頭木弘樹のレビュー一覧
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NHKラジオ番組『絶望名言』で放送されていた番組の内容を一冊の本に纏めた本。
息が詰まったり、イライラしたり、ストレスフルな毎日を過ごす内に気持ちもネガティブに...。そんな中にしっとりと寄り添う、“絶望名言”。カフカ、芥川龍之介、ゴッホ、ゲーテ、ベートーヴェンなどなど各分野の偉人達の書籍や脚本内の台詞などを紹介しながら、出演者のお二人が自分の病気の経験を踏まえながら進めていく斬新なスタイルに興味が引かれました。
気持ちが沈んでいるときにはポジティブな名言よりネガティブな名言の方が心に残り
人に寄り添うことが出来ると思う。前向きな言葉ばかりでは正直、味気ないとすら思える。だからこそ、絶望名言は貴重なものだと思うし読んでいきたいと思える本となりました。 -
Posted by ブクログ
カフカに初めて触れた。「変身」が代表作とか。
没後100年を記念して?出された本。
カフカが俳句を書いたわけではない。
彼が残したことばを、そのまま載せたり作品から切り取ったり、
五七五に収めるわけでなく、自由律のように80句に見立て、
編訳者が解説を加えている。
カフカが初めての私は、彼の解説でカフカを知る。
「鳥籠が鳥を探しにいった」
「ときおり体が八つ裂きになりそうな不幸を感じる」
「家族のなかで、他人よりももっと他人のように暮らしている」
「夕方、森へ。月が満ちている」
なんとも悲観的な、、、
どうもカフカは世の中になじまなかったらしい。
今でいえば発達障害だったのかも。
作品もほどんどが未完。
それでも後世にこれだけ名を遺す。影響を与える。
太宰治にも通じると。
山頭火の俳句にもつながると。
一度小説を読んでみようかな。
カフカ俳句 80句/ 巻末対談 九堂夜想(俳人)×頭木弘樹(編訳者) -
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自分の引きこもり時代を、生々しく想起させるものだった。
かなり前のことで今は働きながら生活しているためすっかり忘れていたが、
そうだった。
引きこもりって、安寧の世界なのよ。
外は自分にとって不都合な現実がたくさんあって、
引きこもっているうちは見ないでいられる。
ネットとかもあるからそんなに孤独ではないし、
何より都合のいいことだけ考えていられる。
今では成り立ってないし、おかしな状態だったなーと思うけど、この本ん読んでその感じ本当に思い出した。
ハンガンの作品が気になって何となく手に取った作品だったが、
私にとっては思いがけず人生の忘れものに出会った感覚で、今に感謝することができるギフトとなった。 -
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ネタバレ『変身』を読んだときに感じた、カフカ作品独特の読み心地をたっぷり堪能できる本だった。
どうしようもない不安、自己肯定感の欠如、悪夢のような断片。
そういうものがカフカの文章には漂っている。
あまりにも自分を卑下しすぎていて、「そんなに言わなくても……!」と逆におかしさを感じてしまうことすらあった。
しかし、起きている出来事も人物も自分とは違うのに、「これは私のことだ」と思ってしまうことも多かった。
カフカのこういう部分に惹かれるのだと思う。
編訳者解説で、カフカの作品は大半が未完だということを知って驚いた。
しかしその未完の状態こそが、カフカ作品の特徴で魅力だという。
この断片集を読んで、もっとカフカの作品を読んでみたくなった。
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いつもわたしをすりつぶしている石臼。その上下の石のあいだからわたしを引っぱり出してくれるものであれば、それがたとえ何であろうと、引っぱり出されるときの苦痛がひどすぎないかぎり、ありがたいことだ。
(P37)
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以前のわたしは、自分の問いかけになぜ答えが返ってこないのか、不思議だった。
今のわたしは、なぜ問いかけることができると信じていたのか、不思議だ。
いや、信じてなんかいなかった。ただ、問いかけてみただけだ。
(P64)
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もっと下まで行けとおまえは言うが、もうわたしはどん底にいる。
息が詰まりそうだし、すでに深すぎるが、それでも、ここにいなければならないのなら、そうしよう。
なんてところだ! たぶんこれより下はないだろう。
それでもわたしはここにとどまろう。
だから、もうこれ以上、下に行かせようとしないでくれ。
(P111) -
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ネタバレ翻訳者解説がとても良かったです。
カフカの世界への間口を広げてくれているよう。
『わからなくても気にする必要はない』
実際、分かったような分からないようなが、グラグラと何度も繰り返すのが、カフカ作品です。
失敗することさえできない、隣人までの距離、法の前に、平穏を嘆く、虚栄心、使者、下へ、せめて、すべて無駄だった、心を剣で突き刺されたとき、志願囚人、海辺の貝殻のように
などが好きです。
しかし、読み返すたび変わるような気もするし、他の人は全く違ったりするでしょう。
