高野優のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
物語の筋や整合性を追うよりも、ひたすら「人間にとって愛とは何か?」を考えさせる作品だと思いました。
前半の長大な独白は斜め読みしつつも、ハダリーが登場するあたりからは、その鮮明な描写に一気に引き込まれました。
時代性を感じる女性蔑視の記述については、あえて男女を逆転させ「現代の男性にも同様の事例はあるな」と身近な人物に当てはめて読んでみましたが、これが非常に面白い試みとなりました。
昨今の倫理観の高まりを好ましく思う一方で、剥き出しの言葉に触れることが思考を深める重要な契機になり得ると実感できたことは、私にとってここ数年で最も忘れがたい読書体験となりました。 -
Posted by ブクログ
キングオブ娯楽小説!
八十日間で世界一周できるのか?
今の技術ならあたりまえの話で、誰に聞いても「当たり前だ」という回答の来る質問。
しかし本書が執筆された当時はそれが賭けの対象になるほど。
上巻に引き続き世界一周を続けるが、やはり日本の読者にとってはとうとう日本に一行がやって来るのが嬉しい。しかも、なかなか大事な場面だ。あとは日本の当時の様子を知るのも楽しい。社会や歴史の授業で知識は得るのだが、この様な小説の中で海外の人の目を通して知る機会はなかなか貴重だと思う。日本もそうだが、当時の世界情勢やその土地々々の風習や風情風景、イギリスの隆盛ぶりなども興味深く読める。
しかし、やはり楽しいのは本当に八十日間で世界一周できるのか?!
行く先行く先で何らかのトラブルに巻き込まれる一行。沈着冷静なフォッグさんを見るとなんとかしてくれると読んでいるこちらも心強い。パスパルトゥーはその明るさと軽快さで一行の助けになるし、読者を楽しませてくれる。そんな旅の楽しさやドキドキ、さらには登場人物たちの魅力でも素晴らしいのだが、さらにもう一段。フォッグさんが銀行強盗ではないかと刑事が追ってくるドキドキもそこに加わってくる。そりゃあ楽しくなりますよ。
ラストがどうなるか、本当に八十日間で世界一周できたのかは読んでのお楽しみと言うことで。
当時のことに思いを馳せながら、老若男女に読んで欲しい作品だと思います。 -
Posted by ブクログ
面白かった。
旅であり、冒険でもある世界一周。
それを当時の移動手段で80日でするという。
その80日はなんとしても守らなくてはいけない。
障害はいくつもやって来る。どう乗り切るか?!
追跡者との争いはどうなるのか下巻を期待!
当時の世情も読んでいて楽しいし、登場人物はみんなしっかりキャラがある。
わくわくドキドキする展開も楽しい。かなり前の時代に書かれた本ではあるが今読んでも十分楽しめる。ゾウに乗って旅をしたい!
新訳だからか、読んでいて分かりづらかったり不自然な言葉もない。
子どもたちにも読ませたい一冊。
大人の自分が読んでも楽しいしくて、下巻が楽しみになるほど。刑事さんの結末はどうなるんだろう。 -
Posted by ブクログ
フランスの田舎町の古い城館には、科学者スタンガーソン博士と令嬢のマチルド嬢が使用人たちと暮らしていた。
ある夜、実験を続けていたスタンガーソン博士と老僕は、実験室のすぐ隣のマチルド嬢の部屋、別名「黄色い部屋」と呼ばれる部屋からマチルド嬢の悲鳴と銃声を聞く。スタンガーソン博士と使用人たちはなんとか扉をたたき破って黄色い部屋になだれ込むと、大怪我をしたマチルド嬢が倒れている。しかし完全な密室の黄色い部屋に犯人の姿はないではないか!
