名取佐和子のレビュー一覧
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昭和初期までの古書が自由に閲覧できる文庫が自慢の凧屋旅館。宿泊客と同じにおいのする本を若女将の円が薦めてくれる。本が読めない体質の円は客から本の話を聞きたいとお茶会を開く。円の薦める本がさまざまな事情を持った客たちに寄り添っていく。
幼馴染カップルと3人旅行の青年、妻の快気祝いに来た老夫婦、夏休みの旅行に来た母子、4人の少年と卒塾旅行の引率をする大学生、再来した青年とその父親…。最後に明らかになる凧屋旅館と蔵書に関する大きな秘密。
全体的にきれいな話だった。1冊目と5冊目に登場する葉介に好感を持った。3話目の母子にも通じるのだが、「普通」から外れるのはこわいし、生きづらい。でも「普通」は人それ -
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異国情緒溢れる関西きっての港町御門。町の急な坂を登った先にシェアハウスかざみどりはある。
この3階建ての古い洋館に集ったのは、年代がバラバラの男女4人と無愛想な若い管理人の男。これまで決して順調とは言えない人生だった5人を、その過去から解き放つ連作群像劇。
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南北を海と山で挟まれた関西きっての港町と言われる御門市。その中心街から北にミシン坂を登ったところが北屋丘町だ。
坂道の先には人目を引く一軒の古い洋館がある。目を引く理由は、3階建ての赤い屋根に骨董品級の古い鋳物の風見鶏が取り付けられているからだ。
今朝はその洋館3階にあるバルコニーに、ラジオ体操をしている -
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大和北旅客鉄道波浜線の遺失物保管所、通称なくしもの係には赤髪の職員とペンギンがいる。なくしものを探しに来る人々の物語を4話収録。
飼い猫を亡くした女性が落とし物をする『猫と運命』、男子高校生がオンラインゲーム仲間のために限定アイテムを手に入れようとする『ファンファーレが聞こえる』、マタニティマークを拾った主婦の物語『健やかなるときも、嘘をつくときも』、頑固な男性がペンギンを追いかける『スウィートメモリーズ』。
再読。ペンギンが乗り降りする電車、素敵すぎる。基本的に遺失物保管所にやって来る人々なので物をなくしているのだけれど、目に見えないものも同時になくしている。どの人もなくしものを見つけて前を -
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「ペンギン鉄道なくしもの係」の2冊目。
前作と同様、駅や電車で忘れ物落し物をして、鉄道会社の遺失物保管所を訪れる人たちのお話。
親の離婚届を代わりに出しに行く姉弟、学校の遠足に行かずに自分たちだけで水族館へ行く兄妹、重い病気と闘う女性と彼女を気に掛ける女医。それらの話すべてに気儘に出没するペンギンとモヒカン頭の男が絡む。
いずれも少しうまくいっていない関係が探し物をしている内にわらわらと解きほぐされていく展開は、どうってことないけど結構泣かせる。
最後の話でモヒカン男が主人公になり、ばらばらに見えたそれまでの話が繋がるところも前作同様だが、ここで明かされる秘密にもほっこり。
前作で「ヘアバ -
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飛行機の中で一気読みした。1羽のペンギンがいるとある路線と、そのなくしもの係の青年のお話。
タイトルから勝手に、言葉を話すペンギンが駅員をしているのかと思ったけどそうではなく、ペンギンはただそこにいて、普通の動物として気ままに暮らしているだけ。自分で電車に乗って出かけられる器用さはあるものの、もちろん言葉は話せないし、そこらへんでトイレもしてしまう! でもその自然体さや人間との距離感が心地よくて、「ここに来れば大丈夫」という安心感を与えてくれる感じがする。なくしものを持ち帰るか預けたままにしておくかを選べるという点と、どうしてペンギンがいるのかが最後の章で明かされる点がよかった。