あらすじ
しずかな波音、やさしい食事、ぬくもる温泉、そして何よりあなたのための一冊を。戦前から続く海辺の老舗旅館・凧屋の名物は様々な古書を収めた文庫=図書のコレクション。少しばかり“鼻が利きすぎ”な若女将がすすめてくれる「お客様と同じにおい」を纏った文豪たちの小説が、訪れる人の人生を揺らす―。
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Posted by ブクログ
戦前から続く老舗旅館・凧屋。ここには古書ばかりの海老澤文庫があり、若女将が「お客様と同じにおい」を纏った本をお客様に勧める。そんな旅館があれば、泊まりたい。私はどんなにおいがするのだろう?
5つのストーリーからなり、それぞれ1冊ずつ取り上げられている。知っている作家さんばかりだけど、夏目漱石の『こころ』以外は読んだことがない。
1冊目:川端康成『むすめごころ』
恋愛
2冊目:横光利一『春は馬車に乗って』
夫婦
3冊目:志賀直哉『小僧の神様』
親子
4冊目:『藪の中』
学生、先生
5冊目:『こころ』
友
第5話はお客様ではなく、若女将に関わる物語。若女将に様々な本を読んでいた今は亡き曾祖父が大きくかかわってくるのですが、まさかあんな展開になるとは本当に予想外。涙を流しながら読みました。
5話からなるお話なので、テーマもそれぞれにあるけれど、読み終わっての感想は受容と赦し。
『こころ』をもう一度読みたくなりました。
Posted by ブクログ
すごく良かった。
本から自分の本心がわかるって素敵だな
わたしはどんな本と同じ匂いなんだろう。
円さんに渡してもらいたいな
聞いたことはあるし、有名な本だとわかっていても文体とか言葉が昔過ぎて読むのを躊躇する本がたくさん出てきて、でも読んでると不思議と読めそうな、読みたくなるような小説だった。
特に最後に出てきた夏目漱石のこころと
川端康成のむすめごころは読んでみたくなった
Posted by ブクログ
この本の匂いは、私にとっては心地良いものでした。
旅館の若女将 円がお客様に合う1冊をお客様へ渡す
その本の感想などを話しながら、その1冊から1歩すすんでいくお客様。
その海老澤文庫を巡っての、なんともいえない かくされたストーリー。
かなしくも 前へ1歩踏み出せる1冊だと私は思います。
Posted by ブクログ
やってくる一人一人の悩みを優しく解決に導くお話かと思っていたら
それだけでは終わらない展開と
今まで出てきた人々のその後もわかるようになっていて
読後感がとても良かった。
救われないなと思うこともあったものの,
今を生きるこの登場人物たちにとっては
色々光に向かうことができて良かったな
Posted by ブクログ
文庫旅館こと凧屋旅館に宿泊に来るお客様の思いや目当ては様々。心に複雑なものを抱えている人も多く、そんな時に若女将の円に文豪たちの古書を「同じにおいがするから読んでみて」と薦められる。自分だったら何を薦められるだろう、そもそも薦められるのか、わくわくするのに、客たちは渋々手に取る人がほとんど。それでも帰る時には気持ちにケリをつけられたり前に進めてたりするので癒しの場として読み進めると…最後「こころ」でガツンとやられた。とても重く想像してなかった展開に驚くばかり。辛くても赦しと手放しによって繋がる縁がある。
Posted by ブクログ
名取佐和子さん
初めて読んだけど
