JAZZ初級者にはありがたい、絵と文章で楽しめる1冊(というか、読んだのは文庫でなく単行本1,2と分かれているほうで)。
面白いのは、三者三用の感覚を楽しめること。イラストを描く和田誠と、それに文章を寄せる村上春樹、一人のJAZZ Manに対するイメージ、思いが微妙に違っていたりする。勿論、D.エ
...続きを読むリントンやサッチモなど誰もが思い描くイメージどおりのイラストと文章というプレイヤーもいるが、マイルスを和田が暖色のトーンでシンプルに描いているの対し、村上は”マイルズの演奏は深く痛烈”と、”黒々とした陰鬱なジャケット”とアルバム『Four & MORE』に言及したり。
そこに読者である自分が、時には和田のイラストと自分の印象が重なるなとか、村上春樹はそんな風にこのミュージシャンの音を聴いていたのか!?と、自分はどっち寄りなんだろうと楽しみながら読める。
概して和田誠のほうが世間一般のというか、自分のイメージと合うことが多い。というか、やはり村上春樹のほうが読みが深いというか、独特なんだろうな。
とはいえ、ホレス・シルバーを、和田はいつもずいぶん洒落て優男風に描くものだ。先に読んだ『ボクはもっぱらレコード』(吉田直・著)の中の対談でアルバム『Serenade To a Soul Sister』に採用されたイラストが紹介されているが、そこのホレスも目を伏せた柔らかな笑顔のペン画。そして本書(vol.2)の表紙にもなっている絵は似たトーンの優男ちっくに微笑みピアノの前に座る姿が描かれている。
本人の姿を私は知らない。ファンキージャズの始祖というキャッチフレーズと、「Song For My Father」に代表されるようなヴォサノバチックな音楽から想像される、もう少し賑やかな印象を持つ。和田のイラストのイメージとのギャップが大きかったりする。
和田がVol.1でソニーロリンズを取り上げてないのも、そしてVol.2でも、文庫本にさらに3人が追加されたとしても、ジョン・コルトレーンを描いてないのも、なんだか面白いもんだな~。
音を聴きながら、絵を見ながら、文章を読みながら、2人のJAZZファンの大先輩が見たミュージシャン像と自分のイメージとのギャップを愉しみながら読める良書。