頭木弘樹のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ*「いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです」これは20世紀最大の文豪、カフカの言葉。日記やノート、手紙にはこんな自虐や愚痴が満載。彼のネガティブな、本音の言葉を集めたのがこの本です。悲惨な言葉ばかりですが、思わず笑ってしまったり、逆に勇気付けられたり、なぜか元気をもらえます。誰よりも落ち込み、誰よりも弱音をはいた、巨人カフカの元気がでる名言集*
「将来にむかって歩くことは僕にはできません。将来にむかってつまずくこと、これはできます。いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです。」
って、もう振り切り過ぎでしょ!
ネガティブなのに、何故か可笑しくて、共鳴してしまうカフカの名言たち。
落ち込んでいてもいなくても、心に優しく染み入ります。
この名言たちを編集・解説した著者のカフカ愛と手腕にも脱帽です。 -
Posted by ブクログ
これは面白い本。わたしも数年間絶望していた経験があるからよくわかる。絶望しているときは励ましではなく共感を。一緒に泣いてくれることが一番うれしい。わかる、わかる。当時、ずいぶんと本にも救いを求めた。わたしの場合は、ナチスの迫害を逃れた人の本とか、ドリアン助川さんの本とか。苦境の中で生き抜いた人のもの、真に生きるとはどういうことかといったテーマのものが多かったかな。あ、赤毛のアンシリーズにもけっこう救われたな。ローラの「長い冬」とか、児童文学には素晴らしい作品が多いよなー
ただ、この本の中で著者が言われるように、特段、明るい本ではなく暗い本を、とは思わなかったのだけど。カフカの「変身」、読み返してみたくなった。
あとイタリアのディーノ・ブッツァーティという人の本も読んでみたい。『神を見た犬』に入っている「七階」という作品に興味がわいた。
p42
しかし、その人生の物語の脚本を書き直さなければならないときがあります。
とくに、絶望的な出来事によって書き直さなければならないときは、それはとても困難です。
人生が混乱し、本来の人生を失った気がして、新しい人生は受け入れがたく思えます。
そういうときそういうときに、なんとか脚本を書き直して、その後の人生を生きていくためには、書き直しの参考となる、物語が必要です。
それが、カフカの言うところの「必要な本」であり、「苦しくてつらい不幸のように……ぼくらに作用する本」ではないでしょうか。
「ぼくらの内の氷結した海:つまり、これまでの物語にとらわれて、こり固まってしまった心を、「砕く斧」としての絶望の文学です。
P71
自分はいくら悲しみにひたっていようとしても、周囲がそれを許してくれないことも少なくありません。
たとえば、絶望で倒れこんで、立ち上がれない人がいるとします。
倒れた当初は、たいていの人が同情してくれますし、心から心配してくれるでしょう。
問題はここからです。
倒れている人が、「肩をかしてもらえるのはありがたいんですが、まだ無理なんです。前を向いて歩くどろころか、起き上がる気にもなれないんです」と返事をしたとします。
すると、さらにしばらくは待ってくれるでしょう。
でも、だんだんと周囲の人たちは、いらだってきます。
「せっかく人が肩をかしてあげると言っているのに、なぜ立ち上がろうとしないんだ」と、親切だったはずの人が不機嫌になってきます。
さらには「だいたい、そんなふうだから倒れるようなことになるんだよ」などと悪く言い始めます。
ついには、「迷惑だから、どこか見えないところに行って倒れててくれ」と見捨てむしろ憎み始めます。
p89
「私の気持ちは、誰にもわからない!」という気持ちを、本はわかってくれます。
それどころか、自分でもよくわからない、もやもやした気持ちまで、「まさにこういうことなんだ!」と感動するほど、見事に言葉で表してくれます。
UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)が行った研究によると、ストレスが高い状況にさらされたとき、「それを表現する言葉がある」と、ストレスホルモンの放出が抑制され、ストレスが鎮まるそうです。
絶望し、孤独に陥ったとき、そういう気持ちを言葉で表してくれる本を読むことは、それだけで、絶望や孤独をいくらか癒してくれるのです。
それは実感としてもたしかですし、こういう科学的な裏づけもあるのです。 -
Posted by ブクログ
一回りして面白いとあったが、まさにその通りの本。
ほんとうに生き辛い人だったに違いない、と断じていいものか迷うがおそらくそうだっただろう。
しかしながら、生涯独身で病気で早死にしたカフカよりも
もっとずっと色々欠けている(私含め)人だっているぞ!
