【感想・ネタバレ】日本の分断 私たちの民主主義の未来についてのレビュー

あらすじ

日本人の価値観をのぞき込む。
三浦瑠麗が独自の価値観調査で明かす、日本人のホンネ。

政治はなぜ変わらないのか? 「分断の時代」に日本政治が取り組むべき真の争点とは?

第1章 日本人の価値観と分断
第2章 野党の政権交代戦略
第3章 「分を知る」をとるか「進歩」をとるか
第4章 人びとの本音と建前
第5章 日本社会の価値観はどのように変わるのか
第6章 保守と革新の分断を探る
第7章 日本の分断

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Posted by ブクログ

日本の分断 私たちの民主主義の未来について。三浦 瑠麗先生の著書。政治の世界は難しくて閉鎖的だから政治に興味を持つ人はなかなか増えない。でも三浦 瑠麗先生、三浦 瑠麗博士は難しい政治の世界のお話を誰にでもわかりやすく解説してくれる。三浦 瑠麗先生、三浦 瑠麗博士のような政治学者の先生が増えれば政治の世界に興味を持つ人がもっと増えそう。日本に第二第三の三浦 瑠麗先生、三浦 瑠麗博士が出てくることに期待したいです。

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2022年06月27日

Posted by ブクログ

三浦瑠璃氏による、ご自身の山猫研究所監修の簡易版価値観調査の説明と結果、そしてそれに関連した価値観の違いによる分断について意見を述べたもの。以前にこの簡易版価値観調査は実施したことがあり、今回、詳しくその見方を理解できたことは有意義であった。さらにその結果から読み取れる日本人の傾向も興味深かった。後半は、調査結果からわかる日本人の価値観の特徴を各政党が活かしきれていない実態と、政治的な議論においては分断を恐れず、むしろ分断した方が状況としては望ましいと述べている。確かに、安全保障や社会保障、原発などエネルギーなどの大きな論点については、賛否両者の議論を真剣に戦わすことにより、早期の進展がみられるのだと思う。正しい分断による議論が必要ということだろう。勉強になった。

「私たちはどれだけ日本社会を実際に「知って」いるのか。経験と勘に基づく印象論で語ることなく、かつ不必要に難解になることなく、ある意味で愚直に客観的にファクトを追求してみようというのが本書の試みだ」p11
「米国は移民の流入が激しく、マイノリティが増えているため、世代交代によらずとも保守が相対的に減少しつつあることが特徴として挙げられる」p21
「これからの米国政治はポピュリストの奪い合いということだ」p26
「(日本の野党の政策)現実問題として外交安保リアリズムをとる人が国民の多数を占めるため、安全保障でリベラル票を惹きつける戦略を維持する限りは、政権交代は難しいということである」p52
「現状の日本の選挙を眺める限りでは、どうも野党は「自民党を嫌いな人びと」にばかり訴えかけようとしているように見える。いわゆるスキャンダルや政治不信を利用した戦い方はそれにあたる」p55
「(野党の戦い方)結局のところ、日本の選挙で勝とうと思うのならば、価値観を外交安保で中道リアリズム寄りに振ったうえで使える戦略をすべて動員するしかないのだ」p74
「日本の小学校から大学相当の高等教育にかかわる公的支出は、先進国の中で著しく低く(2016年の支出はOECD35か国中最下位)、その代わり、家計が他の先進国とのギャップを担っている。つまり、ごく単純化して言えば、余裕のある家庭が支出する塾代や習い事といった出費があってはじめて「先進国並み」の教育環境が手に入るということになる。私立のお受験、英語教育、インターナショナル・スクール。お金や知識がある親の元で育った子供たちは、英語を身に着けたり、海外へ行ったり、バイオリンを習ったりして、貧しく育った子供たちを引き離す」p77
「日本人ならば誰しもが経験するとおり、日本社会では空気を読む能力が非常に高く評価される傾向にある。抜け駆けをせず、根回しをし、相手の望むところを察することで集団内の秩序を保っている」p89
「各国の経済をめぐる政治的な左右対立を象徴するのは、分配重視か成長重視かだ」p98
「経済や社会政策で多少自民党と価値観がずれていても、外交安保リアリズムの有権者の多くは自民党に投票することを確認してきた」p129
「私は議論の中で「これからは社会政策の革新性をめぐる闘争になるだろう」という見通しを両者(与党と野党)に示した」p132
「(環境政策・グリーン問題)グリーン分野の投資を加速させることでイノベーションを促進し、新たな付加価値を生もうとするもので、環境政策というよりもはや各国の成長戦略の一丁目一番地となっている」p138
「つらいことだが、政治とは、それ程理想が異なるわけではない人々を分断する活動である。双方が同じくらい理想だと思える社会を提供できるはずなのだが、両者の力点の置き所が異なるがゆえに、政治闘争が生じてしまう。そして、本来はそれほど異なるわけではない政敵にレッテル貼りをして、そのレッテルを責める、という不毛なゲームでもある」p141
「(女性活躍)日本の弱点の1つは、その女性幹部比率を上げようとしても振るべき袖がないということだ。少数者の女性は、男性社会で本気の権力闘争を勝ち抜かなければ幹部にはなれない」p148
「保守派ナショナリズムをその核とし、革新派コスモポリタンな世界を思い描いてきた。分かりやすく、「日本」で構想するか、「世界」で構想するかの違いと言ってもよい。もうひとつの根源的な違いは、どれだけ急速に社会を変革するかである」p167
「統治よりも自由を、管理よりも自我を重んじてきたはずの自由主義諸国が格差の拡大につれて民情の安定を失ったとき、それでも自由を選ぶのだと言い切れる人は少ない。その結果として社会から競争が失われて懐古主義が台頭し、ある種のすさまじい競争を国内に抱える中国に負けてしまう。私たちが直面しているのはそういう構図だ」p177
「民主主義が当たり前になった結果として、社会の分断に注目が集まり、与野党による価値観の二極化が批判されているが、政治による分断は、それが内戦ではなくゲームにとどまる限りにおいて存在意義を見直すべきではないだろうか」p200

