頭木弘樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
〈この本が目指すのは、痛い人と痛くない人のあいだに置いてもらって、「自分の気持ちはこれに近い」と痛い人が説明したり、「こういう痛みなの?」と痛くない人が質問したり、そんなふうに使ってもらえることだ。〉
痛みにさんざん苦しめられてきたご自身の半生を交えながら、「痛み」をいろんな角度から考察してみようという一冊。
頭木弘樹さんの著書には引用が多いけれど、そのどれもが絶妙。(おかげで今回も読みたい本がたくさん増えた。)
村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』において、さまざまな痛みを経験してきたという加納クレタの台詞も、ここで改めて目にするとまるで別物のように響いた。
経験したことがない加納クレタの痛みは、彼女の恋人にも、もちろん私たちにも決してわかりえない。
しかし、〈「わからないことがある」と思えれば、もうかなり「わかる」に近づいているのだ。矛盾した言い方のようだが、たしかにそうなのだ。〉そして〈完全に「わかる」ことは無理でも、そうやって少しずつ「わかる」に近づいていくことはできる。到達はないけれども、無限に近づいていくことはできる。近づいたことを感じられたとき、痛い人にも痛くない人にも、感動があるはずだ〉。
想像することが大事で、文学はそのためにあるのだと、何度でもそう思う。
ちなみに「肩凝り」という表現を思いついたのは夏目漱石だそうで、そういう痛みについての“実感のこもった言葉”にどんどん触れていきたい。
ほかにも、痛みについて考えるときに参考となる文学が多数紹介されていて興味が湧いた。療養短歌、療養俳句なるものも気になる。石川啄木や正岡子規は私にとって教科書の中の人、だったけれど、病床で詠まれたものからその痛みを想像するとき、彼らは生身の人間としてそこにいたんだ、とふいに実感できた気がした。
痛いところから見えたものを、その人自身によるその人のための言葉で形にしていくことが、いかに重要か。
「痛い」はあまりにも主観的かつ個人的体験で、つねづね誰とも分かり合えないものだと諦めていたけれど、読み終えたあとには、少しその隔たりに光がさしたような思いがした。 -
Posted by ブクログ
最近お気に入りの頭木さん。
潰瘍性大腸炎という難病に罹ったことから、様々な考察を経て彼特有の視点から物事を論考している著作が好きで、よく読んでいる。
本作は、著者自身も苦しんだ「痛み」に関するものだが、その訴えるところが他者理解についてあまりに的確すぎて、唸った。
経験していないことは想像しても分かり得ないという前提に立つことが理解のスタートラインだとか、そのわからないことがあると思えることがわかることへの第一歩だとか、対人援助を生業とする私にとっても、あまりに普遍的で基本的でありつつも最重要である事柄を端的に述べてくれている。
著者の文が好きなのは、とても示唆的なことを、平易に、さも大した話でもないように、自分なんかが偉そうに言えることではないんですが、という枕詞でもついていそうなくらい謙虚な姿勢で言っているところ。
なぜか妙な親近感が湧き、友人から話を聞いているかのような気分で読めるところである。
それでいてとっても含蓄があるのがいい。
著者自身が、とても苦しんだ経験があるからこそなのかな。
また次の作品が楽しみ。 -
Posted by ブクログ
むずい!変身とかはもう少し読みやすかった。短編だし、日常のひとコマを切り取ったような設定なので、状況やセリフが難解ということではなく、するする読むのだけど、だんだん自分がなにを読んでるのか分からなくなってくるという、、、急に幻想の話なのか?と思ったり。
解説を読んでからもう一度読むと、分かりかけるものもあり。一番簡単に読めた「流刑地にて」は、いちばんエグかったです。
カフカはすごく評価されている作家ですが、わたしにはまだまだ経験値が足らんのか?でも、あと数回読んだら何か変わるのかもしれないという不思議な後ろ髪引かれ感は残っているのです、、、 -
Posted by ブクログ
少し思っていたのとは違った
もう少し軽い笑い話かと思ったが
文学的な要素が強いアンソロジーでした
自分もお腹は弱く、外出先では常にトイレの場所などを確認するような生活なので
同じ様に考える人の話を読むと勇気づけられます
幸いまだ外で漏らしたことは無いですが、
漏らした話は「ロングショットで見れば喜劇、クローズアップで見れば悲劇」という言葉には凄く納得がいきました
本人からすれば人生が変わるほどの大きな悲劇だが
他人が話を聞いたらただの笑い話になってしまう
この生理現象はなんとも不思議なものだなと
改めて思い知らされます
文学的な作品に抵抗がなく
うんこに興味のある方は是非オススメです -
