三浦瑠麗のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
数年前、初めて彼女をテレビの討論番組で見た時、正直好感が持てませんでした。
それから時を経て、私が変わったのか、彼女が変わったのか、はたまたその両方かは分からないけれど、彼女の言葉はすんなりと耳に入るようになり、時に心を打つようになりました。
同世代として、彼女がどのように世の中を見つめ、何を考えているのかより興味を持ち、本書を手にしました。
戦争と差別、今私が1番興味を持っているテーマについて考えることのできる一冊でした。
もちろんそれ以外についても書かれているのですが、彼女の思考の根底にそれがあるのか、私がそれだけを汲み取ってしまうのか、とにかくこの2つに関することが特に印象に残りました。
多様性を理解し、「ものにしたい」と思いつつも日常のふとした場面で自身の偏った考えに自己嫌悪する私から見た著者は、それを既に自然と身に付け、世の中にアウトプットできるレベルにあるように感じました。
この点においては素直に憧れます。
この点に関して印象に残ったのは
「多様性を裡に持つ家庭は色々なところがフラットだ。」
「人間にとって、周りに承認されたい、受け入れられたい、という思いはすこぶる強いものだ。それが否定されるの誰にとっても辛いこと。加えて、不器用だったり、根が自由人で集団行動や環境への適応が苦手が子もいる。」
「その子たちにはその子たちの良さや個性があるのだから、困難だって一つ一つ違う。ただその過程で気を付けたいことが一つだけある。困難を抱えている子たちを美化しすぎるあまり、何か特別な才能と引き換えに困難が与えられているのだと考えてしまいがちなこと。(中略)受け入れているようでいて、どこか優れていることを要求する安易な態度だと思う。」
という文章です。
多様性と関連して、差別についても本書では書かれていますが、中でも感謝したいくらい的を得た意見を示してくれたのが女性差別について。
女性差別やセクハラに関する報道や意見などを見聞きする度にモヤモヤとしたものを感じていたのですが、ようやくそのモヤモヤの一因がハッキリしました(厳密に言えばエマ・ワトソンの言葉ですが)。
また、セクハラを受けた時に声をあげ(られ)ずに早く忘れてしまいたいと思う一方で何度も思い出してしまいグッと奥歯を強く噛みしめる思いも彼女はうまく言葉に示してくれていました。
本書にある彼女の考え全てに賛同するわけではないけれど、同世代で育児をしながら仕事をして、このように世の中を見つめ、自分なりの考えを持っている人がいるのだという事実は大きな刺激になります。
たどり着く考えは同じでなくても、彼女の世の中の見つめ方はお手本にしたいところ。
そして子どもとの向き合い方も参考にしたいところです。
読み終わった本は基本的にすぐ手放す主義ですが、とりあえず数年間は手元に残し、折に触れて読み返したいと思います。
2020年53冊目。 -
「トランプ時代」の新世界秩序
- カート
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試し読み
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Posted by ブクログ
猪瀬、三浦両氏による対談。都知事が小池氏となり、トランプ大統領誕生半年後に出された本で、東京オリンピック誘致や森友学園問題、稲田防衛大臣時代の日報問題にも触れられている。猪瀬氏は、明治以降の歴史や全共闘に参加した体験を基に話されていることが興味深かったし、三浦氏は、政軍関係や憲法問題など自らの研究テーマや当時のテレビ出演、セミナー、勉強会での話題や母親としての視点からの意見が印象的であった。社会は国民国家が中心的アクターであって、健全なナショナリズムの必要性と、現在の状況を的確に読み解いていくリアリズム的な基盤を持つことの重要性をわかりやすく説明しており、参考となった。猪瀬氏の「まえがき」と三浦氏の「あとがき」が素晴らしく、感銘を受けた。
「(三浦)そもそも、大学には「軍」とか「戦略」と名のつく研究をすることすら、憚られる雰囲気があります」p28
「(自衛隊)陸海空が戦前の日本軍みたいにタテ割になっているから、それぞれ予算が既得権益になっている。だから本来は国家防衛戦略を作成して、既得権益を一度解体しないといけない」p34
「軍人だから戦争をするのではなく、専門家だから戦争を抑止できる能力があると考えなければいけない」p37
「(戦後の日本)要するに「お国のため」あるいは「人のため」という人と、無責任に批判したり揚げ足取りをしたりする人たちとの戦いだったのではと思っている」p104
「(猪瀬)国民国家にとって言語と伝統文化は重要な要素で、そこにしか拠り所はないと僕は思っている」p122
「(三浦)戦後を否定する気はありません。パブリックマインドのある自律的な個人が育てばよかったのにと残念に思っているのです」p156
「(猪瀬)森鴎外の発想の根底には「国家は形式である」という考えがあったと思う。形式の一角が崩れると、たちまち秩序は崩壊する、と述べていた」p183
