あらすじ
ひきこもるとは、いったいどういうことなのか? 究極のステイホーム・ストーリーズが誕生!
ひきこもるとは、いったいどういうことなのか? 部屋の中で、何が起きるのか? ひきこもっている間に、人はどう変わってしまうのか?
「ひきこもり」をテーマにした斬新なアンソロジーが誕生しました。編者は、『絶望名人カフカの人生論』『絶望名言』『食べることと出すこと』などで知られる頭木弘樹。病のため、十三年間のひきこもり生活を送った編者ならではの視点で選ばれた、必読の名作群。今だからこそ読みたい一冊です!
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Posted by ブクログ
カフカに親近感。絶望名人読んでみようかな。
<収録作品>
死なない蛸/萩原朔太郎
ひきこもり名言集/フランツ・カフカ
桃太郎/立石憲利(編著)
凍った時間/星新一
赤い死の仮面/エドガー・アラン・ポー
病床生活からの一発見/萩原朔太郎
フランケンシュタインの方程式/梶尾真治
屋根裏の法学士/宇野浩二
私の女の実/ハン・ガン
静かな水のほとりで/ロバート・シェクリィ
スロー・ダウン/萩尾望都
ひきこもらなかったせいで、ひどいめにあう話/頭木弘樹
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編者の頭木さんのアンソロジーは小説だけではなく詩や漫画が入っていてジャンルレスなところが好き。
今回の「ひきこもり」アンソロジーには、なんと私の大好きな詩人萩原朔太郎の作品が二つも入っている!(詩と随筆) うれしい。
「死なない蛸」は子供のころに読んで強烈な印象を残した名詩。筑摩書房の『変身ものがたり』というアンソロジーにも収録されているし、いろいろな見方ができそう。自分は幻想実を味わいつつも、閉じ込められ忘れられたものの恨みは永久に滅びない……という教訓的な読み方をしていた。
知らない作品の中で印象的だったのは
ロバート・シェイクリイ「静かな水のほとりで」
梶尾真治「フランケンシュタインの方程式」
どちらもSFだけど、味わいはかなり違う。上は静謐で下はドタバタ。
しんみりするのは上。
人間の勝手さにひどいなぁ、となるのが下。
なんだか、この感じわかる、となったのは
ハン・ガン「私の女の実」
現実的な希望を叶え得なかった女性が人外のものへ変わっていく、といっても恐怖的小説なイメージではなく、もっと静かな……という像は私の頭の中にもあって、ああ、ここに具体化された作品があった、という気持ち。
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頭木弘樹さん編の短編集。切り口がさえていて、とてもおもしろく読んだ。
ウロボロスを超えた?萩原朔太郎「死なない蛸」怖。
カフカ「ひきこもり名言集」ここまでひきこもりで、結婚を考える恋人がいたっていうのがある意味すごいよ、カフカ。
三年寝太郎のような「桃太郎」立石憲利 こんなバージョンあるんだねえ。おもしろい。
星新一「凍った時間」は初めて読んだ。それとも忘れてたのか? 世界を救ったのにせつない。
ポーの「赤い死の仮面」は、コロナの状況下で読むと、慄然となる。翻訳も抜群の冴え。
梶尾真治「フランケンシュタインの方程式」は、「冷たい方程式」の笑える悲惨版。
宇野浩二「屋根裏の法学士」はまさにひきこもりニートの話でたいへん身につまされる。
ハン・ガン「私の女の実」植物になる話って、ほかにも読んだことある気がするけど、そのなかでも異常に生々しい。
シェクリイ「静かな水のほとりで」小惑星でロボットと「ふたり」淡々と日々を送る人の話。ロボットに少しずつ言葉をおしえて、少しずつ会話が成立していき、でもやがて人は老い、ロボットも老朽化し……。しんとした美しさがしみて涙した。これがいちばん好きだったかな。