最後の五冊目の章、主人公円の生い立ちのごちゃごちゃに掻き回される
本自体がものすごい好きな作者さんなんだろうなあって感じた
Posted by ブクログ
名取佐和子さんのハートウォーミングストーリーですね。
自分探しの心温まる物語です。
避暑地の海岸近くに位置する戦前から創業九十年を超えた凧屋旅館を舞台にした、お客さんと若女将の丹家円の交流を描いた短編連作五話。
この凧屋旅館には、数千冊の文庫の書庫があり、文庫旅館としても知られている。円の曾祖父の清の友人の海老澤から譲り受けた歴史のある文庫だ。
ところが円は幼い頃から、本から出てくる香りを強烈に感じる体質で、本を読むことが出来ない。そして、訪れるお客さんからも香りを感じる事が出来る特異体質なのだ。
それぞれの章で、心にうっぷんを抱えた客たちが、円が文庫から選んだ本に寄って、自分回帰を感じる。
円は文庫の個性の香りと客の香りの一致を感じる事が出来る。客は円が選んだ本を読んで自分の内面を振り返り考えるきっかけをつかむ。本が読めない円に本の内容を説明する事で、円との対話の中で、自分の求めるものに気付くのだ。
目次
一冊目 川端康成『むすめごころ』
二冊目 横光利一『春は馬車に乗って』
三冊目 芥川龍之介『藪の中』
四冊目 志賀直哉『小僧の神様』
五冊目 夏目漱石『こころ』
最後の五冊目で、曾祖父の清と海老澤の経緯が明かになり、驚きの事実が判明する。
名取佐和子さんの親しみやすい文章と老舗旅館のまったりとした佇まいに、円のおっとりとした振舞いに惹かれます。
自分探しの再生の物語が、古本から始まるのも心を捕まれますね。
読んですっきりする読後感が良い作品です(=゚ω゚=)
Posted by ブクログ
文庫のある凧屋旅館のちょっと鼻がきく若女将と宿泊客の物語と思ったら、なかなかに奥が深く、良い感じに凧屋の歴史が絡み、登場人物もそれぞれ役割があり、丁寧に書かれてるなーと思った
初読みの作家さんだったがよかった
夏目漱石とか、高校生のときしか読んでないから読み返してみたくなる
Posted by ブクログ
3人の関係を変えたくない〖むすめこごろ〗
夫との関係に悩み自分を見つめ直す
不思議な力の子どもと泊まりに来たお母さん
塾の子ども達との引率
文章も読みやすくて、旅館を通してのストーリー
ひとつひとつ素敵でした
Posted by ブクログ
海辺にある凧屋旅館。寄贈された昔の書物を多く所有し、文庫旅館とも呼ばれる。そんな旅館をめぐる物語。
本を読めない若女将が、宿泊客に本を勧め、あとでお茶を飲みながら本の話を聞かせてもらう。
古い文学はほとんど読んだことがなく、名作のあらすじも含めて、楽しませてもらった。
最後の章は、一章のお客さんの再訪と思ったら、亡き曾祖父の手記により、二つの家族の謎が明かされて、ビックリ。
不思議なものが見える子供と母親の話が、好きだった。
人生をやり直そうとする中年女性の話も好きだな。最後にその後の姿も触れられていて、嬉しい。
Posted by ブクログ
凧屋旅館という古い旅館にある海老澤文庫。
海老澤という人が、寄贈してくれた文庫とのことで、戦前戦後の作品を中心にとりそろえている。
その宿の若女将は、本が読めないという体質だが、鼻がたいそうきくので宿泊客と同じ匂いのする本を文庫から選んで勧め、その本の感想や内容を宿泊客から聞くのを楽しみにしている。
短編集のように進むのかと思っていたので、最後のお話では文庫の謎もとけてすっきり・・・?