「(三浦)日本人は誰かのせいにして生きてこられたから、全体で負荷を共有するとか、それができなければ選択を迫られるといった考え方がピンとこないのかもしれません」p221
「「お受験ママ」というのは、たしかに出世はもたらしてあげられるかもしれないけど、本当の実力や志は育てられないのです」p230 -
Posted by ブクログ
国際政治学者による政軍関係について論じた本。著者はよく勉強していると思う。国家が誤った戦争に突き進むのは、指導者や政治家そして彼らを煽る国民が戦争のことを理解していない(著者は「血のコスト」を負担していないと言っている)からだとし、解決策として徴兵制の導入を提案している。著者は、カントの『永遠平和のために』の考え方に賛同しており、その他ホッブズやプラトンらの古代哲学にも触れ、論理的かつ学術的に論理を展開していて説得力がある。テレビで拝見すると、現在の情勢に対して的確に意見を述べているように見えるが、以前から深い研究、研鑚を積んでのしっかりした基盤をお持ちであることが理解できた。
「(ジョージ・オーウェル)すべての戦争プロパガンダ、すべての怒号、偽り、そして憎しみは、常に戦っていない人々からやってくる」p2
「私は普段からあまり性善説を取らない。人間は進歩することができると思う一方で、人間は利害で動くことが多いと思うからだ」p5
「ひとまず生存を確保した国家が熟慮すべきは、国家が軍という実力組織を有していることの意味と、その自己抑制の方法であろう。リアリズムの真髄は熟慮であり、それが欠けている社会に平和は訪れないからだ」p8
「1945年以降の秩序に寄りかかっているだけでは、国家も平和も維持できない時代が到来した」p25
「これまで、西側の平和はアメリカが提供する圧倒的な公共財と投資、開かれた市場、それらを支える軍事力によって成り立ってきた」p25
「総動員ではない限定的な戦争においては、「血のコスト」を負担しない統治者や市民層が、不必要で安易な開戦判断に傾く危険がある」p35
「70年代にはアメリカの国際政治学者ロバート・コヘインとジョセフ・ナイにより、「経済を含めた複合的な相互依存により国家間協力のインセンティブが高まる」という主張が行われた。この仮説は、相手国と協力することの利益がかつてよりも増しているとするものである」p45
「(ステファン・ブルックス)貿易の増大は現代の安全保障を左右する主要なファクターではない。安全保障に最も強く影響を及ぼす経済要因は、むしろ多国籍企業による生産のグローバル化であるとする」p46
「カントが真に理想としたのは、市民がすなわち統治者であり、かつ有事の際には軍人であるという国家像であろう。しかし、それは現実的に不可能なので、制度上は、秩序を安定させ権力を抑制するため、行政と立法を分立する。予算を含め国のあらゆる政策の決定権を立法者に、行政の統治者に外交代表権を委ねる。そして、もし国家が侵略の危機に立たされれば、市民が速やかに「郷土防衛軍」を形成して内の守りを固める。これが、カントが提示した「共和制」国家の大まかな構想であった」p58
「そこで初めて、国内社会における負担の分かち合いという真の正義の実現と、世界の民の共通利益への収剣こそが人類の共存と平和をもたらすというカントの思想の核に辿り着くのである」p60
「世界政府が実現していないなかでは国境を越えた再分配は難しく、機会の平等も実現していない」p64
「平和を乱しているのは権威主義体制と軍国主義、全体主義であり、1945年以後の西側陣営内での平和はまさにそれを象徴しているものだとする言説がアメリカにおける議論の主流となった」p67
「ベトナム戦争が始まった当初は平等な徴兵に基づく戦争とはいえず、当時の大学生の多くは高等教育を理由に合法的に徴兵忌避できた。徴集兵の8割が貧困家庭や労働者家庭の子供だったという調査さえ存在する。しかし、徴兵対象が拡大したことで初めて、戦争を我が事として捉えた若者の反戦運動が盛り上がり、徴兵制の全面停止へ向かっていくのである」p97
「現代では、軍が戦争を渋り、シビリアンが冒険するという倒錯した現象が起きているのである(脚注に例があげられている)」p102
「仮に軍人の方が抑制的な意見を表明した場合であっても、大統領府の意向に反していればシビリアン・コントロールを阻害するものとして批判が生じた」p106
「軍事介入の要求にブレーキをかける声は少なく、むしろ軍事行動を躊躇する軍に民意が苛立ち、激しいバッシングを展開する。軍の反対を押し切って開戦される「シビリアンの戦争」のクライマックスは、イラク戦争だった」p106
「(著者の徴兵制導入提案)徴兵制導入が経済的にも実務の上でも非効率であることは前提として考えなければならない。もとより徴集兵が現実の戦争にもはや役立たない時代になっている以上、そのような提案をプロの軍が歓迎することもほぼないといってよい。つまり、これは合理性をめぐる提案や解決策ではなくて、コスト負担の不均衡という不合理を認識するための提案なのである」p124
「(アフガニスタンでの対テロ戦争)戦争目的は揺れ動く。犠牲の大きい戦争や、目的遂行に失敗した戦争においてよく見られる現象だ」p149
「グローバル経済と資本主義を、民主主義から守るためには、「望まれたグローバリゼーション」でならなければならない」p154