萩尾望都「スロー・ダウン」感覚遮断実験の話。すべての感覚を遮断したとき人はどうなるのかという話をとてもリアルに。
上田秋成「吉備津の釜」これも読んだことがあるような気がするけど思いだせない。こわー。髪だけってのが生々しくておそろしい。
巻末の頭木さんの解説もよいです。
Posted by ブクログ
どの作品も素敵で大満足した。
古い作品から新しい作品、漫画までこの1冊で読めてしまうのだからお得すぎる。
カフカの引きこもり願望は愛おしい。
萩原朔太郎の「死なない蛸」には胸が痛くなった。
梶尾真治のSFは面白くて他の作品も読みたくなった。
Posted by ブクログ
こないだ読んだ村井理子さんの本で知った本。面白かった。難病で13年間引きこもり生活を送ったという頭木弘樹さんが編んだアンソロジー。散文詩から昔話からSFから漫画まで、いろいろあって面白かった。特に桃太郎にいろいろなバージョンがあるというのも初めて知った。口伝の昔話なんだからそりゃそうか。それにしても鬼退治に行く前で終わるとは。梶尾真治「フランケンシュタインの方程式」、ハン・ガン「私の女の実」が特に印象的。カフカのひきこもり名言集も良かった。私も今、憧れのひきこもり、ニート生活だもんなぁ。
Posted by ブクログ
目次
・死なない蛸 萩原朔太郎
・ひきこもり名言集 フランツ・カフカ
・桃太郎 岡山県新見市 立石憲宗・編著
・凍った時間 星新一
・赤い死の仮面 エドガー・アラン・ポー
・病床生活からの一発見 萩原朔太郎
・フランケンシュタインの方程式 梶尾真治
・屋根裏の法学士 宇野浩二
・私の女の実 ハン・ガン
・静かな水のほとりで ロバート・シェクリイ
・スロー・ダウン 萩尾望都
・ひきこもらなかったせいで、ひどいめにあう話 頭木弘樹
部屋から出たくない人ではなく、出られない人のためのアンソロジー。
書かれているのは、なんらかの状況に閉じ込められて出ることができない人、または蛸。
『死なない蛸』は見開き2ページのほんの短い小説なのだけど、それを読んでいるときに、ふと子どもの頃によく歌っていた「ひとくい土人のサムサム」って歌を思い出した。
いろいろと今の時代にはアウトの曲ですが、谷川俊太郎の詩と寂しいメロディーがそうさせたのかしら。
『赤い死の仮面』は、死に至る感染症から逃れるために引きこもる話。
あら、最近の出来事みたいじゃない?
なんて思って読んでいたけれど、現実よりはるかに怖い顚末でした。
『フランケンシュタインの方程式』は、あらすじを見て、これは『冷たい方程式』の系列の話だなとすぐに分かったので、自分なりにフランケンシュタインをイメージしてストーリーを予想しました。
結論としては、私のは『フランケンシュタイン』ではなく『占星術殺人事件の方程式』でした。
あはは。
タイトルがネタバレなのに、「そうきたか」というところに落とすのは、さすがプロ。
『屋根裏の法学士』ってタイトル見て、江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』のオマージュかと思ったら、乱歩の方が宇野浩二のファンだったのね。
で、この主人公って、中二病じゃん。
大正時代にもいたのね、こういう人。
一番閉塞感が強く感じられたのが『私の女の実』。
夫は妻の身体に痣が出来ていることに気づきもしなかった。
病院に付添うこともなかった。
自由にここではないどこかへ行きたかった妻を縛り付けているという自覚もなかった。
結局どこへも行けなかった妻は、ようやく夫に優しく世話をされるようになる。
それは解放?復讐?それとも…。
家族との縁が薄かった夫が最後に感じたのは喜び?悲しみ?