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2021年03月01日

Posted by ブクログ

本書で最も印象に残ったのは、**「護憲派と改憲派、そして日米安保を巡る立場の違いこそが、日本における最大の分断ポイントである」**という指摘でした。昨今の高市首相支持者と反高市首相の対立が、単なる好悪ではなく、この長く続く価値観の対立線上にあると捉えると、確かに腑に落ちるものがあります。

三浦氏の議論は、イデオロギーの極端に寄らず、複雑な社会の姿を冷静に整理しています。たとえば、日本では反グローバリズムの潮流は欧米ほど強くなく、右派ポピュリズムも顕在化していません。一方で、グローバル化による格差拡大や環境問題、左派・右派双方のポピュリズムの兆候など、世界共通の課題からは逃れられないことも示されます。

また、教育投資が先進諸国の中でも著しく低いこと、そして「日本は学歴社会でありながら、政府への信頼が一貫して低い」という指摘も痛烈です。「あたし中卒やからね…」という中島みゆき『ファイト!』の一節を思わせる話題が出るのは、本書が“個人の生きづらさ”と“社会構造の歪み”を同時に見ているからでしょう。

興味深いのは、高齢者層の意識です。「最近の日本は正しい方向に向かっている」という評価にも、「変革が必要だ」という主張にも、高齢者の賛同が多いという、相反するようでいて実は複雑な構造。本書はこうした矛盾を丁寧に読み解き、世代間の価値観の揺れを照らし出します。また「強いリーダーが必要」という論点にも高齢者の支持が厚い点は、日本政治の未来を考えるうえで重要な示唆と言えます。

一方、社会政策は徐々にリベラル化し、外交・安保におけるリベラル層は今後比率が低下していくと三浦氏は見立てます。これらは政治の“地殻変動”のような変化であり、放っておいても進む潮流です。

終盤で示される「政治とは、実はそれほど理想が異なるわけではない人々を“区切る”行為である」という言葉は、本書の核心でしょう。派閥の思想などは徒党を組むための後付けにすぎず、人が立場に縛られて分断されていく構図は、今の日本の風景そのものです。
しかし著者は、分断をただ嘆くのではなく、「分断があるからこそ政権交代が可能になる」という民主主義のダイナミズムを強調します。

最後に、日本が直面する課題――持続可能な社会保障、人手不足、生産性の向上、産業構造転換、グリーン投資、最低賃金の是正、安全保障など――はすでに出揃っており、あとは社会としてどう選択し、議論し、合意形成するかが問われているだけだと、著者は静かに語ります。

本書は、政治的に極端に寄らず、日本社会の「いま」を立体的に捉えるための良質な視座を提供してくれます。
分断を敵視するのでも、過度に恐れるのでもなく、民主主義のプロセスとしてどう向き合うべきか。読後には、そんな冷静な問いが残る一冊でした。

