頭木弘樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
とてもいい本。
NHKだから大真面目に古典文学についてラジオで語っているのかと思いきや、
あまりに絶望すぎて笑っちゃってる部分もあり。
最初は特番だったが自然に人気が出てレギュラー化したというのもいい。
ラジオなので「絶望音楽」が入るのもいい。
レコード会社の宣伝の為の曲でなく、パーソナリティが選曲してその歌詞がいかに絶望的かを解説している。
著者がちゃんとした文学者ゆえに各作家の生き様やその言葉の背景なんかの説明を丁寧にしてくれて染みる。
「無能、あらゆる点で、しかも完璧に。」
とかそんな言葉の後に、「カフカは平穏な人生を送っていて、サラリーマンとして順調に出世もしていますし、恋人もいて、親友もいたんですね。」とかギャップもいい。
一方でドストエフスキーは刑務所で死刑判決を経験してたりとか。
「立ち直るんではなく、絶望したまま生きていく」
「倒れたままで生きていく、あるいは半分倒れたままで生きていく。」
弱者に寄り添ってるなあと思う。
登山する時の命綱の例えが説得力あった。
「使っていない時は、ただぶらんと下がっていて、いらないもの」「でも、それがないと、いざという時、大変」
「そういう命綱的なものが、ひとつには読書であり、こういう話をしておくこと」
精神や内臓の病気に対し、メンタルで直せという他者がいかに無理を言っているかの説明も分かりやすい。
「たとえば、強い衝撃を受けたら、どうしたって骨は折れる」「いくらポジティブだって、折れる時は折れる」
「また、いくら前向きなポジティブな気持ちでいても、折れた骨がすぐにつながるというふうにはいかない」
「ところが、内臓の病気とかだと、どうしても、なんか気の持ちようで治るみたいに言われやすいんです。気の持ちようで、骨はすぐつながるよって言う人はいないんですけど、内臓とかは(中略)なんか精神力で治せるような気にもなってしまうんですね。」
人間の多面性の説明も例えが秀逸。
よく明るい人は暗くなくて、暗い人は明るくないと、どっちか一方のように思われるけども、両方を内在している人も多い。
絵画に使用される金色のすごいきれいな輝きを出している部分は、白と黄色の他に黒がベースになっているそうだ。 -
Posted by ブクログ
頭木さんの文章は好きだし、横道さんも注目の書き手なので読んでみた。
大変よかった。
確かにインタビュアーとインタビュイーが固定だと、インタビュアーは(自分は安全地帯にいるのに相手のことに突っ込むのはどうかと思い)遠慮したり忖度したりしてしまう可能性がある。交代で役割を変えることによって、自分も突っ込まれる覚悟を持ってさえいれば、相手にも突っ込めるというわけ。
特によかったのは、発達「障害」なのか?という日頃から抱いていた疑問に答えが出たこと。「発達障害」は行政用語で、障害ではなく「ニューロダイバーシティ」、つまり脳の多様性だという考えが90年代から出てきているらしい。かつては同性愛やトランスジェンダーも精神疾患として治療の対象となっていたが、社会の方が変わった。発達障害という概念も修正される可能性は大いにあるということ。
また、自閉スペクトラム症には男性の方が多いというのも不思議の一つだったが、それは基準が男性中心に作られているからだというのも、なるほどと思った。
頭木さんの、発達障害の人には固有の感じ方考え方がありそれが文化と言えるが、(頭木さんの持病である)潰瘍性大腸炎の文化はないと思う、という言葉に対し、横道さんがある、と答えているのも興味深い。
発達障害の人がドラマに出てくる「天才的能力を持つ発達障害者の女性と理解ある彼くん」にうんざりするとか、病人にも病人を差別する感情があるとか、納得する話も多かった。
頭木さんのタイムスリップものや難病ものに対する怒りにも共感。
新しい知見が得られ、当事者にしか言えないことを聞け、本物の「多様性」や、人間存在そのものについても深い気づきを得ることができた。
お二人とも肝を据えて語った、素晴らしい本。 -
Posted by ブクログ
「落語は面白くないのがあたりまえ」という前提で書かれた落語案内で一気に読める面白さでした。落語が好きになりきれない人たちの気持ちを大切にして、その理由を解き明かしてゆくというユニークな落語案内です。
著者の頭木弘樹さんは「文学紹介者」。著書に『絶望読書』(河出文庫)、『カフカはなぜ自殺しなかったのか?』(春秋社)等の文学論がある一方で、20歳のときに難病になり、12年間の闘病生活の中で米朝や志ん朝の落語を熱心に聴
き始め、「落語に何度も助けられた」というほどの落語好き。
本書では「落語はオチが命なのに面白くないオチがあるのはなぜ?」「まだ話の途中なのに終わるのはなぜ?」「『毎度ばかばかしいお笑いを一席』というのはなぜ?」などQ&Aの形式で落語論が展開されます。その際、引用されるのは落語だけでなく、『百年の孤独』(マルケス)、『三四郎』(漱石)、『荒涼館』(ディケンズ)、『エリザベス・コステロ』(クッツェー)等の文学作品。落語の本ですが、文学と落語の距離を縮めようという工夫がなされています。また、口承文学としての落語の特徴の説明については『ヨーロッパの昔話 その形と本質』(リュティ)が参照されていて、学術的な要素もあります。
本の題名は『落語を聴いてみたけど面白くなかった人へ』ですが、逆に「文学が苦手な落語ファンに文学への興味を持たせる」役割もあると思いました。
さらに本書は一般的な落語ファンにとってもコンパクトな落語案内になっています。
落語のCD紹介も丁寧で「質屋蔵」の説明は下記の通りです。
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「質屋蔵」
「桂米朝 昭和の名演百噺 其の37 質屋蔵/鉄砲専助」ユニバーサルミュージック
旦那の風格が、さすがに桂米朝です。こわがりの番頭、焼果を買ってもらう丁稚、早とちりの熊五郎、それぞれ生き生きとしています。
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本書は320ページ程度の文庫ながら非常に濃い内容で、お買い得の文庫と思います。落語初心者にはもちろん中堅の落語ファンや文学好きあるいは文学苦手な方にもおすすめです。 -
Posted by ブクログ
絶望名言2冊目。個人的にはやはり一冊めの方がインパクトのある名言が多かったし、頭木さんや川野さんの絶望体験が語られて共感される様子が面白かった。でも二冊目に取り上げられる作家たちの人生の絶望度合いは、一冊めのよりも壮絶。印象に残ったのは喘息治療を兼ねてパラオに行った中島敦が、向こうでは熱帯の病にやられ日本に戻れば寒さで病のやられ早死してしまうという人生。いやあ、転地を考えるほどの喘息の辛さは想像を絶する。又はほとんどの名曲を失聴してから作ったというベートーヴェンの人生。希望を持たず諦めたことで生きていけたのだろうが、そんな自分の人生を諦めという隠れ家、という言葉で絶望するしかない姿に胸打たれる。