いかようにも読める、懐の深い小説でした。
『スロー・ダウン』
深い孤独と現実感の喪失。
体験したことないはずなのに、すっと心になじんでいくような気がするのは、絵の力なのだろうか。
私は耐性がある方だと思うけど、実際被験したらどうなるのかなあ。
考えると、怖い。
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私は高校中退後に数年間ひきこもり状態でいたことがあり、その時は本当に最悪だった。
人間不信に加え、大学で何か学びたいわけでもなく、かといって、やりたい仕事もなく、ただ推理ものやファンタジー小説を読んでいただけの日々に、これも生きているということになるのだろうかと、思ったものだ。
そんな事があったもので、もしその時に本書を読んでいれば、果たしてどうなっていたのかということに興味を持ち、本書を読んでみたわけなのだが、まず惹き付けられたのは、カフカの「ひきこもり名言集」と、宇野浩二の「屋根裏の法学士」だった。
ただ、カフカは正直ざっくりし過ぎた表現が響かなかったが、宇野浩二は良かった(両者の共通点は、ひきこもりに正しいも間違いもないということ。まあ本人の責任は伴うが)。
読んでいて、思わず想像してしまう、そのダラダラ感と太々しさ。けれども、おそらくそれは彼自身の虚構と精一杯の見栄であり、本音は切ないものも秘めていたのだろうなと感じさせる、その心情に胸が締め付けられて、大正7年当時に書かれたというのも、とても励みになった。
また、萩原朔太郎の作品が二点収録されていたことも印象的で、「死なない蛸」は、彼自身、周りから謂れのない距離を置かれていたことに対する、存在価値の普遍性を吐露したように感じさせ、「病床生活からの一発見」は、正岡子規の無味平坦な歌への理解にも共感したが、それ以上に、侮辱された一婦人の為に腹を立て、悲しくなって泣いたエピソードに彼の優しい人柄を感じさせ、昔読んだ、鯨統一郎の「月に吠えろ!」を思い出した。
そして、星新一の「凍った時間」は、ムントの無表情な表情の奥に垣間見える、心と涙に胸を打たれ、見た目だけで判断される悲しみは、まるで障がい者に対するそれのようにも思われ、梶尾真治の「フランケンシュタインの方程式」は、一転してコントを観ているような面白さが印象深いが、所々のブラックな味付けで軽い内容にはしておらず、ポーの「赤い死の仮面」(品川亮の新訳)は、自分の事だけ考えていると、こうした報いを受けるといった教訓ものっぽく見えたのが、ポーの作品にしては意外に感じられた。
それから、ハン・ガンの「私の女の実」は、『ここではないどこかへ』ということの、夢と現実の辛さを思い起こさせる一方で、一欠片の自由も感じさせた、私にはとても沁みる内容で、このアンソロジーの為に初訳してくださった、斎藤真理子さんには感謝しないといけない。
最後に、まさかここで初読みできるとは思わなかった、萩尾望都の漫画、「スロー・ダウン」。
そこには極限状況に置かれた者しか分からないような、確かな真実の在処を教えてくれた気もしたが、それとは別に、ここでの『手』の存在には、おそらく当時の私にとっても、誰かに差し伸べて欲しかったと思わずにはいられなかった、確かな真実の訪れのようにも感じられた。
Posted by ブクログ
12編のアンソロジー。しかも、内容は、ひきこもり。
館長(編者)のいうことには、自身の引きこもり生活、コロナによる生活の変化など、そういった好む好まざるに関わらず、狭い世界に閉じこもる生活を否定も肯定もせず、その中で起きる心の変化を自分に引き寄せて読んで欲しい、とのこと。
私自身はスポットライトの当たる場に出たこともあるし、良くも悪くも目立つらしい(友人、同期曰く)。
しかし、内向的な性格で、趣味といえば、読書(漫画や雑誌含む)、美術鑑賞で、1人でいる時間が至福。
だからコロナで外に出られないことの何がそんなに苦痛なのかよくわからなかった。