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2025年11月28日

Posted by ブクログ

日本の選挙権者は、米国のように、政治的保守リベラル、経済的保守リベラルで分かれているのではなく、防衛安保政策に対する意見により最も大きく分かれているため、他国のように、経済成長の行き詰まりによって、保守・リベラルの両方が先鋭化するという現象が起きていない。これは良いことでもあるが、野党が弱体化して政権を取れる見込みが無いことの原因でもある。野党が防衛安保について理想論にこだわっているために、自民党が、政治的リベラル層や経済的リベラル層まで取り込んでしまっているのだ。野党が政権奪取を目指すには、防衛安保政策に関して現実路線にカジを切って、政治的リベラル・経済的リベラルを打ち出す戦略に切り替える必要がある。

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2023年01月04日

Posted by ブクログ

民主主義を機能させるために、言葉による競争が必要。多様な価値観・理念に基づく対立を政治に反映させる必要。

経済リベラル(分配重視)vs経済保守(成長重視)
社会リベラルvs社会保守
外交安保リベラルvs外交安保リアリズム

若者:他の年齢層より経済リベラル
若者:他の年齢層より社会リベラル
若者:他の年齢層より外交安保リベラル
若者:自民支持が多い

テロ対策の強化のために国による監視を強めるべきだ。賛成70%(全体)
韓国に対して歴史的問題で妥協すべきではない。賛成75%(全体)
中国は領土的野心を持っていると思う。賛成80%(全体)

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2024年05月04日

購入済み

代表制民主主義の限界か

本書で一番注目すべき点は、第一にアンケートの設問の重要性である。設問の仕方によってアンケート結果を大幅に操作することが可能である。「本音と建前」の節にはなるほどととても感心した。ポリコレにより、設問も回答も「建前」っぽくなってしまっている。
第二にそのアンケートを二次元に展開した各種の図である。文章で書かれた著者の主張には賛否両論があるだろうが、アンケート結果を展開した各種の図には、それなりの説得力があるし、著者の主張とは違う読み取り方も可能である。
本書の出版から1年半ほど経つが、後半第六章の記述は現状をそのまま説明していると言っても過言ではない。第七章の安全保障問題についてはウクライナ戦争で国民の意識が大きく変わったような気がするがどうだろうか?相変わらず安保は無難な左右対立軸として温存すべきであると政権は考えているのだろうか?
「分断が必要」とは逆説的で一見目新しい説のようだが、半世紀以上前に大平正芳首相が唱えていた「楕円理論」と類似のもののような気もする。いずれにしても「選良」を前提とした代表制民主主義は能力の限界であり、成田悠輔が唱える22世紀の民主主義へ移行してゆくのかと思わせる本であった。

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2022年10月01日

Posted by ブクログ

 選挙の際何を基準に投票政党を選んでいるかを調査を用いて分析している。その結果、よく言われていた「今回の選挙の争点は、増税と年金2000万円問題です」という論述は間違いで、実際は外交安保が理由となっていたらしい。「あなたの価値観診断テスト」やってみたら社会リベラル、やや経済リアリズム寄りのリバタリアンだった。主観ではなくちゃんとしたファクトを基に分析しておられたので大変興味深い内容だったが、政治にさほど詳しくないので、用語などぼんやりとした理解しか持っていない物が多く、少し難しかった。

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2022年07月18日

Posted by ブクログ

日本にはもっと分断が必要です
は煽りすぎだけどなんか主義・政策の整理が必要だよね
って論旨には賛成
保守・革新から何も整理せずにリベラルが出てきてぐちゃぐちゃになった感じ

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2021年09月12日

Posted by ブクログ

データに基づく日本の分断 民主主義 を問う。
分断イコール悪というステレオタイプに一石を投じ 何が日本 奇妙な政治的安定をもたらしているかを論じる。秀作だと思う。

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2021年07月26日

Posted by ブクログ

気鋭の政治学者による選挙行動におけるろんてんの分析。的確な分断があるのが真の民主主義。

自民党支持者や他の野党支持者の政治的なイシューに関する分析。保守、革新といえど日本では意見はほとんど変わりがない。結局、小選挙区制下でも二大政党制が実現せず自民が一人勝ちを続ける理由がよく分かる。

一方の野党。どのように政策テーマを掲げて国民を良い意味で分断できる。今の政治と官僚の不信感を煽るだけでは、政権奪取は不可能だろう。そもそも本人たちも諦めているだろうが。