と思いながら読んだ。
(厳格な親だが裕福な家に育ち、婚約を3回もでき、つかの間の恋人もいて、社会と完全な断絶もしていないで、なにが絶望だコノヤローとも思った)
ばっさり切り捨てるなら、ただ甘い。
でもその甘さをあのように惨めなほどに吐露する能力は素晴らしい。そして、彼の作品もけっこう好きだったりする。
世の中は簡単ではない。 -
Posted by ブクログ
絶望名人カフカの人生論
カフカの人生と共に語る「絶望の名言集」。
自分の将来、世の中、身体、親、学校、結婚、食べ物から睡眠までカフカは日常のあらゆる事に絶望していた。勿論、彼の言葉が本心なのかどうかは誰にも分らないが、彼が書いたものにはネガティブな言葉しか並んでいない。小説同様、日記や手紙、ラブレターに至るまで、楽観的な記述が無く、現代人の悩みの全てを先取りしたような印象を受けた。
彼は絶望していても、実際は裕福な家庭で育っており、会社勤めもこなす(遅刻は多かったらしいが)普通の人生を送っていた。ただ、あまりに理想が高すぎて、自分の現実とのギャップを感じていたのだろう。自分の人生に絶望しても、多くの作家のように自殺するようなことはなかったし、気持ちを素直に書くことによって、逆にストレスを解消していたのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
陰と陽。両極端な二人の狭間から生まれるものは。
作家界の二大巨塔ゲーテとカフカ。かたや25歳にして『若きウェルテルの悩み』が大ヒットした独を代表する文豪。かたや多数の作品を生み出しながらも死後40年あまりも評価がされることがなかった不遇のオーストリア保険局員。そんなポジティブとネガティブを象徴させる二人の名言を、テーマごとに対比させてみるという面白い試みをしたのがこの本。
「太陽が輝けば、ちりも輝く」ゲーテ
「暗闇に戻らなければなりませんでした。太陽に耐えられなかったのです」カフカ
偉大なる存在のもとにあって、その恩恵を感じるか自身の小ささを思い知るか。自分がその場に相応しくないと思ったのなら、時には隠れたり逃げたりしながら生活していくことも正しい決断でしょう。
「大地にしっかりと立って、まわりを見渡すのだ」ゲーテ
「ぼくの足の下に、たしかな大地はありません」カフカ
大地が無くてはさすがにどうしようもありませんが、ちゃんと居場所が固まったのなら周りに目を向けたいものです。自分の足元ばかり見つめながら生きていくのはあまりにも大変。
「生きている間は、生き生きしていなさい!」ゲーテ
「静かにしているべきだろう。息ができるというだけで満足して」カフカ
こうまで言われては・・・。それでもこういった考えを持ちながら生きて行っている人々も確かにいるのだという事実は知っているべきだと感じます。たとえどんなに自分が前向きな人間で、こんな思考が理解できないとしても。
落ち込んでいる人には前向きな言葉をかけて励ますことが普通ですが、時として自分の状況を再認識してしまい逆効果になることもあります。むしろ同じ境遇の人を見つけることで安心するという場合もあるのではないでしょうか。
どちらも正しく、どちらも共感を得る。だからこそこの二人の名前は、没後こんなに年月が経過した後でも世界中に知れ渡っているのかもしれません。 -
Posted by ブクログ
面白かった。
私も相当ネガティブな思考の持ち主だと常々思っていましたが、
それを遥かに上回るネガティブぶりに、何だかホッとします。
カフカ、色々と突き抜けています。
ネガティブな言葉でホッとするって
考えてみれば変かも知れませんが、
自分よりネガティブな人を見つけると
「えっ!いやいや、そんな風に考えなくても…」と思えるし、
自分自身の考え方を客観視するきっかけにもなりそうです。
悲しい時に明るい曲を聴くよりも、まず悲しい曲を聴いてから、
明るい曲を聴いた方が良いらしいので、
言葉も同様に、落ち込んでいる時はポジティブな言葉よりも、
まずネガティブな言葉を身近におくのもアリ?
こんなにネガティブでも命を全うし、
さらに死後ではあったにせよ、
多くの人に評価されたのカフカの存在は、
「ネガティブである自分自身を責めてしまう」、
そんなネガティブな気持ちを「ラク」にしてくれます。
落ち込んだ時にパラパラめくりたい感じです。