なんだったら今まで、「友達多くてスポーツ大好き」みたいなのがいいみたいな風潮に違和感を覚え、なんでそいつらばっか持て囃されるんだ畜生めざまみろと、隠キャまっしぐらだった。
さて、本書では萩尾望都「スロー・ダウン」、エドガー・アラン・ポーの「赤い死の仮面」、星新一の「凍った時間」シュクリィの「静かな水のほとりで」ハン・ガン「私の女の実」が印象に残る。
最初の三つは言わずもがなの面白さ。
ポーの物語は、迫り来る死の恐怖を描いており、これぞ、といった感じ。
感染症の恐怖というのは、人類が恐れる数少ない恐怖、しかし逃れる術がない恐怖。
まさに、今にふさわしい。
ハン・ガンは、韓国の作家。
韓国文学はこれまで児童書数冊しか読んでこなかったので、新しい世界だ。
「静かな水のほとりで」は、藤子・F・不二雄の短編を思い起こさせる、物悲しい物語だ。
Posted by ブクログ
引きこもり経験者の編者が引きこもりをテーマに編んだアンソロ。12編。
普段はなかなか読まないタイプの話が読めるのが楽しいよね。
おもしろかったのは「凍った時間」と「フランケンシュタインの方程式」かな。
星新一先生の「凍った時間」は星新一らしさ全開で好き。ラストの報われない感じもいい。
「フランケンシュタインの方程式」はバカミスならぬバカSF(そんなのないかな)でものすっごく軽くて読みやすい。もうね、酸素ボンベが味噌になっていた時点で笑っちゃった。笑いごとじゃないけど。
でも、印象に残ったのは「私の女の実」この話、すっごい印象に残る。読んでいるときもイライラするし、読後感もよくないんだけど、なんかいつまでも棘が刺さっている感じ。
再読していいなぁっと思ったのは「静かな水のほとりで」かな。自分の生活スペースに名前つけて、ロボットにも名前つけて、三人(?)でのんびり過ごす毎日。うん。なんか、主人公はきっと最後まで幸せだったんじゃないかなぁと思う。
Posted by ブクログ
13年間のひきこもり経験のある著者の選ぶ「部屋から出られない人のための」アンソロジー。私はひきこもるタイプではないけど、今までにない視点で物語を読むことができて、とっても満足です。
引き篭もり止めたら、こんな楽しいことがあるよ、というような物語は12のうちひとつもありません。引き篭もるとこんな新しい発見があるよ、という話がほとんどです。ひきこもり部外者には、ひきこもりたちの声にならない声の代弁を聴いた気になります。朔太郎やカフカや星新一やポーや萩尾望都が、代弁をやってくれている。
私としては、岡山在住の日本民話の会会長立石憲利さんが採取した「鬼退治に行かない桃太郎」がお気に入り。完全岡山弁で、みんな意味わからんところもあるじゃろうけど、とっても身近じゃった。
萩尾望都の「スローダウン」(1985.1発表)。一度読んだはずなのに、ひきこもり漫画として紹介されると、おゝそういう見方もあるのか!と発見。その見方から見ても物凄く秀逸な作品なんだとビックリしました。五感全ての感覚を遮断した部屋で暫く過ごさせる実験。それをやると、「現実感覚」が変化していく、と頭木さんは言います。そういう時にふっと現れた「人の手」が特別なものになるという。頭木さんは、「どうしてあの感覚がわかるのか」「天才恐るべし」と書いています。「一度きりの大泉の話」を読んだ今、なんとなくわかる気がするのです。
「小説を読んで、心に残るフレーズがひとつでもあれば、それはもう読む価値はあった」と頭木さんはいいます。大きく肯首します。アンソロジーというものは、それを手助けする格好の方法だろう、と思います。頭木さんが多くのアンソロジーを編んでいるのはそういうことなのでしょう。
本書は、ひきこもりの方も読めるように、本と電子版同時発行だそうです。
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ひとりなら僕だっていきてゆけます。
床の上に寝ればベッドから転ぶ心配はありません。