現状の分析から健全な民主主義の実現へ。得るところは多い。

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2021年06月10日

Posted by ブクログ

『日本の有権者の投票行動がごく限られた憲法や日米同盟をめぐる対立軸によって大きく影響を受けている…政権交代のために必要な対立軸が日本政治には欠けている』
『桜を見る会問題でいったん低下した内閣支持率は、安倍政権が何もせずとも年を越すと回復した…自民党支持に多くあげられる理由は「他に選択肢がないから」つまり野党の魅力が少ない』
『野党政治家が政権への怒りを表明したSNS投稿で稼ぐ、数千から数万程度の「いいね!」は、所詮内輪での「バズり」であり、そうした戦い方では支持を広げることはできない』
『政党が長く存続し、支持を集め続けられるかどうかは、組織運営とリーダーシップに加えてブランド戦略何重要』
『特定の政党だけを支持するのではなく、与野党双方をフェアに評価しようとする人たちがそれなりの数存在することは、日本政治を穏健にしていると言えるだろう。究極的には、それを理解している政治家がどれだけいるかで政治の健全さが決まる』
『日本の女性の社会進出は過去最低で、先進国のなかでも最低残って121位という不名誉な地位』
『日本の弱点の一つは、その女性幹部比率をあげようとしても振るべき袖がない』
『いまの若者のもつ経済・社会的価値観が新たな中道になる。日本の未来の政治の主役は彼らであるのだから、年長世代の価値尺度のみで彼らのことを測ってはならない』
『統治よりも自由を、管理よりも自我を重んじてきたはずの自由主義諸国が格差の拡大につれて民情の安定を失ったとき、それでも自由を選ぶのだと言い切れる人は少ない。その結果として社会から競争が失われて懐古主義が台頭し、ある種のすさまじい競争を国内に抱える中国に負けてしまう』

著者の山猫研究所監修の簡易版「あなたの価値観診断テスト」の説明とその結果の日本人の価値観とは?
「分断」と聞くと昨年のアメリカ大統領選挙にあったように人々を二分し、対立を煽る。≠統合や団結と勝手に思っていたが、政治的な議論においては分断を恐れてはいけない。正しい分断の議論が必要である、と書かれている。

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2021年03月03日

Posted by ブクログ

日本の政党が同士がもっと政策でしっかりと対立しないと、グダグダになってダメになるよって話。そういう意味で分断をはっきりさせましょう、それからという感じ。

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2022年04月19日

Posted by ブクログ

社会的価値観
経済的価値観
という軸で政治家を論じるのは、
前に読んだ「自民党 価値とリスクのマトリクス」に似ていたので、すっと入ってきた。

この本の本題ではないが、日本にも飛び級があってもいいのになと思った。すべてとは言わないが、飛び級したければここに行けみたいなルートがあると面白いんじゃないかと思った。


金槌を持てば全てのものは釘に見える
→イギリスの格言
→知識は大事だが先入観は危険

社会的価値観
経済的価値観
の軸


維新が国政で大きな足掛かりを作れないのは、大阪のような大義がないから
→二重行政廃止や万博招致など

大義は対立軸と深く関係している

★政権を取るためには政権が推し進めている以上にすすめるか、真逆のことを言うしかないが、今は自民党が中道なので、なかなかむずい

★日本は飛び級がない
→優秀な人をとことん育てた方が合理的だとは思う

日本では平等主義の観点から選択的な投資は難しい

日本の教育は
・身の丈、と
・実力主義、と
・平等主義
の三つが組み合わされたものになっている

平等だけを目標とすると人間集団から努力する意思が失われて停滞する
→★社会主義的な

だから、日本は、平等主義の観点から自助努力の価値観を害わない範囲で、つまり成功者に与える見返りをあまり多くしないことで才能を社会に還元させている
→たとえば、ゴーンの報酬が日本では取りすぎだった

日本では抜け駆けをせず、根回しをし、相手の望むところを察する"

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2021年06月21日

Posted by ブクログ

政治に疎いからかなり難解だった。
多分、内容の4割くらいしか理解できてない。

でも、日本の政治について理解するいい機会になった。もっと知識を蓄えてからまた読みたい。

《概要》
・日本の政党は経済的、社会的な保守と革新でさほど意見が別れてきない。
・日本の政党を分ける論点は憲法改正と日米関係。

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2021年05月09日

Posted by ブクログ

右派と左派。リベラルと保守。日本はいくつかに分かれたほうがよいらしい。
その前に自分のポジションがどこにいるかを知ることが必要。その意味でこの本は有効。

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2021年03月23日

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