名取佐和子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
大雑把に言うなら、旅館の若女将が悩める宿泊客にピッタリな一冊を薦める話。
里見蘭さんの『古書カフェすみれ屋〜』によく似てるが、こちらを最初読みづらいと感じたのは、主人公の本が読めないという設定と、若女将としての立ち居振る舞いが、少し浮世離れしている様に思えたからかな。
5話から成り立つ本作。
なのでもう少し、と2話、3話と読み進めると物語全体の奥行きを感じる様になる。
…あれ…ちょっと、印象が変わってきた。
4話で少し風向きを変え、ラストの5話。
主人公の日常から始まる5話は、最初に感じた浮世離れ感を払拭させ、再び訪れる宿泊客によって、奥行きだと感じた種が紐解かれて行く。
ほぼ記憶にない夏目漱石の『こころ』を覚えていたらもっと楽しめたと思う。
歴史的背景まで関係してくる、悲しくも温かな物語でした。
-
Posted by ブクログ
凧屋旅館、行ってみたい。若女将の円さんの心遣いが素敵。文庫で出される飲み物と食べ物がまた惹かれる。
一冊目から四冊目までは旅館を訪れるお客さん目線、最後の五冊目は円さん目線の物語。
川端康成「ゆめごころ」
葉介の迷いや不安が描かれる。“普通”が良いと思うのは悪いことじゃないけど、“普通”が人の数だけあることは忘れずにいたい。打ち明けないという選択もあるんだ。
「春は馬車に乗って」横光利一
このお話好きだった!則子さんが美容院で髪を切って染めたところ、かっこよかった。自分を喜ばせること、大切にすること、忘れたくないなぁと思った。
「小僧の神様」志賀直哉
自分にとっての事実と相手にとっての事実は異なるらしい。勝手に推測して悩んでしまうのが人間なんだろうけど。透馬の“個性”を信じること、親として育てる沙月さん、かっこいいなと思った。
「藪の中」芥川龍之介
真相は藪の中ってそういうことなのか!初めて知った。一人の人物にもたくさんの“タグ”があって、それはどれが正解とかってことじゃないのかな。
子どもじゃないけど、大人でもない気がする二十一歳。奏志と四人の中学生はその後どうなったのかなぁ。
「こころ」夏目漱石
凧屋旅館と海老澤文庫の過去がわかる最終章。葉介の再訪とともに明らかになった円の曾祖父、丹家清の告白。赦すことができるのが強さなのかなぁと思ったり。円と葉介のつながりにも驚いた。 -
Posted by ブクログ
『ひねもすなむなむ』
名取佐和子
『ペンギン鉄道』シリーズや『金曜日の本屋さん』シリーズ、『シェアハウスかざみどり』などの著書のある名取佐和子さん、令和3年の作品になります。
ひらがなのタイトルと表紙のイラストから、ほっこりとしたお話を想像しましたが、ちょっと違っていました。最近お寺が題材となったコミカルな要素のラノベから日常の謎解きと愉しんできましたが、名取さんの本はまた一味違った人間味の深い小説でした。
25歳の独り身の僧侶仁心は、自身の居場所を求めるように、高知のお寺から岩手のお寺へ移ります。約1年を通して、僧侶として学びながら人としても成長していく中で、周囲の人々や仁心のそれぞれ抱える悩みが描かれています。
“後悔のない人生なんてない。「今」を生きるための力をくれる物語。“
読みながら、大人はもちろん、高校生くらいの方にもおすすめしたい本だなぁと感じました。
仁心が移ったのは岩手県のお寺、鐘丈寺(しょうじょうじ)。募集要項には住職候補、住み込み、仕事内容には法要(法事・葬儀・納骨)の実務、事務、檀家・参拝者への対応等があります。(檀家さんに支えられている、お墓のある小さなお寺さんですね。)住職についているのは田貫恵快(たぬきけいかい)さん。38歳の年齢よりは若く見える青年のような僧侶です。早い時点で余命が一年であることが明かされます。そんな住職を側で支えているのは、見た目のイカツイ雰囲気の檀家総代の桜庭虎太郎さん。一切を手伝いながら取り仕切ってくれています。
仁心に対して最初のうちは当たりがキツイところもありましたが…。
高校生の孫娘千蓮ちゃんと二人で暮らす桜庭さん、住職の田貫さん、周囲の人々にも、それぞれに”過去”があり、物語が進むにつれ少しずつ”過去”が解かれていきます。そしてまた、過去にとらわれ固執していた仁心の心も。
東北の震災にも触れているところがあります。その他にも、仁心も15歳で自分の居場所を求めて仏門に入るという選択をした家族背景であったり、深く感じ入るところがありました。(「そうぞ、お達者で」で涙が溢れだしました、)
ネタバレにならないようにこの辺りで、、、
最終章「彼岸まで」。
前住職(田貫さん)が、住職となった仁心に伝え遺したことばより。
「”死者を弔うことで、生者を救えるときがある。僕らはそういう仕事をしてるんだ”」
ー未来を見れば、不安になる。過去を見れば、後悔する。今だけをみるといいよ。ー
温もりの感じられる本でした。(合掌)
(鐘丈寺には狸のような猫も登場しています。(=^ェ^=)「名無し君」と呼んでいた田貫さん、切ないです、、) -
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルと表紙に惹かれて選びました。
初めは帯に書かれた「百年目の奇跡」とゆうのがピンとこなかったのですが、やはり名取さん作品、最後まで読んで、全部(伏線?とまでは言いませんが)回収され、わかった時にはまたもや泣かされました。
一章から、宿に泊まりに来た昔ながらの常連さんの借金の連帯保証人になり、家族で夜逃げする所から始まり、不穏な感じと、主人公と共に不安と不満を持ちながら読み始めました。それから代々猫の世話をするねこもりさんとしての女の人達の人生について書かれ、島にいる人達の関係を知り、なぜ一章で起きたようなことが起きなければならなかったのかを知ります。
上記にも書いたように最後に全部が繋がり、やっと百年の奇跡の意味を知り、そしてねこもりとしての感動を味わいました。
いやぁー、トラがいい仕事してましたね!あと、江の島をちゃんと隅々までゆっくりさん散策したくなりました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ引き続き名取さんの作品を読破中。
初めは可愛いペンギンとなくしもの係のお兄さんが、なくしたものを取りにくる人達への応援?背中を押す?短編集かと思いきや、最後の章で全部拾いあげて、とてつもなく綺麗にまとめて終わらせてくれました。読後感が凄かったです!
なくしもの係って大抵行くってことは引取りに行くのが前提だと思っていましたが、ここでは預かってもくれる。そしてそれが大事な話しのポイントになっていました。そうゆうことかぁ!と、回収の仕方ももちろんうまかったし、出てきた人物達が最後に一気に出てきてホッコリしました。
ただ、最終章に出てきた元会長の性格がちょっと苦手で(ずっと怒ってて人にも怒鳴るとか)読むの嫌だなぁと思ったところもありましたが、ちゃんと最後まで読むとそこもまぁ許せるようになりました( ˊᵕˋ ;)ペンギン鉄道乗りたい