う~ん。まぁそうだよね。
水族館の地下の水槽で暮らす忘れられた蛸。飢え渇望して我が身を食らう。
なくなっても生きている・・萩原朔太郎
Posted by ブクログ
昨年最初の緊急事態宣言になった時、まっさきに思い出したのは『赤い死の仮面』だった。
一番強烈と感じたのは『死なない蛸』かなあ。
『フランケンシュタインの方程式』は悩めるテーマなのに、ユーモアSF的な語り口が楽しい。元ネタ?の『冷たい方程式』も読んでみたくなった。
『私の女の実』はやはり『菜食主義者』を思い出してつらくもなった。
『静かな水のほとりで』はアイディアとしてはさほど突出とも思われないのに、妙に印象に残って後をひく。
Posted by ブクログ
ひきこもりがテーマに編まれた12の物語。「凍った時間」はさすが星新一、久しぶりに読んだけど鋭い所を最後にえぐってくる所が気持ちよかった。「フランケンシュタインの方程式」はずっと気になってた疑問が最後に(笑)ハン・ガンの「私の女の実」は知ってると思ったら「菜食主義」のあとがきで読んでたからだった…ただ悲しいとか腹立たしいで終わらないのは最後の夫の行動なのかな。「静かな水のほとりで」がとても気に入ったのに、絶版が多いとの事で残念すぎる。何処かで探したいものです。新しい出会いがたくさん生まれた素敵な本でした。
Posted by ブクログ
「ひきこもり」という言葉から一般的に想像するのとは違う、入院や宇宙船内での生活を含めた「社会から遮断された生活」をしている人々の話。
「部屋から出られない人のための12の物語」という副題がついていますが、病気や宇宙船内、そして自らの意志によるひきこもりであれば本も読めると思いますが、育児中に外に出られなかったときは、本を読む余裕なんてなかったなあ、と思います。
病気も私の場合は目だったので、やはり本は読めませんでしたが。
元教え子を訪ねて韓国(ソウル)に行ったとき、教え子家族が住んでいる高層マンション群に泊めてもらったので、韓国文学の「私の女の実」の妻の気持ちが一番理解できた気がします。
また、「鬼退治に行かない桃太郎」も面白く、
紹介されていた『桃太郎話 みんな違って面白い』を読んでみたいです。
SFはやや苦手ですが、「フランケンシュタインの方程式」は面白かった!
萩尾望都の「スロー・ダウン」。「手の感覚」は私には理解できませんが、「感覚遮断実験」は興味深い。
日本に住んでいると、ほぼ日の出から一日が始まりますが、緯度の高い地域で、まだ暗いうちから学校が始まったり、まだ明るいのに寝る時間だったり、不思議な気持ちを味わったこともあります。それはじきに慣れましたが、閉じ込められた真っ白な空間だったらどうでしょう。
いろいろなジャンル、しかも時代や国の異なる話がつまっているので、普段なら手を出さないような話もとりあえず読んでみることができたのはよかったと思います。
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ひきこもりのアンソロジー。
ひきこもりを否定することはない。
なんらかの事情があるのだから…。
出たくなければ出なくてもいいじゃないか、と思うほうである。
自分もいつ、突然に引きこもるかもしれないわけで。
それは、わからない。
ひきこもらずに一生を終えるかもしれないし…。
どうなるかはわからない。
たとえば、萩原朔太郎の「死なない蛸」は、存在しないものと思われると悲しいが、魂はある。
たしかにそこに居る、自分がわかってれば良いじゃないかと思わせる。
想像以上のかなり上をいくのが、ハン・ガンの「私の実」である。植物で活きた心地になるならばそれを完成形というのだろうか。
萩尾望都の「スロー・ダウン」は、感覚遮断実験を描いているが、特に手の感覚の凄さをあらわしている。
誰かの手に触れることですべての機能が目覚めるかのような…。
意識しなくとも握るという感覚は、ずっと残るのだろうか。
とても不思議な感覚で読み終えた。