「パナマなどのタックスヘイブンに集中砲火を浴びせるよりも効果的なのは、むしろ、国としてのまとまりにおいて完結する税のあり方を考えていくことである。例えば、法人に対する税収依存を減らし、一方で自国に住んでいる住民個人への直接的な累進課税を強化して、全体の税収を賄うような大胆な発想が必要となる」p154
「国家の仕事は分配であり、制度設計である」p156
「ベトナム戦争では、韓国は米軍に次ぐ規模で本格的に派兵している」p166
「(ベトナム戦争参戦による米国から韓国への富の移転)ベトナム戦争の特需や米国による援助が外部から押し寄せたことで、「漢江の奇跡」と呼ばれる目覚ましい経済成長をもたらし、戦争に伴う出稼ぎ労働者や志願兵に対する給与として、相当量のお金がばらまかれた」p168
「現在では世界トップレベルの大学進学率が注目される韓国でも、1980年時点では中学への進学は7割を超える程度で、中学が無償義務教育化されたのはようやく2004年のことだった」p169
「ベトナム戦争への軍事協力では、陸海兵隊延べ31万人以上の韓国兵がベトナムに送られた。軍事動員は9年間にわたった」p171
「徴兵制をやめたとき、韓国がこれまで通り武力行使に抑制的でいられるかといえば、必ずしもそうとは言えないだろう。シビリアンの戦争は、まさに民主化と徴兵制廃止の対価だからである」p188
「(イスラエル)「やられる前にやる」という脅迫観念から始めた戦争の結果、イスラエルは東エルサレム・ヨルダン川西岸をはじめ、ガザ地区、のちにエジプトに返還してシナイ半島、ゴラン高原を次々と占領し、広大な占領地を持つことになった。この決断はイスラエルの共和国性に今日まで大きな害を及ぼしている。国境線が揺れ動くと、国家はジレンマに直面する。眼前の脅威は取り除かれるが、拡大した支配地を守る防衛努力に大きな資源を割かなければならない。また異民族を統治すれば不満を持つ者が内乱を起こす可能性も高まる。イスラエルはそんなジレンマに陥ってしまったのである」p194
「イスラエルのように他者の土地を占領すると、その反作用で自国民に犠牲が出て、それに激昂した世論によって戦争が引き起こされ、拡大していくということが起こりやすくなるのだ」p196
「後発国家のナショナリストはみな社会主義的な要素を国家建設に注入していた」p198
「世界が今、実効的な安全保障、健全な民主主義、すべての階層に望まれるグローバリゼーションの3つを同時に成り立たせるための新たな解を必要としていることは確かである。私たちは思考停止してはならない」p252 -
Posted by ブクログ
子を持つお母さんが「徴兵制導入はあり」です,って書かれている本です。非常に平易に書かれた国際平和を実現するための近未来への提言で,サクサク読めてしまいます。過去の事例もきちんと挙げてあり勉強にもなりますが,なによりどうしたら戦争を起こさない社会が作れるのか,自分たちの国をどう守るのか,平和をどう維持していくべきなのか,考えさせてくれるところが素敵です。
戦える軍隊をもって平和を守ろうと国民が本気で考えるなら,国民は平等に手を汚し「血のコスト」を引き受けるべき,という考えは以前からあって,ぼくも同意します。ただぼくは殺されたくないけど,殺したくもない人間なので,できれば戦いのない社会が実現して欲しいと思います。だから憲法九条については解釈改憲なんかできないようにもっときちんと議論して誰もが納得する国の守りかた,平和の守りかたを規定するものに変えて欲しいです。そのうえで軍隊を持つのなら徴兵制はやはり必要かな…。軍隊,持たなくてすむ世のなかになって欲しいけど。
ところで三浦先生のお師匠さまである藤原帰一先生には『戦争の条件』という大変わかりやすく戦争がらみの国際政治を考えさせてくれる名著があります。合わせてごらんになると勉強になると思います。 -
Posted by ブクログ
平和安全法制の文言がどうしてあのようになったのかについて、自民党内において27回、そして公明党の北側氏と直接25回協議した高村副総裁の貴重な証言を中心とした、「安全保障の矛盾」だけでも充分すぎる貴重な対談である。
どうしてあのようなややこしい文言が必要となったのかについて、まともに報道されていない気がするのだが、『砂川判決』の法理に基づいている法律だから、『砂川判決』の文言をなぞっている。ただそれだけだというのがとても良くわかる。(というか、ようやく文言について腑に落ちた)
そして、『外交の矛盾』『政治の矛盾』においても、高村氏の経験に基づく常識論が良く伝わる。三浦氏が大きく叩いているからこそ、高村氏の回答が良く響いている様に感じる。
それにしても、高村氏の安倍総理評はとても興味深い。
理念先行型のロマンチストでは無く、理念は理念として切り離せるリアリストタイプ
『自分は国民に対して自分の新城を率直に訴えさせて貰います。そして、しかるべき地位を得た時には、現実をよく見て国益を考えて行動します』という安倍総理が新人議員当時の発言を紹介しているが、それに対する高村氏の『こいつ凄いこと言うな。単なる国会議員じゃしかるべき地位じゃ無いと思ってるんだ』には吹いた(^^;