Posted by ブクログ
ラジオ番組の文字起こしなのでサラサラ読めます。
カフカ、ドストエフスキー、ゲーテ、太宰、芥川、シェークスピア。
ゲーテ
人間は昼と同じく夜を必要としないだろうか
光の強いところでは影も濃い
芥川の地獄はルールがあるから現世よりマシってのもいいですね。
「弱いから強い」とかいうよくある安い慰めを二人の語り手は優しく否定します。弱いまま、弱いからこその気づきというか。
どうしようもない人だからこそどうしようもない人ならではの危険を察知してカバー出来たりするのかもよと。なるほどね。たまにはそういうこともあるでしょう。
日常の瑣末なことに美を見出したり出来る人は瑣末な事に傷ついたりもするってのもまさに。
感応度ってのはプラスにだけマイナスにだけ反応するようには設定出来ないですよね。もし片方にだけ反応するならばそれはまた別の部品の問題だったり。何事も前提は「もし頭が良ければ」か。
私はバカだから世の中の美をことごとく無視して生活している。けれど世の中の悪に対しても無関心でいられるのも事実。実際飛行機事故で100名以上が亡くなったニュースとか、ガザ地区での虐殺とか、重い障害児をケアする老夫婦とか、有名人の病気とか、その場では「うわ、可哀想」とはなるけれどそれが理由でご飯が食べられないとか寝られないとかなったことない。薄情ってもありますがやはり一番の問題はバカなんですよね。だから針がふれないのよ。どっちにも。
ただ犯人に対しては憤りは感じますけどね。女子高生コンクリート事件の犯人たち、および監禁されリンチされていることが一目見て明らかなのに犯行現場の家に出入りして性暴力を繰り返したとされる100人以上の地元高校生たち。犯人らの両親。彼らが今も、なんなら生まれ育ったあの地区そのままで、結婚したり子供をもうけたりしてのうのうと暮らしているかと思うと「全身の骨が砕けて激痛の中で長生きすればいいのに」「麻酔無しで抜歯されればいいのに」とは思いますけども。
話ズレましたね。
「三島由紀夫を好きな人は太宰を読まない」
ギクッ。
確かに一冊くらいは読まないとですね。 -
Posted by ブクログ
NHKラジオ深夜便のコンテンツ。カフカやドストエフスキー、ベートーベンの言葉は、読む前から絶望名言という予想の範囲内。太宰もそうだ。ゲーテは“希望の人”だから、ある意味絶望を知っているからこそ、なのだろうと思いながら読んだ。「絶望することができないものは、生きるに値しない」「快適な暮らしの中で想像力を失った人は、無限の苦悩というものを認めようとしない」と。これらの言葉は、幸い?なとこに、絶望と言えるほどの苦悩は知らないと言える自分自身に対する警句として心に留めたい言葉たちだった。
芥川の「人生を幸福にするためには、日常の瑣事を愛さなければならぬ。日常の瑣事に苦しまねばならぬ」という言葉は、今時々私自身も考えている。歳を重ねたからかもしれないが、日々、平凡な毎日を過ごせる時間がとても貴重で、あれもやりたい、これもほしいと思っていた若い頃には感じなかった「小さくて」大きい幸せを感じることができていると思うから。
川端康成「忘れるにまかせるということが結局、最も美しく思い出すということ」。そうだろう、きっと。 -
Posted by ブクログ
「変身」すら未読なのに短編集を読むという。
それでも「判決」はカフカって感じの話なんだろうなと思った。客観的に読んでる感じでは、一人芝居乙…とも捉えられかねない、自分で事態をややこしくして自分から進んで悩みを大きくしているがいかにも小説家だなぁというのが正直な感想。
「万里の長城」「バベルの塔」のような、何が始まるかと思えば完成したほうがいいようなそうではないような的な持論を延々に展開していくというものだが、理屈らしきものをこねこねして一歩も踏み出さないところは、なんだか私に似ていて好感が持てるのだ。
話の内容もそうだが、解説も勉強になった。カフカが無名な頃に出版した新潮社の粋が伝わった。 -
Posted by ブクログ
カフカについての著書を複数手掛けておられる頭木弘樹さんの本の一つ。最近の新聞の書評でも取り上げられていた(見つけただけでニ紙も⁈)
カフカの書いたものに見られる言葉のフレーズが、まるで自由律俳句のようであるとして、まとめられた一冊。
見開きの右にカフカの言葉、左側に頭木さんのコメントなので、文章量としては多くないのだが、さっさと読んでしまうのは難しい。惜しい、もったいない。
人によっては刺さらないかもしれない。心の中に重いものを抱えている人が、その言葉とリンクした時、思いがけなく世界が広がる感じ⁇ただ
「快適だと何もせず、快適でないと何もできない」
の一節は誰にでも心当たりがあるだろう。
本当は手元に置いて、時々好きなところをめくって読んでも良いのかもしれない。
ちなみにカフカはまだちゃんと作品読んだことなかった。これを機に読んでみようかとも思う。