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Posted by ブクログ
自分の引きこもり時代を、生々しく想起させるものだった。
かなり前のことで今は働きながら生活しているためすっかり忘れていたが、
そうだった。
引きこもりって、安寧の世界なのよ。
外は自分にとって不都合な現実がたくさんあって、
引きこもっているうちは見ないでいられる。
ネットとかもあるからそんなに孤独ではないし、
何より都合のいいことだけ考えていられる。
今では成り立ってないし、おかしな状態だったなーと思うけど、この本ん読んでその感じ本当に思い出した。
ハンガンの作品が気になって何となく手に取った作品だったが、
私にとっては思いがけず人生の忘れものに出会った感覚で、今に感謝することができるギフトとなった。
Posted by ブクログ
編者の頭木さんのアンソロジーは小説だけではなく詩や漫画が入っていてジャンルレスなところが好き。
今回の「ひきこもり」アンソロジーには、なんと私の大好きな詩人萩原朔太郎の作品が二つも入っている!(詩と随筆) うれしい。
「死なない蛸」は子供のころに読んで強烈な印象を残した名詩。筑摩書房の『変身ものがたり』というアンソロジーにも収録されているし、いろいろな見方ができそう。自分は幻想実を味わいつつも、閉じ込められ忘れられたものの恨みは永久に滅びない……という教訓的な読み方をしていた。
知らない作品の中で印象的だったのは
ロバート・シェイクリイ「静かな水のほとりで」
梶尾真治「フランケンシュタインの方程式」
どちらもSFだけど、味わいはかなり違う。上は静謐で下はドタバタ。
しんみりするのは上。
人間の勝手さにひどいなぁ、となるのが下。
なんだか、この感じわかる、となったのは
ハン・ガン「私の女の実」
現実的な希望を叶え得なかった女性が人外のものへ変わっていく、といっても恐怖的小説なイメージではなく、もっと静かな……という像は私の頭の中にもあって、ああ、ここに具体化された作品があった、という気持ち。
Posted by ブクログ
頭木弘樹さん編の短編集。切り口がさえていて、とてもおもしろく読んだ。
ウロボロスを超えた?萩原朔太郎「死なない蛸」怖。
カフカ「ひきこもり名言集」ここまでひきこもりで、結婚を考える恋人がいたっていうのがある意味すごいよ、カフカ。
三年寝太郎のような「桃太郎」立石憲利 こんなバージョンあるんだねえ。おもしろい。
星新一「凍った時間」は初めて読んだ。それとも忘れてたのか? 世界を救ったのにせつない。
ポーの「赤い死の仮面」は、コロナの状況下で読むと、慄然となる。翻訳も抜群の冴え。
梶尾真治「フランケンシュタインの方程式」は、「冷たい方程式」の笑える悲惨版。
宇野浩二「屋根裏の法学士」はまさにひきこもりニートの話でたいへん身につまされる。
ハン・ガン「私の女の実」植物になる話って、ほかにも読んだことある気がするけど、そのなかでも異常に生々しい。
シェクリイ「静かな水のほとりで」小惑星でロボットと「ふたり」淡々と日々を送る人の話。ロボットに少しずつ言葉をおしえて、少しずつ会話が成立していき、でもやがて人は老い、ロボットも老朽化し……。しんとした美しさがしみて涙した。これがいちばん好きだったかな。
萩尾望都「スロー・ダウン」感覚遮断実験の話。すべての感覚を遮断したとき人はどうなるのかという話をとてもリアルに。
上田秋成「吉備津の釜」これも読んだことがあるような気がするけど思いだせない。こわー。髪だけってのが生々しくておそろしい。
巻末の頭木さんの解説もよいです。
Posted by ブクログ
萩原朔太郎のものぐさニート具合に共感しつつあまりにもカスでは?と思い調べてみたら親が開業医の実家太し君だった。55歳で生涯を終えるまで殆ど働かずに親からの仕送りで暮らしあまつさえ子供もこさえていたという奔放さ。親からは毎月60円ほどの仕送りを受けていたそうで、現代の貨幣価値でいうと27~45万円ということ。詩の才能は別として、社会的には紛うことなきクズでは…?このことが知れただけでも面白かった。
そして何よりもハン・ガンの短編が圧倒的。根本的な動物としての命を描いているようで、とても美しかった。菜食主義者の元となる作品なんだそう。暴力からの離脱を感じる。
萩尾望都の漫画の感覚遮断実験が今でもJAXAで行われていることに驚き。
Posted by ブクログ
私は高校中退後に数年間ひきこもり状態でいたことがあり、その時は本当に最悪だった。
人間不信に加え、大学で何か学びたいわけでもなく、かといって、やりたい仕事もなく、ただ推理ものやファンタジー小説を読んでいただけの日々に、これも生きているということになるのだろうかと、思ったものだ。
そんな事があったもので、もしその時に本書を読んでいれば、果たしてどうなっていたのかということに興味を持ち、本書を読んでみたわけなのだが、まず惹き付けられたのは、カフカの「ひきこもり名言集」と、宇野浩二の「屋根裏の法学士」だった。
ただ、カフカは正直ざっくりし過ぎた表現が響かなかったが、宇野浩二は良かった(両者の共通点は、ひきこもりに正しいも間違いもないということ。まあ本人の責任は伴うが)。
読んでいて、思わず想像してしまう、そのダラダラ感と太々しさ。けれども、おそらくそれは彼自身の虚構と精一杯の見栄であり、本音は切ないものも秘めていたのだろうなと感じさせる、その心情に胸が締め付けられて、大正7年当時に書かれたというのも、とても励みになった。
また、萩原朔太郎の作品が二点収録されていたことも印象的で、「死なない蛸」は、彼自身、周りから謂れのない距離を置かれていたことに対する、存在価値の普遍性を吐露したように感じさせ、「病床生活からの一発見」は、正岡子規の無味平坦な歌への理解にも共感したが、それ以上に、侮辱された一婦人の為に腹を立て、悲しくなって泣いたエピソードに彼の優しい人柄を感じさせ、昔読んだ、鯨統一郎の「月に吠えろ!」を思い出した。
そして、星新一の「凍った時間」は、ムントの無表情な表情の奥に垣間見える、心と涙に胸を打たれ、見た目だけで判断される悲しみは、まるで障がい者に対するそれのようにも思われ、梶尾真治の「フランケンシュタインの方程式」は、一転してコントを観ているような面白さが印象深いが、所々のブラックな味付けで軽い内容にはしておらず、ポーの「赤い死の仮面」(品川亮の新訳)は、自分の事だけ考えていると、こうした報いを受けるといった教訓ものっぽく見えたのが、ポーの作品にしては意外に感じられた。
それから、ハン・ガンの「私の女の実」は、『ここではないどこかへ』ということの、夢と現実の辛さを思い起こさせる一方で、一欠片の自由も感じさせた、私にはとても沁みる内容で、このアンソロジーの為に初訳してくださった、斎藤真理子さんには感謝しないといけない。
最後に、まさかここで初読みできるとは思わなかった、萩尾望都の漫画、「スロー・ダウン」。
そこには極限状況に置かれた者しか分からないような、確かな真実の在処を教えてくれた気もしたが、それとは別に、ここでの『手』の存在には、おそらく当時の私にとっても、誰かに差し伸べて欲しかったと思わずにはいられなかった、確かな真実の訪れのようにも感じられた。
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