種主義の強い力だとか。
ヘミングウェイと看護師もフェミニズム的に読むと面白そう。白人が白人ぽさを出すために髪を染めるとか、す -
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Posted by ブクログ
村上春樹/ルイス・キャロル/大島弓子/谷崎潤一郎/コナン・ドイル/J・R・R・トールキン/伊坂幸太郎/太宰治
どれかの名前にピンときたら読んでみてもいいかもしれない。
書評家、作家、翻訳家が10人。
ブコウスキーの訳者として知られる都甲幸治さんをホスト役にして1作家3人ずつの鼎談方式のブックガイド。
ブックガイド好きな上に本について語り合ってる人たちも好きな自分には楽しかった。
各テーマも興味深く、例えばキャロルは「あえて男三人で『不思議の国のアリス』を語る」とか太宰は「ダメ人間を描く小説の作者はダメ人間か」とか。
なるほど~と膝を打ちたくなるような考察もあって面白かった。いやあ、自分 -
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Posted by ブクログ
芥川賞や直木賞なんて世界の文学賞のうちに入るのだろうか?日本の作家が書いた日本語の小説しか対象になっていないのに。なんてことを思ったけれども、読んでみました。今年も話題になっているのは、もちろんノーベル文学賞。村上春樹さんがとるかどうか、メディアで騒がれました。この本を読むとわかるのですが、その根拠になっているのがカフカ賞。この賞をとった人が二人、ノーベル文学賞をダブル受賞しているんだそうで、まだ受賞してないのが村上春樹なんだそうです。カフカ賞はチェコ語の翻訳が一冊は出ていないと受賞できないそうで、村上春樹がとった2006年は『海辺のカフカ』が翻訳された年。タイトルがよかった?
そのノーベル -
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Posted by ブクログ
「はじめに」がとても良かった。
「言葉には、人の心を鎮める力がある。それは歌になり、詩になり、物語となるだろう。心の中にある、夜の密かな、ほとんど聞こえないほどのか細い声が言葉によって拾い出される。そして自分ではない他人、しかも自分とは異なる言語を使う書き手の発した言葉でも、それが生の真実を捉えているとき、僕たちはそこに自分を見る。地球の裏側で、かろうじて一分一秒でも生き延びるために探り取られた言葉が、なぜか僕たちに力を与える。」
「文学は、見ず知らずの人々の心の中にまで降りていくための強力なツールだ。見た目も言語も、背景となる歴史も違う人々の心の中にさえ、僕たちは物語を通じて入って行ける。そ