この事件捜査に呼ばれたのはパリ警視庁の刑事であるフレデリック・ランサン。だがこの事件を何としても自分で解決したい!と張り切る若者がいた。まだ18歳の新聞記者ジョゼフ・ルールタビーユだ。彼は数年前から観察力、論理的な考え方から、すでにいくつかの事件の真相を見抜き、新聞社でも大いに信頼されていた。そしてルールタビーユはマチルド嬢を見かけたことがあったのだが、彼の幼い頃の思い出の女性と同じ香りを持っていたのだ。あの女性と同じ香りを持つマチルド嬢を助けたいという気持ちがあった。
人当たりの良さ、頭の良さで事件関係者に近づいたルールタビーユは、被害者のマチルド嬢は犯人をかばっているのではないか?との疑問を持つのだった。
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子供の頃に児童向け簡易版で読んだので「トリック」だけは知っている状態で読んだのですが、さすが小説としても、探偵ものとしても面白かったです。
スタンガーソン博士の実験内容が「物質の消滅」で、そしたら自分の眼の前で犯人が完全密室から完全消滅した!というのもよくできているなあ。
この時代のフランスの田舎町の様子や、世間の様子も感じられます。
ルールタビーユが「事件の真相は分かりましたが、あと4時間は公表できません」と言われてあっさり承諾する裁判官とか、世間がゆったりしてたんだなーとも。
マチルド嬢の秘密は、大人になった今ならなんとなく察せられた。
しかしこの『黄色い部屋の秘密』で明かされたのは、あくまでも密室から完全消滅したかのような犯罪の解決で、ルールタビーユの過去(まだ18歳なのに)とか、マチルド嬢の秘密の一端に関しては『黒衣婦人の香り』に続くらしい。そっちも読まなければいけないではないか。
ところどころでエドガー・アラン・ポーや、コナン・ドイルを悪く書いているんですが、ガストン・ルルーはコナン・ドイルのファンらしい・笑 -
Posted by ブクログ
そんなもん面白くないわけがない
と言うわけで、上巻でフォッグ氏一行が利用した交通手段で、当時と現在も変わらずにあるものの答えは「象」です
簡単すぎて申し訳ない
それにしても、なによこの面白さ
そして面白ポイントは無限にあるんだが、今回は主人公フォッグ氏の魅力について語りたい
フォッグ氏はまずイギリス人紳士なんです
で、外からは感情が良く分からんの
常に冷静沈着、言葉数も少ない
だけど中身はめちゃくちゃ情が厚くて、親切で、誇り高い
そしてなんかちょっと変なことするとだいたい「イギリス人らしい」とか書かれる
ヴェルヌはフランス人なので、恐らくちょっと馬鹿にしてる
イギリス紳士馬鹿にしてる
んでも、このフォッグ氏がほんとに魅力的で、みんな好きになっちゃうんよね
果たしてフォッグ氏は『八十日間世界一周』を達成することは出来たのか!
超有名なお話だけど、意外とみんな成否知らんよね -
Posted by ブクログ
以下、中学2年生の時に書いた読書感想文をそのまま掲載:
「あなたの分のメロンはないわ。だって、あなたは私と同じでメロンが嫌いだから…ええ、まちがいないわ」
「そうか、ぼくはメロンが嫌いだったんだ。ママが間違いないと言うなら、間違いない。」
ジュール・ルナール作の「にんじん」。この本は、あらゆる面で私に大きな衝撃を与えたし、私なりの大きな褒め言葉としてあえてこう言いたい。「出来ることならもう二度と読みたくない」。それほどに悲しくて、痛い。
まず、この話の主人公の本当の名前は最後まで分からない。なぜかといえば、この主人公は終始周りから「にんじん」と呼ばれ続けるからである。にんじんは髪色が由来のあだ名だが、友達はもちろん家族からも文中で1度も名前で呼ばれない。そんなにんじんは、なんとも不器用な子供で、優秀な兄や姉と比べられながら精神的ないじめを母親から受け続ける。そんな母の酷い仕打ちや、にんじんの愛に飢える様子などが連作短編のかたちで描かれている。
にんじんの受けた仕打ちの中で、特に私の心を強く揺さぶったものをいくつか紹介しよう。
にんじんは大きくなってもおもらしが治らなかった。だから、ベッドの下にはいつもいわゆるおまるが置いてあったのだが、ある日の夜、母はわざとおまるを隠した。母の思惑通りににんじんがおもらしをすると「なんて臭いなの」「この年になって」「動物以下よ」と騒ぎ立てて兄と姉の前で中傷をくり返した。そして、にんじんのシーツに溜まっていたおしっこをとっておいて、スープに入れてにんじんに食べさせたあと、「自分のしたものをあなたは口に入れたのよ」と罵倒するのだ。それに対する「うん、たぶん、そうじゃないかなって思ったよ」という、とてもおもらしをする年の子供とは思えない大人びたにんじんの返事がすべてを物語っているように思えた。
こんなシーンもある。にんじんは兄と姉と一緒に寮に住んでいて、たまの休暇に帰省することになっていた。久々の両親との再会に心踊らせていたが、母と父どちらに先にキスをしたらいいだろうかと考えているうちに兄と姉はキスをもらい、その時にはにんじん分のキスは残っていなかった。にんじんは泣きたい気分になりながらこう言った。「きっと嬉しくて泣けちゃうんだ。だって、ぼくは思っていることが反対の形で表れてしまうことがよくあるから…」
