あらすじ
魅惑的な美貌と肉体を持ったアリシアを運命の恋人としたエウォルド卿は、やがて彼女のあまりの軽薄さに幻滅してしまう。絶望の淵にあった彼に手をさしのべたのは、エジソンだった。偉大な発明家はついに、アリシアを完璧に模した肉体に高貴な魂をそなえた機械人間〈ハダリー〉を生み出すが……。アンドロイドSFの元祖、待望の新訳!
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Posted by ブクログ
思うことが、いっぱい有り過ぎて、感想がまとまらない。
いろいろな意味で規格外な作品。
800頁近い大作で、読むには時間が掛かったが、飽きずに食い入るように読ませてもらった。
これだけ、面白く読めたのは、古典新訳文庫として、僕のような無知無学な人にも分かりやす翻訳して頂いたおかげだ。
このシリーズの古典文学は、今後も読んで行こうと思う。
Posted by ブクログ
人間は機械で再現できるのか、アンドロイドの作り方の講釈を延々と続けるエジソン。冗長だがそれがいい。そして魂とはなにかが延々とした講釈の後に現れる得体の知れない恐怖感。素晴らしい。
Posted by ブクログ
スチームパンクって現代人の懐古趣味とSFを合体させた発明だと思ってたが違った! 作者はエジソンと同時代人のリアルスチーム世代なのです。これは衝撃。今のSFってちっとも進化してないってことなのか?
本作は1886年に刊行されたアンドロイドものの古典作品。近年でもさまざまな作品に引用されているのに、知らなくて恥ずかしい。先日見た『屍者の帝国』にもエジソンとハダリーが出ていたなー。
19世紀の小説とは思えないスピード感があり、面白かった。(分かりやすさはどうやら新訳のおかげらしい)
まだの人は、ぜひ。
Posted by ブクログ
1886年(和暦にすると明治19年)に書かれたアンドロイドSFモノの祖。初めてこの作品を読みましたが、訳者さんの訳文も読みやすくてとても面白かった!
今読んでもいろいろ刺さるエジソンの言葉の数々や、ハダリーを構成する機構の科学的な説明など(顔の表情の作り方とか、今のCGでやってるモーションキャプチャーそのものじゃないかとか)130年前の作品なのに全く古くささのない世界観。そして贅を尽くした『地底の楽園』の美しさ。
『神の領域』への挑戦というテーマで繰り広げられたドラマ、ラストの展開まで含めて余韻まで楽しめる作品でした。
読んでて「おや?」と思ったところは巻末の解説や訳者さんのあとがきで触れていたので納得できたし。訳者あとがきで訳文にかけるスタンスとかこの作品の翻訳にあたってのあれこれまで知れたのがさらによかった。先達の歴史的仮名遣い版とかも読んでみたくなります。
Posted by ブクログ
原著1886年作。
ヴィリエ・ド・リラダンは昔読んだ『残酷物語』の訳が古めかしすぎてどうも今ひとつだった。そもそも和訳された作品の少ない作家と思えるが、本作(「新訳」)を読んでみていろいろ驚いた。
当時の状況ならではだが、肖像権を無視しトマス・エジソンを主人公に据え、すさまじい「想像」の飛翔を駆使しまくる作品で、ある意味ぶっとんだ、「とんでもない」文学作品だと思う。
要するに電気仕掛けのアンドロイド/アンドレイドを製造し、これを(もちろん男性視点からの)理想的な恋人/女性として誕生させようという、なかなかに不埒な企みのいきさつが描かれている。
ここでの主人公エジソンはやたら饒舌で、さまざまな「思想」を組めども尽きぬ泉のように呈示してやまない。そこには無論こんにちのジェンダー観からはおおいに非難するべき点も多いし、アンドロイドの機械仕掛けに関してはこんにちのテクノロジーを幾らかでも知っている立場から見ればおそろしく幼稚で、トンデモな感じだとしても、なんとなくこの激しいパロールの奔流には目眩させられるものがある。リラダンの(当時としては、の)博識さも凄い。
この圧倒的にぶっとんだ物語は、やがて、「科学的」説明の枠組みをはるかに超えて、ある種のオカルティズムに突入していくのだが、そのへんが圧巻。リラダン、全体的にどんな作家だったのだろう。
なるほど、この作品なら「略式」の世界文学史年表に入れてもおかしくない。是非とも読んでおくべき小説だと思う。
いまのSF作家なら、理論的背景ももっと緻密に・高度に描写できるのだろうが、そうした小説文化の遙かなる祖先として、本作は君臨していると言えるかもしれない。