頭木弘樹のレビュー一覧
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頭木さんのこのタイトルの本が出ると知って発売と同時に購入した。タイトルどおり「痛み(痒みについても少し)」について余すところなく語られていた。過去に筆舌に尽くしがたい原因不明の痛みを24時間×一週間経験したことがある。その後も色々な痛みに見舞われているがいつもあの時よりましと自分を慰めることができるほどだった。もちろん体の記憶は失われているが今でも時々思い返してみることがある。(不幸なことに猛烈な痒みの経験もある。)果てしなく続く痛みに耐えながらこれをどう表現したらわかってもらえるかと考えたことも思い出した。痛い人の孤独を理解し寄り添ってくれるこの本があれば多少なりとも救われる人がいると思った。今痛くない人にも読んでほしい。死ぬときにはどうか痛みだけは与えないでほしいと切に願っている。
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絶望を表現するにしては淡々とした文体。でも読みやすくて良い。最初の3篇連続で末尾が「いや、〜〜さえ〜ない」で笑った。あまりに無力。
好きなのは〔道に迷う〕、〔夏だった〕。私は常に「ずっと倒れたままでいたい……」「このまま寝かせておいてほしい。ずっとこのまま……」と思っているので……
〔道に迷う〕は「うっそうとした暗い森だが、道の上にはわずかな空も見える。それでもわたしは、果てしなく、絶望的に、道に迷う」という言葉も突き刺さった。仕事に迷走し転職を繰り返していた時、どの職場でも全部自分のせいにしてなんとかしようとして空回って更に自己嫌悪して。その時は自覚もなかったけど今思うと〔なにが?〕のように気づかないまま自分で自分を苦しめてたんだなあ。
〔灌木〕にあるように、荒地に植えられても「わたしにその価値がない」のではなく「わたしほど豊かに茂る灌木は他にないのだから」と思えてたら良かったのにと、今更ながら思う。
他にも面白い篇がたくさんあるけどこれ以上感想書くと個人史というか黒歴史を開陳することになってしまうのでやめますが!でも誰が読んでも心に刺さる篇があるはず。面白い。さすがカフカ。 -
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ネタバレ名言集を読むよりも先に普通に作品を読むべきか、とも思いつつ読み始めたが、第1回のカフカの回で早速引き込まれてしまった。辛かった時の感情を思い出してあの時にこの本またはカフカに出会いたかったなと思ったり、今の気持ちを表現してくれる名言に出会えて救われた気持ちになったり、もっと作品に触れてみたい作家・作曲家と出会えたり、読んでよかった。
辛い時にはポジティブな言葉よりも絶望名言の方が沁みたり救いになることがある。若い時に13年間の闘病生活をしていた頭木さんが共感したり救われた名言とその背景、人物の紹介をしていくラジオを書籍化したもの。
カフカ、ドストエフスキー、ゲーテ、太宰治、芥川龍之介、シェークスピア、中島敦、ベートーヴェン、向田邦子、川端康成、ゴッホ、どれもよかった。
彼らや頭木さんほどではないが、自分も思い描いていた人生の道から外れたときや寝たきりで過ごすしかない苦しい時期があって、だからこそ世界がそれまでとは違うように見えたり、良くも悪くも諦めを覚えたりして。10年前だったら味わいきれなかった名言たちだなと感じた。
カフカの絶望名言より
「生きることは、たえずわき道にそれていくことだ。本当はどこに向かうはずだったのか、振り返ってみることさえ許されない」 -
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NHKラジオ番組『絶望名言』で放送されていた番組の内容を一冊の本に纏めた本。
息が詰まったり、イライラしたり、ストレスフルな毎日を過ごす内に気持ちもネガティブに...。そんな中にしっとりと寄り添う、“絶望名言”。カフカ、芥川龍之介、ゴッホ、ゲーテ、ベートーヴェンなどなど各分野の偉人達の書籍や脚本内の台詞などを紹介しながら、出演者のお二人が自分の病気の経験を踏まえながら進めていく斬新なスタイルに興味が引かれました。
気持ちが沈んでいるときにはポジティブな名言よりネガティブな名言の方が心に残り
人に寄り添うことが出来ると思う。前向きな言葉ばかりでは正直、味気ないとすら思える。だからこそ、絶望名言は貴重なものだと思うし読んでいきたいと思える本となりました。 -
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カフカに初めて触れた。「変身」が代表作とか。
没後100年を記念して?出された本。
カフカが俳句を書いたわけではない。
彼が残したことばを、そのまま載せたり作品から切り取ったり、
五七五に収めるわけでなく、自由律のように80句に見立て、
編訳者が解説を加えている。
カフカが初めての私は、彼の解説でカフカを知る。
「鳥籠が鳥を探しにいった」
「ときおり体が八つ裂きになりそうな不幸を感じる」
「家族のなかで、他人よりももっと他人のように暮らしている」
「夕方、森へ。月が満ちている」