内容としては悲しいつらい秘密だったわけだが、なんというか、結局死んだ人をこれ以上恨めないということなのだろうと思う。
女将の三千子が、70代前半で認知症で介護がないと生活できないような状態であることもかわいそうだなと思ったけど、自分の出生については知らないほうが幸せなような気もした。
Posted by ブクログ
大雑把に言うなら、旅館の若女将が悩める宿泊客にピッタリな一冊を薦める話。
里見蘭さんの『古書カフェすみれ屋〜』によく似てるが、こちらを最初読みづらいと感じたのは、主人公の本が読めないという設定と、若女将としての立ち居振る舞いが、少し浮世離れしている様に思えたからかな。
5話から成り立つ本作。
なのでもう少し、と2話、3話と読み進めると物語全体の奥行きを感じる様になる。
…あれ…ちょっと、印象が変わってきた。
4話で少し風向きを変え、ラストの5話。
主人公の日常から始まる5話は、最初に感じた浮世離れ感を払拭させ、再び訪れる宿泊客によって、奥行きだと感じた種が紐解かれて行く。
ほぼ記憶にない夏目漱石の『こころ』を覚えていたらもっと楽しめたと思う。
歴史的背景まで関係してくる、悲しくも温かな物語でした。
Posted by ブクログ
プロローグの、円はなぜ匂いがキツくて本が読めないのか、曽祖父の後悔とはなにかの謎が少しずつ綺麗に回収されていったのが気持ちいい。
二つ目の自分を取り戻す話がエンパワーメントされるみたいで力強い。
Posted by ブクログ
凧屋旅館、行ってみたい。若女将の円さんの心遣いが素敵。文庫で出される飲み物と食べ物がまた惹かれる。
一冊目から四冊目までは旅館を訪れるお客さん目線、最後の五冊目は円さん目線の物語。
川端康成「ゆめごころ」
葉介の迷いや不安が描かれる。“普通”が良いと思うのは悪いことじゃないけど、“普通”が人の数だけあることは忘れずにいたい。打ち明けないという選択もあるんだ。
「春は馬車に乗って」横光利一
このお話好きだった!則子さんが美容院で髪を切って染めたところ、かっこよかった。自分を喜ばせること、大切にすること、忘れたくないなぁと思った。
「小僧の神様」志賀直哉
自分にとっての事実と相手にとっての事実は異なるらしい。勝手に推測して悩んでしまうのが人間なんだろうけど。透馬の“個性”を信じること、親として育てる沙月さん、かっこいいなと思った。
「藪の中」芥川龍之介
真相は藪の中ってそういうことなのか!初めて知った。一人の人物にもたくさんの“タグ”があって、それはどれが正解とかってことじゃないのかな。
子どもじゃないけど、大人でもない気がする二十一歳。奏志と四人の中学生はその後どうなったのかなぁ。
「こころ」夏目漱石
凧屋旅館と海老澤文庫の過去がわかる最終章。葉介の再訪とともに明らかになった円の曾祖父、丹家清の告白。赦すことができるのが強さなのかなぁと思ったり。円と葉介のつながりにも驚いた。
Posted by ブクログ
昭和初期くらいまでの古書が揃う"海老澤文庫"が併設された旅館・凧屋旅館。文庫旅館とも呼ばれるこの旅館を訪れた様々な事情をもった宿泊客が出会うのは、"鼻がきく"若女将の丹家円と本。
その出会いによって、宿泊客は少しずつ変わっていく…。
ブックホテルが最近流行っているが、文庫を備えた旅館も良いなぁ。こんな旅館に泊まってみたいなと思った。
"海老澤文庫"が出来た経緯、凧屋旅館の丹家一族と海老澤一族との因縁?はあまりにも海老澤一族が可哀想。海老澤一族の不幸の上に丹家一族の現在が成り立っていると知って、円が、海老澤一族の葉介が、今後どうしていくのかが気になる。
Posted by ブクログ
1人のお客様からの寄贈の古書の文庫がある凧旅館は本が読めない若女将がきりもりしている。
その若女将は、お客様と本の匂いで、そのお客様に必要な本をすすめてくれる。
その本を読むことで、悩んでいたことに踏ん切りをつけて前にすすめるようになる宿泊客。
最後には、文庫の謎も明かされる。
文豪の本には、縁遠かったけど芥川龍之介「藪の中」志賀直哉「小僧の神様」は読んでみたいと思いました。
1人の人の中にも良い面もあれば悪の面がが出てくることもあって、
後悔したり悩んだりしながら、それでも前を向いて行きていくんだということを本に助けられて光を見出された人達。
私も、こんな旅館があったら泊まってみたい。
Posted by ブクログ
名取さんの作品にハマってずっと読んでいますが、今回も良かったですね!図書室シリーズの時と同様に今回も5冊の本が出てきて、旅館に泊まりに来た人達に必要な本がそれぞれ紹介されます。ちなみに5章あって5冊の本が出てきますが、毎度のことながら私はどれも読んだことはありませんでした(._.`)
最後の夏目漱石の「こころ」にちなんだ話しがやはり1番良かったですね!次がその最後と少し関わってくる川端康成の「むすめごころ」が好きでしたね。
作中の「あなたは恥も罪も感じなくていい。あなたに血をつないでくれた皆のことを好きなままでいなさい。」「私達の人生は誰かの懺悔や復讐のために存在するのではない。私達の人生は私達のものだ。」「誰かのせいにして責めてばかりいると、そこから動けなくなっちゃうからさ。怒りや恨みをいつまでも掴んでないで手放すのはどう?」「赦して、手放すか…」「人間は赦すことができる。赦しはきっと、善悪を超える」とゆうのがとても心に残り、考えさせられました。赦すって難しいけど、持ち続けるのもシンドいものですよね。だからこそ、それが出来た呉朗さんを尊敬したし、感動しました。そして、そこからの三千子さんの「にいさん」呼びには泣かされました。
まだまだ名取さんの作品があるのでたくさん読みたいですね!