さて、ここまで話して、にんじんが置かれた環境がどれほど不遇だったかはある程度わかってもらえたと思う。愛を十分に注がれないまま育ったにんじんは、さらに不器用で目立ちたがり屋になっていく。ある先生に特段気に入られている生徒に嫉妬をし、2人が特別な関係にあると校長先生に言いつけ、その先生を辞めさせたり、友達に「甘えるってどういうこと?」と尋ねて、もし甘えられるなら…と想像したりした。愛に飢え空回りしているにんじんの不器用さが、物語の節々から現れている。
そんな中、にんじんが初めて母に反抗した場面がある。理由もなく、バターを買ってきて欲しいという母のお願いを断ったのだ。にんじんは、パパのお願いというなら買ってきてもいいが、ママのお願いは聞かないと言った。そして父とふたりきりで今まで母に受けた仕打ちを余すことなく話し、自分が母親を嫌っていること、母と離れて暮らしたいことを初めて打ち明けた。母への嫌悪を認めることを長い間ためらっていたにんじんは、必死に母の機嫌をとって自分は母に愛されていると言い聞かせてきた。しかし、父との会話の中でいままでママだった人が母親になり、あの女になった。母のネグレクトを受け入れ、淡々と生活をしてきたにんじんが、嫌だという感情を表に出せるようになったのは大きな違いだと思う。しかし勇気を出したにんじんを最後まで肯定しなかった父は、あれでもお前の母さんなのだからとなだめる。
それに対してのにんじんの「別にママのことを言ったんじゃないよ」の一言から、「あの女」が急に「ママ」という建前の存在に戻り、にんじんの心の叫びはここで閉ざされたように思えた。この話に「最後の言葉」というタイトルが付けられていることからも、これが父への最後のSOSだったのではないかと思わせる。
この物語は、姉の結婚が決まった時に、「もう誰も僕を愛してくれない」と嘆いたにんじんの前に母親が現れて、慌てて「…ママ以外からはね!」と付け加えて幕を閉じる。変わりかけたにんじんは、また母親の影に怯えつづけるのだろうか、とすっきりしないままだ。
正直言って、この話は私の置かれている環境とはあまりに違いすぎて、感情移入はもってのほか、「かわいそう」と思うことしか出来ない。ただ、この本が「理解できない」こと、それがこんなにも幸せに感じるのである。
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Posted by ブクログ
さて、下巻である。
前回、上海で乗り遅れたかにみえたフォッグ氏らだが、間一髪乗せてもらうことができた。そして船ではパスパルトゥーとも再会できる。
舞台はアメリカ大陸へ。アメリカは主に鉄道の旅であるが、インディアンとの闘争が繰り広げられていた時代、鉄道旅といえども一筋縄ではいかない。
ニューヨークを目指して急ぐが、大西洋を渡る船にまたしても乗り遅れてしまい…。
フォッグ氏らは、約束の時間に戻ってくることができるのか。
上巻の感想と重なるけれど、この時代の国々の様子がわかるのが一番面白いところ。
そして降りかかる問題に、(主に金の力をもって)フォッグ氏が慌てずに適切な次善の策をとっていくところも。
アウダ夫人との間で信頼関係から恋心も生じてきて、ロマンスもある。
飛行機移動が当たり前になってしまった今ではもうできない旅行。
今はあらかじめいくつかの条件(飛行機は乗らない、携帯を使わない)を決めておかないと、面白くならなさそう。
「あっ!」と驚く逆転劇もあり、最後までハラハラ楽しめます。旅行記が好きな人はぜひ。 -
Posted by ブクログ
フランスのシャロン村で墓地の管理人として働く中年女性ヴィオレットと不実な夫フィリップを中心に、様々な愛と喪失の物語が過去と現在を行き来しながら94の短い章で綴られる。両親を知らず複数の里親の元で育ったヴィオレットはジョン・アーヴィングの『サイダーハウス・ルール』を、主人公の孤児ホーマーの境遇や生き方に共感し愛読する。亡き母イレーヌを他人の夫ガブリエルの墓に入れる為に訪れた警視のジュリアンとの出会い。イレーヌとガブリエルの秘められた大人の恋は繊細かつ思いやりをもって描かれる。多くを求めず、有り合わせの自由な日々を幸せと感じながらも、否応なく様々な死と向き合わされる墓地での日常の中で、ヴィオレット自身にも悲劇が訪れる。
折々に読み返してみたくなる本です。
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Posted by ブクログ
久しぶりに素敵なお話を読んだ。
50歳になるヴィオレット。彼女はブルゴーニュの小さな町にある墓地の管理人をしている。
夫は随分前から行方不明。その夫との間に娘がいたが小さい頃にある出来事で亡くしてしまう。
彼女の閉ざされた心は墓地の前の管理人と出会ってから溶け出していく。
管理人として働きだしていろんな人々と出会い、
その中には彼女の人生を変えてくれる人も。
彼女の夫の思いも最後の方でわかったり、とにかく複雑ににいろんな話が混ざり合って、1本の映画を見たよう。実際に映画になるんじゃないかな。
作者は、映画「男と女」の監督クロード・ルルーシュのパートナーという事で、そういった世界観かも。