頭木弘樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレひとつのことで深く悩めないタイプだ。悩まないのではなく、悩めない。少女マンガの傑作(傑作です。異論は認めない)「天使なんかじゃない(矢沢あい)」のなかで、まみりんが翠に「あなた悩んで夜寝れなかったことなんてないでしょう?」と聞くシーンがあって、翠の「昨日の夜は寝れなかった」というモノローグに続くんだけど、あの明るくて、前向きに進んでいく翠ですら、寝れないことがあるのか!と当時高校生だった私には、結構な衝撃だった(詳しい話は、マンガ読んでください。傑作なので)。
そこまで深い悩みがなかった、ある意味幸せじゃないか、とも思うのだけれど、その後の人生でも結局「寝れないほど悩む」ことがないまま、今に至る。
寝たら頭がすっきりして、ちょっと解決に進むよね、あとは行動しよう!という、ポジティブタイプ、とも言えるし、なんかこう、思考・思慮が浅いのでは、とちょっと後ろめたい気持ちにもなる、そんな人生。
なので、と続けてよいのか分からないけれども、人生のどん底、絶望の淵で、グルグルしているようなタイプの小説は苦手で、避けてきたところがある。
この本は、もっとクスっと笑えるタイプの本かと思って手に取って、確かにユーモアにあふれたものではあるのだけれど、作家それぞれの絶望を紐解き、なぜその言葉が、こちらに響いてくるのかを丁寧に解説したものだった。
そのベースにあるのは、話しているお二人の経験で、それぞれ病気で苦しんだからこその想いや実感が乗っているからこそ伝わるものがあるんだろうとは思う。
でもそれは、「病気の経験があってよかった」わけでは決してないし、その経験がなくても、なるほど確かにそういう風に響くのは分かるなと、これまでの読書で抱いていた苦手意識をふわっと軽くしてくれたように感じる。
私は、小説を読むということをもっと感覚的にやってきたところがあり、それをきちんと解説することに違和感を持ってきたのだけれど、あぁ、文学を学ぶってきっとこういうことなんだなと初めて思えた経験でもあった。
もとはラジオなので、それも聞きたいなと思ったのだけれど、なにせ耳から入った情報を処理するのが苦手なので、きっと文字で読んだ方がしっくりくるんだろう。
得るものの多い読書でした。 -
Posted by ブクログ
「変身」以来。「審判」は積読中。
『法の前に』は、カフカが感じた実際の法への失望なのかな?
絶望、混乱、孤独、喪失、迷い、息苦しさ、生き苦しさの中、訳者がつけてくれたタイトルのおかげでちょっとファニーな雰囲気もある。おかしな本でした。
〔失敗することさえできない〕 〔井戸〕
〔隣人までの距離〕 〔道に迷う〕
〔助けて!〕 〔何もわたしをとどめない〕
〔灌木かんぼく〕 〔問いかけ〕
〔道は無限〕 〔あいだの魚〕
『コメント』 〔すべて無駄だった〕
〔志願囚人〕 〔自分が生きていること〕
〔自由とは〕 「プロメテウス」 〔沈黙〕
ユーモア大賞は〔自分を建て直す〕かな。コサックダンスを踊るカフカを想像したらクスリとした。本人にとっては笑い事では無いだろうけど。
訳者によるフランツ・カフカ紹介を先に読むことによって、カフカの背景を前提に断片を読み進めることで、断片=カフカの当時の心情と考えながら読むことができる。
一方、カフカの背景を知らずに読むことで、断片と自分の内面が向き合って、断片が読者の心のひび割れに少し水を差してくれるような、そんな気分にもなる。
私は背景を知らずに読みました。
これから読む人は、どんな読み方が自分に合うか、楽しみながら読めるといいなと思います。 -
Posted by ブクログ
勇気づけられるというより、「普通」でいられることが確認できて、少しホッとしました。
頭木さんの解釈がほんとうに優しい。優しすぎる。ラジオでは聴いたことがありません。今も続いているみたいなので今度聴いてみたいと思っています。
ふさわしい人生を生きるということ自体が、なかなか難しいですよね。人はどこかで、ふさわしくない人生を生きているんだと思います。
根田さんのあとがきも良かったな。
私には小さな子どもがおり、日々、保育園や学童保育への送り迎えをしていますが、保育士さんやお母さん方、お父さん方と交わす会釈にずいぶん救われています。そして、「おはようございます」、「きょうは暑いですね」、「おかえりなさい」など何ということもない一言。保育園にたどり着くまでの舞台裏にあえて触れない、でもその奥にあるものがわかっているから、それで十分なのです。それもまた大切にしていきたいと思っています。 -
Posted by ブクログ
なかなか心と体はやはり切っても切れないものだし、それぞれの経験は深いから一冊にまとめるのは難しい気がした。
横道さんの生い立ちも凄まじく、宗教二世の話もあり、心云々の前にそれに驚いてしまったし、性についての話は少し読んでて疲れた。
頭木弘樹さんの本としては「食べることと出すこと」の方がおすすめ。
横道さんの
「大衆文学は難しい
大衆文学は、定型発達者同士の情緒的な交流
大衆文学は共感を求めてくるから非常に読みにくい
純文学のほうがむしろ読みやすい
純文学は一種の抽象性
現代アート的、単純化
それがある意味わかりやすい」
という内容は、そういう見方もあるんだなと、印象に残った。