Posted by ブクログ
「同じ匂いの本」って表現に共感できます。匂いとまではいかなくても、「これは読まなくては!」って思う本は、書店の棚を眺めてると、自然と目がいくものです。
Posted by ブクログ
本に対して不思議な性質を持つ若女将の営む旅館を舞台にした連作短編集。どの話も一つ一つとても良くて、まさかそれが五冊目にしてあんな風に結び付きあっていくとは。という驚きの展開のある本だった。不思議なものの見える子どもとその母である人の話がよかったなぁ。すばらしく強い母。
Posted by ブクログ
自分の琴線にふれるとっておきの一文が、数多の本のどこかに眠っているかもと、新たな本との出会いに思いを馳せた。答えのない謎、抱える罪悪感、赦し。短編を緩やかにつないで見事。しかし名作『こころ』を読んでないのは大反省…ラストの理解度が変わりそう。
Posted by ブクログ
文豪の名作がこうやって紹介されると俄然読みたくなる
知らない本はまだこの世の中に沢山あって、もはやBGMも本の内容であって欲しいと思う始末
本が沢山ある旅館
なんて素敵なのでしょうか
着いた途端にずっと読み漁り、そこから出てこないかもしれません
その時の私にぴったりな本を選んでくれる、というのもぜひやってほしいけれど難しいかな
次、文豪の名作は何を読もうか
Posted by ブクログ
名物の海老澤文庫が揃う図書スペースがある戦前から続く老舗旅館。そして本好きなのに、本が読めない若女将。これだけでとても面白そう。
中盤までは若女将が同じ匂いを持った本を泊まり客に勧め、それを読むことで新たな発見や気付きを得ていく流れで進んでいく。
終盤にかけて本が読めない理由や、海老澤の謎に迫っていく構成は素晴らしかった。
Posted by ブクログ
古書を収めた文庫を持つ海辺の老舗旅館・凧屋の“鼻が利く”な若女将が宿泊客に薦める小説。さりげなく、彼らが進んでゆくための後押しをする姿が素敵だった。一冊目と三冊目のお話が特に好きでした。自分には何が薦めて貰えるんだろう?と気になる
Posted by ブクログ
名取佐和子先生、初めて読ませていただきました。
5つのエピソードにそれぞれ登場する文庫は「文豪先生達の本」ですが、本文はライトな雰囲気でとても読みやすかった。シリーズ化も有りですね。
構成としては面白くて良くできてると思いますが、何故か物足りなさを感じてしまいました。
Posted by ブクログ
昭和初期までの古書が自由に閲覧できる文庫が自慢の凧屋旅館。宿泊客と同じにおいのする本を若女将の円が薦めてくれる。本が読めない体質の円は客から本の話を聞きたいとお茶会を開く。円の薦める本がさまざまな事情を持った客たちに寄り添っていく。
幼馴染カップルと3人旅行の青年、妻の快気祝いに来た老夫婦、夏休みの旅行に来た母子、4人の少年と卒塾旅行の引率をする大学生、再来した青年とその父親…。最後に明らかになる凧屋旅館と蔵書に関する大きな秘密。
全体的にきれいな話だった。1冊目と5冊目に登場する葉介に好感を持った。3話目の母子にも通じるのだが、「普通」から外れるのはこわいし、生きづらい。でも「普通」は人それぞれ違う。むずかしいなと思う。紹介された本はいずれも読んだことがなかったが読んでみたいと思った。