誰かに刺さらなくても、また他の誰かにはきっと刺さる文節があるはず。 -
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「ケアの倫理」「オープンダイアローグ」「当事者研究」
最近のわたしのキーワードが満載された本ですごく面白かったけれども、自分のなかではまだ体系化できてないなと思ったら「体系を構築すると権力志向が生まれてくる」という中井久夫の思想が紹介されていて(p.125)、じゃあもうしばらくこのままあれこれ読んでいくか……となった。
興味を広げてくれるハブのような本で、これのおかげで2年前に録画したままになっていた「100分de名著」の中井久夫特集を一気見したし(「S親和者」がわからなかったので見たけど、中井自身のものと思われるエピソードがめちゃくちゃおもしろかった。本の背表紙を見ていると読んだ内容がすべてしみ出してきて脳内に洪水が起こるので、ぜんぶ小口が見えるようにひっくりかえしてならべていたとか)、『治療文化論』も買った。横道氏の『みんな水の中』もだいぶ前に買ってあって、これも読みたいなと思った。
なんでここまで関心があるのか自分でもわかったようなわからないようななのだけど、30年ぐらい前に河合隼雄を読みまくっていたころは、たぶん自己セラピーで、今は、家族の悩み事に少しでも突破口が開ければなという気持ちなのだと思う。 -
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とてもいい本。
NHKだから大真面目に古典文学についてラジオで語っているのかと思いきや、
あまりに絶望すぎて笑っちゃってる部分もあり。
最初は特番だったが自然に人気が出てレギュラー化したというのもいい。
ラジオなので「絶望音楽」が入るのもいい。
レコード会社の宣伝の為の曲でなく、パーソナリティが選曲してその歌詞がいかに絶望的かを解説している。
著者がちゃんとした文学者ゆえに各作家の生き様やその言葉の背景なんかの説明を丁寧にしてくれて染みる。
「無能、あらゆる点で、しかも完璧に。」
とかそんな言葉の後に、「カフカは平穏な人生を送っていて、サラリーマンとして順調に出世もしていますし、恋人もいて、親友もいたんですね。」とかギャップもいい。
一方でドストエフスキーは刑務所で死刑判決を経験してたりとか。
「立ち直るんではなく、絶望したまま生きていく」
「倒れたままで生きていく、あるいは半分倒れたままで生きていく。」
弱者に寄り添ってるなあと思う。
登山する時の命綱の例えが説得力あった。
「使っていない時は、ただぶらんと下がっていて、いらないもの」「でも、それがないと、いざという時、大変」
「そういう命綱的なものが、ひとつには読書であり、こういう話をしておくこと」
精神や内臓の病気に対し、メンタルで直せという他者がいかに無理を言っているかの説明も分かりやすい。
「たとえば、強い衝撃を受けたら、どうしたって骨は折れる」「いくらポジティブだって、折れる時は折れる」
「また、いくら前向きなポジティブな気持ちでいても、折れた骨がすぐにつながるというふうにはいかない」
「ところが、内臓の病気とかだと、どうしても、なんか気の持ちようで治るみたいに言われやすいんです。気の持ちようで、骨はすぐつながるよって言う人はいないんですけど、内臓とかは(中略)なんか精神力で治せるような気にもなってしまうんですね。」
人間の多面性の説明も例えが秀逸。
よく明るい人は暗くなくて、暗い人は明るくないと、どっちか一方のように思われるけども、両方を内在している人も多い。
絵画に使用される金色のすごいきれいな輝きを出している部分は、白と黄色の他に黒がベースになっているそうだ。 -
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頭木さんの文章は好きだし、横道さんも注目の書き手なので読んでみた。
大変よかった。
確かにインタビュアーとインタビュイーが固定だと、インタビュアーは(自分は安全地帯にいるのに相手のことに突っ込むのはどうかと思い)遠慮したり忖度したりしてしまう可能性がある。交代で役割を変えることによって、自分も突っ込まれる覚悟を持ってさえいれば、相手にも突っ込めるというわけ。
特によかったのは、発達「障害」なのか?という日頃から抱いていた疑問に答えが出たこと。「発達障害」は行政用語で、障害ではなく「ニューロダイバーシティ」、つまり脳の多様性だという考えが90年代から出てきているらしい。かつては同性愛やトランスジェンダーも精神疾患として治療の対象となっていたが、社会の方が変わった。発達障害という概念も修正される可能性は大いにあるということ。
また、自閉スペクトラム症には男性の方が多いというのも不思議の一つだったが、それは基準が男性中心に作られているからだというのも、なるほどと思った。
頭木さんの、発達障害の人には固有の感じ方考え方がありそれが文化と言えるが、(頭木さんの持病である)潰瘍性大腸炎の文化はないと思う、という言葉に対し、横道さんがある、と答えているのも興味深い。
発達障害の人がドラマに出てくる「天才的能力を持つ発達障害者の女性と理解ある彼くん」にうんざりするとか、病人にも病人を差別する感情があるとか、納得する話も多かった。
頭木さんのタイムスリップものや難病ものに対する怒りにも共感。
新しい知見が得られ、当事者にしか言えないことを聞け、本物の「多様性」や、人間存在そのものについても深い気づきを得ることができた。
お二人とも肝を据えて語った、素晴らしい本。