Posted by ブクログ
【収録作品】ひきこもっている間に忘れられる-散文詩 「死なない蛸」 萩原 朔太郎/ひきこもり願望-ドイツ文学「ひきこもり名言集」 フランツ・カフカ(Kafka,Franz) 選訳/頭木 弘樹 /鬼退治に行かない桃太郎- 昔話「桃太郎 岡山県新見市」 編著/立石 憲利/差別によるひきこもり-ショートショート「凍った時間」 星 新一/感染を避けるためのひきこもり-アメリカ文学「赤い死の仮面 The Masque of the Red Death」 エドガー・アラン・ポー(Poe,Edgar Allan) 新訳/品川 亮/ひきこもりによる物の見え方・感じ方の変化-エッセイ 「病床生活からの一発見」 萩原 朔太郎/部屋から出られない苦しみ-日本SF小説「フランケンシュタインの方程式」 梶尾 真治/ニートのつぶやき-大正文学「屋根裏の法学士」 宇野 浩二/ひきこもりと植物-韓国文学「私の女の実 내 여자의 열매 」 ハン ガン (韓 江) 初訳/斎藤 真理子/究極の孤独-アメリカSF小説「静かな水のほとりで Beside Still Waters」 ロバート・シェクリイ (Sheckley,Robert) 新訳/品川 亮/ひきこもり実験の結果-漫画「スロー・ダウン」 萩尾 望都/番外編「ひきこもらなかったせいで、ひどいめにあう話」 頭木 弘樹
Posted by ブクログ
タイトルだけで買った本
装幀もキリッとしてて好み
アンソロジーって読んだことなかったかも
どのお話もよかった
ハンガンの話とシェクリィの話が特によい
実はどっちも読んだことなかったので
読めてよかった
ドタバタしてるのもあれば
シーンとしてるのもあるし
バラエティーに富んでてうまく集めたなぁ
己の本の読み方に足りなさを感じて
ちょっとしょんぼりしたりもした
よかったよーって
人にオススメするほどではないので
星は4つにギリギリ届かない3つ
そっと隠しときたい本みたいな…
そんな感じ
Posted by ブクログ
「ひきこもる」をテーマにしたアンソロジー。小説、エッセイ、漫画。洋の東西、時代も様々。ひきこもらざるを得ない昨今、読んでみた。小説は、SFというかショートショート的なものが多かった。引きこもって一人で読むと、ちょっと怖いかも。
Posted by ブクログ
ひきこもりがテーマのアンソロ
引きこもりって暗くて重いイメージだったけど、
コロナ禍で引きこもってみて、意外と楽しいことに気づいた。
このアンソロもいろんな引きこもりがあって、
このコロナ禍でいろんな人がいろんな引きこもりをしているんだ、私のひきこもりはわたしの引きこもりでいいんだと思いました。
まだまだ大変な世の中ですが、
辛いのはわたしだけじゃない、って心強いことだと思うのでもう少しみんなでがんばろって思いました
Posted by ブクログ
梶尾真治作品が含まれるアンソロジーということで購入した。特に「ひきこもり」に興味がある訳ではない。ただ、昨今のコロナ禍に伴って外出自粛を余儀なくされる中、実際の現状には所謂ひきこもりに共通する面もあり、作品の幾つかには共感できるものもある。やはり、今の自分はひきこもりなのだろうか。まあ、現在のひきこもりレベルは人に迷惑をかけるものでは無いので良しとしよう。
梶尾作品は有名な「フランケンシュタインの方程式」が収録、その他には星新一「凍った時間」、萩尾望都「スロー・ダウン」が収録されている。
その他で気になったのは、韓国女流作家のハン・ガン「私の女の実」、立石憲利「桃太郎」、ポー「赤い死の仮面」。
物理的に一つの空間に閉じこもる、閉じ込められる、自ら周りに隔壁を作る、いろいろなひきこもり方があるが、鬱屈した気持ちを自力で昇華できる力を持つ人であれば、一時的なひきこもりなら脱却できるだろう。本書はファンタジー的要素を持つ作品が殆どなので、ひきこもりの具体的解消に対しては何ら助けにはならない話ばかりだ。