なんとも悲観的な、、、
どうもカフカは世の中になじまなかったらしい。
今でいえば発達障害だったのかも。
作品もほどんどが未完。
それでも後世にこれだけ名を遺す。影響を与える。
太宰治にも通じると。
山頭火の俳句にもつながると。
一度小説を読んでみようかな。
カフカ俳句 80句/ 巻末対談 九堂夜想(俳人)×頭木弘樹(編訳者) -
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自分の引きこもり時代を、生々しく想起させるものだった。
かなり前のことで今は働きながら生活しているためすっかり忘れていたが、
そうだった。
引きこもりって、安寧の世界なのよ。
外は自分にとって不都合な現実がたくさんあって、
引きこもっているうちは見ないでいられる。
ネットとかもあるからそんなに孤独ではないし、
何より都合のいいことだけ考えていられる。
今では成り立ってないし、おかしな状態だったなーと思うけど、この本ん読んでその感じ本当に思い出した。
ハンガンの作品が気になって何となく手に取った作品だったが、
私にとっては思いがけず人生の忘れものに出会った感覚で、今に感謝することができるギフトとなった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『変身』を読んだときに感じた、カフカ作品独特の読み心地をたっぷり堪能できる本だった。
どうしようもない不安、自己肯定感の欠如、悪夢のような断片。
そういうものがカフカの文章には漂っている。
あまりにも自分を卑下しすぎていて、「そんなに言わなくても……!」と逆におかしさを感じてしまうことすらあった。
しかし、起きている出来事も人物も自分とは違うのに、「これは私のことだ」と思ってしまうことも多かった。
カフカのこういう部分に惹かれるのだと思う。
編訳者解説で、カフカの作品は大半が未完だということを知って驚いた。
しかしその未完の状態こそが、カフカ作品の特徴で魅力だという。
この断片集を読んで、もっとカフカの作品を読んでみたくなった。
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いつもわたしをすりつぶしている石臼。その上下の石のあいだからわたしを引っぱり出してくれるものであれば、それがたとえ何であろうと、引っぱり出されるときの苦痛がひどすぎないかぎり、ありがたいことだ。
(P37)
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以前のわたしは、自分の問いかけになぜ答えが返ってこないのか、不思議だった。
今のわたしは、なぜ問いかけることができると信じていたのか、不思議だ。
いや、信じてなんかいなかった。ただ、問いかけてみただけだ。
(P64)
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もっと下まで行けとおまえは言うが、もうわたしはどん底にいる。
息が詰まりそうだし、すでに深すぎるが、それでも、ここにいなければならないのなら、そうしよう。
なんてところだ! たぶんこれより下はないだろう。
それでもわたしはここにとどまろう。
だから、もうこれ以上、下に行かせようとしないでくれ。
(P111) -
Posted by ブクログ
ネタバレ翻訳者解説がとても良かったです。
カフカの世界への間口を広げてくれているよう。
『わからなくても気にする必要はない』
実際、分かったような分からないようなが、グラグラと何度も繰り返すのが、カフカ作品です。
失敗することさえできない、隣人までの距離、法の前に、平穏を嘆く、虚栄心、使者、下へ、せめて、すべて無駄だった、心を剣で突き刺されたとき、志願囚人、海辺の貝殻のように
などが好きです。
しかし、読み返すたび変わるような気もするし、他の人は全く違ったりするでしょう。
誰かに刺さらなくても、また他の誰かにはきっと刺さる文節があるはず。 -
Posted by ブクログ
「ケアの倫理」「オープンダイアローグ」「当事者研究」
最近のわたしのキーワードが満載された本ですごく面白かったけれども、自分のなかではまだ体系化できてないなと思ったら「体系を構築すると権力志向が生まれてくる」という中井久夫の思想が紹介されていて(p.125)、じゃあもうしばらくこのままあれこれ読んでいくか……となった。
興味を広げてくれるハブのような本で、これのおかげで2年前に録画したままになっていた「100分de名著」の中井久夫特集を一気見したし(「S親和者」がわからなかったので見たけど、中井自身のものと思われるエピソードがめちゃくちゃおもしろかった。本の背表紙を見ていると読んだ内容がすべてしみ出してきて脳内に洪水が起こるので、ぜんぶ小口が見えるようにひっくりかえしてならべていたとか)、『治療文化論』も買った。横道氏の『みんな水の中』もだいぶ前に買ってあって、これも読みたいなと思った。
なんでここまで関心があるのか自分でもわかったようなわからないようななのだけど、30年ぐらい前に河合隼雄を読みまくっていたころは、たぶん自己セラピーで、今は、家族の悩み事に少しでも突破口が開ければなという気持ちなのだと思う。